裏版「こちらユグドラル警察署」
番外編・「愚者の祭典」
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<1:本当は持ち出し禁止のはずです>e
事件に関して、物的証拠が上がると、当局はこれを押収する。
「ああ、終わったのか、××企画の家宅捜索。なにか証拠上がったか?」
「…それに関してなんだが」
××企画には、わいせつ図画販売の容疑で当局の手が入った。中でも「人気」だったのが、有名人のそっくりさんを起用したアダルトビデオだったのだ…すぐさま、アレスの元で問題のビデオが上映された。何でも、それに起用されているのが、広報係員でアイドルもやっている、しかもアレスの恋人のリーン(のそっくりさん)なのだ、そうだ…
「…」
「有名となれば茶化したくなるのが犯罪の心理なんだろうが」
「でも、一本きりみるんだったらまだ楽しみもあるだろうけど、こういうのをずっと調査名目で見るやつらは大変らしいよ、しまいにゃ目はちかちかするし」
「…」
アレスは、ジッと腕を組んで、ブラウン管を見ていたが、ビデオが終わってやおら、立ち上がった
「で、警部?」
「…下らん」
操作員はその時、リーンが影でこんな扱いを受けていても、彼女に対する愛情にはかわりないものなのかと言う、あさはかにも思える感慨を持った。
「このビデオをとったやつは、本当にリーンを知っているのか」
「まあ、有名人ですからねぇ…」
「リーンはあんなに胸は垂れていないし、嫌らしく喘ぎもしない!」
「…は?」
操作員があぜんとするのをしり目に、アレスはつかつかと部屋を出て行った。「…次のニュースです。
昨夜8時頃、++にあるビルで爆発事故がありました。…このビルには、先日、わいせつ図画販売容疑で家宅捜索を受けた××企画の、事務所兼スタジオが入っていたと言うことですが、、当局は捜査の一環であるとのコメントを出しております」---
<2:おいしいもんですなぁ、ではまた。>e
警察官にも、私の時間はある。それは場所がユグドラルであっても変わりはないのだが、えてしてその私の時間も、事件とあればなくなるのが運命…
追い詰めていた犯人の潜伏場所が判明した。すぐさま、精鋭による突入作戦が取られたのだが…
「なに、アーサーが行方不明?」
「というか、今どこにいらっしゃるかはっきりしないのです」
「それを行方不明と言うのだ。心当たりは探したのだろうな?」
「はい、御自宅はもちろん」
「まあ、休日は誰にも邪魔されたくない心理は分からないでもないが、連絡がとれないと言うのもなぁ」
オイフェ課長が唸ったところで、セティが駆け込んできた。
「ああ、いいところに来たセティ、アーサーの居場所、わからんか」
セティは、少しく憮然とした顔をして、それからあっさりと
「心当たりはありますよ」
と言った。ノートをめくり、電話を取り、チチチチ、と番号を押す。
「…はいこちら警察で…そちらに…おりますか…? ああ、そうですか、では大至急と言うことで」
「いたのか?」
「はい、すぐ来ますよ」三十分後。アーサーが、どたんばきんと荒々しく物音を立てながら入ってくる。
「ああ、アーサー、非番の所悪いな」
「いえ、それはかまわないッすけどね」
オイフェの言葉に投げやりに返して、アーサーは、「では出撃しようか」とにんまりしているセティの胸ぐらを捕まえた。
「テメー、なんであそこの電話番号なんて知ってるんだ!」
「それは、ホテルというのも犯罪の現場になりうるからな」
「それだけかよ!」
「…それに、お前があそこを『定宿』にしていることなど、お義兄さんはすでにお見通しなんだよ」
「ぐ」
アーサーはしれっとしたセティの皮肉たっぷりのいい口に奥歯を噛んだ。怒鳴りたいが…
「…部屋の内線が鳴って、その音にびっくりしてイっちまったんだ!」
「それはそれは …フィーもさぞや失望だろう」
「…いつかお前らの『現場』に突入したる…」---
<3:どういうへまなんでしょう?>w
アーサーが強制召還を受けた大捕物も終わり、アーサー達四人組は久しぶりに自宅で四人揃ってくつろいでいた。「しかし、何だな……お前、シティホテルの方を定宿にしていたのか?」
「ん、何で分かる?」
「当たり前だろう。ファッションホテルには予約なんて制度がないから基本的に宿泊者名簿なんてないんだぞ」セティの言うとおりである。
でなければ呼び出しなんか掛けられないのである。「シティホテルの方が料金高くないか?」
「そーでもないな。泊まりだと安いし、朝食も付くんだぞ」
「お風呂は狭いけどね」
「フィー……何もそう言うこと言う必要ないだろう」アーサーが情けない顔でつぶやく。
「成程な……休憩時にファッションホテル、泊まりにはシティホテルを使い分けるのが賢いやり方だな」
「それもあるけど、俺、ファッションホテルのベッドってどーも好きになれないんだよ」
「? それはまたどうして?」
「ベッドが柔らかいとなあ……突きづらいんだよ、ものすごく」ドガッシャーン
盛大な音を立ててフィーとティニーがすっ転ぶ。「どーも腰が安定しなくてなあ……そう思わないか?」
アーサーの言葉にセティは、冷笑を浮かべた。
「? ……なんだよ?」
「フッ……私はそんなへまをしない」
「なんだよー! それ、どういう意味だよ! やな奴だなー」ガン!! ゴン!!
