「蜃気楼序章」 今在家 成 

版権・九州男児舎

 

春の終わり。心にうねるざわめきの中に潮騒は俺に辿り着いた。

潮風が冬が冬眠から醒めた男を愛でるように満身に吹き寄せて来た。

新宮。俺の美意識。男の生き方。そして、恋情の熱風のけもの道。淫惑の白い砂。

いつも靄の水平線。それは足げく通っても満たされない俺の心情を映しているように見えた。

 

俺は今シーズン始めて浜入りした。4月8日とその日を決めていた。

今日だ。西方4キロまで新宮浜は続いている。

浜の全景が見通せるのも解放感と期待感に膨れる視覚効果であった。

シンボルとも言える小丘の二本松。あの松こそは、

この浜に集う男たちの一喜一憂の自然体を長い事見下ろしてくれているに違いない。

しかし、俺はその二本松の場所までは行かないまま、東浜に陣取る。

古賀カントリコースと雑木林と平行している浜辺りである。

厳密に言うとこの辺りは古賀市である。新宮浜は新宮町と古賀市に跨っていた。

そもそもの新宮は、古賀市となるのこの辺は外郭とも呼べた。

仲間の集まるエリアはここ数年、東側に移行し、

外郭だったここら300メートル西辺りがメインになっていた。

 

俺は、バックを草地において、薄てのトレーナーを脱いだ。風は微風。

空気の流れに時たま微熱の篭った柔らかい固まりが混じって吹き抜けた。

これは十分初夏の兆しである。俺はTシャツを脱いだ。

背中に当たる最初の太陽光線が、新宮に訪れた祝杯に感じさせられた。

ここの至福の時は今始まったのだ。

まだ日焼けの準備をしていない様子伺いの体(てい)で散策している者が、

邪魔気を見せている。しかし、西の浜には裸色の体の姿を見せている者もいた。

仲間が何人参集かはここでは問題ではない。

この新宮で俺がどう俺として至高の時間を費やすのかが主題である。

俺は基本的に太陽と対話したくて来ていた。

 

綿パンを脱ぐ。颯爽と脱いで締め込んだ六尺褌姿を心意気として、

新宮浜に指し示さなければならない。褌党はここでは少数派である。

故に六尺褌である。俺は、兄貴の教えを忠実に守らなければならない。

嫌や、その教えも俺色に解釈し、今は俺の生き方の根本にもなっていた。

兄貴はここを俺に教え、ここでの男の過ごし方を伝授してくれた。

兄貴もまた、とある御仁から浜での流儀を教えて貰っていた。

今は俺がここに来ている。そして、いつの日にかは俺にも弟分ができる筈である。

その男に何らかの形で兄貴とここで過ごした至福の時の状況を伝えたく思っている。

尻に太陽を感じた。刺激が走る。ここは立派に夏色の浜になっていた。

シートを広げた。最初に設定する俺の所場であった。

 

兄貴とは、ここで三年前の夏に出会った。

そして、三年間は兄貴とここの夏に至福の時を感じていたのだ。

兄貴の前に婚約対象の女性が現れるまで。兄貴は普通の男の生活に立ち帰って行った。

兄貴は兄貴の兄貴格の男だけを愛し、それ以外の男を知らないでいた。

俺は兄貴と居る間は他男との接触は禁じられた。

特異な男関係を強いるように、俺は他の男とは寝てはならなかったのだ。

真実の男色を俺に植え付ける。その行為も兄貴との別れで完成はなされなかった。

俺は、一人の者に確執するタイプの男ではなかった。

兄貴もまた、婚姻に際する別れなので、無理強いは出来ないでいた。

兄貴とは二十六歳の時に出会った。兄貴は三十歳だった。

 

