8月29日 日曜日
僕たちを乗せた夜行バスは一路イグアスをめざします。こっちにも長距離バスはたくさんありますが、僕の心の中ではテレビがついていてビデオを見ることができるバスは高級です。今回のバスもビデオ付きで出発時間も夜9時だったのでなにかしらビデオ上映があるかと期待しましたが、残念ながらありませんでした。チッ、です。大きいバスの割に客も少なく一人で二席占領してゆっくり座ることができます。このバスはブラジリアからイグアスまでの直行バスですが、他の客を見ると大学生風の若者が多く「やっぱ学生はこうじゃなきゃね、飛行機使ったらダメだよ」って思います。ビデオ放映もないので結局することのないままダラダラと時間が過ぎていきます。時差ボケの影響か、いつでもどこでも眠れる友人がうらやましいです。
しかしボーッと起きていると面白い光景が見られました。ある町のホドビアリアでいつものように停まり、何人か客が乗ってきたんですがどうもひとり身分証明書が無い模様。運転手に「身分証明書出しなさい」と言われてあちこちのポケットを探しています。そのやりとりがちょうど窓際に座っていた僕の目の前で行われていたので思わずじーっと見ていました。その女性客はポケットから荷物の中から探すんですが見つかりません。まわりにいた彼女の見送りの人達も運転手に「ちょっと見あたらないんだけどなんとかしてあげてよ。」みたいなことを言ってるみたいですが、運転手の答えは「No!」。そう言われると今度は女性客に「ほら、もっとよく探して。」とか言ったりしていろいろ心配しています。結局身分証明書は見つからなかったらしく、運転手はおもむろに「荷物を下ろしなさい」とバスの下にある荷物置き場の扉を開けます。彼女たちも渋々それに同意して荷物を出してしまいました。そして彼女をおいたままバスは出発。ガイドブックにも身分証明書は必ず持ち歩くようにと書いてあったけど、本当にそうだったんですね。
そのうち、やっと眠りに落ちていい気持ちでイグアスへ。
やってきたイグアスのホドビアリアですが、観光地だけあってなんかにぎにぎしくて客引きがいっぱいいてギンギラギンにちがいない!って思っていたら、一地方都市のホドビアリアと同じでした。ホドビアリア内に英語の通じるインフォメーションがあるのと外の建物の数件に「○○ツーリスト」って書いてあるのがせいぜいです。なぜか「KINTETSU TURISMMO」って書いてあるけど、その文字もだいぶん前に書かれたものらしく薄れていて、場末の映画館みたいな寂しさを感じさせました。
インフォメーションで、今日泊まる予定のホテルまでの行き方を聞き、バスに乗り込みます。バスが通る先は見たところ普通の町で、なにかしら「滝」を感じさせるものを求めている僕にはやや不満です。「ここで降りなさい」と言われていたバス停におりた後、いつものごとく何人かの人に助けられてホテルに着きます。今回の宿泊は Hotel Pousada Evelina Navarrente というホテル。地球の歩き方にも薦められているホテルです。市街地の中心からは外れてますが、静かな住宅街の中にあり、ブラジル滝、アルゼンチン滝行きのバス停に近く、自分で滝をまわろうという人には便利なホテルです。お値段も19R$(1000円ぐらい)ととってもリーズナブルなわりに、部屋は清潔で満足しました。ホテルにチェックイン後、当たり前のように「滝に行きたい」というとオーナーのエベリーナがとても詳しく教えてくれます。これまたホテルに好印象をもった理由のひとつなんですが、強引にツアーに誘ったりせず、丁寧に教えてくれました。エベリーナの話によると、明日は月曜日でブラジル滝のある国立公園には午後からしか入れないので今日はブラジル滝を見た方がいいとのこと。また、ブラジル滝は乗り合いバスで行くのが一番いいとのこと。また、ブラジル側で唯一のボートツアーの会社を教えてもらい、そこの領収書を貰ってくればホテルに支払われるコミッション分を返してくれるというありがたい話も聞きました。
