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 数時間前のことだった。

 一台のシボレーが東京都N区の一角に停車していた。エンジンを停止させたままハザードランプを十分以上も点滅し続けている。
 車は盗難車だった。高速道路下の駐車場に一年以上も違法放置されていたものの一つだ。
 その運転席に、一人の男がいた。
 男は、フロント越しに、道の先にある商店街の通りを眺めている。
 街は喧噪の内にあった。金・銀のモール。Merry X’mas。青と赤を基調としたポスター。行き交う人々。ジングルベル。
 男は目を細める。
 この街は男の故郷だった。


 あれは、小学校最後の年の元旦の朝のことだ。当時の少年は両親から文字通り「叩き起こされ」て目覚めた。何? 早く、着替えなさい。そうして、表に止まっていた車に載せられた。空はまだ暗い。
 何なのか、と尋ねる少年に両親は無言だった。やがて、車は出発する。高速道路に入り、ビルの向こうから上る日の出を彼らは見た。
 そこで初めて助手席に座る母が振り返り、言った。
 これからおじいちゃんの家に行くのよ。
 そう、と少年は答えた。
 少年はバックシートの中に転がり、ウィンドウから入る朝日の中で眠ることにした。横たわり際、ふと背後を振り返った。赤く染まる冬の東京の姿がそこにあった。
 そして少年は今、この時まで、二度とこの街に帰ることは無かった。


 ダッシュボードの上に置いた携帯電話の音で、男は我に返る。手にし、通話ボタンを押す。
 「はい」
 向こうからの応答は無かった。ただ、三回、トーン音が聞こえた。準備開始の合図だ。
 予定通りならば十分後に準備完了の連絡が入る。その時まではエンジンを切っていてもいい。スターターの具合は昨晩何度もチェックをしてある。間違いは無いはずだ。……行動開始の合図と共に、移動。T銀行の支店の前で落ち合う。そして、新橋の地下駐車場まで走り、車を交換。後、京橋インターチェンジで東名高速に乗り、静岡で解散。男は計画を心中で復唱してみる。問題は無い。ともかく、やるだけだ。



***


 今年で四十八歳になる小池電気店社長は、店舗の奥に腰掛け、店頭に立つその男の姿を見つめていた。
 一時間前、遅い昼食を取りに部屋の奥に入る時、その男は既に三十分以上もそこに立ち続けていた。男が見ていたのは、社長が気合いを入れて仕入れてきた三十五インチ型ハイビジョンテレビだった。もっとも、店先に置いて半年、買い手は未だ現れない。この小さな商店街の電気屋で五十万以上もする高品位テレビを求める客などいなかった。
 こんなことなら、最初に値引きをしていればよかった。後悔もしてみるが、既に手遅れだ。小池電気店は創業以来、値引きは控え、もっぱら地元密着型のサービスを売りにして来た。しかしそれも、ここ数年の住民の入れ替わりの激しさに、大した効果をもたらさなくなっている。「ご贔屓さん」という言葉はもはや死語だった。
 そんなわけで、社長は店先にたたずむその男に、微かな期待を抱いていた。あれだけ長く熱心に画面を見ているのだ。こうなれば、原価割れでもいい。所詮展示品だ。四割……いや、五割引きに……。
 しかし。どうも様子がおかしい。社長は口回りに残ったラーメンの汁を袖で拭いながら考える。
 男は割に背が高く見えた。少なくとも百七十五以上はあるだろう。歳は若そうだが、身にまとった濃紺のトレンチ・コートは安物ではない。
 だが、何かが……。
 両手はコートのポケットに入れている。
 そうだ。何も手に持っていない。外出着のまま、手ぶらで昼下がりの電気店の前で一時間半も過ごすのは、どう見ても不自然だ。……それに、何を一生懸命見ているのだろう。
 気になり、社長は傍らの十二インチ型携帯テレビのスイッチを入れた。この時間帯はどこも相場はワイドショーと再放送のドラマと決まっている。社長はワイドショーの一つにチャンネルを合わせた。
 話題は各局横並びで、ある女優のスキャンダルを報じていた。二十四という年齢に似合わず、生活感の薄い、今時珍しいまでに女優らしい女優だ。
 噂の相手は新作映画の共演者の男。
 嫌みな男だ、と社長は思う。整った顔つきに、そろった眉毛と、どこから見ても二枚目だ。文句のつけようが無いところに一層腹が立つ。
 ふと店先に目を戻す。男はまだいる。車通りが一瞬途絶えたからか、テレビの音が少し漏れて聞こえた。どうやら同じ番組を見ているらしい。
 番組は、その新作映画の紹介をメインとした特番だった。そしてそれは終わりに近づいている。これを見に、一時間半も? 新たな疑問が沸き起こったその時、突然、画面が変わった。煩雑に並ぶモニターと機械を背後に、スーツの中年アナウンサーが神妙な顔で告げる。
 「番組の途中ですがここで臨時ニュースをお伝えします」



