21-Oct-97 登場
22-Feb-98 更新

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くるくる

--- 自動車にまつわる雑文集 ---
(走行距離20万キロ突破記念)


男の子は乗り物が大好きです。僕も例にもれず、電車・自動車・ヒコーキ・バイク・自転車、みんな大好きです。このページは、先の「へこへこ」(ヒコーキ)に続く第2弾、自動車にまつわるお話し集です。




サブ目次

【第0話】 まえがき

【第1話】 男34歳、教習所へ

【第2話】 車選び、その1

【第3話】 車選び、その2

【第4話】 あれっ、パワステ???

【第5話】 遠乗り  New! (22-Feb-98)

【第6話】 ローマでくるくる  New! (22-Feb-98)

【第7話】 ドイツで車を運転してみようという方へ  New! (22-Feb-98)






まえがき (??-Aug-97)

このたび愛車の総走行距離が20万キロに到達した。

買ったのは中古車なので全部が全部自分の走行距離ではないが、そのうちの13万キロ弱は自分の分。約4年半でそれだけ乗った。結構、すごいと思いません?....なんてことを自慢して、まるで免許とりたての若造みたい。でも「免許取りたて」は事実なんで仕方ないか。

ちなみにこの間、故障ではない消耗品だけでも、ブレーキディスク一式交換2回、タイヤ更新3回、カムシャフトのタイミングベルト交換3回、錆びて朽ち果てたマフラーとラジエターの交換各1回、バッテリー交換1回。他にも、フロントガラス交換(石でヒビが入った)1回、自分でぶつけた板金修理(一部保険でカバー)、その他細かい修理も多数あり、結構な金食い虫である。

それでにもかかわらず、僕は今の車がますます気に入っている。「出来の悪いムスコほど、かわいい」という、アレなんじゃないかなと思う。




 
男34歳、教習所へ (19-Oct-97)

今時、普通運転免許なんて20歳ころまでに取ってしまうのがごく一般的だ。男に限って言えば、20年前(えっ、そんな昔になっちゃたったの?)でもだいたいそうだった。中には「オレは車に乗らない!」という人種が少しはいるが、そういう人達はふつう、最後まで乗らない。

僕はと言うと....暇はあっても金に余裕のない学生時分、さほど車に乗りたいとは思わなかったので免許は取らなかった。卒業してサラリーマンを始めると、とてもそんな時間は無い。といっても、当時は土日が仕事でつぶれることは希。他の趣味、例えば山やスキー、音楽活動(ヴィオラ弾き)の方がプライオリティーが高かっただけのことである。それに、東京近郊に住んでいたので、生活には車は不要である。回りに車を出したがる人種はいくらでもいるので、友達どうしで遊びに行く車にも不自由はしない。

そんな訳でずっと免許無しでいたのだが、33歳の時にドイツ勤務の内示を受けた。これは突然でも何でもなく、むしろ長年の希望が叶ったのである。ただ、どんな本を読んでも、また知人の話を聞いても、「車なしの生活」は現実的ではないという。それに、もともと車が嫌いな訳ではない、というより乗り物全般大好き人間なのだ。よって、これを機に教習所通いを始めた。一時は、運動神経の鈍さに落ち込んだりもしたが、仮免落ち1回、述べ4時間オーバーで終了したから、マアマアであろう。かくして転勤2ヶ月前に免許を確保した。

なお、こちら(ドイツ)へ来て感じたことだが、こと都市部に住む限りは「車無しでの生活は困難」なんてことは決してなく、車を持たないドイツ人家庭はいくらでもいる。ただ、車の便利さは日本の比ではない。我々のように滞在期間の限られる駐在員家庭にとっては、「最大効率で見聞を広めるため」にも、車の威力は絶大である。




 
車選び、その1 (19-Oct-97)

ドイツ赴任が決まると、たいていみんな「車は何にしようかな」と考えることが楽しみになる。なにせ「速度無制限のアウトバーン」の国だから。(これにはちょっと考えさせられることも多いが、また別の機会に。)こんな人達の間では「間違いだらけの外国車選び」がベストセラーである。みんながみんな同じ本を読み、少なからず信じてしまうのは何か恐ろしい気もするが、他に似たような情報ソースがない(知られていないだけ?)なのだから仕方が無い。かく言う僕も、一時はこの本を貪り読んだ。

