星空コラム October 2000
高塚小屋「ここは縄文杉からもほど近い」
山頂でたっぷり休憩してから下り始める。途中何度も振り返り、宮之浦岳を眺める。
午後になって、だいぶ雲が出てきた。今夜の宿泊予定地、高塚小屋までは約3時間の道のり。再び、屋久杉の原始林の中へ足を踏み入れていく。
この道を宮之浦歩道という。地図には視界の開ける場所として第一、第二展望台のマークがあったが、実際に眺めがいいのは第二展望台のほうだ。宮之浦岳、翁岳の展望が開けている。
この屋久島で、ヤクザルとともに多いのがヤクシカだ。この歩道では途中何度も出会った。それほどおびえる様子もなく、人懐っこい丸い瞳でこちらを見つめてくる。朝早い時間だとヤクシカの集団にも会えるという。
標高1500mを切り、14時半頃、新高塚小屋到着。木造の大きくて立派な小屋。ここで今夜のための給水。さらに、ガスの出てきた登山道をただひたすら歩く。
15時半、高塚小屋到着。標高1330m。
昨日泊まった石塚小屋をさらに小さくした感じ。ここから縄文杉もほど近い。九州の学生さん二人が先に到着していた。
切り込む谷に森が続く。木々の間に夕日が差し込み、巨木がきらきらと光る。新高塚小屋よりははるかにロケーションがいい。
小屋の前の切り株に座り、残り少なくなった焼酎をお湯割で飲む。足の疲労感がなんとも心地よい。夕食は牛丼とワカメスープ。
夜、シュラフにくるまり、ロウソクのあかりの中でうとうとする。
この二日間、屋久島を歩きつづけて思う。
森の中というのは、木々のこすれ合う音や、流れる沢の音や、動物たちの声が、もっとざわざわと騒がしく聞こえるものかと思っていた。ところが実際は違っていた。
小屋の窓のそっと開け、耳を済ます。ほんとうになにも聞こえない。物音ひとつしないまさに静寂の世界。
都会で暮らしていると暗闇というものにも出会う機会がないが、こんな「静寂」も生まれて初めて味わうような気がする。
<6/8>
「ライブラリINDEX」へ
ホームへ戻る
This page hosted by
Get your own Free Home Page