***


 「右だ!」
 後部座席から声があがる。
 分かってるよ。
 男は一人ごち、ハンドルを切った。
 男と後ろに二人を載せた白のシボレーは中央分離帯を乗り越え、反対車線へと乗り入れる。元の車線の先にいたセドリックのドライバーが、惚けた顔つきでこちらを見ていた。
 アクセルを踏む。回転数を音で確かめるとノークラッチで、男は一気にギアをトップにあげた。五十メートル先に青い一トントラックが見える。左確認。車線は空いている。再び、車体は大きく揺れて元の車線へと戻る。
 「どうだ」
 後ろの二人が会話を交わす。
 「駄目だ。ついてきている」
 「羽目られたな……」
 呑気なもんだ。運転席で男は思う。

 二人の会話から察するに、情報を流した行員の一人が、土壇場近くで怖じけづいたのか、警察と警備会社へ通報を入れたらしい。クレイ用のショットガン二丁で武装した二人の前に、シールドにボディアーマー、メット姿の機動隊員が立ち並び、およそ一分半程銃撃戦が起きたという。
 車を支店の前に出した時、既に銃声は聞こえていた。ショットガンの散弾の音、警官のニューナンブによる応戦。男は、路肩に乗り入れ、後部座席のロックを開く。一人が右肩に弾を受けていたが既に貫通しているようだった。
 そして、男はシボレーを発進させた。

 計画は破棄する。一瞬の判断だった。
 カーチェイスになったら圧倒的にこちらが不利だ。特に大通りに入れば、ますます逃げ場が無くなる。警戒線の張りにくい二車線程の住宅街の道路に乗り入れ、できれば、車を乗り換えた方がいい。窓を割り、スターターの配線を繋ぐのに早くて三分。検問には、万が一の為に用意した偽造免許証を使う。
 ともかく、そう長くなくていい。十分ほどの時間、追跡を免れれば、なんとなる。

 バックミラーに赤いサイレンが三つ見える。音も聞こえる。男は、再び車線を替え、追い抜き、また戻るという動作を二度繰り返す。その度に車体は浮き上がり、後ろの男の一人が悲鳴を上げた。


 運び屋は初めてではない。だが、慣れがあるわけではない。そういう類の仕事じゃなかった。
 男が初めてハンドルを握ったのは十五の時だった。当時つきあいのあった大学生に、夜中、河原を教習所代わりに鍛えられた。
 いわゆる不良仲間を男は嫌悪していた。族とのつながりも無かった。あの小学校の最後の元旦以来、なぜだかあらゆる「仲間」というものを煩わしいと感じていた。
 そこへ行くと車は良かった。それは男にとってまさに分身だった。ハンドルを握り、アクセルを踏み、クラッチを切り、ギアを入れる。全てがイメージ通りに行けば、車は自分に従ってくれる。シートの中では、彼はまさに全能であった。他に何も彼には必要なかった。
 高校卒業間際に免許を取得した彼は、峠荒らしの走り屋としてすぐに知られるようになった。ノーブレーキでハンドリングだけで、急コーナーを攻略してゆく。二度程、事故った事もあるが、いずれも人気の無い場所での物損にすぎなかった。……あの時までは。