まずはブラジル滝行きのバス「Cataratas」に乗ります。バスはレトロチックな外観になっていて、東京の銀座とかを走っているレトロ都営バスを思い出させます。また、客層も、ホテルに行くときに乗った乗り合いバスとは違い、一見して旅行者と分かる人達でいっぱいです。ついでにお値段も市内バスよりも高いです。市街地を抜け、公園までの一本道にはいると両側に大きなホテルが建ち並びます。ただ滝があると言うだけでこれだけの大きなホテルが何軒もできるというのはすごいことだと思い、改めてまだ見ぬイグアスの滝の偉大さを感じます。そういえば、歩き方に書いてあったんですがアメリカのルーズベルト大統領夫人がイグアスを見てあまりの迫力に「おお!かわいそうな私のナイアガラよ!」と言ったそうで、それも頭に浮かびますます期待が高まります。そのバスの車内で、帰りがけに乗ろうと思っていた例のボートツアーの客引きに会い、途中下車することにしました。客引きについてもさすが世界の観光地、英語、ポルトガル語、日本語とりまぜて話します。日系人以外で日本語を話すブラジル人をはじめてみましたね。それだけ日本人旅行者が多いのかと思うとうれしくなります。ちなみにこの客引き、話し方とか雰囲気がズームイン朝!のウィッキーさんに似ていました。
ボートツアーの会社は Macoco Turismo で公園入口のゲートをすぎてから滝に行くまでの道のりの途中にあります。公園入口のゲートをすぎたあたりからまわりは密林に取り囲まれるようになり、すこし滝の雰囲気が出てきます。まずは滝までボートで観光です。ツアー会社のゲートから川のボート乗り場まではジープに乗ってまわりの解説を受けながら進みます。今回はパラグアイからの客が多いと言うことでスペイン語と英語になったんですが、驚くことにスペイン語の解説が結構分かります。ホテルについて、エベリーナと話した時にもポルトガル語が思ったより分かるのでびっくりしたんですが、ここでもびっくりしました。この四ヶ月間ポルトガル語の勉強らしい勉強はしていませんが、知らない間にヒアリング力が上がっていたんでしょう。そのガイドの説明によるとこのまわりに生えているヤシの木からブラジル料理に欠かせない「パウミット」がとれるそうです。パウミットとはヤシの木の先端の柔らかい部分の芯で、ちょうどホワイトアスパラのような味がします。食感はあえていえば日本のタケノコに近いかな。で、このパウミット1kgを取るのに10年近くかかるそうで、二回収穫するとそのヤシの木は死んでしまうそうです。その他インジオがカヌーを作るときに使う木などの説明を受けすすみます。途中、ジープで行くか、ジープを降りて歩いて行くか選べるところがありましたが、ごく数名の老年客をのぞいてみんな歩きでした。
しばらく密林を歩きますが、日本の山の中をよく歩いていた経験から言うと、ジャングルといってもそれほどの感動は受けませんでした。日本もブラジルも森の中は同じですね。とくに匂いは。そのうちボート乗り場に到着。はげしい川の流れで浸食されているのか崖のようなところを下ったところにイグアス川が流れています。ボートはゴムボートを大きしたような感じでちょっと頼りなさげですが、エンジンはいつも釣りで使っているやつよりもふたまわりぐらい大きいいかにも強力そうなやつが、二台もついていスポーツカーのような感じです。ライフジャケットをつけて、乗り込むとカメラを包むための袋が配られ、さっそく発進。予想通りのハイパワーでガンガン進んでいきます。しばらくは峡谷のようなところを進みますが、両側には崖が迫り、さらにその上には覆い被さるように密林がそびえ立ち、はげしい川の流れと相まって、それだけでも観光地になりそうな雰囲気です。
