99’第一回日向灘ジギング大会

 元旦そうそうに出港してアカハタ1匹というさんざんな釣果で
「今年は春から縁起が悪いや。」と気落ちしてまもなく、慶門丸完全復活の情報が入ってきた。見に行ったところ、なんと絨毯とソファーのリビングルーム付きではないか。「こりゃあいいわ。」とメンバーに即TEL。
 船長も、「復活記念に船賃いらんからみんなで遊ぼう。」と、うれしいことを言ってくれる。

 当日、集まったのは5人。みんな準備万端で4本もロッド持ってきてる人もいる。
 昼出港予定だったのだが、みんな気が早く9時ぐらいから近くの波止場でエバ釣ってウオーミングアップしてる人もいる。結局2時間前にみんな集合して船に乗り込んだのであった。


 ところが待っても待っても船が出ない。どうやらセルが回らんらしい。部品の取り付け違いらしく、直ったのは既に4時を回っていた。

 一同唖然。既に大海原へこぎ出していたみんなの魂はそのまま沈没又は漂流していた。

 一週間後、船長の心配りで再び乗船のチャンスを得た5人のジギンガーは、既にセットしていた1週間前のタックルを握り、再び宮崎港へ集結したのであった。

「第一回日向灘ジギング大会スタート!」

 当日は雨、寒い。魚の気配も昨日まではなかった。しかし、
「今回は、船長のご配慮によりなんと船賃がいらない。本来は5人だから¥35,000かかるのだ。そこでだ。今回は、一つ勝負をしようではないか。」

 誰から出たでもないこの言葉が5人のジギンガーの頭をたぎらしてしまったのだ。ルールは以下のとおり。
■ターゲット  「青物」 ぶり・ヒラマサ・カンパチ に限定。
■審査内容   自己の釣果のうち上から2匹までの合計重量で1位を決める。2位以下はな        い。
■参加費用   1人¥5,000−                         ■ペナルティー フックに餌を付けたらだめ。ランディングしてあげる振りをして、リリース        してあげるのはだめ。
■賞  品   5X5,000ー=25,000−相当の商品を好きな釣具屋であとで買っ        てね。
                                                                               以 上。
5人のジギンガーとは、
  遠く高千穂からお越しの「M氏」。
  郵便局の「S氏」。
  某楽器店の「ABさん」。
  日向の「師匠」。
  それと私、「大草」。
の日向灘ジギング信用組合(仮名)の5人である。

ちょっと待った!

 船長である。すっかり忘れていた。
「俺も混ぜてよ。俺は船を出すんやし、操船もせにゃならん。ハンデがあるから。・・イイヤロ?」
 船長の門脇氏は1人でいつも大物を釣ってる凄腕のジギンガーなのである。みんな血走った目で船長を見返し、
「いいわあ。」と強敵の新たな出現を心より歓迎した?。
かくして、5人のジギンガーと1人のキャプテンは大海原へと出撃していったのであった。



「とりあえず。鵜戸山沖から攻めてみようかねえ。」
 船、いやキャプテン門脇の言葉に皆賛成した。
 前日までの釣果で唯一大物の雰囲気のある場所だ。確かにここしばらく不調ではあるが、確率的にいいところだ。皆、いつもより大きめのジグをセットして、船の止まるのを待った。
 誰かが言った「戦闘開始!。」 
 船が止まる前に皆の5本のロッドは既に潮上約斜め下を指しており、それぞれの思いの詰まった、カラフルなナマリは、ほぼ同時に急降下していった。
約3時間あたりすらなし。しかし今日はみんなどこか違う。

 このままじゃみんな疲れるだけになってしまう。楽しい釣り大会が険悪な賞金争奪戦になってしまう。と危惧を抱いた私は、
「みなさん今日はどうしちゃったんでしゅか。?なンか違いましゅよー?」と、ちゃかして回ったところ、
 あまり相手にしてもらえない。・・・・トホホ。で、一番後ろで陣取ってる、M氏としばし休戦をはかった。

M氏:「今日もシブいっすねえ」
大草:「誰が釣るんでしょうねえ」
M氏:「ニリ1匹で勝負決まっちゃいますねえ。」
大草:「1キロのカンパチ釣って25、000−もってかれたら、みんな腹立つだろうなあ。」
M氏・大草:「・・・・・?」

そうなのだ。人間は夢を抱き、夢を求めて生きているのだ。

「1キロのニリに25,000−もっていかれてたまるか!!!」
 挫折しかけたジギンガーに再び火を付けたものは決してかっこよくない「1匹のニリ」であった。

 それからしばらく沈黙の戦闘が続いた。落としては巻き落としては巻き・しゃくって・しゃくって。
「場所移動!」「撤収!」「場所移動!」「ベイトは多いぞ!みんながんばれ!」
 キャプテン門脇はみんなを励まして、ここぞと思うポイントにみんなを連れて行く。
あれは30数回目の流し(多分)だったろうか。 キャプテン門脇が叫んだ!

ひっとおお!うむむむ。

 根がかりであった。
 しかし、憔悴しきったみんなの魂を再び活性化させたのは彼の魂の叫びであった。
 ありがとうキャプテン門脇!みんなこれで後半を戦える。


 「よっし!ひっとお!」
 最初にヒットしたのは「師匠」だった。かなりひいてる。これで決まりか?カンパチやったら3キロくらいかなあ。やっとこさ上がったのは2キロのシブダイであった。
 キャプテン門脇曰く「市場に持っていったら2万はするわ。」「てっげな旨いっちゃが。」
しかし、外道は外道なのである。今日は、2キロのシブダイより1キロのニリの方が高級なのである。
 みんな、うらやましいやら、ほっとしたやら、複雑な心境でゲームを続行。

 しばらくの移動で、鉄塔の近くの瀬までやってきた。そこでの2回目の流しの時、ついに今日のゴールデンタイムがやってきた。

4尾同時ヒット!みんなの竿が弧を描く。

 最初にあげたのは「師匠」、2キロぐらいのヒレナガニリだ。となりの大草にはヒットせず。そのとなりの「ABさん」にも同じクラスのニリがヒット!またまた後ろの郵便局の「S氏」もヒット!さらに大草の後方ではキャプテン門脇がヒット!

 既に置いて行かれた感のある大草だったが脳裏には、「小さい群の下にはでかいのが居る」というチャーマス北村氏の本に書いてあった一言であった。

でかいジグを使い底をまさぐる。

 結局裏目に出て、結果0.5キロのミニヒレナガニリが釣れただけ(しかもスレ)であった。

 1匹目をゲットした「師匠」は素早く2尾3尾とゲットして行く。周りの人も確実に数をこなして行く。大草はいまだ底をまさぐってる。周りの人が「魚浮いてるよー。」っていってるのに。やはりB型である。上の層の80グラムのジグに、底のジャックナイフの200グラム。まさに天と地の差がありました。

 いつのまにやらピークは過ぎ去り、気が付いてみたら、マラソンでトップ集団が1つあって、遠く離れて1人いる様な感じになり、トップ集団ではまたしても1匹でかいのが来れば決着するような状況になっていましたとさ。・・・・・

 そのあと、でかいイトヒキ鰺が2枚上がって本人は「鰺やから青物やろー・いいやろー。1キロマイナスでもいいから。?」といいましたが、却下。いくらトレバリーでも規則は規則。 他人には厳しくなってる大草であった。

 かくして「99’第1回日向灘ジギング大会」は無事終了。みなさん初釣りを心ゆくまで楽しんでお帰りになりました。
 お疲れさまでした。今年もよろしく。
                                  (おおくさ)


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