LOVE―FMを流す。オイルを体に満遍なく伸ばす。

レスリング試合前の選手の感覚である。オイルを塗ると言う行為が俺を熱くする。

この時期焼き込んでいないと、夏場はこんがりチョコレート色には肌を染められないのだ。

肌を太陽色に染めると言うのは、忍耐の何もでもないがこの浜の時間を共有する行為が、

俺には快感なのである。俺の肌は紫外線の濃度をすでに待ちわびる体になっていたのである。

この体をシートに伏せて顔を見上げた先に、東側から来る背広の上着を肩に掛けた。

外勤中らしい男が歩き来る姿があった。俺の存在を十分認めている視線である。

しかし、歩き来る者すべてに感心は寄せられない。 

俺は顔を伏せた。今日から俺の日焼けへの鍛錬が始まるのである。

目を閉じた。LOVE―FMからは、

CALDERAのDREAMERからのナンバーと思える曲が流れていた。

睡魔か?昨日は久しぶりに飲みすぎた。

新宮前夜祭という振れ込みが俺の中にあったものだろう。

潮騒が、部屋で聞くウェーブのCDとは違う広角な音場を作っていた。

俺はその中に誘い込まれて行く。太陽の湿りを感じた。

 

あ、ビール。俺は温くなってしまっていると気付きながら目が覚めた。

物の何十分か寝ていた。缶ビールを手にすると、

東側に砂に群れる草に腰を下ろした男が目に入った。

視線を合わしているのに、そのまま飲む事はなんか抵抗がある。

俺は思わず缶ビールを宙に翳した。男は戸惑い、後を思わず振りかえった。

が、誰も背後には居ない。慌てて俺を見戻す。

俺は身体を起して、男は淡いブルーのシャツにストライプのタイをしていた。

裸になる態勢は整っていない。春風に誘われ浜へと運ばれたやからが

ちらほらと目立っていた。男の動く気配はない。

 

俺は一度しかモーションは掛けなかった。去ったと思っていた灰色のズボンの男が戻って来ていた。

ネクタイは緩んでいた。歩けば汗ばむ陽気である。

ブルーのシヤツの男が、浜に出てそぞろ歩き出した。

灰色のズボンの男が目的を持って、砂の短い斜面を下って、

俺と平行の段差に歩きやって来た。「いゃあ、なかなかの盛況ですな」 

朝剃ったらしい髭がもう伸びかかっていた。潮風に男の整髪料の香料が匂い出ていた。

男はぎりぎり7・3に分けられる短さの髪型をしていた。

 

 「十分、ここの夏は始まってますね」「そのようで。あの人もお仲間ですね?」

 「ええ、そのようで」 俺はやむなく缶ビールを男に渡して、

別の缶ビールを俺の為に取り出した。「あ、いいすね。歩き疲れて喉が乾いてまして」 

男は乾いた恐縮の弁を吐いた。ネクタイをさらに緩めて飲む態勢に入った。

「上手い」男には温くなっても喉に美味しい。という顔を見せた。

手を上げてシートの上に腰を降ろして来た。「カッコいいすね。何時も六尺締めていますか?」

「ええ、まぁ」「俺も締めてもいいすけどね。この腹じゃね。

このビール貸しといてください。必ず、ここに来た時に」

「気をお使いになられなくて」「それには」 男は飲み干した。

 

 「新宮グッズっていう事ですな。ここは売店が遠いすからね」

 「前にも?」「ええ、夏場。一般海水浴場はあちらすよね」 

俺らが、ブルーのシャツの男の動きを注視した。

あの男はすっ裸になって、海の中に入っていったのだ。

 「ほう。景気いいすね。あの御仁は」「負けてますよ」「そのようで」男は煙草に火を着けた。

 

 「あのう、一つ伺いたい事が」「は?」 脱衣に掛けていた俺は肩透かしを食らわされた。

 「貴方は、喜六さんって言う御仁とお知りあいでは?」「きろく?」

 「ええ、喜六さんって言う人です。ガタイのいい震災刈りしているやくざな雰囲気の中年

男ですよ。赤の六尺締めてここに来ていると言う話を聞いてましてね」 

赤褌の男は何人か知っているが、喜六と言う名前、

しかも、やくざな野郎然とした男は心当たりがなかった。

「新宮にですか?」「それが、はっきりとは。海。玄海のどこかの海」

「ここは、海と呼べる所ばかりですからね。

案外、神湊に通じる松林の中かも。ポスト新宮ととある人は騒いでいますが」

「ここから遠いのすかね?」

「あの高層アパートを目指して行けば、30分もかかりませんよ」 

海の中にあの男は完全に溶け込んで泳ぎ出していた。

スポーツクラブに属しているのか、泳ぎ慣れたフォームで無駄のない流麗な泳ぎっぷりである。

東の浜に裸の男の動きがあった。砂の上に経ちあがった。俺が眠った時場所を張ったのか。丸刈り。

 

