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1999年6月 コパ・トヨタ・リベルタドーレス



ご要望にお応えしてパルケ・アンタルチカの写真の追加です。


ご存じの通り、コパ・トヨタ・リベルタドーレスは南米クラブチーム最高峰を選ぶ最高の試合です。 ちょうどそのときサン・パウロ( Sao Paulo )に用事があった僕は、迷うことなくそのチケット確保のために動きました。

6月15日 火曜日

サンパウロに来て、事務所の人に呼ばれ何事かとおもったら「リベルタドーレスの決勝戦のチケットが取れなかった・・・」という愕然とするような発言。「どうしましょうか?」と聞かれたので「何としても取ります!!」と答えるわたくし。すると「じゃあチケット代理店の者を同行させるので、その人と一緒に行ってください。」とのこと。

さて代理店の人と一緒に翌日の試合会場であるパルケ・アンタルチカに行きます。 ここはパウメイラスのホームスタジアム。 収容人員3万5千人ぐらいの小さいスタジアムです。 ちなみにアンタルチカってのはこっちでは超有名なビールのメーカー、 でも試合に出場するパウメイラスのメインスポンサーはこれまた乳製品では超有名なパルマラット。 で、会場についてみるとダフ屋の影も見えず、 チームウェアーを売る物売りが少し見かけられるだけ・・・ どうしたんだろうときょろきょろしていると物陰から怪しげにダフ屋の兄ちゃん登場。 代理店の人に登場してもらい、交渉開始。 その間にこちらはおみやげの物色です。 今回買ったのは「1999リベルタドーレスチャンピオン パウメイラス」 という名前の入った大きな旗とたすき。まあ勝ったら勝ったで記念になるし、 負けたら負けたで「幻の一品」としてこれまた記念になるでしょう。 さてさて代理店の人が戻ってくると「一枚80R$で売ってくれる」とのこと。 そのチケットの元値は15R$なので、5倍以上ふっかけていることになります。 きっとこっちのダフ屋相場より高いんだろうけど、ここは使いどころと思って買ってしまいました。 買った後、ダフ屋に「今後も欲しいチケットがあったらいってくれ。」 と電話番号を渡されたところをみると、相当喜んでいただけたよう です。チッ!

帰りのタクシーの中では代理店の人とサッカー談義。 サンパウロ市内には三つの大きなチームがあります。 そのうちサンパウロは高級住宅街にスタジアムがあり、金持ちに人気があります。 そしてパウメイラスは中流階級に人気があります。 なかでも一番ファン数が多く、エネルギーあふれるのがコリンチャンス。 ファン層は一番底辺ですが「やるときはやったるで〜〜」的な熱狂度は一番高いです。 なにか阪神のファンを思い起こしさせます。僕はどちらかというとコリンチャンスかな? いま監督が交代し、ノリにのっている上昇チームです。

とにかくチケットが手に入った喜びと、明日の期待でむずむずしながらその日は終わりました。

6月16日 水曜日

サンパウロでの用事も済ませ、午後6時前にはスタジアムに向かいます。 6時半開門なので急がなければなりません。 その日宿泊していたのはサンパウロの中心街サンパウロ通りの近くですが、 そこから会場までは2回ほど地下鉄を乗り換えないと行けません。 ただ、乗り換えるごとにパウメイラス人口が増えていくのが分かります。 パウメイラスのユニホームである緑のチームシャツを着ている人たちが増えていきます。 会場になる駅に着くと試合は始まってます。 応援歌を大声で歌いながらたくさんの集団が歩いていきます。そして爆竹。 爆竹といっても日本のそれとはケタが違います。爆竹が破裂した後は地面が黒くなっていて、 少なくともくらったら足の指ぐらいはもっていかれそうな感じです。

道案内はいりません。みんな目的地は同じです。 会場に行く間に僕もシャツを買い、エセ・パウメイラスファンに変身。 駅から会場までの道中には日本の夏祭りのように店が並び、 あちこちでファンが気勢をあげています。そこを歩いていると 「ついに世界最高峰の試合を、世界最高峰のファン達と見られるんだ!」 という興奮がいやがおうにも高まります。

会場につき、ゴール真後ろ少し高いところに陣取ったのは7時半。 試合開始9時40分の2時間前です。とにかくこっちは試合開始が遅い 試合が終わる頃には地下鉄も終わっているという具合です。 ここからはゴールまで近く、なかなか楽しめそうです。 いろいろスタジアムはありますが、 収容人員が少ない方が選手が身近に見えるのでいいですね。 チケット取るのは大変ですが。

スタジアムではもう試合は始まってます。だいたい2時間前ぐらいには満員になり、 あちこちで応援合戦が繰り広げられます。 応援歌は歌詞があんまり分かりませんが「オ〜レ〜 ポ〜ルコ〜」ぐらいは分かりました。 ポルコ(豚)はパウメイラスのマスコット。 日本では豚がマークのチームなんか考えられませんね。 まあ2時間あるうちにだいたいの応援の仕方は分かりました。 ウェーブをやったり会場で配られた旗を振っているうちに刻々と時間は過ぎていきます。

