創造科学研究所
ＴＤＫの創始者がフェライトコアの特許料でたてた 建物で，今は鉄筋の新しい建物になってしまったようですが， 昔は，自然にめぐまれた広い庭の中に木造２階建ての 優雅な建物でした． ここで，特許をとれるような独創的な発想を育てるため， 私の大学の研究室では学生１０人弱と３人の先生とで 毎年夏に２週間程度の合宿をしています． 食料の当番を決めて，先生の奥さんと 近くのスーパーに段ボール２箱分の食料を 毎日買って，楽しく料理したり， 軽井沢の美しい自然を満喫したりしました． 最初は良かったのですが，連日の修士受験勉強と 独創的発想発表会の準備とで， だんだん，ひなびてきた私をみて，先輩が 浅間山の温泉に遊びに連れていってくれました． 先輩が気を使ってくれたのが，とてもうれしかったです． 温泉は生まれて初めてでした． 卵が腐ったような匂いがしました． その後，硫黄の温泉にいくたびに， 当時を思い出します．
残念ながら特許がとれるような成果は得られませんでしたが， 私の発想に対して，一番最後の発表会で 先生が， 「その調子で発想を続けたらよい」 といってくれたのがとてもうれしくて， 結局現在まで至っています． 研究室では，電気の知識が豊富な先輩や同僚が多く， 私のように成績も悪い，電気のでの字も知らないまま 研究室にゲリラのようにはいった人間にとっては 居づらい部分もあったのですが， 自分なりにいろいろ考えて工夫しながら実験するのをみて， 先生が 「知識とかはない方が独自の発想が生まれやすい． 人の意見を真似してばっかりよりはよっぽどいい」といってくださいました． 人より記憶力が悪いハンディを持っていた私にとっては， 何よりの励ましでした．