7月21日 水曜日
暗闇の中バスは走ります。ブラジルでは都市と都市の間には平原が広がるだけで全く明かりがありません。人間本来の暗闇に対する恐怖が芽生えそうななか忽然と現れる光の帯は人の心に安らぎを与えてくれるかのようです。ゴイアニア。数ヶ月前に訪れたこの都市に入るときとくにそう感じました。暗闇の魅力、光の魅力を感じさせてくれる国です。ブラジルは。
この日はクイアバまでバスで行くんですが、到着予定時間は昼の3時すぎ。車内では何もすることがありません。僕は寝たり起きたりし、窓の外は草原が通ったり牧場が通ったりするばかりです。 そんなふやけた気持ちを引き締めてくれたのがクイアバ近くのシャッパーダの景色。シャッパーダとはアメリカのモニュメントバレーのようなテーブルマウンテンが続いていく高原地帯のことです。クイアバに近づくと、高原から一気にシャッパーダを下っていきます。まわりにはそそり立つテーブルマウンテン、砂漠のようなセラードの赤土と灌木。アメリカ西部を彷彿とさせる道をバスは進みます。
そのうち緑の木々が多くなり、こんもりした森の中にビル群が見えてきたらクイアバです。これまた未来都市をイメージさせる森と建物がとけ込んだ都市です。今回の目的地はもちろんパンタナル。クイアバはあくまで中継地です。クイアバではカンポ・グランジの友人とも合流し、再び4人での旅です。クイアバ脱出のチケットを各自手配したあと、今回のツアーを手配してくれたガイドの人と待ち合わせです。彼は7年前にブラジルに来た日本人で、今はパンタナルの自然や生物の写真を撮りながらガイドをしています。彼の案内で魚料理店に行きましたがここはおいしかった。今まで近くの別荘で魚を釣って食べたとき以外に魚を食べておいしいと思ったことはありませんが、今回ばかりはおいしかった。スープから焼き魚まですべてが完成されたおいしさでした。ブラジル人は魚をあんまり食べないから魚料理なんか食えたもんじゃねぇと思っていましたが、さすがクイアバ、近くにパンタナルという巨大な漁場を持っているだけあって魚の食べ方を知っています。
ガイドから翌日から始まるツアーの説明やパンタナルの魅力などを聞いた後はホテルにもどり、その後もビールを片手にお互いのブラジル生活の苦労や笑い話なんかを語り合いました。
7月22日 木曜日
ついにパンタナル!この名前を聞き、行くことを心に誓ってから何年たっただろう。とうとうその地に降り立つ日がきました。今回のガイドはセーザという気っ風の良さそうなおじさん。つきでたおなかとがっしりした体型が頼もしさを感じさせてくれます。そういえばクイアバにはこういった感じの頼もしげなおじさんが多いですね。サンパウロで太っているおじさんはただのふとっちょだけど、こっちのおじさんはかっこよさげです。
エアコンばっちりの快適なバンで出発。こちらは片言のポル語しか分かりませんがガイドはいろいろと話しかけてくれて結構退屈しません。舗装された走りやすい道路をまずはパンタナルの入口の町ポコネに向かいます。
ポコネの町はどこにでもあるような普通の町なので別段なんの感想も抱きませんでしたが、パンタナルに行く前に、町の郊外にある金鉱に連れていってくれました。そういえば、クイアバ一帯はいまだに金が出ているとのことで、その金鉱でも遠くの方で作業中の音がします。ただ、日本やミナスのように地中深く掘っていくのではなく、土の露出したところを露天掘りして採っているようです。昔掘ったところに水がたまって池のようになっています。土がむき出しの荒れた土地を見ていると、不意にだいぶん昔に訪れた中国のトルファンを思い出しました。そこのなんとか遺跡に行ったんですが、そこも荒れ果てて砂漠のような大地が広がり、遠くに孫悟空の話の火炎山のもとになった筋だらけの山々が見えた記憶があります。
ポコネをすぎると道はダートになり、両側にも草が生い茂るようになります。時おり沼地が現れてはパンタナルらしさを醸し出します。しかしなんといってもパンタナルは鳥!とにかく日本では動物園でしかお目にかかれないような大型の鳥や小さな鳥達がこれでもか、というぐらいに飛び回っています。まっさきに覚えたのがトゥユユ。パンタナルのシンボルと言われている鳥だそうで、色、形、大きさが日本の鶴にそっくりです。優雅に羽ばたいていくところも貫禄があります。そしてもう一つ目を引くのがアララ・アズール。ギャーっという鳴き声とともに大空を羽ばたく大型の青いオウムです。翼を広げると80cmぐらいはありそうなオウムが空を飛んでいく姿は感動ものです。
