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翌日、九段下のあるビルの一室にて

 女:こんにちは〜・・あれ、新人?
 ヨーコ:あ、こ、こんにちは。
 タカダ:彼女と会うのは初めてだよね?こちら、コウノ・アツミさん。
 ヨーコ:シジマ・ヨーコです。よろしく。
 女(アツミ):ああ、この間電話してきた。そう、ここでやるの。
 タカダ:ヨーコちゃん、ちょっとアサカタさんの所行ってくれるかな?なんか、また
     急に撮影はいっちゃったみたいで。無理言ってすまないけど。
 アツミ:あ、そう?じゃ、またあとで。
 ヨーコ:はい。

 去って行く足音。しばらくの沈黙。

 ヨーコ:あの・・それで、お金の方はどうなりました?
 タカダ:え? ああお金ね。大丈夫、とりあえず今日の撮影の分のギャラはすぐ渡せ
     ますから。
 ヨーコ:前借りの方は、どうなるんでしょう・・
 タカダ:そう、それなんだけど、もうちょっと待ってくれないかな?別に、君を信じ
     てない訳じゃないんだけど、前にもバンスしたいって子がいて、100万程
     貸した事あったんだけど、その子それもって、逃げちゃってね。それ以来、
     そういう事に厳しくなってしまって。
 ヨーコ;でも、それじゃあ約束が違います。
 タカダ:でも約束というのなら、君も何で昨日の写真撮影途中でほっぽりだして帰っ
     ちゃったの?モヤマさん怒っていたよ。
 ヨーコ:あの、すいません。でも、あの時は・・・。
 タカダ:まあ、どうせモヤマさんが手を出そうとしたんでしょ、あれだけ、女優には
     手を出すなって言っているのに・・。その事だけは謝っておきます。
 ヨーコ:でも、私今月までに50万ないとこまるんです。あの、証明書でもなんでも
     書きますから。
 タカダ:う〜ん、でも、給料分以外を会社からだすのは僕の一存じゃあ。
 ヨーコ:じゃあ、とりあえずは20万か・・。
 タカダ:あっ、ちょっと待って、でも20万は一ヶ月の給料で、一度にはそんなに払
     えませんよ。
 ヨーコ:えっ?でも、数時間で20万貰えるって・・。
 タカダ:そりゃね、一ヶ月といっても実際に撮影するのは3、4回あるかないかぐら
     いでしょ。トータルしても、12時間ならないし。
 ヨーコ:それって、話が違います!わたし、一回で20万貰えると思って。
 タカダ:まあ、おちついてください。でもね、これはあくまで3、4回しか撮らなか
     った場合の話で、例えばさっきのアツミちゃんなんて、一ヶ月で100万以
     上かせいでるんですから。まあ、でも今回は君もいろいろ事情があるみたい
     だし、一応20万用意しておきました。でも、これは僕のポケットマネーか
     らなんで、あなたを信頼して、個人的に貸すんですよ。
 ヨーコ:・・わかりました。わざわざ、有難うございます。
 タカダ:いや、いいんですよ。でもその分ちゃんと働いてもらうからね。

 その時、足早に誰かが近付く。

 アツミ:タカダさーん。モヤマさん、まだ来てませんよ!
 タカダ:あれ?本当?監督は?
 アツミ:なんか、かんかんに怒ってましたよ、モーちゃんがいない!!って。
 タカダ:まいったなあ。じゃあ、ちょっと連絡とるから、二人とも奥の部屋で待って
     いてくれる?この部屋、ちょっと来客用につかうんで。
 アツミ:はーい。じゃ、このコーラもらっていい?
 タカダ:はは、僕の飲みかけでよかったら、どうぞ。
 アツミ:わーい。タカダさんと間接キッスだあ。
 タカダ:はは。