左右に揺れるボートの上で立ったまま「早く滝が見えないか」と待っていると、やがて遠くに白い水しぶきに包まれた滝が見えてきます。おお!壁だ!壁から水が落ちている!本当に大きな壁から水が流れ落ちているように見えます。もう目は吸い込まれたように前を見ています。滝の奥の方は水しぶきで見えませんがすごい迫力です。滝が近づくにつれ、すさまじいエンジン音もかき消すように滝の音が聞こえてきます。ひとつひとつでも十分観光価値のがある滝が何十も流れ落ちています。今は一年で一番水が少ない時なので一本一本分かれていますが、きっと雨期には壮大な水の壁になるんでしょう。さらにその滝にボートが近づくと、本当に天から水が降って来るかのような迫力があります。なんとかカメラを水しぶきから守りながら写真を撮りましたが、さすがにこのあたりからはあきらめました。自然の偉大さというと陳腐ですが、今まで山で味わってきた「静」の迫力とは違った「動」の迫力を感じさせてくれました。
滝の余韻に体がしびれた僕を乗せたままボートは戻っていき、再び車上の人となった後はブラジル滝が間近に望めるところまで移動します。バスは密林の中の道を進んでいきますが、突如としてピンクと白のかわいいホテル「ダス・カタラタス」が見えたら滝も間近です。バスを降りると再び滝の轟音が聞こえてきます。小走りにホテル前の展望台に行くと先ほど下から眺めた滝がデーンと横たわっています。さっきのボートツアーで一度見たとはいえやはりでっかいです。目の前はずーっと滝という具合です。と見ていると、後ろのほうで歓声がします。なにごと?と見ると、アライグマ系のケモノがのこのこ歩いていました。「歩き方」には「餌をあげないで下さい」って書いてあるやつです。「おうっ、お出ましか」と思うと、さっそく近くの観光客からパンを獲得したもよう。すると、仲間達が続々と駆けつけてきます。10頭ぐらいはいるんじゃないでしょうか。ほんの数頭しかいないと思っていた僕には、そいつの数の多さが驚きでした。
このあたりでおなかもすいてきたので目の前の「ダス・カタラタス」に食事に行くことになりました。このホテルはブラジル川の国立公園内唯一のホテルとあって、どのガイドブックにも載っている有名なところです。高いところでも二階建てぐらいの平べったいホテルですが、高層ホテルにはない優雅さを感じさせてくれます。中に入ってみると予想通り日本からのツアー客がたくさんいます。遠い日本からの観光客ってのはうれしいですね。今まで有名観光地に行っても日本人を見なかったのでちょっと寂しかったんですが、さすがにフォズ・ド・イグアス、世界の観光地です。この日は天気のいい日曜日だったので室内レストランはお休みで、プールのそばのバーでビュッフェ形式の昼食です。ここもイタリアン中心で、味も結構おいしかったですね。サン・パウロのテハッソ・イタリアほどではありませんが、まわりの景色、雰囲気を加味するとおなじぐらいいいところのように感じました。値段も同じぐらいですが。このホテルに泊まり、プールにつかりながらのんびりするのもいいかもしれません・・・と書いておいて、同じ泳ぐならイグアスの滝で泳いだほうが気持ちいいかな?と思ったりします。
さて、食事も済むとブラジル側の遊歩道を歩くことになりました。ブラジル側の遊歩道は至ってシンプルで道がほとんど一本です。途中展望台に行くための分かれ道がありますが、それほど迷うことはありません。その要所要所で展望を楽しみながら歩きます。とにかく滝は大きいというか長いので展望台ごとに眺めが違うんですが、ある程度見ていると慣れてしまいました。しかし、遊歩道の終点に近づくと「おっ、ここから先はただものじゃないな?」って雰囲気がひしひしとしてきます。まず轟音。ここまでの滝でも日本の滝十本分ぐらいの轟音はひびいているんですが、このあたりになると音が直接体を揺さぶるようになります。重低音の迫力といいますか、滝の音がおなかにビンビン響いてきます。それとすれ違う観光客。びしょぬればっかです。「何かあるな、この先」と思って森を抜けると、そこは巨大な滝にぐるりと囲まれた展望台。周囲の全部が滝!といった具合で、すさまじい迫力です。滝と言っても二段になっていて、上段の滝と下段の滝の間にはさまれたテラスのようなところに展望台がつきだし、か弱そうな道がそこまで続いています。まあここの景色は言葉で書くとなんかちっぽけになります。とにかく360度イグアスに囲まれてびしょぬれになりながら楽しめるところです。
