かえるさんレイクサイド (19)



えるさんは、しばらくかえる股ジグソーパズルで遊んでいたが、16ピースのパズルはすぐにできてしまうので、散歩に出ることにした。本格的に夏だった。うっかりするとからだが干上がってしまう。かえるさんは水筒を下げて出かけた。


げを選んでヘルロードを進んだが、暑さでかえるさんのおなかはすぐに乾いた。すずしい顔をしてみた。少しすずしくなったような気がした。でもそれは気のせいで、やっぱりおなかは乾いていた。おなかを湿らせると、水筒の水は残り少なくなった。喫茶かえるまでもたないかもしれない。かといって、家に帰るには遠くまで来すぎてしまった。


えるさんがすずしい顔をしながら途方にくれていると、突然、水が降ってきた。すごい勢いだった。顔にびちびち当たった。痛くてたまらない。1時間の雨を一瞬に圧縮したようだった。かえるさんは思わず声を上げた。


、鳴きよった」「かえるの面に水かけたら鳴きよった」「けろっとしてるんちゃうかったんか」「国語のことわざ、うそやん」「馬の耳に念仏言うたら拝むで」「猫に小判やったら感謝するんか」「豚に真珠やったらどつかれるんか」「残りもやってまえ」かえるさんがそばの茂みに跳び込もうとしたちょうどそのとき、もう一度、水が降った。アスファルトでしぶきが跳ねて、かえるさんにかかった。今度はちょうどいい量だった。


げよった」「せっかく水やったのに感謝せえへん」「猫に小判や」「豚に真珠や」「かえるの面に水や」「意味ちゃうやろ」「この辺のかえるだけ別なんちゃうか」「かえるの面がちゃうんや」「おまえみたいな顔ちゃうか」「おまえじゃ」「かえる」「おまえこそかえるじゃ」「水かけたろか」「あほ」「あほはおまえじゃ」「おまえはかえるじゃ」その頃かえるさんは茂みづたいに喫茶かえるに近づいていた。顔がすずしくなっていた。





第二十話 | 目次





1