04-Oct-97 再編集 ブドウ日記 (97年 その2) 「最近のブドウ日記」(更新分)はこちらへ。
9月21日(日) 仕事でサンフランシスコのそばに来ているが、今日は日曜日でオフなのでナパ(Napa)のブドウ見物に出かける。1年半ぶり、2回目の訪問。前回は3月がったので裸のブドウの樹があっただけだが、今回はブドウの房と、あわよくば収穫風景も見られないかな、と期待。 行ってみると、もう大方の畑で収穫は済んでしまっていて、まだブドウが残っているのはざっと見て1割以下か。ドイツに比べれば随分温暖な気候なので、収穫も早い訳だ。ちなみに今日も昼間の外気温は28℃(車の外気温計にて)。 さて前回も少し気づいたことであるが、ここナパでは畑の区画によって(即ち栽培家によって)垣根の造り方、剪定の仕方がずいぶんいろんなバリエーションがある。これがヨーロッパだと(と言ってもこの目で確かめたのはごく一部ではあるが)、ラインガウの垣根造り、モーゼルの杭造り、ボジョレーや南仏の株造り、という具合に国や地方が違えばいろいろ違った栽培形態を採用しているが、一つの地方の中では栽培形態はほとんど1種類で、たまに地形によって2種類が混在しているくらいのものである。もちろん、同じ栽培形態とは言っても、垣根の高さ、間隔などは栽培家ごとに結構まちまちではあるが。 それと、これは前回は季節柄知るすべもなかったことであるが、ドイツのラインガウあたりではブドウの樹の枝を随分こまめに・キレイに刈り込んでいて、正に「垣根」という感じになっているのが常であるのに対し、ここナパでは、たまにキレイに刈り込まれていることもあるにことはあるが、なんとなく新枝が結構ヒョロヒョロ自由に(?)よく伸びている畑の方ががずっと多い。別に「自由を最も尊しとする国柄」のせいでもなかろうに。 さて折角なので醸造所の見物も、ということで旅行ガイドブックのおススメに従ってFreemark Abbey Wineryなるところへ行くも、セラー案内は1日1回のみで、まだまだ時間がある。他に良い所はないかと聞くと、Stirling Vineyardなるところを紹介してくれる。 なんでも、「とりわけ観光客向けに整備されたワイナリー」とのこと。 このコメント、行ってみて納得。入り口の門と駐車場は谷底の平地部分にあるが、そこでまず6ドルのキップを買って、スキー場にあるようなゴンドラに乗って丘の上の醸造所建物へ向かう。醸造所の中はずーっと見学通路が完備されていて、勝手に見て回るようになっている。醸造所でやっていることはドイツやフランスで見慣れたものと基本的には同じ。(あたり前と言えばあたり前。) ただ、規模はでかい。20キロリットル級のステンレスタンクがそれこそ「林立」している。おもしろいのは、これらステンレスタンクと共に大型木樽もやはり「林立」していること。木樽とはいっても、直径2m位、長さ(高さ)5メートル程もあろうかという大きさで、それがステンレスタンク同様縦に立ててある。更に、ちょっと記憶が怪しいが、マンホールなんかもステンレスタンクと同じようなものを備えていたような気がする。こんなのはヨーロッパではまだ見たことがない。(でも僕はまだボルドーに行っていないが。) 実はワインに特別な興味を持つわけでもない会社の同僚達(ドイツ人とオーストリア人)といっしょだったので、のんびりと「ブドウ畑散歩」するわけにはいかなかったが、帰り道でまだブドウの実がなっているところで車を止め、手短に写真を撮った。
昼前、米国出張より帰宅。狭いヒコーキの座席(当然?エコノミー)でろくに眠れずに一晩過ごしてきた後なので、出社はカンベンさせてもらう。長い仮眠から覚めた夕方、あまりに天気がいいので「いつもの所」へブドウ散歩。 国道から遠目にみるブドウ畑は、まだ黄葉が始まっている様子はない。少し近づいて見ると、どこの畑も(ごく一部例外はあるが)キレイに刈り込まれていて、まさに「垣根状」である。先日見たナパの畑よりずっと整然としている。 間近で見ると、2〜3週間前まではまだまだ不透明な黄緑色(グリーンピースを思い浮かべるとよい)で固そうに見えたリースリング種のブドウの実が、緑色味が少し抜けてグレーっぽい感じになり、かつ透けて中の種が見えるようになってきている。かなり熟してきたということだろう。ただ、まだ収穫の気配はない。