ここを見て回った後は、ヘリツアーなるものに参加すべく、再びダス・カタラタス前に戻ります。ヘリツアーとはその名の通り、ヘリコプターに乗って空からイグアスの滝を観光しようというのもで、ブラジル側最大のイベントかも知れません。ちょうど夕暮れが近づいてきたこともあり、ヘリが飛ぶ頻度が高くなってきていました。やはりこの時間が一番きれいな滝が見られるんでしょうか。7分間でUSD50$というブラジルでは破格の高額を払い、待合所にならびますが、他の客もほとんどが外国からの観光客のようでした。最近の新聞によると、ブラジルヘアルの暴落に伴いアルゼンチンからの客が急増しているようで、確かにスペイン語を話す人が多かったようです。
そしてヘリツアー。ヘリコプターに乗ることも初めてなので、その感動もあるかと思いきや、やっぱり目は滝のほうに注がれています。あっという間にヘリは舞い上がり、滝を上から眺めることになります。上から見ると、大きな水たまりに巨人が足をドーンと踏みつけたような感じで、川の真ん中が細長く陥没し、そこに四方から水が流れ込んでいます。前に聞いた友人の話だと、その滝のまわりを360度マット(密林)が取り囲んでいて、荘厳な景色が眺められるとのことでしたが、長い間雨が降っていないので空気が汚れており、あまり遠くまで見渡せなかったのが残念です。また、座席についても前は助手席に一人、後ろは三人掛けで、僕は最悪の真ん中に座っちゃったので写真を撮るのも大変です。幸い今回も後ろに小さいモニターがついているデジカメでの撮影だったので、普段OFFにしているモニターをつけて、腕を窓から外に出し、モニターを見ながら撮影したので結構簡単に撮れました。7分間というわりには何度も滝上を旋回してくれ、充実感のあるツアーだったと思います。ただ、どうしても写真のことに気を取られ、十分に滝の姿が堪能できたかは自信がありません。
7分間の空の旅が終わると、もうそろそろ夕暮れ。帰りのバスの時間までまだちょっとあったのでホテル前の芝生に寝ころんだり、滝を眺めたりしながら時間をつぶします。そしてバスに揺られて帰って行くんですが、ホテル前6時発のバスはホテルの従業員や売店の売り子達の帰宅のためのバスと化していました。ヘリツアーのお兄ちゃんと、滝の側の売店のお姉ちゃんが楽しげにビールを飲んでいる姿や、ボートツアーの会社のお兄ちゃんが途中から乗ってきて、他の乗客に一日の話をしている姿を眺めていると、観光地イグアスのもうひとつの姿を見ているようで、暖かい気持ちになれます。
ホテル前でバスを降りた頃にはもう日もとっぷりと暮れていました。もう夕食の時間ですが、遅めの昼食をとったのであまりおなかがすいていません。ぶらぶらとホテルまで歩いていると、ホテルの近くのお店にたくさんの人が集まっています。見てみるとそこはアイスクリームショップ。その光景を見ていたら、暑さに疲れた僕たちとしては入らないわけには行きません。さっそく入ってみました。中にはたくさんの種類のソルベッチ(アイスクリーム)がならんでいます。店員が持ってきたメニューにはバナナスプリット系の各種のソルベッチが写真入りで載っていて、いかにもおいしそう。チョコレートやキャンディーなどの甘いものは嫌いだけど、ソルベッチだけは食べられますね。僕は桃スプリットを頼みましたがとってもおいしくて満足しました。だいたいブラジルって何につけ味が濃いので甘いものはめっちゃ甘いんですが、それほど甘くはなく、強いて言えば日本のハーゲンダッツクラスの甘さで、それをもっとおいしくしたようなところです。
8月30日 月曜日
