マイナー王への道
あの3人組みが帰ってきた
マイナー王への道をまっしぐらに突き進め!!
登場人物
学院「言葉の杜」 教授--------->この物語の主人公。トンチキでスットコドッコイ。天の邪鬼にして意固地
生徒A 憂子------------------->利発で美人。傲慢で我侭。「ゆう」ちゃんとか「ゆう」君とか呼ばれる
生徒B 鬱男------------------->聡明で臆病。軟弱にして日和見。「うっ」君
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この物語は、インターネットの海原に漂う漂流者の物語である
些細なことに生きがいを感じるマイナーな人々の奮闘録である
個人名、団体名等の名称は全て実在するもの架空のものであり、一切の非難・中傷とは無縁であることをここに誓う
鬱男 | 憂ちゃん、おはよう |
憂子 | おはようございます |
鬱男 | 何だよ、いやに他人行儀だね |
憂子 | あらあたしたちって他人じゃなかったかしら |
鬱男 | もちろん、他人だけど |
教授 | おおー相変わらず仲のいいことだ。今日も痴話げんかかね |
鬱男 | 変なことを言わないでください |
教授 | なんだ、痴話げんかじゃなければ一体何だ |
憂子 | 何でもありません |
教授 | 何でも無いことはないだろう。現に喧嘩をしていたじゃないか |
鬱男 | 喧嘩なんかしていません |
教授 | じゃれ合っていたようには見えなかったが |
鬱男 | 何もしていません、只の朝の挨拶です |
教授 | 成る程、ただの挨拶か |
憂子 | そんなことはどうでもいいですから授業を始めてください |
鬱男 | 先週からずうっと機嫌悪いんですよ、彼女 |
教授 | 先週から? 随分執念深いんだな |
鬱男 | 教授、火に油を注ぐようなことは言わないでください |
教授 | そうか、それは悪かった。ヘビのようなしつこさだ。これならいいかね |
鬱男 | いいわけないです。そんな言い方 |
教授 | いや、悪かった。油に火をつけるのはいいのかと思ったものだから |
鬱男 | とにかく、授業を始めてください |
教授 | それでは、授業をはじめよう。今日のテーマは何だったけ |
鬱男 | 上下関係が「奢る」の基本的な要素だというのが先週のお話でした |
教授 | おお、そうか。それが先週の要約になるわけだ |
憂子 | 教授、奢られることは自分の地位をおとしめることになるとお考えですか |
教授 | まさか、そんなことは考えていないぞ |
鬱男 | そうですよね |
教授 | 地位をおとしめるなんて時代錯誤の感覚だね |
憂子 | でも、教授のおっしゃてることはその時代錯誤のように聞こえます |
教授 | 君は釣りをやるかね |
鬱男 | 教授、聞きたいのは時代錯誤についてですよ |
教授 | 何、釣りが時代錯誤だと言うのかね |
鬱男 | 誰もそんなことは言っていません |
教授 | うっ君、今日の君は少し可笑しいぞ。そんな何でもかんでも過敏に反応していたらワシの授業にはついてこれないぞ |
鬱男 | 分かりましたから、まっとうな授業を続けてください |
憂子 | そうです、早くまっとうな授業を始めてください |
教授 | まっとうな授業とはなんだ。ワシの授業がまっとうではないというのか。もちろん「納豆」ではないのは分かっているし、「やっとう」や「ちょっとう」や「骨董」でもないことは分かっている。さらに言えば「共闘」でも「冒頭」でも無いことだって分かってるんだ |
憂子 | はい、はい、分かりました。問題は「奢り」です |
鬱男 | そうです、「奢り」です教授 |
教授 | もっと突き詰めれば「相当」でもなければ「乱闘」でもない。「口頭」でも無ければ「均等」だってないことを疑いようがない。それはワシもかなり前に認識していたのだ |
憂子 | 駄洒落もそこまでいくと意味ないんじゃないでしょうか |
教授 | しかし、「まっとう」でないとは気づかなかった。今日の今日まで、今の今まで。 |
鬱男 | だから、それはもういいですから |
憂子 | 教授、もしかしたら授業内容考えていなかったんじゃないですか |
鬱男 | 授業内容って、まさか忘れてたんじゃないですよね |
教授 | 予定が狂った |
憂子 | 狂ってもかまいません |
教授 | いや、狂うのはまずいだろう。どうせ狂うなら恋に狂ってみたいもんだ |
憂子 | 話をそらそうとしてません? |
教授 | 何を言うか、ウニを食うか、ワニはいるか |
鬱男 | やっぱり考えてなかったんですね |
教授 | こんなもんは考えて無くたってどうってことはない。普段だって大して考えてないんだから |
憂子 | 普段も考えてないんですか |
教授 | いかん! どうも熱があるようだ。今日は休講にしようと思う |
鬱男 | 休講ですかぁ |
憂子 | そんな、急に休講といわれても困ります |
教授 | 仕方ないだろう、急に熱が出てきたんだから |
憂子 | ほんとに熱があるんですか |
教授 | ひどいことを言うな。わしがどうなってもいいって言うのか |
憂子 | そうは言いませんが、給料分は働いてください |
教授 | 給料分って、結局君は「おごり」の体質から抜け出せないんだな |
鬱男 | どういうことですか |
憂子 | そうです、どういうことですか。うわ言なんて言い訳は通りませんよ |
教授 | あー、頭が痛くなってきた。でもこれだけは言っておこう |
憂子 | 分かりました。それだけは聞いておきましょう |
教授 | 世の中には「ご馳走する」という言葉もあるんだぞ。これはお客さんに喜んでもらうために、裏山に山菜を取りにいったり畑に野菜を取りにいったりと走り回ることから来ているのだ |
鬱男 | 御馳走様って言いますね |
教授 | そうだ、奢られた時もたいがいの人がそう言うな。でもおごった本人はどう思っているんだろう。「御馳走する」と「奢ってやる」には月とすっぽんほどの違いがあるんじゃないかな |
憂子 | どう違うんですか |
教授 | 御馳走するにはその語源からも分かるように、相手のために苦労するといったニュアンスがある。自ら働くという意志がある。それに対して奢るには、金で全てを済まそうという感じがあるんじゃないかな。現に手料理を奢ることはしないだろう |
鬱男 | 僕の手料理なんかじゃ誰も喜びませんよ。やっぱり流行の店かなんかじゃないと |
教授 | つまりはそういうことだ。世の中の問題を全て報酬とコストから考える「社会的交換理論」というものがある。つまり「報酬-コスト=利益」という関係で物事を理解しようとするわけだ。君達の「奢り、奢られ」の関係や「給料分働け」発言の底流をなしている考え方だといっていいだろう |
憂子 | ちょっと言いすぎました |
教授 | 物事を金の損得勘定だけで生きているうちは真の人間関係は築けないし、大人の男にもなれないことを理解してほしい。というわけで今日は休講 |
この分では明日も休講になってしまうような気がする。少なくとも「たかり」についての講義はないかもしれない |
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