引き続き当然のごとく、気になっている「巨大ブドウ」の所へ。すると.... とはいっても、この1列の垣根を除くと、周囲はまったく収穫の気配はない。それにドイツでは、どこかの役所がブドウの生育状況を見ながら、地区(畑)と品種ごとに「収穫してよい期日」を公示するはずである。まだこの辺りではリースリングの収穫許可の公示は出ていないようだが.... もしかしたら、この1列だけは生育の早い別品種の樹が植わっているのかも知れない。そう思って見ると、葉の格好もなんとなく周囲の正真正銘のリースリングとちょっと違うような気もする。それに、ちょっと以前から、ブドウの房や粒の大きさも、なんか典型的リースリングより大きいような感じもしていた。あるいは、リースリングではあるが、ちょっと違う株なのかも知れない。 それに、収穫時期の公示前に収穫すると確かに公的認定ワインには出来ないが、Federweisserにでもして自分達の宴会で飲んでしまうのだったら誰も文句は言わない。この辺の真相は分からないが、何はともあれ「巨大ブドウ」は、朽ち果てて土に帰ってしまう前に人間様によって収穫されたことはほぼ間違いなさそうだ。よかった、よかった。 この後、やはりいつもの散歩コースに従って、黒ブドウの植わっている畑へ。黒ブドウ達はほぼ完全に色変わりを終え、どの房も黒々としている。それと、黒ブドウの樹は、葉もちらほら黄葉・紅葉して落ちはじめている。黄葉・紅葉の時期もリースリングとは違うということは、去年までは気がつかなかった。 ブドウ散歩の後は、これまたワンパターンながら、近くのStrausswirtschaftにてFederweisserを飲み、Zwiebelkuchenを食らい、更に簡単なKaltesessenをもって夕食とする。
今日はラインヘッセン(Rheinhessen)地方を経て、プファルツ(Pfalz)地方のブドウ散歩へ。目当ては、収穫風景とFederweisserである。「いつもの」ラインガウ地方でもごく一部の早熟種の収穫は始まっているようだが、主要栽培種のリースリングは晩熟型なので本格的収穫はまだ先の模様。 マインツまで高速で行き、そこからは丘陵地帯を貫く地方道を南下する。ライン川沿いの国道9号線と、ずっと西側を並行に走る高速63号線とのほぼ真ん中を走る道路で、地図で見る限りは国道番号等は振られていない。 基点のマインツからラインヘッセン地方南端のヴォルムス(Worms)まで、ずっと大ブドウ産地でブドウ畑が続くのだが、プファルツ地方のような「見渡す限り、一面ブドウ海」という感じとはちょっと違い、ブドウ畑の他にイモ畑、麦畑、トウモロコシ畑、リンゴ園、なんかがごっちゃに入り乱れているところが多い。 始めのうちは収穫の気配をあまり感じなかったが、やがてブドウ収穫容器を積んだり(特大バケツ状の物をトレーラーにいくつか積んでいる)、引いたり(特大風呂桶状の容器自身がトレーラーになっている)しているトラクターとちらほらすれ違うようになる。やがて収穫の現場に出くわし、空地に車を止めてしばし見物。予想通り「機械収穫」である。 機械収穫の仕掛けについては以前にも少し書いたが、作業がひと休みした時に機械の中の仕掛けを覗き込んだら、以前見たのと少し違っていた。とはいえ、ブドウを叩き落として収穫するという基本的な仕掛けは全く共通で、叩き落とすための「タタキ棒」の形がちょっと違うだけ。それにしても不思議なくらい、うまくブドウの粒が収穫されるのには感心する。「使用後」の樹をみると、ほとんどブドウの粒が残っていないことからも、その効率が伺える。 ただ、「品質第一」を看板にするブドウ園では、機械収穫はあまり使われない。一番の理由はブドウの選別が出来ないからであろう。「良いブドウだけ収穫し、未熟ブドウや腐ったブドウは収穫しない」という芸当は、現在の技術ではまだ実用化されていなし、今後も難しいだろう。