圧縮したような肉太い体躯である。フリチンの丸太い切れあがりの臀部を見せたが、

直ぐさまバスタオルを腰に巻いて、海に泳ぐあの男を、腰に両手を掛けて見入ってしまった。

俺のほかに裸の男が二人。輪郭の暈けたような春の陽光に照らされていた。

「あの親父」「タイプですか?」「ええ、まあ」「モーション掛け?」

男は、俺の顔をまじまじと見た。「いいすか?行って」

「いいすよ。でも、相手は裸ですんで、貴方も脱いで行ったら?」「じゃあ、ここで脱がせて」 

男はネクタイを解いた。俺は無関心を決めて煙草を取り出した。

見る間にステテコに越中褌の透けた様を見せた。練り上げたような体躯である。

「しかし、ここから」 と自分の衣類を一つに纏めようとする。そ

うこうするうちに、丸刈りの男がこちら側に歩き来る。

男はあっけに取られてその動向を見守る。ステテコに手を掛けたままだ。

 

「御二人仲良く?」 片頬が笑んでいた。

「いえ、この方が貴方とご一緒したいと、こうやって脱いでおられて」「ワシとですか?」 

丸刈りは口元をぐいと引いて、男を眩しげに見上げた。

「親父さん、つかぬ事伺いますが、喜六さんって言う方を御存知では?」 

男の方が躊躇した。俺は人の事ならストレートに進み出れた。

 

 「喜六はワシのポン友だが、何か?」「今はどちらに?」

 「あいつは何処にも逃げも隠れはせんよ。地の役人さんだからな。誰か尋ね人でも?」 

 その先は男に委ねんと男を見上げた。男は即答しない。

 「ははあ、興味ありって言う顔付だな」 

小柄だが、大きく大胸筋の張った親父である。男と遊んだ年功の分だけ、

乳首が大きく熟れているのだと、親父の厚い胸で主張していた。

「私の思っている人らしくて。長い事探してまして、その方を」

「へえ、奴さん聞いたたら喜ぶぜ」「あの方は、広島には」

「住んだ事はねぇよ。滞在はあるだろうがな」 

俺の煙草を所望して、吸うまでをすべて手で挨拶し終えた。

「兄さん、この人借りていいかな。そこらへんの話、あちらでゆっくりしょうじゃないか、ええ?」

「はあ」 男は、自分の衣類を纏めて、親父の誘いに乗る形を取った。

男は、親父に従って移動を決めた。途中振り返る。俺は手を上げると、笑って手で返して来た。

 

浜に上がってくるスイマー。衣類は遠く体を拭くタオルも無い。

水滴滴る体を見せて、半勃起の魔羅棒を揺らして俺の居る側に上がって来るので

身構えさせられた。何処かで会った事があるのか?俺の記憶の回路が訴えていた。

かっては、筋肉質を誇った体であったに違いない。その骨格に肉が肉厚に付着していた。

堂々と、海水に濡れて束になった陰毛が下腹部から、

勃起した逸物から分かれて股間に素直に下っていた。

俺に向かって砂を蹴ってまっすぐにやって来た。

 

「タオルを貸してもらえないかな」「いいすよ」 

俺はこちらに完全に来ない前にタオルを投げ渡した。

タオルを受け取ると男は、海に向かって尻毛が臀筋の下部を被う、

形のいい尻を見せて体を拭いた。

そのロッカールームでのムーブのように男は裸の時を太陽の下で作った。

自宅の風呂上りも、こんなドライな方法で体の水気を払っている筈である。

半身になってタオルを返して来た。この所作、記憶の淵にある。

「いい所ですな。太陽が砂に反映してて」 話しかけるが顔は海を見たままである。

男には腕時計だけが唯一の人工の品として身に付けた物だ。

 それを見る。そして、東側を見返る。その際、俺の顔をちらりと伺う。

 ああ、この 目。「タオルどおも」 スイマーは服を置いている場所に帰って行った。

臀筋の動く様が綺麗に見取れた。砂に座ってしまったので親父と男の姿は、

段差の関係で見えなくなってしまった。その二人に特別感心は示さず、歩き進むスイマー。

 