セティとアーサーの頭が盛大にはたかれる。
フィーがお盆で強打したのだ。
頭を抱えてうずくまる二人。「あんた達ねえ、何しゃべってるのよ!!」
「セティ様……大きな声で恥ずかしいこと言わないでください……」
<4:密室はホテルだけにあらず。>w
警察官はアーサーやセティみたいな十二聖戦士一族ばかりではない。
市民達がユグドラルシティのために働きたいという崇高な思いと共に、警察官として働く人たちも多々いる。
そんな人たちはクラスとしてはソードファイターやソシアルナイト、ソードアーマーなどの下級クラスであり、仕事は地域課に属し、交番という詰所で市民達の生活を直に守っている。
そして、昼夜を問わず、交代でパトロールにでているものである。グランベルエリアのパーハラコロニー。
ユグドラルシティの首都として名高いが、結構自然も豊富なところである。
その自然は公園として機能しているが、公園周辺は駐車車両が多いのと、不審者の温床となっているので、重点的にパトロールを命じられている。そんな警官の一人が、とある夜にパトロールをしていた時、かなりの駐車車両に辟易していたのであるが、その車両の中に、車内灯がついているのが一台あったのである。遠目から確認すると結構な高級車で、もしかすると、と思い忍び足で近づく。
そして、車内をのぞき込む。「…………こ、これは…………」
警官が絶句する。
一週間後、その警官は階級が上がったものの、シレジア分署所属のオーガヒル駐在所の一つに転属されていった。
「なあ、あいつ一体どうしたんだ?」
「知らないのか? どうやら聖戦士一族の誰かが、車内でよろしくやっている所をのぞいたらしいぞ」
「……あーあ。あの公園は気をつけろと言う噂を無視したから……」とある公園の一角……そこは聖戦士一族のデートスポットらしい……。
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<5:これも、暴走のうち?>w feat e
ホテル・グランドアークバーハラ。
ユグドラル警察の互助会直営のホテルで、内装やサービスが中堅ホテル並みである上、警察職員は格安で泊まれることもあり、利用者は多い。
いましも一室では、休暇を利用して滞在していたアーサーとフィーが、こってりとひとときを過ごし終えたところだった。「疲れた〜」
ベッドの上に、一糸纏わぬ姿で大の字になりながら、心の底からの叫びを上げるアーサー。
その横で、同じように一糸纏わぬ姿で、うっとりとはしながらまだまだ元気いっぱいの様子を見せるフィー。「何よ、これくらいで音を上げて」
「何よじゃねえだろ……これ以上は逆さにふっても何もでねえぞ!」
「あたしはまだ大丈夫だもんね」
「……昨日から一箱使いつぶして何を言いやがる……」箱の中身が何なのかは、二人のプライベートのため言及すまい。
「この前の暴発のカリもあるんだからね。まだまだ頑張ってもらわなくっちゃ」
その言葉と共に、アーサーの頬に唇の一撃。彼のあきれた表情が、少し緩むのは気のせいか。
「根に持ってやがるなあ……」
「当たり前じゃない……だから、ね」
「わーったわーった。あと一回な」そう言って二人、身体を絡ませる。
だが。いよいよ興が乗ってきたときに、アーサーの身体に異変が起きる。「……げ、ま、まずい!!」
「何よぉ……どうしたのぉ……」腕を肩に絡めながら、訝しげなれど、鼻にかかった声を上げるフィー。
それどころでないアーサーは、必死になってフィーを身体から離そうとする。絡まった腕を引き剥がす様にすると、フィーは甘ったるい抗議の声を上げた。「ちょっとちょっと……もうちょっとなのにぃ……もぅ」
「馬鹿野郎!! このままだと魔力まで暴発しちまうぞ、怪我したいのか!!」フリージ系の一部の家系に伝わる特異体質で、肉体的、精神的に極限状態に陥ったとき、体内の魔力が暴走を起こすことで、反射的に自己防衛をしようとするのだが、弱点として、こう言ったときにも発生してしまうのだ。
アーサーがあのように叫んだ途端、魔力の波動がアーサーの身体全体から迸る。ドドドドドォォォォォォォォォォォォォン!!!
