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スーパーマーケット民俗学



日本のお昼休みの風物詩と言えば、銀行の行列。短い昼休みを利用して窓口に並ぶため、どこの銀行もサラリーマンやOL風の人たちで満員です。もちろんブラジルもこれは同じで、お昼頃に行くと行列にはまってしまい、下手をすると30分ぐらい待たされます。まだ、僕は経験ありませんが他の町の友人の話だと1時間以上待たされることもあるとか。ただ、こちらの行列の場合、利用者が多いという理由意外に、窓口の人が少ないというサービス業にあるまじき原因もありますが。

日本でも最近は一列にならび、そこから空いた窓口に行くシステムが一般的ですが、それはこちらブラジルも同じ。それ以上にありがたいのが「特別窓口」の存在です。この窓口は主に老人、障害者、妊婦向けで、普通の人は並んではいけません。特別窓口に誰も並んでいない時だけ利用することができます。こういった社会的弱者はバスの中でも優遇されます。なんといってもタダで利用できるんですから。余談ですが、ブラジルでは老人や障害者に席を譲りやすいですよ。日本で譲る時のような妙な緊張感とかなくて誰もがきがるに「おじいちゃん、どうぞここに座ってください」と声をかけます。ブラジルと言えば「犯罪都市」と誰もが思いますが、そういった人の暖かさが日本よりもたくさん残っているのは確かです。

銀行窓口でのそういった対応を見ていると「まあ時間がかかってもしょうがないか。並ぼう」という気持ちになるから不思議です。人が行列でいらいらするのは「行列が長い」と言うことよりも「並んでいる場所によって不公平がある」ということなんだな、と感じます。

不公平感を強く感じる行列といったら真っ先に思い出すのがスーパーの行列。買い物時なんかには各レジに人が並んでいて、早そうなレジを見つけるのがかなり重要です。自分が選んだ行列がサクサクすすんで、「今日は勝った!」と思いながらも目の前の人がクレジットカードで支払いを始めちゃって延々と待たされるなんてことは日常茶飯事。

もちろんブラジルのスーパーも似たようなもんですが、ひとつだけ違うのが「Caixa Rapido」というレジ。その名の通り「早いレジ」ということで、買う物が10点よりも少ない人だけ並ぶことができます。ブラジルではみんな驚くほど大量に買いこんでいきます。一週間分はあるんじゃないかという膨大な量なので、そういった人の後に並んじゃうといつまでたっても自分の番が来ません。そんな時には Caixa Rapido が役立つんですね。

昔、テレビのニュースなどで「アメリカではこうやってスーパーのレジ混雑の解消をしている」と伝えていたのを見て「日本にもこういった窓口があったら一人暮しの僕にはいいんだけどな…」と思っていましたが、もうブラジルにもありました。ただ、単純に「だから日本のサービスは遅れている」とは思いません。ブラジルの人たちの買い物の量は本当に多く、それに較べたら日本の買い物の量は少ないので、行列があってもブラジルほど時間がかからないからです。

どうしてブラジル人は大量に買い物をするんでしょうね。一度なんか歯磨き粉を三本買っている人を見かけ、「あんた、それ何ヶ月分?」と突っ込みたくなるほどです。

いろいろ聞いてみたところ、日本とブラジルの買い物のしかたは少し違うみたいです。日本ではお母さんが毎日買い物に行くのはよくあることですよね。その日の野菜やその日の魚で夕食を作るというのが普通です。また、歯磨き粉や洗剤といった、日用品もなくなったら買いに行くというのが普通だと思います。でもブラジルは肉から野菜から日用品から買いだめしおいて、ストックから使うというのが普通のようです。生活様式の違いというのもありますが、年間1000%を越えるハイパーインフレを数年前に体験している人々なだけに「あるものをあるうちにたくさん買っておかないと、あしたになったら値段が倍になるかもしれない!」という潜在的な思いもあるのかもしれません。

そういった買い物習慣が長年続いたせいなのか、ブラジルと日本ではもうひとつ違うものがあります。それは「賞味期限」。毎日買い物をする日本では賞味期限を特に気にしますよね。賞味期限はあくまでも「おいしく食べられる期限」であって「商品が腐ったりして食べられなくなる期限」ではないのに賞味期限間近の製品は嫌われて、たたき売りにされています。

一方、買いだめ文化のブラジルではあまり賞味期限を気にしません。たとえ切れていたとしても開けて匂いをかいだりして大丈夫だったら食べちゃいます。

これがよく表れているのが牛乳。日本だと出来たばかりの牛乳が好まれますよね。長期保存が可能な牛乳もありますが、特別な事情がないかぎり飲みません。逆にブラジルでは牛乳と言えば長期保存の牛乳のことで、日本のような新鮮な牛乳はあまりみかけません。新鮮な牛乳を飲もうと思ったら、牧場を持っている友人の家に行くしかないぐらいです。