そんな鳥達に感動しながらバンはトランスパンタネイラの入口に到着。パンタナルの始まりです。 入口の門には「トランスパンタネイラ」と書かれた赤い看板が渡してあり、ここに大きな扉があったらジュラシックパークです。そこの管理所にある公衆電話はトゥユユの形でいかにも観光地チック。そばにある池には本日初お目見えのジャカレー(わに)がいて、さらに気分を盛り上げます。トランスパンタネイラに入ると両側に湿地帯がたくさん広がるようになり、まさにテレビで見たパンタナルそのものです。そういった湿地帯にはジャカレーの大群が群をなしていて壮観です。ところでどうしてワニというのは動かないんでしょうね。あんなんで獲物をどうやってとらえるんでしょう。じっと動かずにいて鼻先に来た獲物をパクッとやるんでしょうかね。
ジャカレーの他には相変わらずたくさんの鳥達が飛んでいます。次に覚えたのがカベッサ・セッカでコウノトリの一種。白くて細長くきれいな姿をしています。他に黒白赤の派手な体に大きなオレンジ色のくちばしというサイケデリックないでたちはトゥッカーノ。まだまだたくさんいましたが、僕のROMはこのあたりで停止しています。
そうこうするうちに本日の目的地、ポウザーダ・サンタ・テレーザに到着。裏には両側を密林にかこまれた雰囲気たっぷりの川が流れ、表にはサバンナのような草原が広がり、それを森が取り巻いています。昼食をとったあと、午後の乗馬まで休憩という予定でしたが、目の前に草原があって歩かないわけには行かない僕はさっそく歩き出します。草原の先まで行くと湿地も現れて少しパンタナルらしくなりました。なぜかそこには大型のカタツムリの殻のようなものが散乱しているところがありました。なにがあったんだろう、カタツムリを常食とする動物でもいるのかな?と想像力をかき立てます。さらに草原を進むと、心地よさげな大木やたくさんのアリ塚が転がっています。こっちのアリ塚はなかなか巨大で、大きいものは僕の身長ぐらいのものもありました。目の前に棒のように建っているアリ塚を見て、本当はやっちゃいけないんだろうけど先っぽの部分を思いっきり蹴飛ばして壊してみました。なかからぞろぞろアリが出てくるかとおもったらそのアリ塚は空き家だったらしく何も出ず、少し残念な気がします。
さらに歩いていくと、密林の中に消えていくトレースを発見。どうも馬で通った後らしく蹄のあとがたくさんあります。なんかロールプレイングゲームで秘密の通路を発見したかのような気分になりさっそく入ってみます。途中両側の木がかぶさっていて歩きにくいところはありましたが、道はどこまでも続きます。ただ、かわりばえのしない景色がずっと続いていくのでそれほど面白い道ではありませんでした。結局乗馬の時間が近づいたので途中で引き返すという何とも消化不良な結果になりました。
帰りは例の川沿いを歩いて帰りますが、僕が近づくとジャカレーたちが大きな水音をたてて逃げていきます。なんとなくワニは恐ろしい気もしますが、やはり基本的に彼らは人間が怖いんですね。また道ばたには体長30cmぐらいのトカゲもいました。日本のトカゲのようにしっぽが生え替わるのか体は茶色でしたが、しっぽだけは鮮やかな緑色です。宿に帰ると、どろどろに汚れた僕にくらべて涼しげなプールあがりの友人達が。前に道がある限り歩く僕に対して、友人達は前に水がある限り泳ぐようです。
そして夕暮れ時が近づくとボートクルージング。裏の川を小さなボートでさかのぼります。川にはいるとジャカレーの大群。岸を歩いて近づくとすぐに逃げる彼らですが、ボートだとかなり近くまで近づけます。全く身動きしない彼らの姿はいつも不思議です。こいつ口を半開きにしたままで大変じゃないの?とか思いますが、しばらくして見ると口が閉じていたりするので全くやる気がないわけではなさそう。どんどんさかのぼると、ジャカレーばかりの影の中に身動きする影を発見!なになにっと目を凝らすとパンタナル名物のカピバラです。カピバラはパンタナルに住む齧歯類、つまりネズミの一種でネズミ類の中では最大の大きさを誇ります。大きさは大きい犬ぐらいで川の近くに住み、もそもそと動きます。