同じ理由で、「同じ畑の収穫を何回にも分けて、その都度良く熟したブドウのみを順次収穫してゆく」ことは無論不可能である。それに、「機械収穫は樹を傷める」との意見もある。はたで見ていると、確かにそんな気もする。とはいえ、この辺りラインヘッセン地方は、ごく一部を除き「日常ワイン」を大量に生産するところであり、収穫はほとんど機械で行われるようだ。 続いて辺りをブドウ散歩する。ざっと見て1〜2割が収穫済みで、まだまだこれからといったところ。この界隈を散歩していると「いろいろな品種のブドウが栽培されている」のが素人目にも分かる。個々の品種名が分かるわけではないが、葉の形と色、房の形と大きさ、粒の色と大きさ、などが全然違うから、「同じでない」ことは一目瞭然である。これもまた、「いつもの」ラインガウにはない面白さである。(ラインガウでは、リースリングの比率が非常に高く、それに赤ワイン用のシュペートブルグンダーを加えるとほぼ全部になってしまう。他の品種もあることはあるが、量は少ない。) 今日はもう一つ面白いものに気がついた。畑のところどころに、日本の郵便ポスト位の大きさの、金属製の四角い箱が立っている。実はこれが「自動花火(?)発射機」みたいなものらしく、時折「パーン、パーン」と、大きな音をたてる。遠くで聞くと、まるで猟をしている銃声みたいに聞こえる。おそらく鳥除けであろう。熟したブドウは、鳥さんにだって旨いはずだから。そう言えば、バーデン(Baden)地方でもこの「銃声もどき」を聞いたが、その音源には気づかなかった。また、ラインガウではこの手の「銃声もどき」の音を聞いた記憶が無い。 この後更に南下して、プファルツ地方に入って間もないところにあるKallstadtという村で、濁り新酒を少し味わって、地元の素朴な料理とともに夕食とした。何を食ったって? そりゃ、「ザウマーゲン(Saumagen)」ですよ、ここに来れば。その上、なんとこの村にはSaumagenを名前に冠するブドウ畑もある。よって、そこで産するワインは「Kallstadter Saumagen」という銘柄になる。話の種に、こちらもグラス一杯だけ注文した。(例の0.5リットル入り特大グラスではなく、0.25リットル入りの大人しいやつ。) 話は前後するが、この辺りでは濁り新酒のことを「Federweisser」とも言わなくはないが、単に「Neuer」(新しいもの)という呼称の方が一般的である。白も、赤もある。「赤の濁り新酒」は初体験であったが、その味は白のそれとさほど違いを感じなかった。発酵の進行とともに「極甘口」から徐々に「中甘口」、「やや辛口」と変わっていくのも同様。 残念ながら車で来ているので、ワインは十分控えめにして、更に食後の酔い冷ましの散歩の時間をたっぷりとった。帰りにこの「Neuer Roter(赤の濁り新酒)」を1リットル買って(4マルク90プフェニッヒ)帰り、今自宅で、今度は安心してちびりちびりやりながら、この原稿を書いている。
今日は「ドイツ再統一記念日」で、ドイツ全土は祭日。7年前のこの日、旧東西両独が再統一した。僕はまだ東京にいて、ちょうど週1回のドイツ語のおけいこ(夜間クラスです)の日で、授業の後「不良ガイジン」を自称するHerr. Meisemannなる先生を囲んでクラスの友人数名と深夜まで飲んだ。このコーナーとは関係ありませんでしたね、失礼。 さて、夕方から天気も良くなったので、またまたいつもの所へ出かける。この時期、収穫の始まりを見逃してならじ、とプレッシャーも一際高まる。 遠目に見るマルチンスタール(Martinsthal)からラウエンタール(Rauenthal)にかけてのブドウ畑はまだ緑色一色で、先週と殆ど変わらない。だが近づいてみると、ブドウ垣根の下の方、ブドウの房がぶら下がっているあたりだけ、葉が横変している樹が多い。 いつもの所に車を止めて、いつもの散歩コースを歩き出す。ブドウの実たちは一段と成熟が進んだような感じ。