MORIVER'S SWEETEST DIARY (41) 更新日記 (41)

3月 2日(月) 妄想な
3月 4日(水) 銀河鉄道999
3月 6日(金) その後のエヴァ日記(3)
3月 7日(土) 風の音
3月 8日(日) 季節
3月 10日(月) ICQ



1998年3月 10日 (火)  今日は風が強く寒かった。昨日はよい天気だったのに。 ***  ネットで小耳に挟んだ「ICQ」というソフトを入手した。  なんでも、相手の番号を登録していれば、その人がインターネットに繋いで いるかどうかがすぐに分かり、なおかつ、即座に電報のやりとりを交わすこと ができ、さらに、その発言内容まで記録されるという優れものという。  もっとも、まだベータバージョンで、英語版しか無い。  2メガほどの容量があるが、昼間に繋いだら10数分でダウンロードできた。  しかし、使い勝手が分からない。  しょうがないので、YahooでICQの説明についてのサイトを探す。  そして見つけたのがここ。  ICQ '98 Instruction  登録するためには相手番号を知らないといけないのだが、そんな相手などい るはずも無い。じゃあ、なんでそもそもこのソフトを入れたのかとつっこみが 入りそうだが……。  まあ、それはともかく、仕方ないので上のページの作者の番号を登録してい た。すると、間もなくして、その人がネット上につながったことが表示された。 思わず、まだ機能の説明も読んでいないのに、適当にマウスをクリックして、 メッセージを送ってみる。  返事がある。おおお。  ということで、その場で、ICQの使い方をレクチャーしてもらう。ありがた い。その人は香港在住の人で、香港の話も聞かせてもらった。日本のドラマは 放映3日後には、出回るとか、ナイフ騒ぎで有名になった木村拓也主演の「ギ フト」はまだこっちでは見れる、などなど。  かくてICQ第一日目は終わった。  もっとも、今後もこれを使うかは分からない。けれども、普及したらなかな か面白いことになりそうだと思った。 (3/11 1:33)
1998年3月 8日 (日)  生ぬるい季節である。  布団に入っていると寝汗がでてきてしまう。さりとて、布団をはぐればそれ はそれで寒い。思わずパジャマの下を膝までまくってみたりもするが、外見的 にはかなり間抜けだ。とりあえず毛布を腹にはかけている。   ***  だから、というわけでは無いだろうがお腹の調子が今一つである。  時々痛くなる。  こういう時、何かを飲んでお腹を暖めたいのだが、何を飲めばいいのか迷う。  ということで、今さっき自動販売機から「つぶ入りおしるこ」を買ってきた。  妙に薄い甘さのお汁粉だが、濃すぎても喉にくるだけなので、これでよかろ う。  と思っていたら、缶の底の方になって、大量のあずきのつぶと、妙にどろり とした汁が現れた。振りが足りなかったのか。胃はそこはかとなく暖まったが、 今度はさっぱりしたものが飲みたくなってくる。何かを間違えている気もする が、一体それが何なのか分からない。かくて人生は続く。 (23:57)
1998年3月 7日 (土)  今日は風が強かった。ごうっという音が家の中にいても聞こえてくる。  しかし日差しは強かった。春は近いのか。 ***  思い立ち、パーマンのリンク集の更新と、ドラクエリンクを作成を試みる。  不義理にしている人が多いことに気付く。 ***  行きつけのレンタルビデオ屋が改装のために取り壊されていた。  子供の頃に遊んだ公園は、もう長いこと工事中だ。鉄筋でできた象の形の滑 り台は壊され、ぴかぴかの金属製のジャングルジムのような滑り台がとりつけ られた。真ん中に立つ大きな名も知らぬ樹だけが変わらずそこにある。  駅前のラーメン屋は無くなった。また、行く店が一つ減った。  町は変わる。  みな、変わる。  そして築26年の我が家にも、改築しませんかと建設関係のセールスマンが ひっきり無しにやってくる。とりあえず、玄関のドアの立て付けをなんとかし なくてはとも思う。このままじゃ、いけない気がする。 (18:58)
