この町に電気を引いたのは日本人だ、という話は珍しい話では
ありませんね。
出発前から「電圧が一定じゃないから電気製品には安定器を」と
いわれていましたが、一体「一定じゃない」って、どういうこと?
いまいち納得がいかないままでした。
ここに暮らし始めてから、くわしい電気のしくみはわかりませんが、
あっこれかーと思うことがあります。
電球の光が時々明るくなったり暗くなったり、その違いは微妙では
ありますが、明らかに変わるのを感じます。
些細なことですがやはり不快感をおぼえるので、光の強さの安定度って
脳に伝わる何かの信号上、結構重要なんでしょう。
冷蔵庫の音が変わったり、安っぽいラジカセだと音楽の
途中でホンのちょっとの雑音が入ったりもします。
これでは電気製品が長持ちしないはずです。冷蔵庫なんて5年もたないらしいです。
「われわれはコンマいくつの誤差で保つように日々努力しています」と
日本の電力会社に勤めるある方がおっしゃっていましたが、
ここではコンマいくつどころか…という感じです。
それから、頻繁にあるのが停電。
雨が降ったりするとなおその頻度は高まり、1日に何度でも切れます。
ろうそくの光で生活するのもまたムーディでいいんですが、
復活するときに異常に高い電流が流れるようで、
それでまた電気製品の寿命が縮まるというわけです。
私は週2回、夜のクラスの授業があるのですが、
よく停電のおかげで「ろうそく授業」をします。
各生徒の机にゆれる炎。
その炎にちいさな虫達が集まってきてはみずから小羽を焦がし、落ちていく。
その様子を傍目に熱弁ふるう私。
時々両手のひらを広げたくらいの蛾がばさばさとやって来て、そのときばかりは
授業中断。どうも蛾だけはだめなんです。
生徒にほうきで退治してもらって、やっと授業再開。
なぜそんなに虫や蛾が入ってくるかというと、教室が「オープン・エア」
だからです。
そう言えば聞こえはいいですが、ようするに「ふきっさらし」なんです。
暑いのでちょうどいいのですが…。
停電になると、私の家のすぐ裏の高校で夜学の生徒たちの
「きゃー」とか「ひゅー」とかいう歓声がわきおこります。
そして電気が復活したときには蜘蛛の子をちらしたように
誰もいなくなってるんだとか。
私の生徒たちはちゃんとろうそくで勉強してくれるんですけどね。(自慢)