緑色が更に薄くなって透明度が増すとともに、皮は微かに赤みがかって来る。もう収穫してもよさそうな感じなのだが、収穫の気配はない。 引き続き歩いてゆくと、丘の上の方で一個所、収穫中の畑があった。どうやら小規模な個人所有の畑らしく、一家+親族(?)一同、子供数人を交えて述べ10人ほどで収穫作業中。この情景から想像される通り、手摘みである。今シーズン、ラインガウ地方では始めて見る収穫風景。 この周囲でも、ごく一部収穫済みの区画を見かけるが、まだまだ全散歩コースを通して5%以下、という感じ。残念ながらド素人の僕には、今日収穫中だったブドウ品種が、リースリングなのか別の早熟品種なのかは分からない。(なんとなくリースリングっぽく見えたが、だったとしたら、他でももっと収穫作業を見かけてもよさそうなものである。) なお、所々で見かける黒ブドウの区画だけは、紅葉が一段と進んでいる。とは言っても、まだ葉全体が紅変するのではなく、葉の周囲だけが紅色になっていて、中央部は緑色のままである。丁度、大衆ワイン酒場で使われる、ブドウの葉の格好をした紙コースターのデザインみたいだ。 この後、普段なら「近くのシュトラウスヴィルトシャフト(Strausswirtschaft)でFederweisserでも飲もうか」というところであるが、明日・明後日はきっと何処かへ週末ブドウ旅行へ行くであろう、ということで今日はおとなしく帰宅。明日からの好天を祈る。
今日は隣国フランスのアルザス(Alsace)地方へ。主な目的は、ブドウの生育と収穫状況を見物することと、Federweisserに相当するこのがアルザスにもあるかどうかをチェックすること。このところ、なんだか後者のような「チェック」が趣味になりつつあるかもしれない。(何の事だかわからない方は、「クリマル」のページをご覧ください。) 昨日もインターネットごっこで夜更かししてしまったため、出発は午後となる。よって、寄り道(プファルツ地方等へ)したいところを抑えて、アルザスへ直行する。ブドウ畑が見え始めるとまもなく、ラインガウではあまり見ない薄茶色〜薄紫色のブドウの房が目に入る。アルザス名物、「ゲヴュルツトラミーナー」(Gewuerztraminer:お察しの通りドイツ語である)のブドウらしい。(本に出ている写真によると。) アルザスワイン街道(La route du vin d'Alsace)の北端近くにあるオベルネイ(Obernai)の街(ここは昨年訪れたので今回は素通り)のすぐ南、Bernardswiller(フランス人は何と発音するのだろうか?)という小さな街の広場で、収穫したブドウの容器を集結している風景が目に入ったので、ここで車を止めて散歩することに。車を止めようと脇の道に入ると、そこでも収穫したブドウを満載したトラクターが止っている。収穫もたけなわ、ということらしい。ラッキー! 近づいてみると、立ち並ぶ容器(100リットル程入りそうなプラスチックの四角い容器がこのあたりでは主流とみた)の中身はすべて緑色のブドウであった。容器に小さな紙切れが貼ってあって、「SYLV」と書いてある。「シルヴァーナー」(ブドウの品種名)のことかな、と思って別の容器を見ると、ちゃんと「SYLVANER」とフルスペルで書いてあったりする。当たり! (補足:この品種名、フランス語では「シルヴァネール」と発音するらしい。) 引き続き街の中をぶらぶらするも、これといった観光対象物はなく、街外れのブドウ畑へ回る。すぐに、前述の「ゲヴュルツトラミーナー」らしきブドウの一角に出くわし、まずは写真に収める。房も粒もわりと小柄で、色も含め、日本で食べる「種無しブドウ」(品種名としては、デラウェアと言う?)にちょっと似ている。この街の裏山を30分程歩いて見た限りでは、この「ゲヴュルツトラミーナー」らしきブドウは全体の2〜3割、普通の緑色のブドウが半分程度、黒ブドウが1割程度、そして収穫済み区画が1〜2割、といった感じ。 ブドウ垣根の造り方は、ラインガウあたりと至ってそっくりであるが、1点面白いことに気が付いた。