肌に薄っすら赤みが射して来た。オイルを塗り重ねる。

表を焼かなくてはならない。長い事、太陽を背中に浴び続けた。

LOVE−FMからLOVE BALLADが流れている。

兄貴の居ない新宮にも慣れた。土曜は必ず来ていた。結婚。

兄貴は俺より女性との結婚に踏み切った。

それは、衝撃であったが、兄貴に男の態度を見て、今ではそれは認める事ができた。

その葛藤の過程を味わってこそ、兄貴への愛情を感じやる事でもあった。

あの、三年。俺は至福の時を送ったのだ。あの時は永久に帰らない。

「賢人ならい奴、また、見つけられるさ」 

その言葉が最後に交わした兄貴との言葉だった。さよならは言えなかった。

ああ、あの男。俺は思い出した。内偵か。今は生活の方に廻っているのか。

あの男は、交通課の署員だったと思う。しかし、その姿は消えていた。

西から、Gパンの偉く肉厚なガタイの男が半裸の姿で波打ち際を歩いて来ていた。

あんな筋トレを絵に描いた男に声をかけるのは野暮と決めていた。

見せたがりのガタイ自慢。闊歩する事に意義がある。俺の価値観と異質な生物達である。

鑑賞に耐えうるが、それだけが結論である。俺はまた仰向けた。

胸に太陽の熱い溜まりがある。胸は熱を持って焼き込まれていた。

 

Gパンの男の姿が視界から消えていた。着衣組みの散策は昼も近い事から止っていた。

背後に誰かの気配を感じた。振り向くと、

竹垣の手前の狭い通路の草地にどっかと腰を降ろした男が視線を故意に合わせて来た。

Gパンを尻に敷いている。白いランパンを穿いている様だ。意外にも円熟の中年男だったのだ。

俺の背後に廻って、じっと海と俺を見下ろしていたのか。

しっかりショートブーツに靴下の白を見せていた。キヤップは被っていなかったが、

Gパンの後ポケットに突っ込んでいたのだろうか。紺地に銀の刺繍で感じのようなマークがあった。

 

俺は経ち上がった。あえて男の傍らに向かって、六尺褌の脇から逸物を出して放尿した。

渋柿のような尿の匂いだ。「どうして、ランパンすか?」

「ああ、これ。アメリカのダディがこんな格好でプールサイドに居たんで」

「アメリカのダディと言えば、叔父貴さんはJ・ニコルスンに似た所ありますね」

「はあ、光栄だな」 膝付いて俺に向き直った。「俺にあんたの後汁啜らせてくれないか?」 

俺は見振った。こんな事をさらりと言ってのけるとは、M気がある御仁なのか。

俺も、素直にまだ仕舞いきれない逸物を男にさ向けた。男は俺の鈴口の雫を舌に転がした。

 

それからゆっくり俺の肉茎を頬張っ行くのだ。男の粘膜に俺の肉棒が吸われて行く。

「すぐ帰るなら、俺に構ってくれないでくれよな」 

男は魔羅棒を銜えながら首を横に振った。以外にも、小気味のいい展開だ。

無視を決めた男が俺の魔羅を銜え込んでいる。西側から男が歩き来る。

すぐさま男の行為を阻止しては、俺沽券に係る。

そんな奇妙な納得にされるがままに立っていた。

男は猫の舌の様に俺の魔羅棒を舐め続ける。

歩いて来る男が、ポロシャツを脱いでランニングにお椀を伏せたような盛りあがりの胸を誇示して、

歩き寄ってくる。俺と男の狂態を釘打ったように見定めている。

胸からスチールの鑑識票がぶら下がっている。

 