1998年3月 6日 (金)  あ、あれ。もう6日? 早い。なんて時が経つのは早いんだ。 ***  昨夜は大学の先輩らと飲み。朝方まで飲む……というとなんだかハードそう ですが最後の方はほとんど寝てました。半分以上残った「いいちこ」の瓶を抱 えて帰宅。それが今朝。  昨晩は大雪が降るとの報道があったが実際はほんの少し振っただけ。人騒が せな感じである。 ***  夕刊を見ていたら「エヴァンゲリオン再映」の広告が。すっかり忘れていた。 見に行くべきか……行かざるべきか。すぐ見に行く気にはならない。なにせ、 「再放送」だからねえ。ただ、プログラムだけはどんなものか気になる。以前 上映のものよりずっとよい出来だと思うので。 ***  一月以上もほうっておいた、「その後のエヴァ日記(3)思い出」をアップ。  一応義理は果たしたということで。 ***  久々にパーマン・リターンズについて熱いメールを頂いた。やはり僕らぐら いの世代には強烈な印象が残っているものなのかもしれない。  その、けびんさんは「めぞんEVA」でエヴァ小説を発表とのこと。  http://www3.big.or.jp/~shintaro/maison04/e08.html  私の方は更新止まっている状態でますます悪いなあと反省しました。期待に はできうる限り答えたいですから。なんとか。かんとか。 (19:10)
1998年3月 3日 (水)  もう朝だ……日付も変わりました……。  一日空きましたが……まだまだこれから(-_-)/~ ***  昨日、久々に「銀河鉄道999劇場版」を見返した。ゴダイゴの曲で有名に なったあの映画である。  テレビ版と違い、鉄郎が13歳ぐらいになっており、なおかつ、メーテルが 心なしか若く可愛く見える。  そしてこの「999」がリメイクされまた劇場公開されるらしい。まだ見て いないけれども、個人的にはこれは止めて欲しかった。先の劇場版にも「さよ なら999」という続編があるのだが、正直、つまらない作品であった。  旧劇場版は、ほとんどまぐれで傑作になったに近い作品ではとも思っている。 ホイチョイの「私をスキーにつれてって」とその辺りの事情は似ている(滅茶 苦茶に短く編集したら、話のチープさにもかかわらず異様な迫力が出てしまっ た、というのがもっぱらの評判)。  ご存じの方も多いように999は、「永遠の命を得られる機械の体を求め、 旅に出た主人公の少年が、やがて限りある命の尊さを知り、機械の体を否定す るようになる」という物語。  しかし。今回、また見直していて思ったのだけれども。この作品では必ずし も「機械化人=悪」と言い切っているわけでも無い。機械化人でもいい奴はい い奴だ。クレアという鉄郎に恋しちゃうメイドなどもそうだ。ただ、機械の体 ……それは多くの生身の体の人間の犠牲によってなりたっているもの……では 「人間らしさ」が失われて行く。そういう主張だけが強くある。  作者だって、義足や義手をつけている人を否定しているのではなかろう。現 代に照らし合わせれば美容整形している人があてはまる気もするが、問題はも っと深い所にある。  例えば、目に見える形としては金持ちと貧乏人の対立も意味している。それ から体制とそれに反対するもの。全共闘的なものが特にテレビでは強かった。  しかし……本当にこだわっているのはやはり「人間らしさ」そのものである と思う。作中では「思いやり」という言葉が出てくるが……これはどういう意 味なのかと考える。  鉄郎は弱い。銃もそこそこ使えるが、大人と普通にむきあったら負ける。 しかし彼はヒーローになる。物凄い強い仲間(ハーロック、エメラルダス、ト チロー)が助けてくれるからだ。ご都合主義? そうかもしれない。  しかし、それはそれとして素直に見れば、鉄郎があの世界の中でヒーローな のはやはりのその性格、生き方そのものが作者の理想の姿でもあるからであろ う。  ハーロックがつぶやく言葉。「男には、負けると分かっていても戦わねばな らぬ時がある。鉄郎はそれを知っていた」などはその証拠の一つにあげられる。 ***  しかし、僕自身は「人間らしさ」……つまりヒューマニズムという言葉は苦 手だ。どうにも胡散臭く見えるからだ。何が人間らしさ、なのか僕には分から ない。人を思いやる気持ち……相手と自分を同じ地平に立つものとして見て、 他人の喜びを我が喜びとし、他人の悲しみを我が悲しみにすること……それは 確かに人間らしさではあるが、同時に、人をねたみ、傷つけ、嘘をつき、自ら を守り、肥やそうとするのもまた人間らしさだ。  機械の体を否定するのも、機械の体を求め、永遠の命を求める気持ちも全て 人間らしいとも言える。もっと至近な例えをあげれば、何か大きなものに…… 国家でも宗教でも家族でも恋人にでも全てを委ねてしまいたいという気持ちも 人間らしい。オウムにはまった人たちは結果としてとんでも無い連中だが、そ ういうものにひかれる心は人間らしい。  しかし、そう考えるともはや普通の意味での「人間らしさ」を外れてしまう。 