声の音楽〜桃山晴衣と「ももやま塾」
「ももやま塾の主催、桃山晴衣とともに、「声の音楽」をお楽しみください。
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声の音楽が危機に瀕しています!
桃山晴衣の紹介
by Kuwamura,Hiroshi
「ももやま塾 こゑ・からだ そしてうた」96年4月
というワークショップに参加してきました。
1996年春期講座
1996年4月12日(金)18:00〜20:00
13日(土)、14日(日)13:00〜20:00
場所:両国 コミューンX(cai)(シアターXの2F)
主宰:桃山晴衣
「新内」に必要な江戸言葉の更に前にある、中世の歌謡のことばを学びたい、 と思ったのがこのワークショップに参加したいちばん大きな理由です。 むずかしいことではなく、昔なら女の子がまりをつきながら当り前にやっていた程 度のことを、とり戻そうということなのです。
初日に、「春駒」という郡上八幡(桃山の住い)の盆踊りの囃子ことばと踊りをや ったとき、囃子ことばはともかく、踊りがまるでうまくいかないので、愕然としま した。フランスの「太陽劇団」でのワークショップの時に、フランス人らが、かけ 声まで入れて踊ったという話を聞かされて、なおさらショックでした。
しかし、さまざまな呼吸法、腰をいれた歩き方、アイヌ、日本、アフリカなどの体 を使う遊び唄、集団での声の遊びなどを繰り返すうちに、次第に永年かけて鎧って きたものが落ちていくのが分かりました。
そして、2日目、「春駒」の踊りは素直に体に入っていきました。 3日目に桃山が前進座「蓮如」のために考えたという、「念仏踊り」の触りをやり ましたが、見たときはこんなこと今更、終りも近付いているのに覚え切れるかいな、 と思ったのですが、比較的楽に覚えられました。というか、そういう踊りは、なに も考えずに大地の気に従って素直に動けば、自然とできてしまうもののようです。 この2つの踊りはもう忘れないと思います。
その他に静内アイヌのうた「つっかわァ(月から) かむいらん(神が来る)」 (岡本頼子口伝)、岐阜可児の手まり唄「庄屋さんの裏に」、教科書にのっている のと違う「木曾節」などを覚えることができたのも収穫でした。 短い唄、ことばなどを3部、4部に分けて輪唱していくと、本当に気が回っていく のが見えるようでした。
セネガルの子供うた(ピーター・ブルック「テンペスト」で桃山と競演した俳優ソ ティギ・コヤテ口伝)も面白かった。短いことばの繰り返しと、吐気と吸気の両方 に音をつける(100M走直後の吐く息の方に「ダ」という音をつけたかんじ)を、 2つのグループで交互にくりかえす。「ダ」の方は、まるで動物のようです。 また、アイヌの舟こぎ唄「ウークンロ ハンロ」これは2つの言葉の繰り返し。 「ウークンロ」で押して、「ハンロ」で引くのを2つのグループで交互に繰り返す。 繰り返すうちに、みんなの波が次第に高まっていくのが分かります。
「蓮如」にあたっては、前進座の役者全員に1日5時間×1か月のワークショップ をほどこしたそうで、期間が短いとは言え、圭史や梅之助たちと同じことをやった と思うと、また感慨もひとしおのものがあります。
毎日ワークショップ終了後、すぐ近くのファミレスで茶話会となったのですが、3 0人たらずの参加者のうち、7割ほどはそれにも参加して、2〜3時間、飽くこと なく話込みました。もた、2日目、3日目は、桃山の夫であるパーカショニストの 土取利行も参加してくれていました。
楽しくも、ためになる、あっと言う間の3日間でした。と締めくくるには、あまり に重大なできことだったかも知れません。もっと本気で「唄」に取り組みたくなっ てしまいそうな気がします。
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譜面に取れない唄
「むこう横町のおいなりさんへ」
「庄屋さんの裏にボタンがさいて」
手まり唄って、どこか似ていますが、微妙に節が違っています。そして、その微妙 さは、五線符に採符されたとたんに消えてしまうもののようです。