今日の予定はアルゼンチン滝の見学。朝食をとり、エベリーナからアルゼンチン側のアドバイスを聞いたあと、さっそくバスでアルゼンチン側に向かいます。やってきたバスはブラジルバスとはちがい、インドや東南アジアによくありがちなカラフルなバスです。ブラジルのバスはどちらかというと日本のバスみたいに無味乾燥なものが多いんですが、このバスはいかにも南米といった彩色で旅心をくすぐってくれます。運転しているおっさんもいかにもラティーノって感じのおっさんだし、早くも今日の楽しげな一日を想像させてくれます。そんなバスはいろいろな客を乗せながら、まずは国境の検問所へ。イグアスの滝のあたりはブラジルの町フォズ・ド・イグアスと、アルゼンチンの町プエルト・イグアスと、パラグアイの町シウダード・デル・エステが三位一体になっていて、その三つの町の周遊だけだったらパスポートも入りません。僕もブラジルの身分証明書の確認と形だけの荷物チェックだけでアルゼンチンに入りました。
さてアルゼンチン側に入った感想。「やっぱここは南米だよ!」です。なんかカラフルでゴチャゴチャしていていかにも南米といった感じです。これにくらべるとブラジルは日本のような機能一点張り風の町が多く、異国情緒がありません。なぜなのかな?と考えていたら分かりました。看板と横断幕です。アルゼンチン側の町ではお店の看板が路上まで所狭しとはみ出していて、その道の上にはお店の宣伝やフェスタの宣伝を書いた横断幕が何本も渡してあります。ちょうど日本の夏祭りの時のようです。ブラジルでは看板に対する規制が厳しいのかそういった看板をあまり見かけません。さらにアルゼンチン側のバスターミナルもブラジルとは違います。ここもカラフル。ブラジルではチケットブースの上に会社名と行く先を書いたこれまた事務的な看板が出ているだけですが、アルゼンチンのチケットブースでは「ブエノス・アイレス」とか目的地が極彩色のペンキで書かれ、これまたあやしげな雰囲気を出しています。
しかしここで乗り継ぎのバスが45分待ちということが発覚。バスでの移動を断念してタクシーに切り替えます。あやしげなタクシーに乗って、滝まで行く途中にひからびた池で停車。何事かと思ったらかすかに残る池の側にジャカレー(ワニ)がいる模様。さすがにパンタナルを見てきただけに、ジャカレーには食傷気味ですが、こんな寒いところにもジャカレーがいるということに少し感心しました。滝までの道のりはブラジル側とほとんど同じです。密林に囲まれた道をどこまでも行きます。
アルゼンチン側の起点になるのはビジターセンター。付近の地図や見所を書いた地図をおいていて、結構親切です。さっそく地図を片手に歩き始めます。アルゼンチン側の遊歩道は複雑に張り巡らされていて、地図を頭に入れておかないとわかりにくいです。道は錆びにくいようにステンレス製で、ブラジル側よりもしっかりした感じがします。ルートに沿って歩くと、まずは崖沿いに降りていくことになります。道はアルゼンチン滝の方まで続いているんですが、それに到るまでにも大小さまざまな滝があって楽しませてくれます。その滝を見て思ったのは、あきらかに流量が少ないということ。水量が多いときに削った岩肌が露出していて、そこがもう完全に乾いています。きっと夏にはあのあたりまで水が流れるんだろうなあと思うと夏が楽しみです。
また、大きな滝のそばにはイワツバメらしき鳥たちが住んでいました。滝のすぐ側で水しぶきをあげながら盛んに飛び回っては岩肌の割れ目のなかにあるであろう巣の中に飛び込んでいきます。たしかにあそこだったら命をねらう動物達からうまく逃げることができるでしょうね。
道は大きな崖を回り込むように進み、アルゼンチン側の悪魔の喉笛に近づいてきます。そして目の前にその姿を眺めたんですが、すごいですね。ひとつの滝であんなに水量があるなんて驚きです。水の塊が天から落ちてくるような迫力です。乾期でさえそうなのだから雨期には・・・と、またまた想像をふくらませてしまいます。そのうち、滝の上の方に登る道と、下の方に降りる分岐点に来ました。ここから降りると、無料の渡し船に乗って川の向こう側に渡り、アルゼンチンの悪魔の喉笛に急接近することができます。もちろん僕たちが行ったのは下る道。あの滝を間近に見れるんだから行かない手はありません。
