6月26日(木)
タンペレ通信に戻る
日曜日の午後3時、ファームからの帰り道にフィンランドを代表する画家ガッレン・カッレラのアトリエ跡を訪ねた。この土地はカレラと呼ばれ、夏期の観光シーズンにヴィラットータンペレ間のナシ湖を走る観光船「詩人の道」も寄港する。もし、車を使わなければ帰路に乗ったであろう、タンペレ行きの船がちょうどカレラを出航して行くところであった。船は、この地から4時間かけてゆっくりと湖上を南進し、午後7時過ぎにタンペレのサルカンニエミに着くはずである。
アトリエは、建物自体に歴史的価値があるのだろう、二階建て豪華な木造住宅である。一階の吹き抜けの広間は、東側の窓が屋根の一部をなす天窓と一体化し、光で一杯である。アトリエは小さな岬の先端近くにあり、ほとんどの窓からもナシ湖を間近に眺められる。カッレラゆかりの道具、家具、書籍などが展示されている。作品も少々展示されていたが、その大部分はヘルシンキの美術館に展示されているのだろう。
アトリエは国道から3km入った岬にあり、近くは放牧を中心とした農場である。子供達は、どちらかと言えば、フィンランドに来て始めて見たこれら牛や馬の大群の方を楽しんだようである。帰路は、国道をわざと避け、ナシ湖の東側の田舎道を走った。一部未舗装の道を含むいなか道を、後続の車に煽られることもなく(道路を走る車をめったに見ない)、ゆったりと走った。途中でスコールの様な集中豪雨(しかも局地的な)にであったが、新品ワイパーへの交換効果もあり、安定したドライブを(運転者は)楽しめた。今回の週末旅行は、延べ272kmのドライブとなったが、心配していたトラブルもなく、フィンランドの道路事情にも慣れる良い機会になった。
(日本車)
フィンランドでも日本車をよく見かける。一番多いのは、オペル、フォルクスワーゲンのドイツ車だが、フォード、フィアット、シトロエン、サーブなどよりも、トヨタ、日産、三菱の車をよく見かける。確か、先日のニュースか新聞でフィンランド国内のメーカー別シェアを説明していたが、上位4社は、オペル、フォルクスワーゲン、トヨタ、日産の順だった。日常見かける車種から感じるのと同じ結果であった。車は高価で、日本より2割以上高いのではないか。
日本では廃車になっているような古い車もたくさん走っている。三年ごとに新車に乗り換える日本人の多さを聞いたら、フィンランド人はきっと驚くこと間違いなし。誤解が怖くて職場で話す気にはとてもなれない。たぶん、フィンランドと日本ではお金の使い方が違うのであろう。個人のレベルでも、政府のレベルでも、何にお金を使い、何を節約するかについて、考え方にずいぶんズレがあるように感じる。
からしが見つけられなくてて困っている。最初に買ったチューブ入のからしは、確かにからしなのだが甘いのである。砂糖がふんだんに使われているようで、からしに特有の鼻につんとくることも全く無く不満である。サウナパーティで話をした人は、フィンランドには甘くないからしもあり、当人は甘くないからしを使っていると行っていたが、見分け方を聞くのを忘れていた。
そうこうするうちに、近所のみどりさんからチューブ入りの和がらし(れっきとした日本製品)をいただいた。感激である。久しぶりに味わう辛いからし。当り前のものを当り前と言えるのは、非常に幸運な状況だということを、改めて感じさせられた。
(旅行社)
ロバニエミへの旅行を手配するために、タンペレダウンタウンへ行こうとしていたら、秘書のリーッタさんから「ヘルバンタにも旅行社があるわよ。TTKK(タンペレ工科大学)の関係者だと親身に相談に乗ってくれるから、そちらに行ってきなさい」と、見取図まで書いてもらった。何のことはない。大学の南隣りにある研究団地のビル内にこじんまりと店を構えている。以前、サウナパーティをした建物の隣である。「これは、大学と研究所の関係者以外はこないな」というのが第一印象。旅行社の職員は女性2人だけである。しかも、1人は午後からのパートタイムとのこと。実質ひとりで切り回していることになる。まあ、客層が限られているからそれほど問題ではないかもしれないが。
一番助かったことは、全て英語で話がつくことである。ロバニエミまでの寝台列車を予約しに駅まで行こうと思っていたのだが、駅員さんが英語を話さなかったらどうしようと、気を揉んでいたところであるから、渡りに船とはこのことではないか。始めは、飛行機で行くことも考えていたのだが、フィンランドではほとんどの国内便はヘルシンキ発かヘルシンキ着である。また、例のプロペラ機でヘルシンキのバンター空港まで飛ぶことも余り気が乗らず、迷っていた。ところが運賃を聞いて、迷う必要がなくなった。飛行機は高すぎる。加えて、鉄道には家族割引があり、また、4歳の素子は運賃不要なのに対し、飛行機は、大人2人、子供2人の料金を必要とするから、両者の価格差は、とてつもなく大きい。
決して値段で決めた、もしくは、値段のみで決めたわけではないが、寝台列車で行くことにした。
(フィンランドの食事)
フィンランドの家庭料理は準備が楽である。農家のように自家製のパンやジュースを作る場合は別にして、一般のフィンランド家庭の食事は、ほとんど、買ってきたものを並べておしまいではなかろうか。パンにハムとチーズがあれば、もう立派な食事、スライスしたきゅうりとトマトにじゃがいものスープなどが加われば、もうディナーである。
朝、昼、晩と、ほとんど毎回、変化の無い食事が続く。ファームステイは、立派な接客業であるから、一般家庭の食事よりバラエティに富んだ、日毎に変化のある内容なのだろうが、基本は、パンにハムとチーズである。以前、ドイツの友人宅に約一週間滞在したときも感じたのだが、毎回の食事内容が同じであること、手間のかからないことに家内共々驚いたものである。日本社会において、共働きの女性の負担が重いのも、男性が厨房に入りにくいのも、その原因の一つは、日本の食事があまりにも手が込んでいる(少なくとも準備の手間は、レストランの料理に匹敵する)ことにあるような気がする。だからどうだとは、非常に言いにくいのだが。
前日/目次/翌日
This page hosted by
Get your own Free Homepage