唄のワークショップに参加して、木曾節を習い、そのことを痛感しました。学校で 習った歌とはまったく別のものと言っても良いくらいです。
アイヌ、可児、セネガルの遊び唄も数曲教わりました。19歳から61歳までの大 人がキャーキャー言って遊んでしまう姿は、はたから見るとおまぬけかも知れませ んが、楽しかったです。一人でも多くの子供に、私たちが子供のころはまだかろう じてあった、遊び唄の楽しみを知って欲しいと痛感しました。
というわけで、そのときの講師の
桃山晴衣
を紹介します。
古曲「宮薗節」の師範で、中世の歌謡やわらべうたなど、さまざまな唄の収集し、 唄い続けています。
多くの商業民謡、邦楽の演者の声を「つくり声」と断じる真摯な態度には、胸を打たれます。 日本語の唄の楽しさ、すばらしさを教えてくれます。
東京、郡上八幡で、年2回づつワークショップを開催しています。
「あそびをせんとや生まれけん」
というビクターから出ている中世民間歌謡のCDが、一番手に入りやすいです。
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はっぱの数えうた
はっぱの赤ちゃん生まれたよ
ひとつヒノキに ふたつブナ
みっつ実生のヤマザクラ
嫁入り道具の庭の桐
いつつイチョウに むっつムク
ななつ七度ナナカマド
やっつヤマブキや子がなくて
ここのつコナラの子を貰い
とおでとおとお みんなお花が
咲きまーしーた
asahi-net「plant/salon」のオフ会に行って思い付きました。
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「わらべうたコンサート9」96年5月
5月12日 2時
渋谷ジャンジャン
桃山晴衣
わらべうたの採取、古謡の復元などを行っている桃山のわらべうたへの思い、わら べうた採取の話などを含め、1時間、わらべうた、三味線による古謡、ネパールの 三弦を三味線に移した曲などの演奏が行われました。
「おお」とか「わあ」とかいうことのない、淡々とした、何というか「普通」のコ ンサートでした。路地で大人が子供にわらべうたを唄って聞かせるような。私はこ ういう経験ははじめてです。
6歳のあいかちゃんと、4歳のみのりちゃんという子供を連れた親子がいました。 (春のワークショップでお会いした、本多さんという方のご一家です。)
みのりちゃんは桃山のお話のときは、ややぐずっているので、お母さんは気にして なだめていましたが、それも問題なく(たいしてうるさかったわけではなかったせ いかも知れませんが)会場の空気の一部でした。正直いうと、大人たちも、お話も 良いけど、時間が少ないんだからもっと唄って欲しい、という気持ちは同様だった のかも知れません。
子供たちも唄になると聞き入り、調子の良い曲だと、みのりちゃんも拍子を取り、 みんなで唄う「庄屋さんの庭」という手毬唄は、お姉ちゃんの方はいっしょに唄っ ていました。あらためてわらべうたの持つ力を思いました。そして、小学校高学年 あたりで消えてしまうこの力が、なんらかのきっかけで私たちの中にもよみがえる ことを。
和気あいあいとした雰囲気のコンサートでした。その雰囲気は、会場を近くの会館 の和室に移して6時まで行われた茶話会に引き継がれました。なんでそんなに話す ことがあるんだろうと思うぐらい、話はつきません(その後近くの喫茶店に場所を 移して8時まで行われた茶話会にも参加しました)。日本の唄や芸能に強い思いを 持つひとたちの集まりなのです。
私は会館での茶話会の最後では、子供たちと遊んでしまい、「子供が三人いる」と 言われてしまいました。 ^^;
その夜、まだ見ぬ次のワークショップへ参加した夢を見ました。
追伸 桃山のわらべうたは、9月にCD化されるそうです。桃山の地元(郡上八幡) の子供たちの唄や、連れ合いの土取利行のパーカッションによる参加を含めて、郡 上での録音が終了したと言っていました。また、桃山はインターネットにも興味を 持っていて、近い将来皆さんに桃山のホームページ(どうも私が手伝うことになり そう)をお見せできるかも知れません。