大音響と共に、崩壊する部屋。フィーも思わず黄色い声を上げてしまう。
「きゃあああああっ」
言うまでもなく、同じフロアにいた宿泊客は騒然となった……。
幸い、二人や宿泊客に怪我はなかったが、周囲の部屋の窓ガラスが粉砕されるなど、ホテルに対して多大な物的被害が生じたのである。
当然のごとく、オイフェ課長から大目玉を食らい、二人とも山のような始末書を書かされる羽目になったのである。「何も出ないからって……どうして魔力なんか出すのかなぁ……」
「う、うるせえな! お前もそこまでさせんなよ!!」
「何よ、それもこれもこの間アーサーが……」
「その話はもういいだろ!!」
「良くないっ! もう、ばかぁ……」始末書を書いている最中、二人はこう言い合っていたとかいないとか。
(作者からの一言===こんな状況で生まれたのが、あのマーリンだとは……セレンも大変なことになりそうだ。)
<6:それも、暴走のうち?>w feat e
アーサーがホテルの一室を破壊したちょうど同じ頃。
例のグランドアークバーハラでは、別の階に、セティとティニーが同じように濃密な時間を過ごしていた。
セティの、丁寧ながらも大胆な愛撫に、夢見心地な表情のティニー。「セティさまぁ…………もう、もう……」
「しょうがないなあ……こんなところで音を上げてどうするんだ?」
「でも、でもぉ……」
「ほら、ちゃんと言ってみてごらん、どうしてほしいか、ね」
「い、言えないですぅ……」丁寧な口調でありながら、追い詰める言葉に、ティニーは、身体も精神も灼かれるかのような錯覚に陥る。
身体中から発散される、ちりちりとしたきな臭さ。
セティはそれに気がついてはいたが、 そのゆえんが思い当たれず、てっきり自分の技術故かとたかをくくり、その愛撫を緩めなかった。
一旦手を止め、煽る様に見つめ、言葉を紡ぐ。「それなら……止めて欲しいのかな?」
「……い、意地悪ですぅ……」
「だったら、正直に言ってごらん?」
「……え、えと……そのぉ……セティさまぁ……」潤んだ目で見上げ、婉曲的におねだりするティニー。
その表情を見て珍しく、意地悪そうに言うセティ。「そうか……まだ、足りないのかな?」
「お、お願いですぅ……く、くださあぃ……」
「何を……かな?」
「セ、セティさまぁ……!!」声が裏返りそうになるのを必死に押さえるティニー。
さっきからの精神的な責め苦で、限界近くまでに追い詰められる。
その表情を見て、満足したセティが、ティニーに言う。「分かった。そこに手をついて……そう」
後ろから近付き、そっと重なる。ティニーは顎を引いて、充たされる感覚にふるえる。
「……くふっ」
「いい子だね、ティニー」勤務中なら絶対に見せないセティの心底から意地悪そうな声。しかし、これから先の、宝物なるこの女性の媚態をより鮮やかに目にきざみたいなら、勢いじらしもしたくなるものだ。
のみならず、掠れるようにはわはわと息をするティニーに、こんなことを言う。「……はあ……はあ、あ」
「ティニー、そう言えば」
「……はい」
「こっちはもう、慣れたかな」セティはついと、ぴったりと重なったあたりの少し上を、指で撫でた。ティニーの身体は反射的にふるえ、自分を充たしているものにえも言わぬ感覚を与える。せつなそうなその動きに、セティは興にのった声をかける。
「……こっちも、欲しい?」
「イヤです……そこは……普通じゃないです……」
「普通だよ。君は宝物だ、どこもかしこも私のものにしたいよ」
「……」
「大丈夫」ふるふると頭を振るティニーなどそ知らぬように、セティは、自分の指を一本、口に含んでから、おもむろに、かの「別の道」に、宝物なる言葉とは裏腹に、遠慮会釈なく押し込む。
その時。電撃のような感覚を植えられたティニーは高い声と同時に、全身から何かをほとばしらせた。「きゃああああっ」
正体不明の爆発に、宿泊客がパニックになりかけた時、再び、同様の爆発が、別の階でおこる。
現場になった部屋では、条件反射となったマジックシールドが解除されたセティが、くったりと身を縮こめたティニーの後ろで一瞬失った気を取り戻したところだった。「ま、魔力暴走……まさかこんなところで……や、焼き切れるかと思った……」
このてん末に関して、セティ達に対しても山のような始末書を言い付けた後、オイフェ課長はため息混じりにこう言ったそうである。
「……あいつら、当分あそこには出入り禁止だ」