ナイト・レンジャー
NIGHT RANGER

GREATEST HITS 1989 MCA Records Inc.

(バンド紹介)
 1981年結成。1989年解散。80年代中期を代表するツイン・ギター編成のアメリカン・ハードロック・バンド。1997年にオリジナル・メンバーで再結成し現在も活動しているらしい。

色あせたジューク・ボックスがよく似合う
女泣かせの切ない懐メロハードロック

(購入日:1999-03-27)
 すごくベタな響きのバンド名。なんてったって「ナイト・レンジャー」だもんな。普通アメリカのハードロック・バンドには荒削りでスカッと抜けているような雰囲気があるのだけど、このバンドにはそういったところがあまり感じられない。それに、ゴージャスなキンキン声のコーラスがあるわけでもないし、ツイン・ギターが特に効果的に使用されているわけでもない。音楽的なコンセプトが甘いというか、はっきりいって特徴がないというか、実にアクのないバンドである。しかし、そういったアクのなさが、このバンドをかえって親しみやすいものにしている。日本でもすごく人気があったというのがよくわかる。ところで、このベスト・アルバムは1989年に発表されたものであるが、今年(2000年)に入って「Best Of Night Ranger-Millennium」という新たなベスト・アルバムが発売された。まったく……

 さて、ジャケット。工場をバックにメンバーがずらっと並んでいる。このジャケットをパッと見ただけでは、イマイチバンドの方向性がよくわからないのではないだろうか。だいたいメンバーの衣装と髪型に全く統一性がない。特に真中のヒゲ・サングラスのおっさん(たぶんドラム担当)が妙に浮いているので笑える。本当にアメリカン・ハードロック・バンドなのか? 一つのスタイルに全員そろえればいいってもんじゃないけど、このバンドには明確なコンセプトが全くないことを、このジャケットは如実にものがたっている。でも、当時けっこう売れんだよな(笑)。

01.(YOU CAN STILL)ROCK IN AMERICA 1983 (4:14)
01.(JACK BLADES/BRAD GILLIS)
 他のアメリカン・ハードロック・バンドと比べて全然パンチ力がないが、このベスト・アルバムの中では一番ダイナミックな曲といえるだろう。だからこそ1曲目に選ばれたにちがいない。しかしながら、このバンドにはこういった激しい曲は似合わない。ナイト・レンジャーにはメロディアスでしっとりとした曲が一番しっくりとくる。はっきりいって嫌いなので、私はこの曲をいつも飛ばしてしまう。

02.SING ME AWAY 1982 (4:08)
02.(KELLY KEAGY/JACK BLADES)
 流れるような切ないメロディーが心地よい一曲。いつも私はここからこのベスト・アルバムを聞き始める。

03.GOODBYE 1985 (4:18)
03.(JEFF WATSON/JACK BLADES)
 なかなか味のあるバラード。これこそがナイト・レンジャーの真骨頂である。

04.WHEN YOU CLOSE YOUR EYES 1983 (4:17)
04.(JACK BLADES/ALAN FITZGERALD/BRAD GILLIS)
 このアルバムの中で一番気に入っている曲。派手すぎず地味すぎず、女泣かせの切なさが全開である。

05.SISTER CHRISTIAN 1983 (5:01)
05.(KELLY KEAGY)
 ナイト・レンジャー最大のヒット曲。しかし、そのワリにはあまり特徴のない地味な曲である。ナイト・レンジャーというバンド名を知っていても、彼らのヒット曲をすぐに思い浮かべることができる人は相当少ないのではないだろうか。

06.DON'T TELL ME YOU LOVE ME 1982 (4:20)
06.(JACK BLADES)
 こういう激しい曲がしっくりとこないハードロック・バンドは本当にめずらしい。なんか無理して大騒ぎしているような感じ。

07.SENTIMENTAL STREET 1985 (4:10)
07.(JACK BLADES)
 センチメンタル・ストリートという大失笑もののソング・タイトル。曲調もなかなか気恥ずかしいものがある。とにかくギターが熱い。

08.THE SECRET OF MY SUCCESS 1987 (4:26)
08.(JACK BLADES/DAVID FOSTER/TOM KEANE)
 出だしの安っぽいアレンジがいかにも80年代というハードな曲。やっぱりこういうのは似合わないなあ。

09.RESTLESS KIND 1988 (4:39)
09.(JACK BLADES/KELLY KEAGY)
 メロディアスなバラード。ナイト・レンジャーにはピッタリとはまります。

10.FOUR IN THE MORINIG 1985 (3:51)
10.(JACK BLADES)
 出だしのところでのんびりした曲なのかと思いきや、短時間でめまぐるしく展開が変わる曲。けっこう気合が入っていていい感じ。

11.EDDIE'S COMIN' OUT TONIGHT 1982 (4:24)
11.(JACK BLADES)
 とにかくカッコ悪いキーボードが炸裂するボーナス・トラック。今どきのミュージシャンは絶対にそんなプレイはしないだろう。いや〜80年代だ。

12.RUMORES IN THE AIR 1983 (4:32)
12.(JACK BLADES)
 これもボーナス・トラック。可もなく不可もなくといったところ。

 どの曲もこれっといえるような特徴がなくて、おまけに基本的に地味なので、イマイチコメントしにくい。でも一つだけはっきりといえることは、ナイト・レンジャーのメロディーには、どこかノスタルジックでセンチメンタルな響きがあるということだ。そんなに古いバンドじゃないのにもかかわらず、どの曲にもメロメロの懐メロといった趣がある。そういった意味で、ナイトレンジャーには50年代風の色あせたジューク・ボックスよく似合う。まさしく女泣かせの切ないハードロック・バンドである。

 特に思い入れがあるわけでもないし、好きなタイプのバンドとはいえないけれど、たまに聞くとこのベスト・アルバムはけっこうよかったりする。それに、このベスト・アルバムはアメリカのディスカウント・ショップでたたき売られていたもので、買って損をしたとは思っていない。しかしながら、当然、オリジナル・アルバムは絶対に買わないだろう。(Psyc)


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