何でもありになったものは、もはや定義できない。   ***  しかし、逆にこんな状態の私が見ても素直に見れるところがやはりこの作品 のすごいところなのだと思う。もはや人間らしさというより「男気」の世界で ある所がよいのだ。自分ではかなり女性的部分が強いと思う私だが、時折こう いう男気にはひかれる。少なくとも、喧嘩にあけくれる昨今のヤンキー漫画と は全く別の何かがある。ただ、うまくは言葉に出来ないのが残念ではあるが。  まあひねた見方をすれば、ブルジョアな人に対する貧乏人のひがみ、とも見 えるが。それも説得力あるように描かれればオッケイなのである。表面上の主 張なんて、見て感じた印象に比べればおまけみたいなものなのだから。  ただ……やっぱり話の展開はご都合主義的だよなあ(^-^;;  新作ではどうしているのかだけは気になる。 (21:07)
1998年3月 2日 (月)  毎日書こう、などと2月27日の日記で宣言したものの、結局間を開けてしま った。もはや反省のポーズをとるのも嘘臭くみられる状態ですが……すいませ ん。   ***  その27日の日記について、友人のパンダ(仮名)から叱責を受けた。電車で 会ったというその女の子にどうして声をかけなかったのか、というのだ。  「そんな風にチャンスを自分から逃がすから駄目なんだ」  とかなり強い口調で言われた。最近、私が「出会いが無い」などとぶつぶつ つぶやいていたことも一因とは言え……そんなことを言われるとますます、気 分がブルーになる。  「こうなればナンパしかないな。池袋でまずは100人に声をかけろ。そうす れば一人ぐらいどうにかなるだろう」とまで言われる。  しかし、その為には携帯電話かPHSがないとまずかろう。実家で、家族の 電話しか無い所に、女の子からじゃんじゃん電話がかかってきたら、かなり私 の家庭内の立場は苦しくなる。いや、じゃんじゃんはかからないであろうが、 時折でも面倒なことには変わりはない。ただでさえ、詮索好きな我が家なので ある。  そして話は今更ではあるが、声をかける場合のシミュレーションへとなって いた。あの時にもし時間が戻るならば、どうすればいいのか。 ***  とりあえず、自分も一緒に駅に降りてしまう。  「あ、ここの駅なんですか?」  多分そんなことを聞かれるであろう。  「あの、いや……ちょっとお礼が言いたくて」  はにかむように僕は応える。『はにかむ』というあたりに既に作為があるが、 おそらくアドリブでやっても照れ笑いぐらい浮かべるであろう。それはともか く……。  「いや、いいんですよ、そんな」  この時の彼女の反応次第で状況は違うであろう。少しは嬉しそうにしてくれ るのか……はたまた『げ、ちょっと親切そうにしたらついてきたよ。しつこ い男って嫌い、飢えてるかしら』ってな表情が浮かぶのか……。  前者ならば問題ないが、後者なら……どうするか。いや、ありえそうなのは こっちの態度がどういうつもりなのか、彼女の方がかえってさぐるという…… 中間な態度であろう。明らかに嫌そうならば、そのまま去るしか無いのだから。  問題はこの場合の僕のアクションだ。  いきなり、お話しませんかでもいいが……。  「あ、どこまで行くんですか?」  そうだ。これぐらいが無難だ。まず、相手が急いでいるかどうか、それにか かっている。  「**ですけど」  本当か嘘かは知らないが何かは答えてくれるだろう。もっともこの場合、な んて答えられた所で、どうということは無い気もする。ただ、その駅が目的地 ならば少しは……乗り換えてまだ先があるならば、これ以上話のは難しいかも しれない。  「あの……変な奴だと思わないで欲しいんだけど……もし、少し時間があれ ばちょっと、話したいなって……」  なんだか回りくどい言い方だが、多分この程度が私の限界な気もする。ちょ っとごもごも話すぎであろうか。  「はあ……」  彼女の曖昧なリアクション。さすがに『ええ、いいですよ。じゃあどこかふ たりっきりになれるところで』なんて事はおよそあり得まい。いや、もしそう なったら……。 ***  この辺りでパンダは少々呆れ顔をし始めている。 ***  「こんなことするの初めてなんだけど……その……なんかこのままもう二度 と会えないって思ったら……どうかな」  ずいぶん低姿勢な私である。しかし、これって明かなナンパだな。えーい開 き直りだ。彼女の目を見る。  「いいんですか、約束の方は?」  そんな彼女の方からの切り返しがあるやもしれない。質問には直接答えず、 別の質問で答える。そうやって会話のイニシアチブをとろうと、会話に慣れた 人ほどするもんだ。  