垣根の針金を支える杭は木の丸棒もしくは角棒を使っていて、これはラインガウあたりと同じなのだが、良く見ると木の杭は地上部分だけであり、地中に埋まった部分はコンクリート製の杭である。このコンクリート製の杭に、木で作った杭を針金で結びつけてある。こういうのは始めて見たような気がする。木でできた杭だと、どうしても地中部分は早く腐ってしまうので、何年か(何十年か)経ったら打ちかえる必要があるが、このように地中部分をコンクリート製にすれば寿命も伸びる。 そうこうする内に、にぎやかな話声が聞こえてくる。収穫現場なり。ブドウ品種までは分からないが、ごく普通の緑色をしたブドウで、手摘みで収穫している。中年男女数名に、10代から20代とおぼしき男女10名ほどの一団で、2列のブドウ垣根に張り付いて収穫している。少し離れたところには、トラクターに引かれた特大風呂桶状の集果容器があり、ほぼ満杯になっている。 ブドウの話からは外れるが、もう一つ驚きがあった。この収穫の一団、みんな家族や知り合いのアルバイト、といった感じなのだが、年配者はドイツ語でおしゃべりをしていて、若年者はフランス語で話している。「アルザス地方では、中年以上の人はドイツ語をよく話す」という話はよく活字で目にするが、現在の日常生活でもドイツ語を話すとは知らなかった。 一通りの見物の後、「ワイン街道」を南下。別の村でも、醸造家らしい家の前に収穫したブドウの容器が並んでいる風景を何個所かで見る。中身を覗き込むと、すべて「緑色ブドウ」であった。また、ここでも「SYLVANER」と書かれたシールが貼ってあるのを見た。そういえば、「シルバーナーは最も早く収穫出来る品種のひとつである」ようなことが物の本にもかかれていた。他の品種は、まだほとんど収穫が始まっていないのであろう。 さて、もう一つのチェック目的である「Federweisser」に相当するものであるが、最初のうちはなかなかそれらしいものを目にしなかったが、更に街道を南下した先のある村で、いかにもそれらしい大きなポリ容器を玄関先に並べていたり、そこで買ったらしい小さなポリ容器をぶら下げて歩いている人を見かけた。看板には、手書きで「... Vin Nouveau ...」と書いてあるように見える。「見える」としか言えないのは、車窓から見ただけのため。でも、どう見てもあの中身は、Federweisserだ! 結論: 「アルザスでは、Federweisserを飲む習慣がある!」 実はこの日、ちょっと惨めな顛末が付く。アルザスのどこかで一泊しようと思っていたが、予約をしていなかったら、どこへ行っても「満室」と。「ならば、ライン川を渡ってドイツ側でも」と思うも、こちらも駄目。フライブルクの街中も、旧国道沿いのガストホーフも、果ては高速道路のサービスエリアにあるモーテル等も、すべて「満室」。結局、アルザスで17時ころから宿探しを始めて、フライブルクでの軽い夕食を挟み、23時頃Baden-Baden近くのモーテルで「満室」と言われて諦めるまで、ずっと宿探しに走り回ってしまった。で、結局どうしたかというと....仕方ないので帰宅した。到着は1時少し前。 どうせ帰宅するのだったら、もっとゆっくりアルザスでブドウ散歩して、Federweisserも飲んでみるんだったと、後悔しきり。アルザスで夕食を取って、酔いを冷まして、22時頃出発しても、1時頃には家に着くはずでした。我ながら、バカだねぇ。
昨日の惨めな結末にもめげずに、今日もブドウ散歩だ! なにせ、ブドウの収穫時期は限られているので。行き先に少々迷ったが、結局過去に収穫時期にはまだ行ったことのないヴュルテムベルク地方へ。 いつもの虎の巻である「ドイツブドウ畑地図」を隣人に貸したままなので、知っているところへ行くのが無難。よって、ハイルブロンからネッカー川沿いに20キロばかし南下した辺り、Besigheimという街からHessigheimという街にかけて、ブドウ畑の名前としてはWurmberg(回虫山?), Felsengarten(岸壁の庭)と称する畑の辺りへ向かう。実は昨年、一昨年と、いずれも夏にこのあたりを訪れている。 