車庫探訪
五月の頭、夏の間は日本に帰国する予定だったので車を学校の駐車場に預けられるかどうかを訪ねる為カレッジポリスに行き、受付の女性にその主旨を伝え、答えを待ちました。彼女は以外とすんなりと「大丈夫だから帰国する前日にきなさい」としかいいませんでした。「それなら」と思い安心し切って他の事に集中しました。ボディーショップ(修理屋さん)に訪ねるもパーツは入ってこず、みつからないとのこと。仕方が無いから夏の間は修理せず学校に置いておく事にきめると、日本人の友人が「車を保険に入れないで放置しておくと罰金をとられるからプレートをかえしておく方が良い」との助言を受けナンバープレートをDMVという免許センターに当たる施設に返却し、更に汗をかくために部屋に戻りました。部屋中の荷物をカビ臭い、湿った独特の匂いがする地下倉庫に預ける為に荷造りをし、最後のテストを受け最後の瞬間まで部屋の掃除、片付けをしていました。多すぎる荷物を少し減らす為に更に荷物を預け、それでも重いと思われる荷物を部屋の片隅に置き、いよいよ明日帰国。という日になったのでセキュリティオフィスに行き、あの日と同じ女性に話をしました。すると、1週間前とは全く違う言葉が帰ってきました。「なにがあってもダメ」といわれてしまったのです。「なぜ?」とつっかかるもむなしく、説明を求めても「知らない。」と言う言葉しか聞こえませんでした。この被害にあったのは自分だけではなく、他の日本人二人も同じように断られてしまって迷っていました。「アメリカでは何でも起る」と自分を納得させ、動きました。セキュリティオフィスにいき、「彼女の仕事の責任」を問い、責任者をよんでもらうといかにも小説に出てきそうな身綺麗ではあるが背が高く、少し体格の良すぎる、あまり「好かれる」という言葉とは縁遠であろうと思われる目つきの職員が出てきて「これから問題を解決するぞ」という雰囲気をだしながら自分に握手を求めました。彼は「夏の間は管理もしきれないから車は置けない。預けるべきだ」と言われたので「それならなぜもっと早く言わない。」と言うと彼は「これは前から決まっていた事なんだ」と言いました。そこで「自分は1週間前にここにきて、彼女が前日にくればそれでいい」と言った事を告げると彼はオウムの様に「友だちの家の庭か貸しガレージにでも、、、」とくり返すばかりでした。そこで「明日帰るのにどうすればいい?責任はとれるのか?」と聞くと、彼は自分に少し待つようにと伝えオフィスに戻り、少ししてから小さな紙切れと出てきました。荒い文字でMartin'sとかかれ、電話番号が315-265-7380と印されていました。彼はそこに電話すれば三ヶ月$20でガレージを貸してもらえると伝え握手をしてオフィスに戻っていきました。自分もこれ以上疲労するのは時間の無駄だと感じ、その番号に電話をして車をガレージに預けました。その際、セキュリティーオフィスのオフィサーが言っていた「三ヶ月$20は月々$25であり、$75に税金を足して約$80近くとられてしまう」というだけでなくMartin'sで働いている男性は近所に泥棒がいる事を伝えたあと「物を盗まれても文句は言わない事、ガレージではなく、野ざらしにして置いておくが、それによる被害に対しての責任も持たない、ということ」を同意させる為の彼等に金をもうけさせる為の不平等条約の用紙にサインを求められ、仕方なくアメリカに迫られたときの清よろしくサインしました。
これで日本に帰れる。と安心していると困っていた日本人が「学校の駐車場に預けられた」と微笑んでいたので話をきくと、彼等はあの後で午後8時頃にもう一度セキュリティを訪ね、話をするとチーフオフィサーが出てきて話を聞いてくれ、許可をくれた。という事でした。自分は何の為に高い金を払いけん引までして$100以上の金をはらって。と感情的になり、セキュリティオフィスにいくとチーフオフィサーの代わりに昼間自分が話をしたオフィサーがいました。彼にもう一度説明を求めると、彼は「君の車はプレートをとってあるからダメだ」の一言が出てきたので「彼女にはそれを知らせていないし彼女もそれを言わなかった、という事は彼女はその事実を知らずに否定した事になる。」というと彼は「これは前から言っていた事だ」と一言を残し去ってしまいました。確かに知るべき事ではあると自分を抑えつつ、しかし彼等からその一言すら聞いていない事を不毛に思いながらやりきれない思いを感じつつ日本への帰国を目前にしました。自分のジャズギターの師匠であり最愛の親友であるミハエルとフレドリック、そしてその奥さんのインマリーやルームメートのマーティン達との最後の瞬間をビールとジャンクフードで祝い、別れを惜しみつつお互いのメールアドレスや住所を教え合い時間の流れを楽しみました。アーティストとして、友として彼等との出合いはまさに、アーティストのみに許された特別な権利であり、すべての人が得られる物であると信じています。それを気付いたすべての人たちのみに飲む事が許される美酒の様に。そして、また朝が来ました。つづく
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