しかし、この場合なんて答えるか。  『いや……実は今日、彼女と別れ話をするつもりだったんだけど……うまく 言えるか自信なかったし』などと作り話をいきなり始めてしまうとか。恋愛話 というのはなぜか女の子をひきつけるものがあるらしいし。しかも、なんだか 面白そうな話でもある。その上しょっぱなから『恋愛』というテーマが両者の 脳裏に浮かび、いい雰囲気になる可能性を一つ広げてくれる……。  ただ、この場合『嘘を突き通さねばならない』という難点がある。うまく、 できればいいが……万が一、この女の子と長くつきあうようになった場合問題 が……いや、そんな最初の時のことなんて記憶も薄れてしまうかもしれないし ……そんな、小細工もかえってほほえましく思ってくれるやも……。  いやいや、やめておこう。迷った時には正直にだ。どうせ、そんなナンパ師 みたいな所行は無理なんだから。っていうとこっちのリアクションとして無難 なものは……。  「待ち合わせじゃなくて、予備校の授業だから……」  すいません。この日またさぼってしまいました。僕はいけない奴です。って 自分が不利益受けるだけの問題か……。  ここで向こうが「何の学校なんですか」ぐらい聞いてきたら、脈ありかもし れない。そこで「じゃあ……」と会話を打ち切ろうとする感じだったら、かな りまずい。無言だったら……「あの、少しでいいんだけど……どうかな」とも う一押し。  「じゃあ、歩きながら……すいません、いきなり……やっぱり迷惑ですよ ね」  いい人モードである。一緒に肩を並べて歩く。  「なんか……久々に女の子に親切にされて……ちょっとおかしくなっちゃの かな」  と照れ笑い。……なんか段々自分がひどい悪党のようにも思えてくる。こん なの俺じゃなーい。しかも『ちょっと淋しい感じモード』も展開。同情を誘う ような……ああ……やっぱり悪党だ……。  「えー彼女とかいないんですか?」  なんて反応があるかも。もちろん、一緒に歩きながらだ。できればまだ改札 まで時間があると嬉しい。  しかし、こういう質問は難しい。『そんなのいません』なんて強く言うと、 彼女もつくれないような寒い奴と思われる。かと言って『いや、何人かいるけ ど……ちょっと不満でね』なんてモテモテを演出するのはかなり危険だ。やは りここも無難に『いや、前はいたんだけど……うまくいかなくて』ぐらいがい いのか。事実だし。  ここまでで既に改札になっている可能性がある。改札の前で立ち止まる二人。  「どうかな。後、少しだけでも……話せないかな」  腕時計をちらりと見る彼女。  「やっぱり、忙しいのかな」  相手を気遣う言葉をかける。いいひとモードのボルテージを上昇(ああ…)。  「そんなこと無いけど……」  彼女の言葉。まんざらでも無いような……かと言って、ほいほいついてゆく のはどうしたってためらわれる……。  「15分でいいから。何か紅茶かケーキおごらせてくれない、かな……」  物で釣る作戦も追加。それから時間を区切ることで安心感もあたえる。もち ろん、15分で終わらすつもりは無い。すぎてしまえば謝れば済むだけのこと だ……。 ***  パンダの俺を見る目が変わってきている。こんな奴だったのか、と険しい目 つき。もはや妄想爆裂状態の私は止まらない。 ***  「じゃあ、15分だけ……」  やったあ。乗り越しを精算して僕も一緒に表に出る。表は暗く、街のネオン が見える。夜風が肌に刺さる。  「寒いね」  そんな言葉をかける俺。  「そうですねー」  とにかく会話を保たねばならない。ネタがなければ天気の会話、と、国分先 生も「つきあいの心理学」で言っていた。イギリス紳士も気候の挨拶を最初に すると聞く。  「この辺り、僕、よく知らないんだけど……どこかあるかな」  「うーん」  などと言っていると、目の前にコージーコーナーがある。  「ケーキとか甘い物好き?」  「結構ね(笑)。男の人は甘いの食べないだろうけど」  「そんなこと無いよ。抹茶系とか結構好きだし。じゃ、そこでいいね」  と店に入る。  「なんでもいいですか?」  「どうぞ」  注文してる間に彼女をちょっと見つめる。微妙に視線を重ねる。あまりじっ と見ているのも何なので、時折こっちも照れ笑いを浮かべる。  ものが届くまでの間もある。考えてみれば15分で食べ終わって出るのはち ょっと難しい。こういう場合何を質問するかで、こっちの性分が逆にばれてし まう。あまりつっこんだ会話はやめた方がいいかもしれない。さすがにいきな り『彼氏いるの』はまずいだろうし。  