道を下って船着き場に着くと、そこは向かい側への渡し船と、悪魔の喉笛へのボートツアーの出発地が一緒になっていました。ボートツアーについては昨日とほとんど同じようなものみたいなのでやめました。もう一方の渡し船にのって対岸に着くと、そこはきれいな砂浜でした。砂浜といってもほんの狭いもので、背後には滝を形作っているのと同じ崖がそそり立っています。ここは四方八方を崖に囲まれ、目の前には轟々と滝が流れているなかに、ほんの少しの静寂の場を提供していてエアポケットのような不思議な所です。背後の崖を登っていくと、上が平らになっていて、そこがちょっとした庭のようになっています。エベリーナのすすめ通りに歩いていくと、まずは、小さな滝とそこから流れている水が庭園を形作っているところに出ます。きっとここがガイドブックに書いていた「泳げるスポット」なんでしょう。ただ、やはり水量が少なく、天然プールのほとんどが干上がってました。これもまた年末の楽しみとなりますね。
そこをすぎて再び歩いていくとさっき見た悪魔の喉笛のすぐ近くの展望台です。ここも水しぶきが飛んでくるなかしばらくたたずんでしまいます。莫大な水量が転がり落ちるところは昨日と同じで自然の迫力というか、そんな言葉をこえて、ただボーッと眺めるしかないといった感じです。ブラジル滝との違いは途中で見たイワツバメらしき鳥たちが滝のまわりを飛んでいることでしょうか。大きな水のカタマリが落ちるたびに爆発するように舞い上がる水しぶきと大きな虹、そしてそこを縦横無尽に飛び回る鳥たちがなんとも言えないファンタジックな景色を紡ぎあげていました。
ここで時間をとりすぎたため、もうそろそろ時間がなくなってきました。友人が午後3時過ぎの飛行機でマナウスに飛ぶからです。後ろ髪を引かれるように戻りますが、なにかいい景色があるたびに引きずられるように長居をしてしまいます。そうやってのんびりと戻るうちに渡し船も渡り、先ほどの分岐点に来ました。ここから上に行けば、さらに滝の上流に歩くことができ、さらにはずっと上の方の展望台まで行くことができるんですが、今回は時間切れで友人に申し訳ないことをしました。
ビジターセンターでバスを待つ間、お土産などを見ていたんですが、さすがアルゼンチン、物価が高いですね。どの値段もちょうどブラジルの倍ぐらいします。そのくせ施設などはブラジルと同じぐらいです。そこからセントロに行くバスもブラジルのバスよりもだいぶん旧式ですが、値段はブラジルの倍。「アルゼンチン物価高いよ」と思ってしまう内容です。
その後の乗り継ぎはスムーズに行き、思ったよりも早くホテルに戻れ、そのまま空港に行きます。空港の方はさすがに観光地フォズ・ド・イグアスの空港だけあって、なかなか立派です。もちろん建物は小さいんですが、両替商や観光案内所、書店などがあり、観光基地としての最低限の設備が整っています。そしてこの空港で友人をお見送り。最後には見送りデッキから飛び立つ飛行機を見送るんですが、このまま友人はマナウス、そして地球の裏側日本へと遠い道のりを帰って行くんだなあ、そして僕はバスでのんびりと自分の町にもどり、またブラジルでの生活が続いていくんだなぁと思うとちょっと感慨深げでした。
その後は帰るだけだったんですが、事前に手配していたチケットに書いてある出発時間が間違っていて乗り過ごすことになってしまいました。「あ〜〜明日の授業間に合うんか!」と思ったんですが、なにかこういったトラブルの時の方がすごく元気が出ますね。さっそくいろいろと方策を考え、まずはオウリーニョスまで夜行バスで行き、そこから乗り換えて帰るというとっても時間のかかる方法で帰ることになりました。めでたし、めでたし。