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散歩できる頃になって外に連れ出すと、これまたハナは問題児ぶりを発揮した。ちょっと歩くと「もう行かない」と立ち止まっしまうのだ。これにもまったく驚いた。およそ犬というのは、散歩といえばしっぽをフリフリついてくるもんだと思ってたから。そして「行かない」と動かないハナを無理矢理連れていこうとすると、怒ってリードに向かってとびつき、暴れまくる。なんとも困った内弁慶ぶりである。
本当だったら、もう毎日散歩に喜んでいく頃なのに、ハナときたら、玄関のところでつまづいていた。こちらも相手が喜んでくれないし、暴れるからついつい散歩に行くのがおっくうになり、ハナはますますひきこもり犬になった。外に行かず、家で悪いことばかりやるので、家族全員がお手上げ状態だった。はっきり言って、もう誰かもらってくれんだろうか、とかそんなことも考えていた。そして、ハナがやってきて5ヶ月目のある日、事件が起きた。 ハナがわたしのCDを持っていってかじっているところをとりあげようとした母が、思いっきり噛まれたのである。(ハナがかじってしまったCDがゾンビーズであったところが、なかなかサイケでいかした趣味をしているなとも思ったけど)「がおー」と野生丸出しのものすごい剣幕でむかってきて、手を思い切り噛まれたらしい。不幸にも私たちは留守中で、母は一人でがんばってCDをとりあげ、自ら消毒したあと、大急ぎで医者に行った。傷口は深くて、何針か縫うけっこうなケガだった。 このまさに「飼い犬に手を噛まれる」の一件から、さすがに事態は深刻になった。これが小型犬ならば、まだしょうがないで済んだとは思うが、相手は大型犬である。これからさらにでかくなったら今度は生命の危険も感じなくもない。それよりも問題なのは、母の精神的なショックで、しばらくハナの顔も見たくない、と言ったことだった。このままではハナの思うツボで、我が家にハナ女王が誕生してしまう。しかしそれは私たちにとってはもちろんのこと、ハナにとっても幸せなことじゃない。家族のリーダーになるなんて犬には重責すぎるもの。それに何よりも、家族に愛されないなんて。サイテーの犬人生である。 |