そのあたりでUターン。今度は下流にむかいます。途中面白そうな生き物がいるたびに停まりながらの移動です。途中で発見したのはカワウソの群と、イグアナと再びカピバラ。同じようなペースで走るボートがあるな、と見ると大砲のように長いレンズをつけた気合いの入ったカメラを持った人達。無言でパシャパシャと写真を撮ると移動です。移動中も無言で目を凝らし、何かを発見するとガイドに指をさして指示、現場に直行。終始無言。う〜ん、獲物を追う狩猟民族系の旅行者って感じです。
そのボートが行き着いた先は、何かの鳥のコロニー。真っ白な体が枝と枝の間を埋め尽くします。 どうもここがこのボートツアーの目玉らしく、いつの間にか数隻のボートも集まってじっと見つめます。日本でも雀がコロニーを作る木ってのは決まっていて、木の下がフンで汚れたりしていますが、どうしてこういった鳥は特定の木に集まるんでしょうね。もちろん外敵から身を守るってのは分かるけど、何でこの木なんだ、という疑問は残ります。
夕食の前にナイトサファリ。車にバッテリーライトを積んで夜のパンタナルに出かけます。ただ見かけるのは相変わらずジャカレーとカピバラばっか。なかなかほ乳類は見かけません。ジャカレーは夜も相変わらず口を開けっ放しで、まったく労働意欲を感じさせません。いいよな、そういう生き方も、と思わず共感してしまいます。
しかしパンタナルはまだ終わりません。今夜はなぜか夜中の2時に起床。お星様の観察です。まわりになんにもないからきれいだろうというもくろみは見事に的中。それはそれは見事な星空です。ただ、ポウザーダの明かりがじゃまですが、明かりの全く届かない草原の奥深くまで入っていくのも怖そうなのでなるべく光の少ないところで観察です。じーっと見ていると、どうも僕たち以外にも誰かがいる気配がします。オンサ(豹)か!?と身構えますが、正体はカピバラ。ポウザーダのまわりの草を食べに来たのです。たぶん建物のまわりには危険な動物(人間以外)が近寄らないので夜な夜なやって来るのでしょう。彼らは近くに僕がいても近づかなければ平気で草を食べてます。そして時々鳴き声をあげるんですが、こればっかりは書けません。近くに仲間がいて何か交信しているんでしょうか。カピバラと一緒にしばらく星空観察をしていましたが、そのうち好奇心のあまりカピバラに近づいてしまいました。そうすると水に飛び込んで逃げたんですが、今までの静寂に慣れた耳にはものすごい大音響に聞こえるほどの音でした。その場にいた5頭はみんな逃げたんですが、なんかとても悪いことをしたような気になったのはなぜでしょう。
夜もしらじらと明ける頃まで静かな夜を楽しみました。
7月23日 金曜日
朝一は乗馬。 ただ馬に乗ってガイドの後ろについて草原のはじっこを一周するだけのやつだったので何となく体験乗馬風でした。馬に乗るのはこれまた昔のシルクロード旅行以来なので勘を取り戻すのにはちょうどよかったのかもしれません。乗馬が終わった後しばらく暇になりますが、このとき一緒にあそんだ宿の娘マリアナちゃんはとてもかわいい娘でした。年は3〜4才ぐらいだろうけど、さすが客商売の家に生まれてきただけあって僕らのような見知らぬ、しかも外国人の客に対しても明るく話しかけてきます。こちらが釣りの準備をすると「私もする〜」と言ったり、「木に登りたい〜〜」とかだだをこねるところはとてもかわいいですね。なんかマリアナちゃん一人のおかげでだいぶん気持ちのいい午後になりました。
そして釣り。手こぎボートで川に出て釣るんですが、ターゲットはピラニア。餌は肉。もう今までの釣りの概念をぶちこわすようなダイナミックな釣りです。あたりが出るまで粘り、場所を変え、仕掛けを変えるなんてことは無用。肉をつけて入れたとたんガツガツガツと音が聞こえるぐらいの勢いで食らいついてきます。しかしそこでクンッと引くと逃げます。どうも飲み込むのではなく、口先で食らいつくタイプみたいなので引っかけにくいです。南のピラニア釣りに慣れた僕はそう思いました。ちなみにアマゾンの友人もアマゾン・ピラニアとは違うようで手こずってました。あっちのピラニアはほっとけば針に食いついてくれるというありがたいピラニアのようです。