アメリカ的いぬの生活 その十四
「ペットシッターとケンネル」
ケンネルとはこちらのペットホテルのこと。ポチは小さいときからお泊まり経験が
多い。なぜなら、今でこそほとんどおとーさん
がシカゴの実家に帰宅するが、最初は慣れないので、おかーさんがおとーさんの
アパートへ行くことも多かったからだ。そうするとどうしても、ポチは預かって
もらわねばならない。
最初は入学前にふたりでおとーさんの担当教授にごあいさつに行ってついでに
単身赴任前最後の旅行としてナイアガラの滝を回って帰ってきたとき。4泊5日
だったと思う。このときはペットシッターさんを頼んだ。初めてだし、自分の
慣れた家で留守番した方がいいと思ったからだ。シッターさんもとても良い方で
事前に通常の散歩道を一緒に歩いて道順をチェックしてくれたり、自宅に来て
ご飯の量やいつものおちゃわんの置き場所なども学んでくれた。何回も会ったので
ポチもすっかり慣れておばさんが好きになっていた。
まずは安心かなと思ってお出かけ。一日3回立ち寄って散歩とご飯、そして
少し一緒に遊んでくれたりおもちゃを取り替えたりしてくれるという契約だ。
ご飯の時間も出来る限り通常と同じ時間に与えてくれる。
一日15ドル。毎日シッターさんの自宅に電話をして今日のポチの様子を
聞くこともできる。
シッターさんは良い方だったし条件も通常より良かったにもかかわらず、
これは大失敗。ポチはひとりで夜中を越すお留守番の出来ない子だったのだ。
電話でかなり家にダメージを与えたことは事前に聞いていたが、帰宅してみて
この目で状況を見たときあまりにかわいそうで涙が出た。
アパートのカーペットには1メートル四方
くらいにわたってむしり取られた大きな穴があき、そのため台所(約四帖半)
の中だけに行動を制限されていたポチは本人も汚いしボロボロだった。
シッターさんは、一人遊びが苦手な子もいるから、ポチはたぶん常に誰かまたは
少なくとも他のイヌが側にいるケンネル(ペットホテル)のほうが向いているのでは
ないかと教えてくれた。
次は同じアパートでイヌを飼っている人に勧められたケンネルに預けることに。
そこはケンネルとしつけ教室を経営している施設で常にお客さんでにぎわっていた。
ポチは経営者の娘さんがわりと気に入っておとなしく中に連れられていった。
ほとんど短期滞在ばかり、たぶんそこには5回ぐらい行ったかな。
ときどき自宅に戻ってからちょっと下痢してたこともあったけど、大きな
問題はなかった。
しかし1997年の年末に一年ぶりに日本に二週間帰国した時、ポチは初めての
クリスマスもお正月もひとりでケンネルで過ごすことになってしまった。
日本は懐かしかったけど、あまりにポチが気になって心から楽しいとは思えなかった。
アメリカに戻ってポチを迎えにいったら、お風呂に入れてもらって
いたので匂いからどんな生活だったか想像することはできなかったが、
その気が狂わんばかりの喜びようと真っ赤に擦りむけた鼻が、いかに寂しかった
かを物語っていた。与えられた部屋から出ようと鼻で何度も網を押したに違いない。
どんなに施設が整っていても、もう二度とポチを置いて日本に帰ることはしないと
ふたりで心に誓った。それ以来三年まだ一度も日本に戻っていない。
引っ越ししたこともあり、またポチのお気に入りの娘さんでなくアルバイトが
イヌの受け渡しをするようになったのでそこのケンネルは使わなくなった。
ケンネルもたくさんあるが、日本のようにペットショップが兼業というところは
たぶん一件もないのではないかと思う。近所で探してみたら超豪華BGMに三時の
おやつ付きのところや、とても大規模でイヌはもちろん鳥、カメ、ヘビなんでも
預かりますというペットモーテルというチェーンなどがあることもわかった。
ただ普通は動物病院がケンネルを併設しているケースが多いようだ。
ちょうどそのころいつもお世話になっているケア・アニマルホスピタルがケンネル
を始めると聞いて、ポチは大好きなバフトン先生のいるケア・アニマル
ホスピタルにお泊まりすることにした。はなこが妹になってからは、ふたりで
ちゃんと隣同士の部屋に入れてもらっている。持参するのは、いつも食べている
フード。ここではおもちゃは持っていけないことになっている。
一日二、三回の散歩付きで、一泊14ドル。迎えに行く当日にシャンプーして
もらうと爪切り耳掃除込みで20ドル追加。前日シャンプーのみだと追加料金なし。
今のところ大きな問題もなく、帰宅後のポチの下痢もまったくなくなった(^^)。
先日初めて中を見学させてもらった。見学希望を断らないのは、良い施設である証拠の
ひとつといえる。とても清潔だが、やはり思ったよりずっと
狭い。近所迷惑の事も考えて、コンクリート張りの部屋は、外に鳴き声が届かない分、
内側ではすごい反響音だ。この日から、ポチとはなこは、隣同士の部屋の垣根を
取り外して二部屋続きにしてもらった。それでも狭いので喧嘩しないか心配だったが
試してみた。結果は良好。これからもお泊まりが必要なときはそうしてもらおう。
迎えに行くときは、会計で支払いをしていると奥の方から「ハァハァゼーゼー、ハァハァゼーゼー」と
リードをおもいっきり引っ張っている音が近づいてくる。すぐに、係りの人を引きずるよう
にして走ってくるポチとはなこの姿が目に入る。
「ごめんねぇ、迎えに来たよっ!」
「おかーさぁーん!」
ポチはな大ジャンプ、合わせて55キロではちとキツイ(爆)
会計係の人がビスケットを用意してくれるのでおすわりして、おやつをもらったら
お家に帰る。たまにおとーさんも一緒に迎えに行くこともあるが、そうすると
落ち着くのに倍の時間がかかる(笑)。そして
おとーさんはたいてい帰宅前に公園で散歩していこうかと言ってくれる。ゆったり
うん○もして、心地よく疲れて、おとーさんおかーさんに見守られて熟睡のポチと
はなこがそこにいる。
しかしドッグパークで他の飼い主さん達と話をしているとやはりペットシッター
賛成派がだんぜん多い。シッターさんも
たくさんいるし、ペットシッター協会という組織もあるようなのでサービスの
質も監査されているようだ。飛躍的にお泊まりの回数も減ったこともあって、
またポチも以前とは違ってずいぶん大人になったし、今ははなこも一緒だから、
ホントはもう一度ペットシッターを試してみたいのだが、ポチ
はなとーさんが反対なのだ。成長してもポチの寂しがりやさんはぜんぜん治ってないし、
ましてもしポチが大丈夫になっていても、はなこ自身がダメかもしれないというのがその理由。
たしかに、夜泣きでご近所との仲をこじらすリスクはおえない。
やっぱもうしばらくこのまま様子を見てみるかな。