ガイナへの手紙 ※かなり、厳しい論調です。映画の酷評は見たく無い、という方にはお勧めしません。 追記1 97-07-29

 本日(7/19)、東京銀座の松竹セントラルの初回にて映画、拝見させていた だきました。  庵野監督ならびにスタッフの方々本当にお疲れさまでした。  さて、映画を見終わった感想ですが。  一言で言うなら 「嫌味」。  今回映画をみさせていただき、前回同様、演出・作画・音楽などについては 大変すばらしいと思いました。スタッフの意地というものを強く感じます。素 直に感嘆です。  だが不快感は未だ残ります。  それを少し語らせていただきたいと思います。  そうしないことには後をひきそうで怖いですから。 ***  今回映画を見るにあたって心がけていたことがあります。  一つは「謎にこだわらない」ということ。  監督もスタッフも謎にした部分にはそれほど関心はよせていないようですし、 わかりにくくして奥深さを演出しているだけだとも私は解釈しております。  その点、今回もすぱっと問答無用に「ノリ優先」の物語展開でこれは期待通 りでした。  二つ目は「監督のプライベートフィルムとして見る」ということ。  各種インタビューでもスタッフの方がそういうことを述べておりますし、実 際にもそうであると確信しています。  つまり監督自身の姿と作品との距離が、他の映画やアニメと比べて非常に近 い、極端な話、作品の向こうに監督自身の姿を描かないと理解できないもので あると思っております。この点はテレビ最終2話も今回の映画でも強く感じま した。  そしてその中から見えたことは、結局、「監督は女にふられて落ち込んでい る」ということだけです。 ***  私はおそらくこの映画のラストは「祈り」であると踏んでいました。  「何を願うの?」という20話でつかったセリフをもってきて、シンジの最 後の決断をさせる。そこにある荒廃した世界でシンジは何を見るのか……。  私は、この「何を見るのか」はかなり曖昧に描かれると予想していたのです が、あにはからんや。これ以上無いまでの「ストレート」な表現で描かれてい て正直げっそりしました。  『監督、まだ祈りが足りないよ』  心中でそんな声を上げてしまいます。  まだテレビ版の方が祈りの声を感じました。  まあ、「俺は祈り続けられるほど聖人じゃねえし、あんたらもそうだろ、格 好つけんなよ」と言われればそれまでですが。  その「それまで」を描いた作品。  それがこの「THE END OF EVANGELION」であるとも言えましょう。  「女にふられて落ち込んでいる」という監督の意図は明確に伝わってきまし た。その技量はすごいです。見ているこっちも落ち込みました。監督は意図が 伝わり喜んでいることでしょう。おめでとうございます。でも、気分悪いです。  きっとこうやって観客が嫌悪すればするほど監督自身は落ち込みから回復す るのでしょうが。冒頭で「嫌味」と言ったのは特にこの点にあります。  もう一つの意図は「エヴァブームを終わらせてやる」というもの。  この最終話の映画が伝えている内容はこうでありましょう。  「自分の望んだものだけを都合よく提供してくれる虚構の物語(主にアニ メ)にひたっているのは、他人から見たらグロテスクなことなんだ。そこに浸 らずに、そして他人に慰められることも期待せず、自分のことはなるたけ自分 で面倒見るようしよう。それしかないし、その方がきっと虚構の世界に浸るよ りまだマシだと思う。  「一度はまあ確かに楽しいし、嬉しいし、満足もするけど、そのままじゃい けないんだよなあ。でもやっぱり俺にとっては現実は厳しい。なにより、好き になった女にはふられたのはほんとつらいよ。  「ちくしょう、なんで俺はこんなに立派にいろいろやってきたのに、女って ヤツは理解してくれねえんだ。もういい。やめやめ。祈るのは充分やった。も うおしまい。これ以上俺に変な期待かけんな。  「綾波レイとかアスカとかにみんなはまってるらしいけど、あんな都合のい いキャラは現実にはいないんだぜ。それは監督の俺が一番よーく知っている。 その変の不自然さグロテスクさを充分描いたからよろしく。  「俺のこと悪く言うやつが大勢いるのは知っている。でも、それって勝手な 期待背負わせているだけだぜ。勘弁してくれ。俺は今、落ち込んでるんだから さ……」  「俺のこの落ち込み具合分かってくれよ……よし、これが今回の映画のテー マだ」  明確に上のメッセージ、伝わりました。その点、疑問はありません。 ***  そんな監督にご返事をしたいと思います。  「私はあなたとは友達になりたくない」  つまるところはそれです。  「祈る」とこと、つまり「まあ、いろいろ嫌なこともあるけど、でも何とか したいと思ってるし、それはきっと大事なことだ。それは幻想かもしれないけ れども決して否定するべき幻想じゃ無いんだ。きっとね」  と信念を持って語ることですが。  ラスト近くで確かにこういう流れになりました。  しかし、最後の最後で監督は  「ごめん、でもそんなの俺にはできないや」  と放棄してしまいます。  「まあそうだろうな」と苦笑する人もいるでしょう。  「そりゃないだろ、始めたんだから一生続けてくれ」と怒る人もいるでしょ う。  「えーよくわかんないけど、絵とか綺麗だったし。まあいいんじゃない」と 作品の中から自分の都合の良いシーンだけを記憶に残すことにして、監督の姿 を無視する人もいるでしょう。  私はそのいずれにするか決めかねています。  3番目のものが一番、お互い傷つかずにすみますから良いのかもしれません が、それは結局「みんな私を見て」という監督の意図には反することになりま しょう。  2番目のものはまさに、監督が目指していたテーマですから、怒れば怒るほ ど監督は満足でしょう。  そして、1番目。  これがくせ者です。本当に理解して苦笑しているのか、それとも本当は3番 なのに分かったふりして苦笑しているのか、実際にはよく分かりません。  私としては苦笑したいです。  実際映画の最中何度も苦笑しました。  フィルムの向こうに監督の姿をみて「しょうがないなあ」と呆れながらも、 見せ方が面白いで感心したり敬服したりしました。  しかし、やはりこうして見終わって冷静に考えると、もう苦笑はできません。  監督に言いたいです。  「あんたが祈れないというなら、本当に苦笑できる人などほとんど皆無だ ぞ」  と。  本当は監督だって怒られるよりも「苦笑」された方が気は楽でしょう。でも、 それは結局監督の言う所の形を替えた「母性希求」と同じなのではありません か。  申し訳ありませんが、私はそういう訳で苦笑できません。  その変わり、次点である2番目「怒り」を監督に向けたいと思います。  「あんたとはもう絶交だよ」  「あんたの望む通り、エヴァなんか忘れてやるよ。ふん!」  でもいつか苦笑できる日が来たらいいな、と私は思っています。  それが私の祈りです。 ***  最後に。  私はガイナックスのスタッフの方々に心から敬服します。  その「なんとか面白くしよう」という意地(もはや熱意ではない)に対して 私は、けっして嫌味でなく本気で感動しています。  きっと監督の周囲には監督に対してきちんと「苦笑」してあげれる人たちが いるのでしょう。  人間は捨てたものじゃありません。  監督はそういう人をちゃんと大事にしないといけませんよ。守られているっ てことを自覚して欲しいです。そしてそこに感謝の言葉をかけてあげてくださ い。  私のような単なる一ファン(一応立場を明らかにすると無職中です)に言 われるまでも無い、とお思いかもしれません。  しかし、あなたの嫌味を、「落ち込み」の不快の一部を背負わされた観客に はこれだけをもの申すだけの資格はあると私は思っております。 ***  長々と書いてしまいました。  今は映画より受けたマイナスのパトスにあてられとにかく気分が悪いです。  単に私が睡眠不足なだけかもしれませんが(単なるスケジュール管理の悪さ の問題です)。  監督にもう一言最後に。  「気付いてしまった人にはもしかしたら祈り続ける義務があるのかもしれま せんよ」  以上です。 P.S.  ここまで読んでくださった方に感謝します。  これから見に行く人は「今度の映画は『アキラ』っぽいけどSFでは無く、 ダーク・ファンタジーです。監督の私生活の話も積極的に脳裏にたたきつけて 見ないと混乱しますよ」とアドバイスします。フォースがともにあらんことを。 moriver(東京都在住 24歳) http://geocities.datacellar.net/Hollywood/Lot/6483/ (97-7-19 10:48)
このページ見ている皆様へ 二回見ようと決意するも、駄目でした。気力がつきました。 まさに監督の意図通り「どーでもいいや」って気分になります。 くそ、愛が無いよ、愛がよう。 (97-07-19 10:51)
追記1
 上の書き込みは、結局、
ガイナックスのページでは紹介されずに終わりまし た。  そこで、その後再び、もっと短いメールを送りました所、そちらの方は採用 されました。7月23日分の終わりの方、「07月21日03時16分」のタイムスタン プで掲載されています。  ここにも、もう一度アップしておきます。

