親などの保護者が幼児をいじめたり暴力を加えたり放置したりすること
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積極的に暴力を加えるタイプではなく，ここでは，食事を与えないなどして，死に至らしめる場合もあるといった，放置のタイプの幼児虐待について 話をしたい． 数年前，母親がパチンコをするのに，子どもを車の中に 放置しておき，母親が車に帰った時には，子どもが脱水症状で死んでいた といういたましい事故があった．この事故は大きな話題となり， パチンコ屋の中には保育ルームを設置するところまででてきた． しかし，ほとんどの人の，主な論点は，母親のだらしなさや 責任感のなさといった，最近の育児の問題点にあった． 確かにパチンコといった賭事にのめりこみ，自分の子どもを殺してしまうなんて 最低の母親かもしれない．あってはならないことであり，そのときの状況なぞ， 恐ろしくて，私など想像することもできない．他人事ながら， 涙まで出てきそうになってしまう．この母親は世間から，非難の的となった． 当たり前のことだと思う． しかし，同じ母親種族として，私は，この母親の育児についてのみ 非難することは，どうかやめてほしいと思う．この母親は，たまたま， ギャンブルという，一度はまると，人生を壊すまでのめりこんでしまうものに， たまたま足をつっこんだのである． パチンコのために，借金をかかえこんだという話はそうめずらしくもなんともない． 生活を破綻した人もいるし，それで，家族が迷惑を被っているのも，身近でよく聞く話である．賭事が悪いというのはわかっている．でもやめられないのである． やめられるのであれば，やめている． ただ，ギャンブルということで，世間は冷たい． 意志が強ければやめられると世間は思っているからだと思う． 男性でパチンコで身を崩している人に対し， 世間は冷たいが，一方で哀れみも投げかけることがあるとおもう． 「かわいそうなひとだ」と少しは理解するといったところか？ ところが，この母親の場合，自分の子どもを，同じきっかけで殺してしまった．先の，身を崩した男性は自分だけで収まっている，もしくは，家族がいても，家族を殺すところまで行っていないというだけで，非難の調子は全く異なる． 結果的には確かに子どもの命を奪うなぞ，最低のことではあるが， 実は，その課程というのは全く同じで， 二人とも「パチンコが好きだった」だけである． 母親にはたまたま幼児がいた． いつもはパチンコ屋に連れて入っていたが， 店の迷惑にもなるし，子どもにも悪いということで， 車の中であそばせておいたのである． まさか，死んでしまうとは思っていなかっただろう． この事故で，「車の中は高温になるので，子どもを放置してはいけない」という教訓が生まれた．実はよく考えると当たり前のことだが， この事故の前から，全ての日本人がこれを知っていたかというとそうではない． この事故も偶然が重なって起こった． 母親はたぶん，かなりショックを受けていると思う． この母親の罪はこのショックの大きさ以上であってはならないのではないか？ これがパチンコではなく，何かの趣味だったらどうだろうか？ 母親はロックが好きで，大勢の仲間がおり，どうしても イベントに参加したい．しかし，子どもがいては参加できない． 連れていくと他の人に迷惑がかかる． どこかに預けることもできない．では，我慢するしかないのか？ 母親だから，子どものためにやりたいことは我慢するべきなのか？ 父親なら我慢しなくてもいいのか？ イベントに参加するため，子どもを家に留守番させておいたら， 過ってガスが充満し，死んでしまう．窓から転落してしまう． 何でもやってみたい小学生なら，いくらでも考えられる事故である． 実際，私たちが子どものころからは考えられないほど，今の子どもは それら事故から保護されている． 公園にはあぶないからといって，シーソーも回転ジムもない． ロックイベントでなくてもよい． 仕事でも同じことだ． ある母親がどうしてもこなさなくてはならない仕事があった． 預けるところがない．では，社会的責任も放棄するべきか？ 確かに，その方が，世間的には「よい母親」というスタンプをいただくことが できるだろう．しかし，これが，父親だとどうだろうか？ 社会的に「あいつはだめなやつだ」と思われるだけである． 「芸のためなら，女房も泣かす」のが，日本の伝統なのだ． かなり極端な例に走ってしまったが， 母親の非難といっしょに， 母親が我が子を車に放置せざるを得なくなった日本の環境も 考えてくれると，日本の母親たちは少しだけ救われると思う． 「いいえ，私は立派な母親よ」といって，子育てのみに専念し， 全ての自分の趣味を捨て去り，働かなくても 夫に裕福にさせてもらっている「理想の母親」は だんだん少なくなってきている． 趣味を捨て去るには，あまりにも人生はつらく， 夫だけが働いて生活するには，あまりにも物価は高い． しかも，兄弟は少なく，親の面倒をみなくてはならない． 事故の過失責任はとられるべきである． しかし，事故は偶然の重なりであり， 環境によって起こるべくして起こった． 人間を追いつめるだけでなく， 事故が起こらない環境を作っていけないものだろうか． |