さて赴任。さっそく、週末は車探しに歩き回る。回りの同僚にとっても「今度来た誰それは、どんな車を買うのかな」というのは、いつも格好の話題である。中には自分の趣味を押し付けんとする輩もいる。ちなみに僕の会社の日本人駐在員連中は、そんなにいい給料をもらっている方ではないと思うのだが、結構無理してでもかなりの高級車を買う人が多い。昔から「ベンツ派」と「BMW派」が拮抗していて、前者なら「ミディアムクラス」(今で言うEクラス)、後者なら「5シリーズ」が目立つ。さすがに、こういう車を新車で買う金のある人はまずいない。みな中古車である。中には、もう少し「身近な車」(例えばVWゴルフ等)の新車もしくは新車に近い中古車を買う人達もいるが、少数派である。

20代〜30代前半の若い連中の多くがこのような高級車を乗り回す訳だから、回りのドイツ人達には「日本人駐在員って、えらい金回りがいいんだな」と映るらしいが、先にも書いた通り実態はかなり無理している場合が多い。そこまでしてでも「Eクラス」や「5シリーズ」に乗りたがるのは、「日本でこの手の車に乗ることなんて絶対に有り得ないから、ここにいる間に楽しんでおきたい」と思うからに他ならない。

僕の場合はどうだったかというと、このクラスの車は最初から考えていなかった。理由は2つ。
 ・まず第1に、予算の都合。これは明快!
 ・もう一つの理由は、車のサイズ。
なにせ「若葉マーク」なので、駐車場なんかでぶつけないためにも、大きな車は避けたかったのである。でも「ドイツの名車」には乗りたい、と言う訳で、対象は小ベンツ(190E)、BMWの3シリーズ、アウディ80、あとはちょっと控えめにVWゴルフあたりとなる。

「何だ、全然ポリシーというものが無いじゃないか!」

恥ずかしながらその通り。

実は「間違いだらけの..」を読むずっと前は、BMWの3シリーズが欲しいと思っていた。ほとんど、心に決めていた。ベンツは嫌いだった。理由は、単にデザインの問題。アウディなる車は良く知らなかったし、ゴルフはもっとグレードの低い車だと思い込んでいた。要は、その程度のことしか知らなかったのだ。

反面、僕は活字に影響されやすい。すると....「間違いだらけの..」によると、小ベンツとゴルフは、それこそ最高の車であるかのように書かれている。他方、BMWは「マアマア」みたいに。他方、ドイツに渡ってみると、よく見かけるアウディ80のスタイルも捨て難い....という訳で、上記のような「ポリシー無し状態」になってしまったのだ。

そんな訳で、まずはとにかく中古車屋をヤミクモに見て回る作業が始まった。




 
車選び、その2 (21-Oct-97)

まずは予算を決める必要がある。僕は2万マルク(92年11月当時で、約170万円)を予算の目安とした。随分贅沢だなって? でもねぇ、ドイツじゃ車は高いんですよ。

次に最低条件を決めた。
 「パワステが付いていること」と「100馬力以上あること」
最初に借りた会社の車の運転を通じて、パワステ無しの縦列駐車が初心者にとって如何に難しいか、また非力な車で混んだアウトバーンの車線変更が如何に苦しいか、すでに痛感していたので。

後者はともかく、前者の条件が実は曲者。日本の皆様には信じ難いかもしれないが、当時のドイツでは、ベンツ以外の小型車(日本の5ナンバー枠と考えよう)ではパワステはオプションが当たり前で、装着率は滅法低い。VWゴルフ(第2世代)なんて、限りなくゼロに近く、アウディ80やBMW3シリーズでも極めて希。たまにあると、オートマチックだったりする。当時このクラスの車でオートマのものは「非力」と言わざるを得なかったので、これまた避けた。(小型車のオートマなんて、真面目に作っていなかったんじゃないかな?)