(長すぎたせいか、監督を悪く言いすぎたせいか、はたまた、ネタバレしすぎ
たせいか、前回の書き込みが掲載されなかったのでこんどはソフトにもう少し
簡単に書きます(^^;)

 映画、19日の初回(7:10)から東京銀座セントラルで見させていただきまし
た。
 正直、今不快な気分です。それはエヴァを見ている観客に対する悪意のよう
なものを強く感じるからです。その原因は主にあのラストにあります。
 一日たち、冷静になった今は、あのラスト以外はよいかな、と思っておりま
すが、それでも私は「テレビ版」の方が好きでした。
 映像的にはすばらしく、また斬新なシーンもあるので決して「金返せ」とい
う気分にはなりませんが、やはり監督への嫌悪感は未だ拭えません。
 みなさんが書いてらっしゃるように「終わった」と私も思いました。
 いろいろな意味でですが。
 辛口ばかりでしたが25話はすばらしかったですし、庵野監督以外のスタッ
フには敬意を表しております。お疲れさまでした。
 また夏映画のプライベートフィルムの側面をあえて、無視したラストについ ての論考を、「月刊少年エース9月号読感」内に掲載しました。合わせて読ん でいただければ幸いです。 (97-07-29)



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「新世紀エヴァンゲリオン」は、(C)GAINAX/Project Eva.,テレビ東京,NASの作品です。
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