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TV東京「人間劇場」
5月22日22:00放送
「のんきに暮らして82年・田口さんの1日」
ごく普通に生きて
演出・河内紀
語り・加藤治子
加藤治子のおっとりとした語りが、「ごく普通に生きて」という副題にぴったりで した。震災と戦災をまぬがれて、東京都文京区西片に、明治時代からひっそりと残 っているのが、田口さんの生家。田口さんは、今もその家に、薪で風呂をたく生活 を続けています(煮炊きはガスです。懐古趣味ではなく、ゴミや、庭木を処理する 生活の知恵です)。昨年奥さんが入院してからは、一人の生活です。食事も洗濯も すべて一人でします。
早稲田大学の図書館司書だったころからの演歌師(*)の研究のために、今も週2 回は早稲田の図書館に通っているそうです。また、本郷あたりの古本屋は、毎日の 散歩コースで、古書店街の名物ともなっているとのことです。肩の力の抜けた実に 闊達な生き方ですが、芯に気骨があるのは、おだやかな目に時折ぐっと力がこもる ことで分かります。
先日の桃山晴衣の「わらべうたコンサート」の茶話会のときにお会いしました。そ のときはあまりお話できませんでしたが、この次はぜひいろいろとお話をうかがい たいと思います。桃山とは、演歌師の研究を通じての年来の知合いだそうです。
*演歌師
バイオリンを弾きながら街頭で「演歌」を歌う芸人を演歌師といいました。
演歌は、明治中期、自由民権運動から生まれた歌の形態で、「壮士節」と
も呼ばれました。はじめ政治色の濃かった演歌も、苦学生がアルバイトで
歌うようになった明治末期には、情緒的なものになり、やがて艶歌の字が
あてられるようにもなりました。
(「大事典desk」--講談社 1983年--より要約。)
「ノンキ節」「ハイカラ節」「籠の鳥」なんていう曲は、だいぶ後まで歌われたよ うに記憶しています。
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「ももやま塾」96年10月 その1
主宰の桃山晴衣は、古曲「宮薗節」を修め、中世古謡やわらべ唄などの収集、演奏を 行っています。様々な点から、声、体を総合的に見直すことのできる、有益なワーク ショップだと思います。私は今回2回目の参加になります。舞台に立つ人や、邦楽の 演奏家の他にも、様々な人が参加していました。
●ワークショップ日程 1996年秋期講座
10月18日(金)18:00-20:00 19日(土)、20日(日)13:00-20:00
●会場:シアターX(JR総武線両国駅西口徒歩3分)
第2回「桃山塾」のレポート その1「筑前今様」(平成8年10月18日〜20日)
今回、私にとっての第1の収穫は、桃山先生の宮薗節を、ほんの一口ではありますが、目の前で 聞かせていただき、いっしょに歌わせていただいたことです。これに関しては覚えるなどという ことは到底無理な話なので、みんなで一緒に歌っただけですが。
世間に多い心中も 金と不孝で名を流す 色で死ぬるはないぞとよ
という一節です。家にあるテープで、浄瑠璃・宮園千碌、三味線・宮園千寿(桃山先生の師匠) の演奏を聞きなおしました。地味ですが、実に細かく複雑な節回しの素敵な曲です。
前回同様、郡上踊りの「春駒」、セネガルのわらべ唄、気や方角についての体験、呼吸法、気合 い、肩の力を抜く呼吸、気を落ち着かせる手の運動「しゃんごん」などを習いました。
今回初めて習ったのは、ます「筑前今様(黒田節)」です。前回習った「越天楽」と同じ文句(春 の弥生のあけぼのに)です。前回の「木曾節」同様、学校で教わったときと違う微妙な節がつい ています。「春の」の「る」では、節の上で小節を回します。「木曾の」の「い(「き」をのば した子音」のときと同じです。普通の小節が、節自体を波打たせるのに対して、節の上で小節を 回すとは、節自体はまっすぐのままで、その上で輪を一回りさせるようなものです。
「四方の山辺を」の「を」は「をお」とずり上げた音を更になんともいえない微妙な音程までず り上げます。「あけぼのに」の「に」は、長く長く少しづつずり上げて、高さが決まった後に、 更に音を強めて押すようにします。
