大阪の思ひ出

:涙涙、のお別れ、の巻:

 

「どこにいたの?全然気がつかんかったよ!!」
「えっちゃんが忙しそうに電話しとったから、声かけられんかったんよ」

あんなに驚いたのは、正月に相棒と川を散策していた時に足を踏み外して川に落っこちた時以来、久しぶりだった。「お父さんは?」「もう家に帰った」...そういえばかずぞうの家に電話した時に出たのはお父さんだった。「あ、あれ?もうお戻りですか?」との私の問いに「あのこならお友達に会いに行くといって今朝でましたよ」?あ、あれ?それ私のことよ、おとうさん。混乱しつつもお礼だけ伝えて電話を切ったのだった。そうか、かずぞうはおとうさんと食事した後またここに来てくれてたんだ...。「ちょ、ちょっとまってかずぞうさん!」あわててアメリカに電話。向こうは朝の7時前である。かずぞうさんを紹介したいから、と受話器をかずぞうに渡す。なにやら会話している。再び受話器を受け取り、どんなに大阪で楽しかったかを伝えると「よかったなぁ、ほんとよかったなぁ」と相棒も嬉しそうだった。(後日。この時のことを相棒はこう語った。「あの時さぁ、朝早くて寝ぼけてたんだよね。で、かずぞうさんだと気づかずに『I LOVE YOU』って言っちゃってたんだよ、ボク」)と、入れ替わりで今度はかずぞうがジョンぞうさんに電話。初めて声を聞いた。低い低い、何処までも低いイカした声だった。とてもあんな帽子を愛用しているとは....(おっと、これ以上は言うまい)。しかし今思うと、更に時差は1時間プラスで、アメリカのジョンぞうさんのところは朝5時。低い声なんじゃなくて、起きたばかりのかすれた声だったのかもしらん。

「えっちゃん、これ、はい」

黄色い包み紙を私に渡すかずぞう。
「かずとおなじものやねん。つかってな。それからこれ、顔ふくやつ」

ありがとう。えっちゃん、もう涙でかずぞうもよく見えんかった。弱いんだよ、こういうの。ありがとう、かずぞうさん、ほんとに楽しかった、また会おうね、メールも書くからね、ぱたさんちでまた会おうね、お仕事頑張ってね...決まりきったことしか言えんかった。「じゃ、そろそろいこうかな」運転手さんにチケットを渡して、最後にもいちどありがとうの時間。ふぇ〜ん、とかずぞうに抱きつくと「ハグ?かず、ハグは苦手やねんけどなぁ〜」...といいつつ、背中をポンポン、と優しく叩く手の感触。バスに乗り込んで窓からかずぞうをみると、「えーん、えーん」というしぐさをしている。もう泣き笑い。取り敢えず混乱する頭でひらめいたのは、ビデオで最後にかずぞうを記念に撮ろう、ということくらい。

ブルルン!とうとうバスが発車。2回目のかずぞうに手を振る時。でも、今度はほんとに次ぎあうまでのお別れの手を振った時。かずぞうがどんどん小さくなって、周りの人の影にあっというまに消えていった(かずぞうは小さいので)。

バスが走り出してしばらくはボ〜っと夜の大阪を眺めていた。鹿児島までの11時間をふと思い出し、空席の毛布をしれっと掴んで頭まで被る。

つづく

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