6月27日(金)

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(ネットワーク障害)

 昨日のことである。朝のメールも読み終わって、本格的に仕事を始める(私は、けっしてフィンランドまで遊びに来たわけではない。この日記だけから判断しないでください)と、メールソフトがエラーメッセージを表示、ネットスケープ(このページを読むのに使っているプログラムの同類)もドメインネームエラーを発生し、自分のマシンで動いているページにアクセスできない。(Ethernet Address という番号を直接入力してやるとつながるので)大学のコンピュータセンターのマシンの故障と考え放っておいた。しかし、なかなか回復しない。午後になっても3時を過ぎても直らない。朝8時からおかしかったわけだから、延々、7時間もネットワークが普通である。ネットワークプリンタは使えるので、差し当たって発表資料を作るのに支障はないから助かったが、外部と電子メールの交換もできないし、ホームページを見に来てもらうこともできない。少々困った。(そう言えば、日本時間で26日午後2時から27日の早朝2時までの間に、このページを読もうとして読めなかった方、決して店じまいではありません。)
 普段から当り前に使っているコンピュータネットワークが、急に使えなくなることの不便さを実感した。今後、ネットワークに依存する度合が増えるにつれて、ネットワーク障害の予防が重要なテーマになるだろう。固い話ですみません。たまには、こういうこともあります。

(パルモネン家来訪 II)

 昨日に引き続き、フィンランドと日本との類似についてだが、私が一番似ていると感じたのは、両国民がともに、はにかみ屋(シャイ)なことである。なかなか初対面で親しくなることは難しい。男女とも巨人が多いし、森の中以外では、初対面の人からあいさつの声をかけられることはない。この辺りの感覚は、非常に日本人に近い。なんとなく自然体でつきあえる気がする。この夫婦、互いの会話が日本語でもフィンランド語でもなく、英語がメインというのもおもしろい。フィンランド語を聞き取れない我々に気を使ってのことではないと思うが、人間同士の理解に必要なものが何かを示しているようだ。言葉はもちろん大切だが、話したいことがある、伝えたい思いがあることの方が重きをなす。外国語上達の秘訣も、この辺りにありそうである。
 食事中も食後も、みどりさんと家内は、ずっと日本語で話しをしていて、子供たちは、ちょうど届いた日本語の絵本や折り紙で遊ぶのに夢中。自然と、ユハさんはさくらちゃんをあやす役になってしまう。それにしても、この父子は見ていて微笑ましい。自分が赤ん坊の頃の子供たちとどのように接したかを考えさせられることしきりである。大体、みどりさんがフィンランド語の講習のためにタンペレ大学に通う間、午後から休暇を取って子守を2週間も続けるなんて、並の日本人(できる人もいるかもしれんけど、私には無理だ)にできることではない。
 前々から疑問に思っていた湖水の色についても、ユハさんから教わった。フィンランドの湖は全て湖水が茶色だそうだ。これは三河湾の海水が茶色になる(のは近年は主として家庭排水が原因の水質劣化が原因)のとは違い、地質の影響とのこと。汚染ではないから、東部や北部の湖に行っても湖水の色は変わらないそうである。フィンランドの湖にも、スイスのルッツエルン湖のような透明な水を期待していた私は少々がっかりしたが、汚れでないのなら、湖水の色を気にする必要もないわけで、タンペレ近郊の湖の汚染を心配していた私は、安心もした。
 地形の話しになったとき、サヴォリンナのオラヴィンリンナ城(東部の湖水地方で最大?のサイマー湖の湖畔にあり、夏期の野外オペラの会場として有名)は、ゲームソフト「ドラゴンクエスト III」に出てくる城のモデルになって(後で調べたら「地球の歩き方」からの受け売りだったのだが、本当なのだろうか?)日本では有名だ(少々、誇張がある。「地球の歩き方」北欧編の熱心な読者や、ドラゴンクエストの熱狂的なファンな知っとるかもしれんが、一般の日本人が知っているとは思えない。ユハさんご免なさい。ドラゴンクエストのファンが多いことから少々飛躍した解釈でした。この話は他の人にはしないほうが無難と思います。)と話したところ、驚いていた。

