このホームページを始めてもうだいぶ経つが、自動車運転免許の取得についてはもうちょっと早く書かなくてはいけなかったかもしれない。
アメリカで生活する上で交通手段としての車は必須だろう。確かに東京の様な大都市であれば必要無いのと同様、New York の Manhattan では必要無いかもしれない。がそこを除けば都市に住んでいたとしても車がないと生活は途端に不便になるはずだ。日本の様に駅前に行けばコンビニエンスストアやスーパー、床屋、本屋、レストランなどすべてが揃っているような町作りにはなっておらず、どちらかというといろいろなものが点在しているので、これらを利用するには車で周る必要があるからだ。一家に車が2台以上というのは、納得できる数字である。
さて車を運転するための免許だが、各州ごとにその取得方法も、免許証のデザインも全く異なっているので、以下は僕が New York で経験したことに基づいて紹介している。
まずはプロセスだが大きく分けて3段階ある。
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DMV に行き、必要書類に記入の上、視力検査、学科試験 |
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民間のドライビングスクールで5時間講習、学科試験 |
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DMV に電話し、路上試験の予約 |
↓ ( およそ3ヶ月後・・・ ) |
路上試験 |
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New York 州の Driver's License。 |
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New York 州の Driver's License。背面。死亡時の臓器提供のサインをする個所がある。 |
DMV とは正式には Department of Motor Vehicles といい、日本で言うところの陸運局と交通運転免許センターの両方を行っているようなところだ。
ちゃんとホームページもあって、http://www.nydmv.state.ny.us/ からアクセスできる。実際ここに免許を取るまでの手順が詳しく書かれているので、これを参考にしながら僕が免許を取ったときのことをかいつまんで紹介する。
まずは最寄りの DMV に行き、自動車免許取得のための書類に記入し、お金を払う。このとき本人証明のための書類として6ポイントが必要になる。ここで言うポイントとは6種類、ということではなくそれぞれの重みによりポイントが異なる。たとえば US パスポートはこれだけで4点、他州のドライバーズライセンス、外国人のパスポート、グリーンカードなどは3点、ソーシャルセキュリティカード、NY州高校・大学卒業証明書、NY州婚姻証明書、NY州銃所持許可証 ( ! ) などが2点、米国発行のメジャークレジットカード、キャッシュカード、社員証、会社から発行される年間所得の証明書などは1点だ。とはいえクレジットカードは何枚持っていても1点にしかないので、いろいろな証明書を集める必要がある。ここで注意しないといけないのは、ドライバーズライセンス自体が個人証明書のように働くアメリカで、外国人にとって6ポイント集めるのは結構難しいと思う。前にも書いたがソーシャルセキュリテを取得するときもポイント制だし、銀行の口座を開くのもポイント制なので、どれかがないとどれかが取れないのだ。明らかに矛盾している・・・
申請書の中には、自分の身長体重、目の色などを記入する欄があるのでそれぞれフィート、ポンドでどれくらいか調べていく必要もある (目の色は black とか brown で良いようだ )。僕が行ったときも実は身長がフィートでどのくらいあるかわから無かったので担当の人にどうしたらよいか尋ねたら、近くにいた僕と同じくらいの身長の人を捕まえて「あなたいくつ?」と聞いて、その人の身長をそのまま記入したのだった。
でそのあと簡単な視力検査を受けると、学科試験用紙を一枚渡され、「そこにある椅子に座ってこのテストをやってください。終わったら持ってきて」といい簡単に学科試験が始まる。申請カウンターの前には、高校のときの音楽室にあったような小さなテーブルが出てくる椅子が10脚ほど用意され、僕が行ったときは3人の人がテストを受けていた。椅子と椅子の間は狭いので隣りの人の回答が丸見えだが、そんなことはあまり問題ではないらしい。制限時間はないのでじっくりやってもよいのだが、問題はそれほど難しくない。DMV には試験を受ける前の予備知識の豆本がおいてあってこれを前の日に読めば英語でも試験は楽勝だと思う。( 聞いた話では NY 州では何カ国語の試験問題集が用意されているらしい )