そして予算。2万マルクのベンツなんて、それこそ15万キロ程走ったようなやつしかない。よって、ベンツの線は早々と消える。まぁ、元々デザインも好きじゃなかったしね。

ついでに言うと、当時VWゴルフは新型(第3世代)に変わったばかりで、こちらはパワステ装着率もそこそこだったが、なにぶん新しい車しかないため、軒並み3万マルク以上で、論外。

かくして、2ヶ月ほどの間、毎週末精力的に車探しをして、ようやく「これならいいか」というのに出会い、腹をくくった。決めた車は、

 BMW320i、90年式(旧型)、走行71500キロ、20500マルク也。

何のことはない、結局は一番初めに欲しいと思っていた車種に落ち着いた。ちなみにこのタイプ、10年ほど前のバブルの頃、日本にも随分輸入され、口の悪い人達は「六本木のカローラ」と呼んでいたそうな。




 
あれっ、パワステ??? (21-Oct-97)

契約前、試乗はできるかと聞いたら、「売り先が決まって初めて整備をするので、ダメ」という。まあBMWの直営ディーラーなので、そんなにヒドいことはやらないだろうと思い、「ちゃんと1年間保証付き。信用しなさい!」との営業マンの言葉を信じる。もっとも、独語と英語ではそれ以上の交渉が出来なかったと言った方が正しい。

おかげで、というか、面白い経験をした。(今だから笑い話だが。)

さて、待ちに待った引き渡しの日。先日契約したときのドイツ人営業マンを尋ねてゆくと、なんと日本人スタッフがいらっしゃるじゃないですか。それも2人。ドイツ人営業マンは「じゃあ、あとよろしくね!」とかなんとか言ってすぐ居なくなり、後は日本人スタッフの方々がいろいろ説明してくれる。なあんだ、そうと知っていれば最初からこの人達を尋ねてきたのに....

さて、随分丁寧にいろいろ教えてもらい、ようやく出発。さすがに気持ちがいい。それまで乗っていた会社のオンボロ車(オペルのKadett 1.6)とは大違い。(そうじゃないと怒るけど。)

すぐにガソリンを入れたのち、「フロアマットでも買おうか」と、近くのショッピングセンターへ。そこの駐車場へ来てはじめて「あれっ、なんかヘンだぞ?????」と気が付く。なんだかハンドルが重い。会社のおんぼろオペル(パワステ有り)よりずっと重い。別の「パワステ無し車」(たまに乗ったことがある)と殆ど同じ。慌てて売買契約書を取り出して見直してみる。確かに、オプション仕様の項には「Servolenkung」(パワステのこと)と書いてある。でも、重い!

恥ずかしいかな、究極の初心者の僕には、「パワステ有無」を判定する自信が無かったのですね。それで、先程会ったばかりのBMWの日本人スタッフに電話する。先方、「そんなアホな」と言いながらも、結局僕の懇願(?)に折れて「じゃあ来てください。見ますから」と。

ボンネットを開けてほんの数秒後、「ホントだ、無い! 信じられない!」。

さてどうしたものか。すでに夕方6時を回っていて、他の人達はだれもいない。先方「明日、上の者と対策を相談します。また電話します。」ということで、帰宅。でも....やっと気に入った車が見つかったのになぁ....と、落ち込む。引き渡しこそついさっきだったが、契約から1週間の間で、すでに愛着を感じていたのでした。

翌日昼ころ、BMWの日本人スタッフの方から電話。
「当方の書類処理上のミスです。申し訳ありません。でも、もう登録もしてしまったので、できれば解約しないでそのまま乗ってもらえるとありがたい。いくら値引きしたらご容赦いただけますか?」
「う〜ん、私は初心者なんで、パワステが絶対条件なんですよ。例えば、いまここで何千マルクか引いてもらったとしてもですよ、一度駐車場でゴツンとやったら、それくらい吹っ飛んじゃいます。そうなると後で後悔する。残念だけど解約かないのかなあ....」
「そうですかぁ。....じゃ、何が出来るか、もう少し考えさせて下さい。」

で翌日、同じ人から電話。
「パワステ、後付け工事で取り付けます!」
「ええっ、そんな事って、できるんですか?」
「私も出来ないと思っていたが、ドイツ人の技術の連中が『出来る』と。但し、なにぶん標準修理部品じゃないので、部品手配に2週間ほど時間をください。」

かくして、部品待ちの2週間はとにかく狭い所には近寄らないように気を付けて過ごし、その後世にも珍しい「中古車へのパワステ後付け工事」を経験したのでした。




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