ちなみに僕の近くの釣り場ではピラニアは嫌われてます。ピラニアがいると他の魚の餌を横取りしちゃうので他の魚が釣れなくなるんです。結局「これだ!」というパンタナル・ピラニアの対応策は見つかりませんでしたが、普通の釣りのようにあたりが来たらぐいっと引かずにじわじわと引いていけばなんとか釣れるみたいです。一度なんか肉に食らいついたままでつり上げたピラニアもありました。針がどこにも引っかかってないのを見て、自分の腕のなさを悲しく思う反面、ジャカレーと違ってやる気満々のピラニアの心意気を感じます。しかも餌がなくなると自分で釣ったピラニアを自分でさばいて餌にするという何とも野性味あふれる釣りでした。
ボートから帰った後も、岸辺でしつこく粘ります。なんかこっちに来て本当に何かあると釣りをしている自分が面白いっすね。日本では山や野原をズンズン歩いてひと気のないところで気を発散させる楽しみしか知りませんでしたが、いろんな自然へのアプローチの仕方がありますね。こちらに来て自分のフィールドが広がった気がします。
昼食で自分が釣ったピラニアをフライにしてもらい食べたんですが、これが美味ですね。からっと揚がっているのでしっぽやひれまで食べることができ、カレイのフライみたいでいけました。
その後、別のポウザーダに移動。今度は目の前に湿原が広がるポウザーダ・ピウバウというところです。前者がどこに出もありそうな草原に囲まれていたのにくらべると、よりパンタナルらしさあふれるポウザーダです。
到着して少し休憩があったので、さっそく湿原散策。あちこちに名前も知らない鳥がこれでもかというくらいいます。カモメのような姿と鳴き声の鳥が威嚇するように僕の頭の上を低空で飛んでいくのでこのあたりに営巣地でもあるのかもしれません。前のポウザーダのまわりではカタツムリらしき殻をたくさん見かけましたが、今回の湿原ではカニの死骸をたくさん見かけました。たぶんこれは湿原が乾いて小さくなっていくときに逃げ遅れたヤツなんでしょう。
その後はボートクルージング。前回は川でしたが、今回は湖というか大きな湿地を飛ばします。あちこち歩き回って汗をかいた体には湖上を通り過ぎる風が気持ちよすぎます。今回は黒い鳥のコロニーが目玉です。たくさんならんでいる黒い鳥達と、そのフンで葉っぱまで真っ白になった木々とが対照的で、なんとなく世紀末チックな光景です。しかし水の上をボートで進むという光景は、なんかアジアな感じがしますね。ここはパンタナル・ブラジルなんだ!と言い聞かせても、遠く水面のふちに生える浮き草を見て目を上げるとそこにはノンをかぶり水牛を追う少年がいるような気がします。水面を赤く染めて沈んでいく太陽を見ると、そこにそそり立つパゴダやサリーを着た女性が歩く姿が目に浮かびます。紫色に染まる水には古くて思いお寺の屋根がうつっているような気がします。やはり僕の心はアジアの水の中にあるのかな?とはからずもパンタナルで感じてしまいました。
今日の日の入りは鏡のようになり、どっちが空で、どっちが水面か分からないような美しい湖の上で迎えました。とにかく旅行をしていると、毎日日の入りが充実していますね、というか一日一日を濃密に過ごしていくことを実感します。ふだんの生活でどれだけ日の入りに思いを馳せることがあるでしょう。
暗闇があたりをつつむころになると、湿原のあちこちが光ります。そうです。蛍です。静かな静かなパンタナルの夜をさらに静かに彩ってくれる粋な演出に、毎日のハードスケジュールで疲れている体も休まります。それと毎晩のおいしいビールと。
7月24日 土曜日
本日の起床は5時半。日の出の観察です。夜空の星たちが暗闇にとけ込むように見えなくなると、太陽の出番です。いつ見てもこの時間が一番気持ちがいい。世界のすべてが青く染まっていく瞬間。自分もその青の中の一部になり地球の一部になっていく快感です。双眼鏡でのぞくと、湿地帯のまわりをかこむように生えている森の木々の間からオレンジ色の巨大な太陽が見えます。良くテレビの自然紀行ものがやっているようなじわじわと昇っていく太陽です。こうやってみるとけっこう太陽は素早く動いてるように見え、こんな調子だったら5時間もすれば天空を一周しちゃうんじゃないかと思ってしまいます。