 男の眼前に荷下ろしをしているトラックがあった。後ろの二人が何かを叫ぶ。大丈夫。自分に言い聞かせるようにつぶやくと、男は右足に力を込めた。



***


 バカン、という大音響が聞こえた。
 何事だ。
 小池社長は健康サンダルを履いた足で表へ出る。見ると、向かいの道路わき、停車していたトラックの、大きな銀色の荷台横が大きくへこんでいる。
 すごいな、とつぶやいたその次の瞬間、空中から段ボール箱が舞い降りてきた。それは地面と衝突するや、中からミニ電子ゲームのパッケージを路上にばらまく。玩具屋の親父が先週、抽選でやっと仕入れたよ、と満面の笑みで吹聴していたのを小池社長は思い出す。
 追い打ちをかけるように三台のパトカーがサイレンをならして姿を現した。
都合十二本のタイヤは丁寧にミニゲームを踏みつぶして去って行った。社長は心中にて合掌した。
 それにしても。
 呆然とパトカーの走り去るのを見送りながら、社長は考えていた。
 今のがさっきテレビで放映していた、銃撃戦の犯人だったのか。この近くのT銀行というから驚いていたが、まさか本当にこの目で見るとは。
 真向かいの店から、ダークグリーンの前掛けをした中年男性がよろよろと姿を現した。玩具屋の親父だ。道路に近づき、その場に膝をついて、散らばったミニゲームの一つの具合を確かめている。
 気の毒にな。……まあ、他人事じゃないがね。
 そういえば、さっきの男は。
 社長は振り向く。
 いない。
 周囲には事故現場を確かめに人だかりが出来始めていたが、その中にあの紺のトレンチの男の姿は無かった。
 頭上からヘリコプターの音が聞こえてきた。


***



 ハンドルを取られる。
 男は車体をまっすぐに向けようと必死だった。やはり、先の衝撃でシャーシに歪みができたようだ。それでも走行には何とか耐える。問題は、あまりにも目立ち過ぎるということだ。前のバンパーから助手席のドア辺りがひどく削れている。バックミラーも落ちはしなかったが、上を向いてしまい役に立たない。
 だが、勝機はある。
 町並みが男の記憶と重なる。知っている。ここは知っている。
 そうだ、後、数十メートルも進めば、昔両親が開いていた洋食屋の場所に来る。そのわきにある一車線の昇りの坂道。こちら側からでは一方通行の逆にあたるが、そこを上がり、すぐに右に曲がれば人気の無い小さな神社に出る。さすがに神社ならば十数年たってもあるだろう。
 そこの小さな林を抜け、塀を越えれば、月極駐車場に出る。これはまだあるかどうかは怪しいが。……いや、無くともいい。ともかく、町中に紛れることができれば。土地勘はあるんだ。そうさ、ここは俺の街だったんだ……。


 もしも、など意味が無いことは分かっている。しかし、それでもしばしば男は考えずにはいられなかった。
 もしも、両親の洋食屋で食中毒が起きなければ。もしも、父親がノミ競馬にはまらなければ。もしも、街金に借金しなければ。もしも、この街から逃げなければ。
 そして、もしも、あの時あのベンツに衝突をしなければ。

 今思えば仕組まれていたのかもしれない。見通しの悪いカーブの向こうに、その黒塗りの小ベンツはあった。カーブの先に駐車するのも違法だが、男もまた制限速度オーバーの身だ。
 ハザードのついたベンツの中から数人のイタリア製スーツを来た男達が現れた。全てはそこから始まった。

