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出稼ぎ競争



日本人といえば運動会です。僕の町でも年に一回の運動会が開かれました。

今日は文協の運動会です。日本だと運動会といえば学校だけど、こちらは文協主催です。よって大人も参加します。というか大人の競技のほうが多いです。僕の育った田舎でも学校の運動会の他に、町の運動会もあり、子供心にそっちの方が面白かった記憶があります。近所の魚屋のおっちゃんやパン屋のおっちゃんが必死に走っている姿を見て、普段では見られない近所の人達の姿を見ることができたのでうれしかったのかな?

さて、前日に設営された会場に行くと、運動場の中央にスピーカーをつけた15mぐらいのポールがあり、そこからきらびやかに万国旗が八方にたなびいています。そしてトラックのまわりにはテントがぐるりと取り巻いて、これも日本と同じような感じです。というか日本よりも派手かも知れません。それともう一つ違うところがありました。会場の一角で父兄がジュースやビールやパステウ(こちらの軽食)を売っています。文協で何かイベントがあると必ずこのパステウ屋は開かれて、イベントの予算の足しにします。このあたりはいかにも地域密着って感じで僕は大好きです。

その後に国旗掲揚・国歌吹奏・お偉いさんの開会の言葉が続くところも同じ。そして、さっそく開幕です。子供による徒競走から始まります。僕は子供の面倒を見る係りになっていましたが、子供といっても3歳ぐらいの小さい子供も走るのでむずがる子供の機嫌をとったり、一緒に手を引いて走ったりと結構楽しいです。

その後もパン食い競争や色あわせなど日本の運動会でもおなじみの競技が続きます。ただ、出場資格のところが注目です。児童なんかは7歳以上とか年齢別なんですが、その他に、「家長」っていう資格もあります。もちろん家長は家のお父さんということですが、どうもポル語の「senhor」のことみたいです。一方の「senhora」のほうは「主婦」となっていて、今時の日本でこんな事書いたらPTAのおばさま方に叩かれるだろうなあ、と思ったりします。

さらに競技は続きますが、この日は真冬の8月とはいえ日中は強い日差しがさし肌が焼け付くほどです。さらにブラジル南部にありがちな赤土の乾燥した大地でよけい暑さが身にしみます。ただ、このとき自分が大人で良かったと思うことがあります。そうです、ビールです。走って一汗かいた後に売店でビールを買い、シュハスコを食べると気分は極楽です。

もう一つブラジルの運動会で書かなければいけないことがあります。それは「賞品」。こっちの運動会は「賞品」に力入れてます。原則として全競技の全参加者に賞品がもらえます。たとえば、子供の徒競走なんかは10人一組で10組出走予定なので、それだけで100個もの賞品が必要になります。参加費なしの運動会で。もちろんテレビやビデオのような高額な商品ではなく、一等でも洗剤などの近くのスーパーから提供してもらったようなものばかりですが、「参加者全員に楽しんでもらおう。」という運営側の気持ちが伝わってきていい感じです。

それと参加者はその場で募ります。小学校の運動会のように事前に参加者が決まっていることはありません。競技の前に「○○に出る人は集まって下さい。参加資格は△△です。」とアナウンスされるので、各自集合します。よって賞品がたくさん欲しい人はいくつでも参加できます。そして僕は賞品がたくさん欲しい人なので、たくさん参加しました。

試しに参加した競技と成績を書くと、

パン食い競争    4位(賞品:砂糖)
びんつり競争    1位(賞品:洗剤)
200m競争    2位(賞品:洗剤)
五人一組リレー   3位(賞品:サラダ油)
タイヤ転がし    着外(賞品:砂糖)
宝探し       順位無し(賞品:パスタ)
出稼ぎ競争     3位(賞品:パスタ)
800mリレー   2位(賞品:洗剤)
ラジオ体操     順位無し(参加賞:ノート)
おどり       順位無し(参加賞:ノート)
後かたづけ     順位無し(参加賞:パスタ・洗剤)
もらい物      砂糖×2 油×1 小麦粉×1

