▼HOME

特集:忠臣蔵

忠臣蔵 元禄十五年の反逆
井沢元彦 新潮社
夢の階段
池波正太郎 新潮社
忠臣蔵 元禄十五年の反逆STORY

 劇作家、道家和彦は事故に遭い友人の久保の叔母の家で静養することになる。久保は和彦と共 同で劇団を主宰している演出家なのだが、新作に忠臣蔵を題材に書けと依頼している。
 静養先の諏訪で、忠臣蔵に縁のある寺を久保のイトコの加奈と訪ねた和彦は、そこで羽田野京子と名乗る女性と知り合う。ひょんなことから、3人で忠臣蔵の研究会を作ることになったが・・・。

COMENT

 やっぱり歴史ミステリは面白いな〜。
と、毎回思わせてくれる井沢作品。江戸川乱歩賞受賞からのファンなので、けっこう語れます(笑)。
 今回は「研究会で3人が忠臣蔵を検証する」というスタイルになっていたせいか、 とても論文的でした。文献で論証していくって、まさしく国文の論文の書き方なのだもの〜。
 だからといって、堅苦しいとか、そういうことはまったくありません。忠臣蔵は、 本当は何だったのか。何が浅野内匠頭を吉良上野之介を、そして四十七士を死に至らしめたのか。 犯人は誰か。
 これはまさしく推理小説の心意気!
 読み終わると、少し新しい目で忠臣蔵を見れるかもしれません。
夢の階段 処女作を含む初期短編集。「忠臣蔵余話 おみちの客」を収録
STORY

 比丘尼宿(尼姿の娼婦がいる娼婦宿)に通う山吉新八は、吉良上野介の警固をしている。なじみのおみちは体が弱く「もうすぐ死ぬと思います」が口ぐせだ。ある日新八が部屋に入ると、いつもと違う、いきいきとしたおみちがいた。ゆうべの客が彼女に元気を出させたのだというが・・・。

COMENT

 初出は昭和36年である。なんとっ!
 そういえば、その頃作られた赤穂浪士の映画の絢爛豪華なこと、技術はともかくハリウッド映画のようだったなー。なんてことを思い出してしまいましたが、さすがに私も生まれていません(笑)。
 さすが日本人の好きな忠臣蔵。忠臣蔵関係の本は、ものすごく多い。多いけど、あえて、これ(短編)を入れてしまいました。なぜかというと、この短編ももちろんですが、他の短編もいいんです。ハートウォーミングというか。(直木賞作家で時代作家の池波大先生をつかまえてナンだけど)
 いっぱい語りたい作品もあるけど、読後の幸せをそっと持っていたいので、長いコメントはやめましょう。私は、まだ読んでない池波作品がたくさんあるのが、とっても嬉しいです。
霊験お初捕物控 震える岩
宮部みゆき 講談社
■今回のまとめ■
霊験お初捕物控 震える岩 STORY

ふつうの人に見えないものが見えるお初は、岡引の妹。 その力のせいもあって、南町奉行の根岸肥前守と見知っている。
さて、江戸の町では近頃「死人憑き」の事件が起きていた。お初は肥前守から 古沢右京之介という眼鏡をかけた弱々しいお侍と事件を調べるよう命令されるのだが・・・。

COMENT

 宮部みゆきの時代物。
『本所深川ふしぎ草紙』では、いつものフィールド「川向こう」で時代がずれたもの、 と、思ったけど、今回は私のフィールドです(笑)。
何を隠そう、私の勤めているのは日本橋。地名は変わってしまったけど、まわりには 江戸時代の老舗がぐるりとあるし、コンビニより蕎麦屋の方が多い。 オシャレか、と言われれば全然そういうことのない土地柄なんですが、私は好きです。 同期で帰りによるのも、ファーストフードや喫茶店とかじゃなくて、蕎麦屋なの! しぶいでしょう?(笑)
 この作品は、推理小説というより不思議な、『龍は眠る』路線の系統です。
 宮部作品はとてもスゴイと思うのですが、それがどうスゴイかはなかなか説明できません。 直木賞を取ったときに宮部みゆきをしらない友達とニュースを見ていて、スゴイを説明したいのに 説明できませんでした。あえて表現するなら「普通にすごい」。
 知っている人は「ああ」とうなずいてくれるんです。この表現。でも、知らない人には煙に巻くだけだったかな?
 現代ものにおいても、人間の普通の生活の中の機微がものすごい宮部作品ですが、時代物でも健在です。 長屋住まいみたいに人と人の距離がもっと近かった時代だけに、もっとしっとりした感じがします。 少し疲れた、江戸に旅したい方におすすめ。
 おっといけない。忠臣蔵。
 ヒロイン・お初の時代には既に『忠臣蔵』は昔のお話になっています。お芝居(歌舞伎)で忠臣蔵を見ちゃったり しているのだ。江戸時代の人から見る、リアルタイムじゃない忠臣蔵。そういうのも、なかなか面白いですよん。
 やっぱり、忠臣蔵というのは良く出来たドラマだな〜、と思う。
 お正月の時代劇スペシャルで「忠臣蔵」をやっていて見たのだけれど、 今回たくさん(ここに紹介しないものも含めて)忠臣蔵関係の本を読んで 史実を了解したにもかかわらず、熱くなってしまうのだ。
 浅野内匠頭が吉良にイジメられてるたびに
「く〜っ、ひどいやつだな、吉良ってやつは!」
と、怒り、吉良のイジメのせいで一晩に畳300畳を変えるはめになり、 江戸中の畳職人が呼ばれたエピソードでは、職人の心意気に
「かっこいいぜ、オヤジっ!」
と叫ぶ。義士を助ける商人が見栄を切る「天河屋利兵衛は男でござる」の名シーンには
「男だぜ!天河屋っ!」
と感動してしまうという、ただの時代劇ファンとなってしまった。 (他にもいいシーンがたくさんあるのに全部書けないのが残念です)
 しかし、吉良上野之介ってかわいそうだと思う。
 状況としては、踏んだりけったりの上に、300年たっても悪役として語られる。 大河ドラマが従来の路線を追求した日には・・・。ああ、かわいそう(涙)。

<追記>
 実はこれは年末には用意していました。
 が、グズグズしていて今頃に。
 前回見たときは、まだ討ち入りの「う」の字にも足をかけていなかった大河ドラマですが、 あれから1ヶ月は見ていない。物語が急展開したらどうしよう・・・。なあんて心配したけど 旅先の飯屋で見たら大して進んでいなくて(討ち入り関係に関して、です)、一安心。 こころおきなくこの「まとめ」を出せるってもんです。
(訂正するのがめんどくさかったとも言う(笑))
 しかし、ワタクシ前々から思っていたのですが、確信致しました。
 大石くらのすけは遊び好き。
 大体、敵の目をくらませるためだけに、人間1年半も遊びつづけていられるもんじゃありません。 そうです。あれは好きでやっていたのです。それなのに、後世で「えらいっ!」って誉められていいなあ。遊ぶだけなら私もやってるんだけどなあ。誰も誉めてくれない(笑)。
 うらやましいぞ、大石!(笑)
(99.04.15)

■前回のおすすめを聞く   ▼HOME
1