初めに
「パーマン」というマンガがあった。
1966年から1968年まで小学館の学習雑誌に連載され、白黒アニメとしてテレビ放映もされた。
時が経ち、1983年、パーマンは復活した。純粋に後を継ぐ形で連載が再開され同時にテレビ放映も始まった。もちろん、今度はカラーだ。
放映は1985年6月に終わり、間もなく連載も終了した。今からもう12年も前のことだ。
このページは、その「パーマン」のその後を描いた物語、「パーマン・リターンズ」の公開を目的とするものである。もちろん、これは私が勝手に想像した世界であり、原作者、藤子・F・不二雄とは何の関係も無い。関係を持とうにも、先生は既に他界なされてしまっている。結果、これは私自身の先生に対する鎮魂歌という意味合いを持つことになってしまった。
「パーマン・リターンズ」なる物語の元型そのものは決して私のアイデアによるものではない。他ならぬ藤子・F・不二雄先生の代表作「ドラえもん」のあるエピソードに発端がある。ドラえもんの24巻、119頁を開いて見て欲しい。成長したパーマン3号こと星野スミレが大事に持っているペンダント。その中には少年の日のパーマン1号こと須羽ミツ夫の写真が納められていた。
スミレはミツ夫がバード星へ「留学」にでかけてから十年以上も経つというのに、まだ彼の帰りを誰よりも待ち続けている……。
見たい。スミレとミツ夫の再会した姿が見たい。
全ての動機はここから発している。私は密かに作者自らがこの二人の「再会」の物語を描いてくれることを望み続けていた。
しかし、それはもう叶わない。
……ならば、自分で書くしかない。
企画はこうして始まった。
予めお断りして置きます。
この物語には、パーマン原作にあったコミカルさはありません。あくまでも、スミレとミツ夫、そして地球に残されたコピーやブービー、パーやんと言った人々のその後を描くことが中心であり、その意味ではこの物語は辞儀通り「パロディ小説」である。しかし、いや、だからこそ私は真剣である。嘘だけはつかないつもりである。
この物語を書くにあたって、ワニブックス刊「パーマンの真実」という新書本を参考にさせていただいた。ストーリーの原案はこの本出版の前からあったのだが、データ的な裏付け等は、結果としてこの本に大きく寄る所となった。
「パーマンの真実」は1993年、謎本ブームのさ中に乱発されたものの一つであり、現在ではかなり入手困難であると思われる。もし、古本屋等で見つけることがありましたならば、是非入手して、「パーマン・リターンズ」の副読本として活用していただきたい。
前口上が過ぎたかもしれない。
この物語は現段階ではまだ未完である。予定はあるが決定ではない。できることならば読み手の意見をも聞いてみたいと思う。私は私の中にあるパーマン物語を裏切りたくないのと同時に、読者のパーマン物語もできることなら失わせたくない。そして何より、今や別世界へと天昇なさってしまった先生自身が「ま、こういうのもありなんじゃない」と苦笑なさってくださることを強く願っている。
(1997年5月17日 MORIVER)
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