フィンランドの蚊

 今回のファームステイで堪能した事の一つにフィンランドの蚊がある。腕や足、背中や顔はもちろん、私は、貴重な額の髪の生え際を、また、素子は、なんとつむじまで蚊に刺された。このステイに行く前に郊外のスーパーマーケットで蚊取り線香や虫除けスプレーを売っているのを見かけたのだが、ヘルバンタのなよなよした蚊しか知らない私は、「こんな蚊を相手にこのような物が必要になるとは、フィンランド人の肌はそれほど弱いのか」と、フィンランドの蚊の実力を完全になめ切っていた。その結果が、この刺されようである。完全に考えを変えざるを得ない。フィンランドも町を一歩離れれば、立派な蚊が五万といる。フィンランドの田舎やキャンプサイトを訪ねる予定の人は、彼等に十分敬意を表し、日本と同様の対策を取られることをお勧めする。
 私の見た蚊はたぶん一種類、日本のやぶ蚊のように黒く、胴体に縞模様を持っているが、刺されても、やぶ蚊ほど強烈な痒みはない。動きは鈍く簡単に叩かれるが、なにしろ、数が多い。金曜日の昼、ヘルヴェティン湖国立公園でハイキングをしたときは、長袖のシャツ、長ズボンで十分ガードできたので、フィンランドの蚊をさらに甘く考えていた。
 逆襲を受けたのは、この日の晩である。まず、午後8時過ぎのサウナは、肌の露出面積も多く、サウナ小屋から桟橋へ向かうわずか10mの道のりも、蚊が集まってくるには十分であった。また、サウナで皮膚の感覚が鈍っていたのか、刺されても気付かなかった節がある。背中や太腿を刺されたのはこの時だろう。その後のたき火にもサウナ小屋から直行したため、シャツは半袖の軽装である。たき火に面した前面は別にしても、後ろは無防備、しかも静かに座っているのだから、刺してくれと言っているようなものである。
 しかし、最も悩まされたのは、この晩、寝室に戻ってからである。屋外の蚊のなよなよした動きに比べ、室内の蚊は元気があり動きも峻敏である。なにしろ、室内は夏も暖房され約24℃の適温に保たれている。屋外では日中の最高温度に相当する気温に守られた蚊は、すくすくと成長し油断しきっている我々を待っていてくれたのである。夜中に羽音で何度も目を覚ましかけたが、起き上がって蚊を追うほどの気力もなく、刺されるままに刺されていたことになる。
 翌朝、起きて驚いた。体中が痒いのである。蚊に刺されやすい私だけでなく、家内まで蚊に刺されている。土曜日にはルオベシのスーパーを訪ねて蚊取り線香を買おうとしたが、後の祭、夏至祭の週末で、普段の土曜日は開いているスーパーも休みであった。この週末中、ヘルバンタに戻るまで、我々はずっと蚊に刺され続けることとなった。

(フィンランドの道路)

 週末は、いろいろな道路を走った。タンペレからオリベシまでの40kmは、片側2車線のハイウエイ、片側1車線のハイウエイ、対面交通の一般国道(ほぼ、自動車専用)を走った。一部を除き、いずれも制限時速100kmにて、車速は日本の高速道路と同じである。制限時速100kmの対面交通は少々怖い、片側1車線とは言え、道幅にはかなり余裕があるのだが、相対速度200kmでのすれ違いは、かなりの迫力である。幸い、車の流れはタンペレから離れる我々と同方向がメインで、対向車の数はかなり少なかったが。
 オリベシからヒルシラを経て国道66号線に入ると対向車は極端に減る。同方向に進む車も、速い車は次々と追い越しを掛けて去って行くので、同行する車は2、3台のみ。国道を離れて県道(クラスの)3481号線に入ると、前後に車が居なくなる。約9kmの走行時に、走っている車を見かけたのは2、3台のみ。速い車は車種をみれば分かる。ウノが速く走る車だとは誰も考えないから、皆気持ちよく抜いていってくれるので、こちらはトロトロと走っていても心配ない。追い越しをかける場所は豊富にあるので、後ろから迫られることは、日本でゆっくり走っている場合に比べ、はるかに少ない。ましてや、週末のドライブでトラック等を見かけることはまったくないので、トラックに後ろから迫られる恐怖は皆無である。
 国立公園に向かう(舗装はされているが)枝道や、ファームへ向かう未舗装の道では、他の車に出会うことは、まずない。会いたければ、止まって、しばらく待つ必要がある。タンペレ近郊とはえらい違いである。つくづく、タンペレは都会であると感じた。車は、都会ではなく田舎で使って初めて価値が出ると言える。

(ヘルメット)

 フィンランドでは、多くの人が自転車走行時にヘルメット着用している。子供だけではない。老若男女が皆色も形も異なるヘルメットをかぶっている。その証拠にスーパーの自転車用品売り場では、始終ヘルメットのセールをやっている。このような安売り価格で100マルッカ(2500円)、まともに買うと2000マルッカくらいするが、良く売れているようだ。わが家では、私を除く3人のヘルメットは、ダウンタウンのスポーツショップ(4台目の自転車を購入した店)で99マルッカで購入しているが、私はことのき同行しなかったので買ってもらっていない。
 先日、ようやく郊外スーパーでヘルメットを購入(少々高価で129マルッカの高級品)、持って帰ると、いきなり家内に笑われた。「お父さんカッコイイ!」と言ってくれたのは素子だけであったが、どうも素子はカッコイイという言葉を誤解しているふしもあり、この言葉は男の子に付く枕詞かなにかと思っている様子だ。気にしないことにする。「このヘルメットは日本にも持ち帰って使うんだ!」と決心するのであった。


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