嬉しげに見やって、アンパン帽を後にずらして

サイドポケットのある作業ズボンの股間を撫で込んだ。

肉太い男だ。無精髭が嫌らしい男の色香を助長していた。

俺はどうして何故か、アンパン帽を向かえる態勢に腕を動かした。

アンパン帽は待っていたとばかりに、俺にキッスを求めて来た。

肉桂の味のするキッスだ。俺は鑑識票の玉鎖を辿ってトップを引き出した。

GINJIと刻印されている。文字はそれだけである。

裏を向けるとGANTAROWと刻まれている。

どちらの名がこのアンパン帽の名前なのだろうか。俺の魔羅棒のフェラチオに飽きたのか、

ランパン男はアンパン帽を見上げた。ゆっくり、視線を投げかけて立ち上がった。

 

 「薮田、お前、帰って来ていたのか?」「この通り」「挨拶なしか」

 「特別、あんたに挨拶する向きも無いと思われるんでね」「相変わらず口の減らない野郎だな」

 「お互いな」 旧知の間柄か。即発とする喧嘩腰ではないし、慇懃な策略でもない。

この二人流の挨拶と見受けられた。

「粋なお兄さんと遊んでいる場合じゃないぜ。桐木、お前さんに尋ね人や」

「ここにか?誰や?」「社長と一緒だから分かるさ」

「なんや、社長来ているのか」「桐木の余暇の方法なんて先刻、ご存知らしいぜ」

 

「お前の入れ知恵だろうて」「先人を待たす事は無いさ。早く行かんと社長の気の短さは」

「分かっているよ。お前から・・・」「お前には分が無いって言う事だ」 

桐木は服を整えて、帽子を被って未練ぽく目線を預けて砂の斜面を下って、

浜に出て波打ち際を西へと走り入った。「いいお尻の形されていますね」

「ガタイも確かにな。でも、それだけの男さ一回抱いたら飽きが来なさるさ」

「賢人と言います。薮田さんでしたね」「藪田です。よろしく」「あの方と同じ組織の方で?」

 

「社長と言うのはかって二人が属した会社の取引先の社長でしてね。

直接関係は。桐木とは別れて、俺は金沢に行ってましたんで」

「そして、お帰りになった」「済み慣れた所がやっぱいいもんすからね」 

薮田は胸ポケットからタバコを取り出した。

上手そうに吸って、海風に煙を棚引かせた。

「六尺が似合っているな」「やっと、肌に馴染むようになったと言いますか」

「六尺を締め込むには強い何かに惹かれたか何かだな」「ええ、まあ」

「ストックは無いかな。俺は、あの社長を案内して来たんで、何も用意していないんだ」

「持ってますよ」

俺はあのまま、桐木と藪田が他人で三人で事が進んだ時の、果たされなかった展開を絵に描いた。

ランパン男(薮田)はアンパン帽(桐木)の股間のジパーを下ろして、

その中のものを掻き分けた。客観的に見ればかなりエロだ。

目前の男の淫なる行為は。のっけから破廉恥なゆらぎを感じさせられる新宮だ。

日差しはハイヌーン時に熱くなっていた。 

さすがに、ビーチではこのまま痴態を演じる訳にはいかない。

竹垣の破れから背後の松から雑木林と続く中に入った。

ランパンの男はランパンの股間を慇懃に濡らしていてた。

日溜りの刈れた草地の中にアンパン帽がすっ裸になって、その草臥れかかっている、

張りの失いつつある肉厚な裸身見よがしに見せて、枯草から芽吹く新草の上に犬型に伏した。

待てないらしい。   

俺の顔色を伺い、ランパンの男が欲情の目を向けた。

服従心を勝手に決め込んでいるのか。俺は、頷いた。

ランパンを脱ぎ捨て、切れ上がった厚い臀部を見せてアンパン帽の男の背後目掛けた。

新宮が淫乱にさせるのか、この場の3人が淫行好きなのか。

早くもランパンの男が、アンパン帽のアヌスを目指した。

「あむむ!む」辺りを憚られるようにアンパン帽は悲鳴た。

俺も待ちきれなかった。ランパンの男のアヌスに前戯もなく突進した。

「うむむ」 ランパンの男が唸った。ぐいぐいと俺の熱い魔羅棒を吸い取って行く。

俺はランパンの男とピストン挙動を合わせなくてはならなかった。

二人がアンパン帽の男の上で息を整えるのだった。

背中に太陽が熱い。草もその光線を浴びている。地面から湿った地熱のようなものを感じた。

 