その後おきまりの散歩。時間があるので遠くまで行こうとしますが、沼地に阻まれてなかなか先に進めません。なんか迷路の中をぐるぐる回るかのようにうろうろしながら終わってしまいました。
そして再び乗馬ツアー。 今回のツアーは前回のお試しツアーとは違い、ちゃんとしたトレッキング風のツアーのようです。 まずはポウザーダ前の湿地に入っていきます。歩いているとなかなか突破できなかったところが馬では簡単に行けます。これですね。歩いてなかなか行けないところに行くってのが馬の楽しみです。途中トゥユユの巣なんかもあります。トゥユユは高い木の上の方に大きな巣を作ります。そこに門番のように立ちつくすトゥユユの姿は孤高の王といった雰囲気です。どうでもいいんですが、馬の上で双眼鏡で物を見るのは大変です。細かく揺れてなかなか見えません。当たり前といえば当たり前ですが、ここで学びました。その先も草原を通りぬけたり沼を渡ったり旅は続きます。パンタナルには牧場も多く、牛の姿をあちこち見かけますが馬に乗って近づくとあまり逃げません。「こいつら何者?ほっといとくれよ」といった目でこっちをじ〜っと見ています。
朝はおとなしそうに見えた太陽もこのころになると「さ〜今日も元気に働きましょう〜〜」といった感じで気合い入れて照らしてくれます。じりじりと焦がされていくなか、みんな声も少なく進んでいきます。みんなの馬もいろいろと性格があるようで、僕が乗った馬はわりとおとなしく言うことを良く聞きます。なかには草があるとはみ、水があると飲むという欲望に忠実な馬もいて、すぐに遅れていきます。馬の性格だけじゃなく、上の乗り手にもよるという話しもありますが。いい加減あついな〜〜と思っている頃に目的地らしきところに到着。みんな馬をつないで歩いていきます。僕は「お疲れさま」ということで自分が乗っていた馬の頭をかいていたら、隣の馬は甘えん坊らしく、その馬を押しのけてこちらにすり寄ってきます。馬や犬のようにわりとおとなしく、考えていることがだいたい分かるような動物が好きな僕はあちこち散策する人達とは別に馬との心の交流を楽しむのでした。
「こっちに来なよ」の声で呼ばれてみると、広場のはずれに展望台がありました。木製の階段を登ったところに木製のテラスがあり、そこに登ると湖と湿原が目の前に広がっています。トム・ソーヤーでも出てきそうなのどかなのどかな風景でした。その後ガイドの案内で森にはいると、樹上には猿たちが群れています。ガイドの話によると、このあたりは雨期になっても水没しないので動物達の避難場所になっているとのこと。そのため牛の糞が多いんだそうです。あたりを十分歩き回ったあと、再び馬にまたがりポウザーダへ。
結局3時間以上馬に乗ったあと、のんびり昼食です。昼食後釣りに出かけようと思いましたが、テレビから聞き慣れた音楽「チャッチャッチャチャ〜、チャラララララン。」もうこの音楽が流れると自動的にテレビの前に移動してしまいます。そう、この音楽はグロボ・テレビでサッカーの中継が始まるときのテーマ曲。今日はコンフェデレーション・カップのブラジル×ドイツ戦。宿泊客達もぞろぞろとテレビ前に集まってきます。試合が始まると、やはりブラジル人、惜しいシュートがはずれるたびに両手を振り上げて「オオ〜〜」。パンタナルでもサッカーはサッカーです。しかし残念なことに眠さがピークに達したのでテラスにあるハンモックに移動。うとうとと寝てしまいました。寝ている間にはテレビの前から歓声があがるとアナウンサーの「ゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ル・ド・ブラジウ!!」という声が聞こえてきて、ブラジルが点を入れたときのテーマ曲が流れてきます。気持ちのいいハンモックと楽しそうなブラジル人の様子にこっちも幸せになっていきます。その後もたびたび歓声と「ゴ〜〜ル」の声が聞こえたので、たぶんブラジルが勝ったのでしょう。
そのうち試合が終了したようでぞろぞろと部屋に帰っていきます。僕もガイドに起こされて帰る準備です。
そして今回のパンタナルツアーは終了。
やはり日本でもブラジルでも自然の中にひたると生き返りますね。人間とコンクリートに囲まれてささくれ立っていた気持ちが少し良くなった気がします。