そんなこんなで1カ月強におよんだ旅行は無事終わった。
今こうして改めて日記を読んでみると、目に付くのは体調を崩した、 気分が悪くなった、という記述ばかり。はた目にはずいぶん大変な旅行だったように思う。 でかいやつだけでも、敦煌で頭痛をわずらい、カシュガルで下痢に苦しみ、 帰りの鑑真号では高熱で寝たきりになりと、3回も体調を崩している。これは自分が特に虚弱だからというわけではなく、 途中からずっと一緒だった柿内君もカシュガルからウルムチに戻る飛行機で大変だったし、 旅行中体をこわして寝込んでいる旅行者は何度も見た。 それだけシルクロードの風土は過酷で、慣れない旅行者には時としてとても厳しいということだろう。 日記を見ていてもう一つ気が付くのは、いわゆる観光名所はほとんど訪れてないか、訪れたとしても記録が平板なことだ。 西安の兵馬傭坑、敦煌の莫高窟など世界に名だたる観光地にも一応行ったものの、それそのものの印象はとても薄い。 むしろ、兵馬傭坑だったら外国人の入場料が40元もしてとても 高かったとか、莫高窟だったら入口でカメラを預けるのが 心配で仕方なかったとか、そういう本質的でない部分の印象のほうが強い。この理由には色々あると思うが、ひとつには、 自分のような貧乏旅行をしている者には、そういった名所は全体的に洗練されすぎているというか、パックツアーの観光客に 占領されつくされている印象があり、その反発もあったのだろう。また人々の日常生活が我々のそれと かけ離れているために、彼らの暮らしぶりを見るほうが よっぽど刺激があったというのも理由の一つだろう。 この旅行から帰ってきて以来、つねづね人に語っている「印象深い旅行の3要素」がある。料理がうまいこと、 人と会話できること、ハプニングを経験すること、の3つである。1番目の料理に関しては、中国は申し分ない。 日本では中華街に行かないと食べられないようなおいしい中華料理を、毎日毎日財布を気にせず食べることができる。 しかも円卓形式で大勢で食べるものなので、一人で行っても同室の仲間を誘ったりでき寂しくない。 2番目の人との会話も重要だ。中国では、旅行者同士の情報交換が旅をスムーズに行う上で非常に大切で、旅行中は 何人もの旅行者と親しくなった。それに加え、中国では漢字が使えるので、現地の中国人とも 筆談でなんとかコミュニケートできた 中には仲良くなって帰国後文通した人もいる。 3番目のハプニングは、ちょっと意外に思われるかもしれないが、印象深い旅行の必須の条件だと思う。 命に関わるような大変なトラブルはともかく、列車の切符がいつまでも取れないとか、腹をこわしてトイレから離れられないとか、 変な料理を注文して食べ方が分からず困った、といった出来事は、旅行から戻ったあとでも印象のなかに強く残るものだ。 こうしてみると、中国シルクロードは以上3つの条件を全て満たしていることになる。このページをつくったのは、1996年の 夏で、旅行から4年もたっているが、まだあの当時の記憶は 鮮明だ。 中国へは、また行きたいと思っている。今回は東から西へ中国大陸を 横断したから、今度は北から南へ縦断したいなと思っている。満州・北京から広州・香港まで、2500キロの旅が実現できれば、 またホームページをつくってお知らせします。 (おわり) |