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「ももやま塾」96年10月 その2
「空間が共鳴するほどの声」
一人の声で空間を慣らすほどの声(大きいという意味では決してない)をつく るには、そうとうの訓練が必要です。しかし、集団だったら、それほどむずか しくなく、それを達成することができます。
その体験が、第1回での、「ツッカワ カムイ」であり、共通の「ビンキ ダ ブダ」や「東西南北から別の声を出す」でした。また、「ウークンロオ ハン ロ」「庄屋さんの裏」(第1回)や「ぎゃあろ」
「あんせんこんせん」
(第2回)では、肉体運動の共鳴も感じました。
これらは、参加者だけでなく、それを見るものへも感動を与え得るもので、芸 能の根源的姿だと思います。
第1回と第2回では、けっこう違うコンテンツがあり、それぞれに勉強になり ましたが、これが仮にまったく同じ内容だったとしても、私はこの塾に参加し たいと思うでしょう。それはひとつは単純に新しい出会いが持てるからでもあ りますが、先に述べました、「共鳴する空間」を共有する悦びを得たいためで あり、その空間の質が、参加者によって違ってくることを楽しみたいためです。
それから、今回の講座では、ちょっぴりすが三味線に触らせていただきました。 先生が曲をおつけになった「伊勢の小万」という唄、三味線の手も簡単にして ある(弾くのは三の糸だけ、押さえるツボは5カ所だけ)ので、練習すれば弾 き語りできそうです。
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「わらべうたコンサート10」96年11月
11月23日 2時
渋谷ジャンジャン
桃山晴衣
わらべうたの採集演奏、中世古謡の復元演奏などを行っている、おなじみ桃山 晴衣のコンサートです。
この日の桃山さんはことの他調子も良く、沖縄のわらべうた(今の沖縄音階で はありません)、アイヌのわらべうたから始まり、三味線のすかがき、自作の 古謡風「伊勢の小万」、タイトルを忘れましたが、古浄瑠璃風の色っぽい曲な ど、いつもより時間も長く聞かせてくれました。わらべうたと大人のうたでの 声の使いかたのちがいに感心している人もいました。しかし、大人のうたにな ると、細かい節の回り方がすごいです。さすがは宮薗節。
桃山さんの宮薗節は、ぜひまとまった形で後代に残しておかなければならない 文化的財産だと思うのですが、いかがでしょうか。>皆さん
それはさておき、コンサートですが、可児の手まりうたの「あんせんこんせん」 は、みんなで拍子を取り、「庄屋さんの裏」は、拍子を取りまがらみんなでう たいました。あともう1曲みんなで歌ったのがあったのですが、忘れてしまい ました。確か名古屋の高張のわらべうただったと思います。
ところで、桃山さんの、
立光学舎レーベル
のホームページ、デザイナーの桑村さんの制作により、できています。 ホームページをお持ちの方で興味がある方は、ぜひリンクして欲しいとのことでした。
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「武蔵の国」
武蔵の国の風の色 高尾下ろしに月流れ
野川の端(はた)の蔦紅葉
松や常盤の常緑 枝に残りし雪の色
はけの道なる鐘の音
川に流るる花の色 杯交わすさんざめき
実りを約す 土の味
ひと声聞こゆ不如帰 緑の髪は床を舞ひ
離れがたなく思へども
明易きとは夏の夜の 誰のたくみしいたづらぞ
甘きしげりも 今宵限りぞ
また逢はんとて 別れ行くも悲しき
「武蔵の国」
という、バーチャルワールドのために作った唄です。
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Mailto WATANABE,Masashi<iseshi@musashi.to>
this page (C) Watanabe,Masashi
pic:Momoyama (C) Uchiyama,Hideaki
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