そして試合前。 まずはパウメイラスのウェアーを着た子供達がバーッと飛び出してくると「ウォ〜」 と歓声があがります。 その後に選手達が登場すると待ちに待ったファン達からは「ゴ〜ッ」という歓声。 選手一人一人の応援歌が鳴り響きます。 そしてその後には敵方のデポルチーボ・カリこんどは耳が切れそうになるほどの 「ピーッ」っというブーイングの嵐。この不公平感がたまりません。 3万5千の観衆中、 コロンビアファンはスタジアムのホントの隅っこに100人ほどいるぐらいでした。

試合開始!!もちろんはじめからスタンディングです。 スタンドを見回しても座っている人なんか誰もいません。 パウメイラスのホームゲームながら一進一退の攻防。 なにか精彩がありません。 この試合前のサンパウロ州選手権決勝第一戦のコリンチャンス戦にスタメンクラスをはずして戦い、 この試合にかけてた割には「なにこれ」って感じです。 審判も不必要にファールを取りすぎるので試合の流れが悪く、消化不良な前半でした。

あまり面白くない前半が終わり、後半になると流れが変わりました。 変えたのは審判。 あきらかにパウメイラス寄りの判定を連発しゴール前でフリーキックのチャンスをつくります。 さすがホーム戦。ここまでやるとは!! さすがにこれにはパウメイラスも調子づいたようで徐々に動きが良くなってきます。 というか一戦目が 1×0 で負けているので点を入れないと話になりません。 そして後半20分。 カリの選手がゴールエリア内でハンドリングをおこないPKをもらったときの歓声。 そしてPKの名手エバイールが決めたときの歓声。ため息ものでした。 一瞬すべての音が聞こえなくなるほどの音でした。

しかしその後すぐにこっちもPKを取られて同点。 ファンの心に黒い影がよぎります。カリ側もことあるごとに倒れて時間を稼ぎます。 とにかく露骨です。キーパーなんか密集に巻き込まれると必ず倒れて時間を稼ぎます。 ピッチでは戦争がおこなわれているんだ!ってのがよく分かります。 ファンのほうもいらいらしているようで、 スタジアム後方に掲げてあるコロンビアの旗が引きずりおろされたときは観客席は大歓声。 こっちも戦争でした。「あ〜何とかしてくれよ〜〜」と思った後半30分頃、 ジュニオールからのクロスをオセアス決めて再び勝ち越し。 もういちどあの歓声を味わうことができました。 その後両チーム退場者を出しながらもパウメイラスが押し気味に試合をすすめつつも試合終了。 PK戦に持ち込まれます。

PK戦はパウメイラスから。 1人目のジーニョのけった球がゴール右上に遠くはずれたときはスタジアム中に悲しみの声が。 その後2人目・3人目が決めてもそれほど大きい喚声があがりません。 PKをけったパウメイラスの選手が盛んに手を振って観客を盛り上げようとしますがだめです。 ブラジル人って盛り上がるときはすごいけど、すぐにあきらめちゃうんですね。 そんな観衆もカリの4人目がはずして追いつくとあの大歓声、再びスタジアムが揺れます。 そしてパウメイラス5人目も決めると大歓声の後、 カリの5人目の選手を押しつぶそうと大ブーイング。 ついに5人目のサパタは観客の声に負けたかのようにゴール左にボールをはずしました。 本当にそう感じるほど力弱いキックでした。

パウメイラス、初の南米チャンピオンです。 ブラジル最強の名門チームのひとつがついにその栄冠を手にした瞬間です。

もう言葉では言い表せません。体中がふるえる波動でした。 スタジアムが波うってました。その波は幾重にもスタジアムを流れ続け、 宴はいつまでも続くかのようでした。

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」という誰かの声とともに帰路につきます。 駅までの帰り道もパウメイラスの大きな旗を掲げ、 クラクションをならして走り抜ける車たちに手を振りながらの道のりです。 結局地下鉄は終わっていたのでタクシーで帰りましたが、 サンパウロ通りまですべての車にはパウメイラスの旗がたなびき、 町中いたるところからクラクションと応援歌が響きます。

そしてサンパウロ通り。 日本でいうと大手町と銀座を足して二で割ったような中心街も、 今日はパウメイラスファンで埋め尽くされ、勝利の余韻に酔いしれるかのようにいつまでも歌い、 踊り続けます。結局僕も朝の3時頃までそこにいましたが、 まさにブラジルの民衆のエネルギーを感じた一日でした。 きっとワールドカップの時はこの何百倍ものもりあがりになるんだろうな。

まだあの歓声が頭に残ってます。


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