「は?」 藪田が何か問いかけていた。薮田は俺のあまり締め込んでいない、

紺地に白い纏散らしの六尺褌を手馴れた所作で締め込んだのだ。

その筋肉質の裸身が傍らにあった。「付き合っている奴は居るかって聞いたんだ」

「いえ、今は居ないすよ」

 「充電期間だと言う訳か。今まで何も無かったって事は無いだろうからな」

 「ええ、まあ」薮田は煙草を咥えている。愛煙家だ。「なんでアンパン帽ですか?」

 「草野球の審判」しているんで、間に合わせさ。車にこれしか帽子は無かったんでね」

 「はあ、じゃあ、野球されていたんですね」「まあな」 煙草を砂に埋めた。「可愛い子が来たぜ」

 

藪田に向かって西側から、やけに白いボタンダウンのシャツにキナリの綿パンの

凛とした若者がやって来た。童顔だ。スポーツ刈りに笑顔が可愛い。

圧縮したような偉丈夫な体躯を誇っている。ショートブーツが砂を蹴る。

俺らの方向に寄り来る。「ちは。あの西に居る人に頼まれて。

アンパン帽を被った人を見つけたら戻るように言ってくれって。伝えましたよ」 

少し息を弾ませている。「それはどおも。じゃあ、短い間だったけど、俺は戻らなくては」

「いいすよ。どおも。また会いましょう」「お邪魔したな」 

薮田は六尺褌を外した。それを簡単に皺伸ばして畳んだ。手短に着衣して行った。

 

俺は、立ち去らぬボタンダウンの童顔のまの当たりに陣取る、

頑丈な綿パンの下半身を見定めるしかなかった。「じゃあ、な」「ええ」 

薮田は西へと戻って行った。予期した展開は無かった。

あれから先の。何故この童顔は立ち去らないかと見上げると、好意な目で俺を見下ろした。

股間の中に息づく肉茎の突起を認めた。「荷物は無いのか?」

 「様子を見に。兄貴のような人が来ていないかと」「上手言ってくれるな」

 「あの人」「居合わせただけだよ。気にしていたら、余計な心配だぜ」 

 俺は大腿部を辿った。弾性が張りを持ってそこにある。

 「一緒に居て」「お前を俺は待っていたのかもしれない」「ありが・・」

 童顔は、股間に手を受けて伸び上がった。言葉は途切れた。

 

レリーフのある幅広の茶色のベルトにキッスをした。

尻に手を回すと肉感的な臀部の膨らみが俺の感性に満足だと捕らえられた。

俺はこいつを離してははいけないかもしれない。新宮がくれた情趣かもしれない。

俺は童顔を見上げてキッスを委ねた。童顔は腰を低めて、

俺の顔を手で挟んで粘っこくキッスをして来た。

そのまま俺を抱いて砂に膝を付いた。

「嬉いっすね。始めての新宮で兄貴さんのような人に巡り合えて」

「始めて」「昨日店で聞いたばかりで」「どこで?」「RADIO BOYSでです」

「良く行くのか」「最近は」RADIO BOYSは筋トレしている若者が主体の店である。

こいつならば持てるだろう。

でも、もうこいつをその店には行かせたくはなかった。

もう。行くとしても俺と一緒だと。

 

俺も兄貴と遇った時は、こんなに可愛かったのだろうか。

そして、兄貴は俺を占有しょうと思ってくれたのだろうか。

こいつを知る事で兄貴が今までしてくれた事が有難く思うようになるのだろうか。

夏を待つ春風が俺にこの男を運んでくれたと歓待する気分であった。

「俺で良いのか?」 童顔は、ゆっくり俺を見上げた。

そして、視線を合わせて、ゆっくり首を横に振った。思わせ振りだったのか。

それから、笑い出して、渚に走り行った。その後を追ったがダッシュを決めてくれている。

砂地の上の運動に慣れたフットワークだ。足が砂を捕えていた。

俺が、足を砂に取られて、よろめいた先に、東から来る男に童顔が持たれかかっていた。

東から来た男は片腕で童顔を引き寄せて、

誰が童顔を追って来ているのか見定める顔を向けていた。背中がやけに熱くなって来ていた。

 

 つづく

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