日本では「賞味期限」とか「衛生管理」とかに神経質になっていたので、おおらかなブラジルに来て「そうか、そんなに神経質にならなくてもいいのか」と視野が広がりました。大陸的なおおらかなところと合理的なところを両方持っているのがブラジル人です。


メールでの反響

From: ゆあ
Date: Fri, 27 Oct 2000 08:17:33

私は、国際ロータリークラブの交換学生として、5年程前に1年間ブラジルのパラナ州・クリチバに住んでいました。

ブラジル人の日用品の買い物って、確かにすごいですよね。私はホームステイをしていたのですが、お手伝いさんを入れて7人家族だった私のファミリーは、買い物となるとそれはもう大変なものでした。買い物カートを3つぐらいつなげて、あらゆるものを「これ、何か月分?」と聞きたくなるほど買い込んでいました。レシートが何メートルにもなったりして、本当にすごかったです。

私もテツさんと同じように、過去のインフレが背景にあるんだろうと思います。当時給料は日払い制、しかもお給料を朝もらい、午前中のうちに買い物に行き、その後仕事をする…なんて状態だったそうですね。

牛乳の買いだめにも、最初驚きました。一ヶ月ぐらい平気で保存してありましたからね…。でも、ブラジルにいるとそのうち慣れて、何とも思わなくなるから不思議です。



掲示板での反響

From: りかるど
Date: Fri Oct 27 04:57:37 2000

>買い物
そう言えば…確かにブラジル人は買いだめしておく習慣がありますよね。 なんでだろう?もしかしたら毎日買い物に出る事自体が面倒くさいかも。 日本みたいにコンビニとかあれば良いんだけどねぇー。


From: テツ
Date: Fri Oct 27 05:30:30 2000

ほんとたくさん買いますね。その点日本は一回一回の買い物の量は少ないものの毎日毎日よくお買い物に行きます。我が家では年末年始ぐらいでしたね。ブラジル並みに買いだめしたのは。でもその時はなにかうれしかったなぁ。

ブラジルの買い物をフォード方式とすると、日本の買い物はトヨタのカンバン方式かな?無用な在庫を持たない!です。でもこれはカンバン方式と一緒でジャスト・オン・タイムの納入ができるからでしょう。つまりいつでもなんでも手に入るから。

りかるどさんはハイパーインフレ時代はブラジルにいました?やっぱあの頃は買いだめしておかないとだめだったんじゃないでしょうか?



From: りかるど
Date: Fri Oct 27 08:20:14 2000

ハイパーインフレかぁー…よくその頃 TVの特番で「ブラジルよりひどい国・インフレ版」を観たものです。(笑)たしか当時ブラジルの年間のインフレ指数が約600%だったのに対して、ロシアとか東欧の国で年間3000%を超えてたそうな…

インフレに関しては、不便でしたねぇー。まだ幼かったのですが(80年代)、思い出すのは出来るだけお小遣いをもらったら貯金をしない事でした。子供なのでお小遣いの額は少なかったのに、一ヶ月もたつと3割近くもとのお金の価値が下がっていましたからね。だから、もらったら出来るだけ早く使おうとしていました。

やっぱ、買いだめはあの頃の習慣がそのまま続いているからかなー?まぁ、後は安易にいつでも買い物ができる施設が近くにないから、でしょうかねー?ちっちゃいスーパーならあるけど…

Sorocabaにいた時、ショッピングセンターとかへ行くとSorocaba近辺の町から買い物に来る人達を良く見掛けました(近辺、ちゅう〜ても半径300キロくらい)。やっぱり Carrefourクラスのマーケットになると、でかい街に出ないとありませんからねぇ。まぁ、ほとんど全員それを楽しみ(レジャー)として来てましたが。



From: テツ
Date: Fri Oct 27 08:52:11 2000

本当ですね。

サン・パウロ近郊のショッピンは日曜祝日も開いていますが、アラサトゥーバクラスの町のショッピンだと日曜日は開いていません。それなのにそれなのに日曜になるとみんなショッピンにやって来ますね。レストランは開いているので飯でも食べるのかな?と思うとそれだけじゃないようで、開いていない店のウィンドーショッピングを楽しんでいるようでした。アラサトゥーバの暑さはきついので冷房のきいた店内にいるだけでもいいんでしょうが、それでもショッピンに行くこと自体が娯楽になっていると思いますね。



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