「なんか……こんな風に女の子と話すの久しぶりでどきどきしてる」  と笑顔でいう。ここにはちょっと嘘が入っているが……許容範囲だろう。  「本当ですか? なんか慣れてるんじゃない?」  また探りが入る。ちょっと不器用なぐらいな感じで対応した方がよいかも… …。  「え、そんな風に見えますか?」  質問には質問で返す。  「別に……」  口ごもる彼女。しまった。この切り返しはまずかったか。とりあえず相手の 質問に答えてから、こっちの質問に移るべきだったか?  すいません、と謝ってもいいが……あんまり謝っていると、かえって気の弱 さを印象づけるだけになってしまうし。  「あの、名前、聞いていいですか? 僕は、もりかわ、って言います」  「**です」  名前が変わっていたりしたらそこから会話もできようが、普通な場合は…… どうにもならない。でも、とりあえず名前を知った以上はその名前を呼ぶこと にする。  「**さんは、仕事している人? 学生さんかな……」  なんか段々口調が『いかにも』になってくる。ちょっと注意が必要。  「うん。働いている。もりかわさんは、予備校って……浪人生?」  「あ、大学は卒業したんだけど、そのあと資格試験の予備校に通っているん だ」  なんて話をしたところで、ケーキと紅茶登場。砂糖の数は? なんて話をし ながら、身の上の話、血液型の話、仕事場の話、昔の彼女の話など定番の会話 をする。趣味とか何かあるのかな。音楽は。映画は。ドラマは。漫画は。など など。  という内にケーキは食べ終わる。30分以上過ぎている。彼女が時計を見る。  僕も見る。  金を払って表へ出る。  「どうもごちそうさま」  と彼女。  「いや、こちらこそ、時間つくってくれて。ありがとう。楽しかった」  と笑顔で返す。  「あの……また会えないかな。これ、自宅の電話番号。家族も一緒のだけど ……」  やはりこういうとき自分の電話が無いのは痛い。  「実家なんだ」  と彼女。いかん。これでは絶対連絡くれそうも無い。えーいままよ。  「よかったら、だけど、連絡先教えて貰えないかな」  「え、本当に電話くれる?」  などと聞いてくるが質問というより、どうしようか迷っている間の時間稼 ぎといった感じ。  「うん。絶対する。夜とかでも平気?」  「平気だよ」  と言いながらまだ教えてくれない。警戒しているのか。  「電子メールとかならあるんだけどな」  と僕はぽろりと漏らす。すると  「あ、会社でパソコン使ってるから。一応、教えてよ」  おー。なんて展開だ。ということで、メールアドの交換。手帳に書いて渡す。  「でも、いつも見るってわけじゃないから、携帯の方がいいかもね」  むむ。  と言いながら、彼女は携帯の表示を見せてくれる。メモする俺。  「うん。分かった。じゃ、電話する。本当に今日はありがとう」  「うん。じゃあね」  去って行く彼女。よかった。本当によかった。  と思いながらも即座に近くの公衆電話に駆け込む。早速教えてもらった番号 にかける。  『はい**です』  「もりかわです」  『もうかけてくれたの?』  笑い声。  「ちょっとあせりすぎたかな(笑)。うん。でも今日は本当ありがとう」  『どういたしまして』  「じゃ、気を付けてね。またかける」  『うん。待ってる。じゃあね』  「また」  電話が切れる。にやけた顔で公衆電話から出てくる俺。  ああ。春も近い。無言で万歳をしながら駅へとかけてゆく……。 ***  「……むなしくないか、そこまで妄想すると」  パンダの冷たい声で、我に帰る私。  沈黙。後、つぶやく。  「……むなしいかも」  目の前のアイスティの氷はすっかり溶けていた。  あーあ、大体、こんな調子よくできるぐらいなら、最初っから苦労などしな いのだ。一人で考える分には幾らでも思考は広がるのに……やっぱり、俺には おとなしく小説でも書いていろって言うのかねえ。  しかも、こんなこと書くと女性からのメールがますます減るような……自爆 状態しれない。まあ、いいか……どうせ最近人来てないし……。 ***  後で後悔しそうな気もするが、とりあえず以上をアップすることにする。新 聞ネタとして、オウムの林被告への無期懲役の求刑、時効後に遺族に謝罪の手 紙を出した強盗殺人犯の男の話、酒鬼薔薇少年の供述調書の掲載問題への考え もあるけど……まあ、今日はやめておきましょう。  こんな私に愛のメッセージをくれる方はここ。(^-^;;  勉強しよ。 (22:05)

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