ある冬の出来事

朝、といっても朝食を食べ、少しのんびりとしていたので出発は9時頃になってしまいました。その日はなんとなく簡単なルートで行きたかったので安全なルートで快適に難無くクイーンズまで行きました。(途中危うく道を間違えそうにはなりましたが、、、、)到着して休む間も無くすぐにあのいまいましい場所にいき、あの出来事を思い出し唇を噛み締めながらも番地を調べ、メモをして先輩の部屋に戻りました。「正直、戻ってこないだろう。それなら保険にかけてあるんだからせめて少しだけでも金をもらって新しいのを、、、」というのが本音でした。この国で何か盗まれたらおそらく戻ってこない、と考えて正しいと思っています。その為、立ち止まって考えるというよりは走っていくしかない、と感じていたのです。次の日、あの晩、とめてもらった友だちと一緒にクイーンズの警察署にいきました、中国、アメリカ、日本、自分が知りうる共通した事実の中に一つ、「どの国も警察署の中は人間が気分よくなれる場所ではない」という事でした。入ってすぐに受付のカウンターにいる警官に事情を説明すると小さな部屋につれて行かれて小柄な、少し年のとった眼鏡が似合う男性を紹介してもらいました。話によると彼は落とし物、なくしもの、そして盗まれた場合などにその書類を管理するのが仕事らしく、机の上をみるとPCが彼の仕事を増やしていました。そして、自分も彼への仕事を持ってきた客の1人でした。
  近くにあった椅子に腰掛け、彼が質問をするのを待つ間も無くこちらから口火を切りました。クイーンズの番地、時間、状況、成るべく覚えているだけの事を郡にいり、細に渡って説明して相手が意味をとるまで、数度に渡り説明をくり返し口を閉じました。語学力の低さだけでなく焦っていたせいもあり五分で済む説明も10分かかる始末でしたが、なんとか説明をし、相手も納得をし、彼は少し考え込みました。すると、彼がその口をひらきたった一言だけ「You've learned」「君も学んだだろう。」の一言、彼はこれを盗みとは取り扱わず、「自分の不手際である」という裁決をくだしました。これは同時に保険金はおりず、PCは戻ってこない事も意味していました。その瞬間「嘘だろ!?オイ!?」の一言が、、、頭の上に雷が落ちて来た気分をヴァーチャルリアリティよろしく疑似体験できました。食い下がってみたものの全く梨の礫、仕方なく現実を受け入れようと努力し、友人の慰めを受けつつポツダムへと帰る支度を始めたのです。
  「以外と人間と言う者は強い」と感じたのが、吹っ切った後の自分の行動でした。ポツダムからクイーンズまではやはり近い場所ではありません。車をもっていた自分としても片道6時間を往復というのは慣れていたとしてもそれなりにハードなもの。そこで最初に自分の頭の中にでた一言が「さ、楽しむかぁ」。マンハッタンから地下鉄で約15〜20分、更にはマンハッタンまで行く事も無く近所には有名なお店が立ち並ぶ。そんな素敵な場所に来て何もしないのはもったいない。という考えで精一杯楽しむ事にしました。ここには約2ヶ月住んでいた事もあり、それなりの楽しみ方を多少心得ていました。
  色々なお店が立ち並ぶ歩道をのんびりと歩きながらまずはダンキン・ドーナツで珈琲を飲み、店をでると太陽がまぶしい♪更に気分よく歩くとアーティスト達が自分の絵を売っていてちょっとした展覧会の様。てくてくと歩いていると何時も行き着けていた台所用品のお店があり、中に入って友だちとお店の中をみて、そのまま外に戻る。そのまま立ち並ぶGAPやベネトン、ディスカウントショップ等にたちよったり、気が付けばお昼なので「それじゃあ」とマクドナルド*に、ビッグマックを頬張りながら警察での話を笑い話にしてコークを飲み干し外へ。アメリカにくる前は飲めなかったはずのコークは気が付けば何時の間にか「美味しい飲み物」に変わっていました。(現在はもっぱら珈琲、紅茶(アールグレイ)、水、になってます)皆で外に出て、立ち並ぶ小さな雑貨店をウインドウショッピングしながら歩いていくと本屋があったので中へ、お土産コーナーにはオシャレな小物やポストカード、ダイアリー等がいっぱい並んでいてそれなりの雰囲気をだしていました。前々からレイモンド・チャンドラーの原文を読みたいと感じていたのでミステリーのコーナへいき本を探すと「レイモンド・チャンドラー全集 上・下巻」が2冊、値段をみるとそれぞれ$34というそれなりの良いお値段なので諦めてペーパーバッグを探すと「湖中の女」があったのでそれを片手に今度はアルフォンス・ミュシャの画集を見る為にアートコーナーに、ここでは残念ながら自分の目を引く物は見つけられなかったので「湖中の女」を片手にレジに向かいました。みんなを探しに下の階にいくと1人は雑誌のコーナーに、あとの二人が本屋の中にあるスターバックスという珈琲ショップで珈琲を飲みながら話をしていたので雑誌のコーナーにいる友だちを呼び、自分もカプチーノを片手にそれに参加して、そこでついでに、と豆を二袋、モカジャバとスマトラブレンドを買って外に出ると少し影が落ちていました。そのままスーパーまで行き、晩御飯のお買い物。友だちと皆でカレー*とサラダの材料を買い、帰り道に立ち並ぶ韓国人の八百屋に寄ると何故か日本のジャワカレー。それを2つ買って友だちの部屋に戻りました。
  皆でカレーをつくり、頬張りながらその日一日の話しに花を咲かせる。とても楽しい時間でした。晩御飯の後、友だちの部屋を後にし、先輩の部屋に戻り、二人で砂荒らしよろしく見難いテレビをみながらあーでもない、こーでもない、と話をして先輩にビールを一本もらい飲みながら更にその夜はふけて行きました。


つづく


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