「回虫山?」とはなんとも奇妙な名前であるが、ネッカー川が台地の間を一際くねくね曲がりくねって流れるあたりの、急斜面の畑につけられた名前である。もしかしたら、地図でみるとネッカー川が「回虫」みたいに見えるからなんだろうか、等と勝手に考えている。(例によって、どなたかご存知の方がいらっしゃったら、教えて下さい。) ここの畑、かの有名な(一部の人だけ?)モーゼルのBremm村Calmont畑ほどではないが、相当な急傾斜である。平均45度くらいはあろうか。畑は、石垣でもって数メートル幅の段々状になっていて、各段には水平方向のブドウ垣根が、2〜3列並んでいる。あまりに急斜面なので、「段々状」とは言っても、ブドウの植わっている地面も30度くらいの傾斜がある。どう見ても殆どの畑仕事に機械の導入は不可能に見える。なお、川の両側の斜面の高さ(上の台地との高低差)はモーゼルよりずっと低く、最上部の平らになった部分には車道が通っている。 植わっているブドウの大部分は大粒の黒ブドウである。トラの巻にある写真と文章での記述、生産量の統計、そして別のところにあった「見本」から推定するに、この地方の名物でもあるトロリンガー(Trollinger)種のようである。斜面の一番上、ちょっと傾斜が緩くなったところのみ、リースリング風の小粒の白ブドウが植えられている。杭の打ち方や垣根の作り方から察するに、畑は小さい区分ごとに別の栽培者によって所有されている雰囲気であるが、ブドウの品種はほとんど同じようだ。ブドウの色は、まだ「黒々と」と言う感じではなく、この傾斜地一帯では収穫もまだ始まっていない。 ネッカー川に沿ってしばらく行くと、ちょっと開けた感じになって、Hessigheimの村に出る。村の周囲は緩斜面の広々としたブドウ畑で、その一角にFelsengarten Kellereiという、共同組合の巨大な醸造所がある。直売コーナーは日曜日は休みであるが、駐車場の一角に立ち飲みスタンドがあり、脇にはベンチが並ぶ。天気がいいこともあってか、すごい人出。 ちなみに、以前夏に行ったときは、何もなくひっそりしていた。 スタンドでは、普通のワインもいろいろな種類が供されているが、我々は「Neuer」を。ここのNeuerは赤のみで、白はない。よって当然、Federweisserとは言わない。さてここのスタンドの赤Neuer、なかなか不気味(!)な飲み物である。まず、色が濃く、まるで醤油みたい。そのせいかどうかは分からないが、白濁が見られない。更に、とてつもなく甘い上にアルコールを全く感じさせず、また発泡もしていないので、これまでに飲んだ「Neuer」だとか「Federweisser」などとはだいぶ感じが違う。味も香りも、ヘンな例えだが....なぜか日本の缶入り紅茶(ドイツにはありませんよ!)に通じるものがある。実はこのNeuer、まだ発酵が殆ど進んでいない状態だったからで、一日経つと普通の「濁り新酒」になることは、翌日わかった。 引き続き、緩斜面ブドウ畑散歩に。こちらでは、ざっと見て2〜3割程度は収穫済。ブドウ品種は、先程の急斜面でみた大粒黒ブドウの他、小粒の黒ブドウもかなり見かける。これまたこの地方名物の、シュヴァルツリースリング(Schwarzriesling)か。統計によるとこの地方(ヴュルテムベルク)全体では赤・白半々位らしいが、今日見た地区に限って言うと、8割以上が赤ワイン品種(即ち黒ブドウ)の模様。 ちょっと意外だったのは、どこでも収穫風景を見かけなかったこと。一般的には日曜・祭日の労働が非常に嫌われる(工場等では、無許可で働くと違法行為に問われる)ドイツではあるが、ブドウ収穫のように天候とタイミングが勝負の作業ばかりは例外で、ラインガウを始め、大抵のところでは日曜日でも収穫風景を見かけるものである。だが今日は一件も見なかった。不思議。 この後、同じ村の道端で売っていたNeuerを一本買って、帰路につく。
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