 金など有るはずもない。念書を入れても帰しては貰えない。走り屋だということがばれると、代わりに「仕事」をくれる、と言ってきた。組織の運転手として、しばしば駆り出されることになった。両親からは既に独立していたし、金払いもよく、また仕事はそれなりに刺激的でもあった。
 検問をくぐり抜けるコツから、ライトを消しての夜間走行法も学んだ。尾行を巻く技術には特に研究を重ねた。ドライビング・テクニックもさることながら、そこには心理的な駆け引きの要素も重要になる。有り体に言って、人を騙すのは快感だ。もう誰にも負けたくは無い。
 夢もあった。資金がたまれば、ダカール・ラリーに出場する。砂漠は彼のあこがれだ。朝も昼も夜も。いつまでも走り続けていたかった。

 そうだ。ここで終わり、なんてご免だ。
 見覚えのある金具屋も確認した。
 よし、そこを右……。

 「どうした?」
 瞬間、落ちたスピードに後部座席の男が声をかける。
 「ちくしょう」
 運転席の男はつぶやく。
 無い。その場所は無かった。あるのは、早くも壁面に汚れを見せた十階建てのマンションだけだった。あの坂道も無い。何も無い。何も。
 「サブ!」
 後ろから名を呼ぶ声も聞こえない。
 男は、アクセルを踏み込む。
 とにかく。とにかく走り続けるだけだ。



***


 ブラウン管の中のそれは、まるでリアルなテレビゲームのワンシーンのようだった。
 長く続く国道。先行車の間を縫うようにして走るシボレー。冬の赤みを帯びた光に照らされ、白いボディはオレンジに見えた。
 その後ろを、二台のパトカーが追跡している。一台は既に、対向車に巻き込まれ脱落していた。
 シボレーが一台、また一台と追い抜いてゆく度に、ハイビジョンテレビを取り囲む見物人の間から歓声があがる。小池社長はその有様を、奥のカウンターから複雑な面持ちで眺めていた。いつの間にか街頭テレビと化している。これは喜ぶべきなのか。嘆くべきなのか。
 うん?
 見物人の一人が、画面を人差し指で触っている。一応、商品なんだから、手の油をつけるようなことは止めて欲しいな。
 やれやれ。と、立ち上がろうとする時、画面を触っている人数が増えているのに気付いた。それに、人垣の間から、なにやら先ほどとは別種のざわめきが起き始めている。何なのだ。
 傍らの携帯テレビを見るがよくわからない。何を騒いでいるのか。画面がズームにったりアップになったりを繰り返している。ピントもおかしい。車に焦点があっていない。
 「そうだよ」
 そんな声が聞こえた。
 気になる。社長は駆け寄った。人混みの横から入り、画面を見る。
 「ここ、ここ」
 さっきから画面を触っていた学生風の男が、指さす。
 それは、最初何かの影のようにも見えた。黒い布のようなものが、風にはためていているようにも見える。
 カメラがズームする。ピントが定まる。
 人、だ。
 その場にいる者全てがそんな声を心で上げたように思えた。
 肩から長い布をなびかせた人間が、シボレーの後ろを追走していた。
 その側の地面には影が見える。
 飛んでいるのだ。
 それも車と同程度のスピードで。
 うわあ、とその時、周囲から声が上がった。
 ヘリコプターの音に混じって爆裂音が聞こえたのだ。
 シボレーのリアウィンドウが粉々に砕けている。そこから白煙があがっていた。



***


 「もう一発」
 薬莢を落とし、後部座席の男は空中に向けてショットガンの狙いをつける。
 銃声。
 「くそ」
 外したようだ。
 運転席の男は、バックミラー越しに「それ」を見た。

 いた、と男は思った。
 そう。この街にまだ俺の知っている者がいた。奇妙な感覚に男はとらわれた。全てが少年の日の自分に戻ったような錯覚。
 そう。あの頃には友達も沢山いた。思えばあれが最後の友達らしい友達だった。顔も名前も思い出せる。みんな……。