 走り去る革靴の音。


同じ階の、奥の部屋にて。

 ヨーコ:・・あのう。
 アツミ:なに?
 ヨーコ:ここへは、長いんですか?
 アツミ:いや、長いっていう程じゃあないと思うな。3箇月ぐらいじゃないかな?
 ヨーコ:他にも、女優さんは沢山いるんですか?
 アツミ:さあ、どうなのかなあ。あんまりあわないな。私も知っているの2、3人
     ぐらいしかいないし。ここは、結構女優同士で会わすなんてことしないか
     ら。
 ヨーコ:じゃあ、今日は運がいいんですね。
 アツミ:ええ?なにそれ。運がいい、か。まあ、珍しいことは確かだけどさあ・・・
     一つ聞いていい?
 ヨーコ:はい?
 アツミ:あなた、いくつ?とし。
 ヨーコ:ええと。
 アツミ:大丈夫だって。だって本当は私だってまだ17だもん。
 ヨーコ:え?ああ、えっと私も実は来月で18。
 アツミ:そうなの?な〜んだ。じゃあ、あなたの方が年上じゃない。私はこないだ1
     7になったばかりだから。
 ヨーコ:高校はいかないの?
 アツミ:高校?今でも一応高校生だけど。でも、あんまりいかないなあ。もう、学校
     行っても皆子供だし、居場所が無いって感じ。つまんないもん。ヨーコさん
     こそどうなのよ?
 ヨーコ:わたし?一応、定時制の高校に行っているけど・・。
 アツミ:ふ〜ん。
 ヨーコ:・・・さっき、聞いたんだけど、一月に100万稼いだって、本当?
 アツミ:え。うん。先月はそれくらい、いったかな。ここって、仕事結構多いんだ。
     やっぱりヨーコさんも、お金が動機?
 ヨーコ:え〜、まあそんな所。
 アツミ:ほんと、金銭感覚くるっちゃうよ。100円、200円安い、高いだの言っ
     ていたのが馬鹿馬鹿しくおもえるぐらい。
 ヨーコ:そっかあ。・・家には帰ってるの?
 アツミ:・・・まあ、一応。家では学校行ってるって事になってるし。
 ヨーコ:でも、ばれない?
 アツミ:うちはさあ、父親は単身赴任でここ2年程会ったことないし、母親は母親で
     仕事だかなんだか知らないけれど、いつも家にいないしさ。たまに、学校か
     らの呼び出しがあったって滅多にいかないね。ま、わたしも馬鹿じゃないか
     ら、時々は学校に顔だして、まあ留年したらやっぱ格好悪いしね。
 ヨーコ:ねえ、アツミっていう名前、本名?
 アツミ:な、わけないでしょ。
 ヨーコ:だって、履歴書かかされたでしょう?
 アツミ:あんなの適当よ・・・まさか、正直に書いたの?
 ヨーコ:齢以外は殆ど・・・まずかったかなあ?
 アツミ:あたりまえじゃない。家にばれでもしなよ・・。
 ヨーコ:でも、うち一人暮らしだし。
 アツミ:両親はいないの?
 ヨーコ:3年前に事故っちゃって・・。しばらく、親戚の家にやっかいなってたんだ
     けど、なんか居場所なくって、東京に出てきちゃった。
 アツミ:親戚の家って、どこなの?
 ヨーコ:富山。
 アツミ:へ〜。うちの父親が単身赴任に行ってる所だ。どんな所?
 ヨーコ:どんなって。普通。私、市内だったから、あんまり東京と変わらないかな。
     人は断然、こっちの方がおおいけど。
 アツミ:ふ〜ん。でも、いいよ。両親なんてさ、返っていない方がすっきりするよ。
 ヨーコ:でも、やっぱり居た方がいいよ。絶対。いなくなれば、そっちだってそう思
     うと思うよ。
 アツミ:どうかなあ?向こうは、私がどうしようとどうでもいいみたいだし。今でも
     いても、いないようなもんだけど、別になにも思わないなあ。
 ヨーコ:でも、もったいないな。ちゃんと、両親がいるのに。
 アツミ:さっきのヨーコさんの話じゃ、ないけど、居場所がないんだ、家に居ても。
     ここ来ればさ、皆と仲いいし、私のこと解ってくれるし。ずっと、このまま
     がいいなあ。ま。齢とったら駄目かもしれないけど。それまで、お金ためて
     さペンションやるんだ。いいと思わない?
 ヨーコ:そうだね。いいと思うよ。
 アツミ:絶対いいよ。


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