帰国への旅
いよいよ待っていた帰国に向けた朝、1年間世話になったからっぽの部屋を見て、一瞬なんとなく不思議な感覚に包み込まれた後、ありがとうを告げ重い荷物を抱えてダウンタウンのバスストップ向かって歩き始めました。自分の「オーガナイズ能力」に不毛さを感じつつ詰め込んだ荷物の重さを身体と久し振りに帰国できる期待で支えながらバスストップまで歩いているとFordのトラックに乗った男性が「バス停までいくんならのっけてってやるよ」といって止まってくれました。荷物を荷台に乗せ、身体を助手席に乗せ、一息つきながらバス停までの数分を彼との会話と初夏が訪れようとしているポツダムの新緑を楽しむ事にしました。そしてバス亭の前で彼にお礼を述べ、握手をし、バスが来るまでの30分と空腹を珈琲とドーナツと、バスのチケットを眺める事で費やし、珈琲カップを捨て、ドーナツを一つ残し新しい珈琲と共にマンハッタンに向かうバスに乗り込みました。
ポツダムからマンハッタンまでは車では6時間なのですがバスになるとシラキューズという街を経由してオルバニーという州都まで向かいそこから別のバスに乗り換え、マンハッタンに着くまで合計で10時間近くかかってしまいます。バスの中では雲を見るか、景色を見るか、本を読むか、珈琲を飲むか、そしてそれに飽きたら眠るか。という事をくり返していました。シラキューズに着くと少し背伸びをして次のバスが車でポートオーソリティー(バス亭)で待つ事にしました。バス亭といってもシラキューズのバス亭はそれなりに大きいので食堂にいったり、椅子に座ってテレビを見て過ごして問題なく過ごせました。食事をとった後、新しい珈琲を買い、マンハッタン行きのバスにのり、残りの時間の大半を猫のように眠りすごしていました。
バスが見なれた記憶の中を走り、現実に抜け、目の前に美しいマンハッタンを映し出し、その現実に興奮を覚えながらポートオーソリティー(バス亭)に向かって行きました。ポートオーソリティーに到着し、半日のバスの旅を背伸びと共に終わらせ、荷物を受け取る事でクイーンズまでの短い旅をスタートさせました。
クイーンズまでサブウェイ(地下鉄)に乗り、いつもの見なれた町並みを歩き、PowerBookの時にお世話になった先輩のところで2日過ごさせてもらい、1日はホテルに泊まるかもう一晩先輩の所か友達の所に泊めてもらおうと考えていました。初日と二日目はお土産を買う為にマンハッタンを巡り、3日目の夜は前日と言う事で早めに眠る事を念頭に起きつつ買い物を終え、先輩に話をすると「試験だから」という事で諦め友達に訪ねようと思いました。そこがダメならホテルを考えつつ、同じくクイーンズにすむPowerBookの件でお世話になったもう1人の友達の所に泊めてもらおうと思い彼の所に行きました。彼に訪ねると幸運にもOKが出たのでそこで一晩お世話になりました。彼等のもてなしてくれた料理を頂き彼等との久しぶりの再会と会話を楽しみ、お互いの近況を報告しあっていました。日本に居た時は彼等とは余り話もしなかったのですがこっちにきて部屋が隣同士だったのもあって彼等と話しはじめ、当時のルームメートと先輩達とよく話すようになっていました。ふいに「あぁ、出会っていても出会っていない人たちもいたんだなぁ」と感じつつ彼等との会話を楽しみ続けました。今までの疲れをお風呂と、お風呂上がりのビールと、何より彼等との会話で消し去り、次の日に備えました。彼も次の日は講議があるというのでその日は早めに眠り、次の日、彼等に空港まで送ってもらい、そこで彼等にありがとうを告げ、彼等より一足先に日本への帰路につきました。つづく
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