テストは全部で25問、うち8割正解で合格になる。ちなみに僕が受けた前年は一時的に出題数が5問しかなかったそうだ。しかもそのうち2〜3問は標識問題。これでは簡単すぎるだろうということでまた25問が復活したそうだが。
問題の中で特に固執しているのがアルコールに関しての部分だった。血中アルコールいくらまでが運転してもOKだとか、ビールは何本、ワインだったらグラス何杯までがOKかだとか、身長と体重のどちらが血中アルコールの残存時間に影響するかだとか言った問題が10%以上だった。
すべてが選択問題なのでマークを終えるとカウンターに戻り、試験用紙を手渡す。その場で採点が行われ、合格すれば「You passed」と言われ、次の段階の説明を受ける。たとえ試験に合格しなくても次回のテストも無料だし、見ているとその場で「もう一回受けてみる?」と言われて再挑戦している少年もいたくらいだ。
次のステップは民間のドライビングスクールでの5時間講習とテストだ。民間のドライビングスクールとは日本の教習所と同じで横に教官が乗り、運転の練習をさせてくれるところなのだが、日本のように教習コースがないので、市街で練習をしている。これを受ける必要はないが、この後の路上試験の前に練習する人向けのようだ。
5時間講習はビデオと実際のレクチャーが入り、交通事故がどのようにして起こるのかや、アルコールを飲んでの運転が以下に危険かなどのビデオを見させられる。僕は仕事が終わってからの夜の講習だったので終わったのは10時を過ぎていたと思う。
そのあとでやはり DMV で行われたのと同じような内容のテストが行われる。ここでも各国語のテスト問題が用意されているいうので、日本語のものをもらったが訳が不明な個所があったので、結局英語のものと見比べながらテストを受けた。
その後テストの合否をその場で教わり ( このコースは有料だが、テストに落ちても次回は無料 ) 、DMV での路上試験予約電話番号と今回のこのコースを合格したことを証明する個人ごとの固有の番号が書かれた用紙をもらい、5時間講習は終了。
で最後は路上試験なのだが、ここまではあっという間に済むのだが、僕が受けたときの New York の状況は路上試験は予約を入れても最短で3ヶ月後ということで、仕方なく待つことになった。この間 Learner's Permit と言われる仮免許証のようなものが送られてくる。これは助手席に New York 州のドライバーズライセンスを持っている人が同乗している場合には運転してもかまわない、というしろものだ。
路上試験はこれまた市街の人気の無い一般の路上で行われる。指定された時間にその場所に行くと、車が道路の路肩に止まって待っている。たいていは二人人が座っていて、一人は被験者でもう一人は上記のような理由で来た New York 州のドライバーズライセンスを持った人だ。路上試験は自分の車を持ち込んで行うのでそこの試験場に行くまでであっても助手席に誰かいなくてはいけないのだ。中にはドライビングスクールの車で教官と一緒に来ている人もいたようだ。僕のケースでは国際運転免許証があるので Learner's Permit しかなくても1人で運転していってよいのだ。
試験が始まると横に試験管が乗ってきて、「そこを直進」「縦列駐車」「3ポイントターン」などと指示してくる。テストは人気の無い場所から住宅地に移動して行われる。これはあちこちに STOP サインがあるのでちゃんと停止するかどうかを見るためのようだ。( でもここに住んでいる人はいい迷惑かも。中には縦列駐車で前後の車にぶつけたりする人もいそうだし )
5分ほどの運転でテストは完了。後日自宅に正規のライセンスが送られてくるが ( 写真 ) 、それまではその場で発行してくれるぴらぴらの合格証明書が免許証のかわりになる。
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なお、国際免許証からの書き換えだが、New York 州は認めていない。また他州から来た人も一定期間以上 New York に住みはじめてから3ヶ月以内に New York 州の免許を取得しないといけないことになっている。他州からの書き換えは、まさに書き換えだが、国際運転免許の場合は新規に取得しなくてはいけない。州によっては日本の国際免許証からの書き換えを認めているところもあるようなので、事前にローカルの管轄部署に聞いてみると良いだろう。ちなみにアメリカの各州の運転免許証は日本の自動車運転免許証に書き換えが可能なのだ。しかもそれは国際運転免許とかではなく、州発行のものが有効なんだからさらに納得できないよね。日本の自動車免許は手間と金をかけて、しかも高度な技術まで要求されて取った免許なのにそれが通用せず、アメリカで簡単に取った免許が日本で書き換えが可能なのはどうも首をかしげてしまう。
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