 たまらなく胸が苦しくなった。
 男の中で少年がささやいている。
 ねえ、どうしたの?
 ねえ、なにしてるの?
 あの頃の自分が、今の自分を見て何を思うだろうか。俺は今、その彼に向かってなんて答えればいいのだろう。
 俺は……俺は間違っていない。
 だが、それならば、なぜ、俺は今、動揺しているんだ。
 なぜ、こんなにも……。

 車体が揺れた。
 ハンドルが急に軽くなる。
 目の前の風景がおかしかった。これはトラックの車高だ。
 いや、それも違う。
 車が激しく左右に揺れた。後部座席のショットガンが音をたてる。暴発だ。散弾の一部が、運転席の男の左頬をかすめた。
 「やめろ!」
 後ろの席で負傷した方の男が、隣の銃を持つ男を制していた。銃は天井に向かって危なげに揺れていた。
 フロントガラスの向こうに数条もの電線が見えた。それは、すぐに車の下へと消える。
 空が見えた。
 男は頬の痛みも忘れ、笑みを浮かべ、そして、ハンドルを握り直した。



***


 拍手の音がした。
 いつの間にか来ていた玩具屋の親父が源だった。やけくそ気味に激しく手を鳴らしている。ひきずられ、見物人の一部が同調した。小池社長も習って拍手する。そして小さく溜息をついた。

 画面の中で、空飛ぶ男とその車は、ゆっくりと近くの路肩に着地した。パトカーがすぐに後を追ってやってくる。
 カメラを載せたヘリコプターも数回旋回を続けてから、路上封鎖のため走行車も無い六車線の国道に下りる。レポーターが状況を繰り返し、興奮気味に伝える。
 犯人の三人は既に警察の手により逮捕をされていた。実質投降してきたようなものだった。警察の指導が入ったのか、彼らの顔のアップは入らなかった。ただ遠目にも血を流しているのが分かる。
 見物人の内の何人かが顔をしかめる。
 カメラは、煙りを上げるシボレーの方へと慌ただしく近づいてゆく。
 あの男の姿が見える。


 おや、と小池社長は目を凝らす。
 あの男。
 赤茶けたマントのような布の隙間から見えたもの。なぜか画面は逆光で、はっきりとは見えなかったが。
 まさか。
 男は頭から鼻先までを大きなスキー帽のようなマスクで覆っていた。目の部分はのぞけたが、はめ込まれたレンズが邪魔し、その奥を見ることはできない。
 そうだろう。
 社長は思う。
 あの彼のコートは……紺のトレンチだ。
 だが、すぐにその考えを打ち消す。とにかく逆光が激しいのだ。側にいるレポーターのスーツの色も、先に画面に見たときはグレイだったが、今は、ほとんど黒一色にしか見えないではないか。
 さっきの男にこだわりすぎているからだ。まあ、このテレビをさっさと処分したいのは否定しようも無いからな。……これだけ見せたんだから誰かこの中から買ってくれないかな。見回す。
 ……何やってるんだ。
 一人自嘲気味に笑い、社長はテレビに目を戻した。

 いつの間にか、画面から男の姿が消えていた。
 見物人の何人かも、その瞬間を見逃してしまったらしい。
 なに、なに、という声が上がる。
 カメラは空を探す。遠くにそれらしき点が見えたが、それもすぐに消えた。

 まばらに人垣が解散され始めた。
 玩具屋の親父も、よし、とつぶやきを上げながら帰ってゆく。
 社長は苦笑してカウンターの奥へと戻る。その時、緊張がとけたのかげっぷが一つわいた。それは昼のラーメンの匂いがした。



***


 見物人を失ったそのハイビジョンの画面が、先のシーンをリピートし始める。

 カメラが男に近づく。
 レポーターがマイク片手に走る。
 赤い日差しの中、マスクの男が振り返る。肩から掛けたマントが、風に揺れている。
 『あなたは?』
 レポーターのうわずった声。
 『僕?』
 マスクの男が答える。
 カメラはアップになる。マイクが差し出される。
 『パーマン』
 男は言った。
 『パーマン一号です』





つづく





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