5月3日午後7時、高速バス大阪行き「ぐっどないと(←ひらがな)号」に乗る。6時までいた仕事先のテレビでは17歳の少年による「高速バスジャック」事件をヘリからの生中継でやっていた。「物騒ね〜。しかもあんた、これから高速バス乗るんじゃろ〜?」ギャハハ、あんたも変なもんと遭遇しやすいやっちゃのぉ〜っと皆でお茶をすすりながら談笑(よもや同じ九州自動車道/同じルート:を暴走中とは思ってもいなかったアホ3名の会話)。まるで事実を無視するかのような快調な走りで大阪に向かうそのバス内で、しかしえっちゃんは「安眠ジャック」に襲われていた。真後ろに座ったおやじの豪快なイビキ攻撃。「な、なんでこのバスはこんなにおじさんおばさんばかりなのか?」と思った程である(飛行機嫌いの人たちだったのだろうと推測)。しかもこのおやじ途中吐き気をもよおすのか、何度も「はぅっつ、あっつ、へぇ〜〜、うあっつ!」と私の座席をガシガシ揺さぶりながら悶え、しばらく経つとまたイビキ、を繰り返す。負けるもんか、と本を読んでは睡魔を誘い、一人戦うえっちゃん。座席前方では別のおやじが「はぁっつ!あはぁ〜〜んん、ふぎぃえ〜」っと「これはあなたのご自宅?」とついつっこみたくなるような超リラックス「伸び/あくび」を大声でやっている。
呑気な旅行客達なのか、それとも単なる田舎者が乗ったバスなのかは謎のまま4日午前6時30分、車内のカーテンを開けると、そこには朝の太陽に照らされた高層(私にはそう見えた)ビル郡がにょきにょきっと立ち並ぶ大阪に到着。「とうとうあたしは一睡も出来んかった」と夫らしきおじさんに訴えるおばさんがいた。かわいそうに、頭にカーラーまで巻いて気合入れてたみたいなのに。不機嫌なスタートにならなきゃ良いが、と他人事ながらちょっと気の毒に思う。
「ありがとうございました〜」(←鹿児島人は必ずバスの運転手に挨拶をして降りる)といよいよ大阪上陸である。う〜ん、とうとう着いたなぁ!と深呼吸をしてさっそくお手洗いで顔を洗う私。かずぞうとの待ち合わせが8時だったので、とりあえずマックかどっかで朝ご飯...と目の前のマクドナルドに駆け寄ると「7時オープン」の表示。しょうがないので時間まで探検しようと駅ビル界隈をぶらつく。お、7時まわったからもうあいてるな(マック)、と元来た道を引き返しマックへと向かう。がしかし、まだマックは閉店のまま。中を覗くも全部の椅子がテーブルの上に乗っかってる状態に「大阪人は時間にルーズなんだなぁ」とたった一店で勝手に判断を下す。
そうこうするうちに、約束の8時10分前。待合所の中の公衆電話でかずぞうの携帯に電話する。「はいはい〜」とかずぞう。「えっちゃんです〜、今どこにいますかぁ?」の問いかけに「今ね、もう着く所よ。多分あと50メートルくらいかなぁ」「わたし、赤いスカート着てるから」「おっけー」...あぁ、いよいよかずぞうさんにあえるのねん!と心臓も徐々に高鳴るえっちゃん。そわそわしながら待合室を出て、それらしき人物を目を可能な限り見開いてチェックする。...しばらくすると、周りをきょろきょろしながら身軽な服装で待合室に入ろうとする女性が目の前を通り過ぎる。右手には携帯電話。「も、もしかしてこの人かなぁ...?」確信がもてなかったのと、勝手にかずぞうさんはショートヘア、という思い込みから敢えて見過ごしつつ、しばらくその女性の動作を観察する。99.99999...(もういい)パーセントの確率で彼女がかずぞうさん、という確信を持ちつつ目で追いかけながら同じ公衆電話よりもう一度電話。おもしろかったねぇ〜、受話器から聞こえる声と、目で追う女性の口が同時に動くのを見るのは。
「かずぞうさーん、ここ、ここ!」と手を振る私にやっと気付いたかずぞうが足早に駆け寄ってきた。顎のラインまでふんわりと伸びた髪、ちょっと厚めのレンズのメガネ、胸骨から下がぱっかり割れてるんじゃないかと思うほどの長い足。恥ずかしそうに時折目を伏せがちに話す癖があるらしい、ちょっとオチビな目の前にいるかわいらしいこの人が、あの会いたくってたまらなかったかずそうさん。えっちゃん、嬉しくってにやけた笑いを顔一杯に浮かべてたと思うな。
「はじめましてやね、えっちゃん」
「はじめまして、かずぞうさーん」
かずぞうとえっちゃん、感動の初対面の瞬間なり。