などなど多彩です。

さて午前の部の最後は生徒によるラジオ体操。日本だとだいたい最初の演技ですが、こちらは午前の最後です。僕はその生徒達の指導ということで前に出て模範演技らしいことをやります。でもこっちの生徒の方が日本のふやけたラジオ体操しか知らない僕よりもちゃんとしてます。ピチッピチッと手を動かし、ダラダラするものは一人もいません。腕は指先まで神経がいってます!ってかんじでピシッとのばされ、こっちの方が緊張します。そんな生徒達が全員真っ白な服に身を包んで体操をする姿は古い世代には日本の規則正しい学校生活を彷彿とさせ、ブラジル人達には何事もきちんとしている日系人の象徴としてうつるのかもしれません。ただ、生徒達は背の低い子から前にならぶので、僕の目の前でちっちゃい子供達がお兄さん、お姉さんのまねをして一生懸命ラジオ体操をがんばる姿には思わず目尻が下がってしまいますね。

その後は昼食。日本から来た日語学校の先生と言うことで町ではそれなりに有名な僕はあちこちの家族から「何か食べていきなさい、飲んでいきなさい。」と呼ばれるままに、あちこち出向きます。初めてあった生徒の家族とかもいてお昼休みも楽しめます。ただ、来賓席から呼ばれるのだけは遠慮させていただきましたが。なんか来賓席に行っちゃうと生徒の家族との距離が離れるようでいやなんです。

午後の部の最初の競技は子供達による踊り。この練習のために旅行日程を短縮して帰ってたフォークダンスの披露です。はじめは「最後の練習でも覚えていない生徒がいたよな。」とか心配でしたが、そんな心配をよそに生徒達は真っ白な姿で良くやってくれました。きっと見ている人達も喜んでくれたでしょう。他の競技がみんなでわきあいあいと楽しんでいるなかで、子供達のラジオ体操と踊りがキチッとしていて、いい意味で緊張感を与えて場を引き締めているような気がしました。

午後も午前と同じように競技は進んでいますが、日本の運動会でもプログラムの終わり近くになると運動会の目玉とも言うべき競技が出てきます。これはブラジルでも同じですが、その競技はなんと「出稼ぎ競争」。プログラムを渡されたときから唯一ピンとこなかった競技です。なんか出稼ぎって言うと、ネガティブなイメージを持ってしまいがちな日本人として、こうもあっけらかんと「出稼ぎ競争」と言われると、今までの気持ちも揺らいできます。さてその競技内容は、まずスタートします。するとコース上に紙がおいてあり、その指示に従うわけです。日本の借り物競走だったら「赤い靴」とか書いてあるんですが、「出稼ぎ競争」の場合、紙には「TOKYO」とか「GUNMA」とか「NAGOYA」とかの地名が書いてあり、その横には空欄があります。それを持ってコースを走ると、その先には「TOKYO」などと書いた札を首に下げた人達が立っています。それで競技者はそれぞれ自分の紙に書いてある地名の担当者にサインをもらい、全部集め終わったらゴールに向かって走るというわけです。色眼鏡のかかった僕の目では、首から札をぶら下げた人が各地のブローカーで、その間をたらい回しにされる人達・・・のように見えてしまいました。またその他にも書いてある地名が「HAMAMATSU」や「GIFU」のように実際に日系人が多数働いているところってのも泣かせます。

そうそうもう一つ、大会中に音楽がかかっているのは日本と同じですが選曲は違います。まずメインは「軍艦マーチ」。きっとこれも日本の運動会の放送コードにひっかるんでしょう。これがひっきりなしにかかります。その他には演歌!運動会と演歌か、う〜むと考えさせられる選曲です。

そして最後の競技は子供達が男女と紅白に分かれての「紅白リレー」。そういえば、こっちでは男が参加する競技と女が参加する競技が厳然と分かれていて男女が一緒に参加する競技はありませんでしたね。ラジオ体操と踊りをのぞいて。さてさて紅白リレーでははじめは小さい子供達から走りはじめてリレーの最後には大きい子供達が走ります。とっても楽しいです。まずはじめはほんとうに昨日おむつが取れたばかりのような子供達がよちよち走っている姿に会場は拍手喝采です。それがだんだんと子供が大きくなり、競技の性格が強くなってくると、「赤勝て」「白勝て」の盛り上がり。別に前もって組んだわけでもなく、その場で紅白に分けるんですが、男女ともなぜか抜きつ抜かれつのデッドヒートを演じてくれるので、会場も生徒も一体となって一喜一憂です。

その大きな盛り上がりが終わると閉会式。こちらは拍子抜けするほどあっさりと終わり、すごい速さで撤収が始まります。そして夕日が傾く前にはみんなほど良い疲れと興奮と賞品を胸に家路につくのでした。

ちなみに家で炊事洗濯を全くやらない僕が多数獲得した賞品は、食事を作ってくれる寮のまかないのおばさんや日頃お世話になっている人達へのささやかなお礼のしるしになりました


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