第一章
原相論

第二章
存在論

第三章
本性論

第四章
価値論

第五章
教育論

第六章
歴史論

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四章 価値論

今日、真善美に対する伝統的な観点が失われてしまっている。中でも善に対する観念が希薄になり、倫理観・道徳観が急速に失われている。

価値観の崩壊の原因

経済、政治、教育、芸術など全ての分野において神を排除し、宗教を軽視している
共産主義の浸透による価値観の破壊 伝統的価値観に対する批判
宗教相互間、思想相互間の対立
宗教の徳目が科学的思考方式をもった現代人に対して説得力を失っている

一、価値の根拠と種類

価値とは主体の欲望を充足させることのできる対象の性質である。価値が現れる為には主体が対象の性質を認めて評価することが必要である。

価値を論じる為には主体のもっている欲望を論じなければならない

人間の欲望―性相的欲望 生心の欲望…真美善愛に対する欲望
       \形状的欲望 肉心の欲望…衣食住性に対する欲望

○欲望の由来

創造目的実現のために神は人間に衝動的な意欲、やってみたい、得てみたいという心の衝動を与えた。欲望とはある目的を達成しようとする心の衝動のことである。

全体目的を達成しようとする欲望 価値実現欲
個体目的を達成しようとする欲望 価値追求欲

○価値の種類

性相的欲望を充足させる価値 性相的価値 精神的価値 真美善愛
形状的価値を充足させる価値 形状的価値 物質的価値

愛は真美善の価値の基盤、価値の源泉である。愛がなければ真なる価値は現れない。神の心情を体恤し、愛の生活をするならば、輝かしい価値に接したり実現することができる。

二、現実的価値の決定と価値観の統一

(一)価値の本質

価値は主体と対象の授受作用によって決定される。

対象がもっている本質としての価値を潜在的価値といい、主体と対象間で現実的に決定され、判断される価値を現実的価値という。

(二)相対関係における現実的価値の決定

対象の備えるべき条件 : 創造目的と相対的要素の調和

主体の備えるべき条件 : 価値追求欲と対象に対する関心 前提条件(思想、趣味、個性、教養、人生観、歴史観、世界観)

主体的条件と対象的条件が成立するとき、そこに授受作用が行われ価値が決定される。価値の決定とは価値の量と質が決定されることである。

価値の量 「とても美しい」「あまり美しくない」というような量的な価値の評価
価値の質 優雅美、荘厳美、滑稽美などの価値の質的な差異

主観が対象に反映することによって、量的にも質的にも価値の差異が生ずる。主体的条件の価値決定への影響を主観作用という。価値の決定には主観作用が働く。

(三)価値決定の基準

主観作用のために価値の決定は人によって異なるのが事実である。しかし主体的条件に共通性が多いときには、価値評価にも一致点が多くなる。相対的基準でもっては全人類の価値観を統一することはできない。全人類に共通な価値評価の基準が必要である。

価値評価の絶対的基準となり得る共通性 : 神の愛と神の真理

神の愛 : キリスト教のアガペー、仏教の慈悲、儒教の仁、イスラム教の慈愛など、全てに通じる。

宇宙の理法の根本 : 宇宙の全ての存在は「為に生きる」存在

人間は全体目的を優先させながら個体目的を追求し、普遍相をもちながら個性を表す。

新しい価値観とは神の絶対的愛と絶対的真理を基盤とした価値観のことである。

三、従来の価値観の脆弱性

○キリスト教

キリスト教の徳目の基礎は愛であり、愛の基礎は神であるが、近代に至り神の存在が否定されるようになってきた。共産主義はキリスト教のいう絶対的愛とか人類愛を否定し、真の愛は階級愛または同志愛と説く。

利害が対立している社会においてはキリスト教の愛は観念的であり、愛の基盤である神の存在に確信がもてないような状態ではキリスト教の愛には説得力がない。

○儒教

儒教の徳目

五倫 父子親あり、君臣義あり、夫婦別あり、長幼序あり、朋友信あり
四徳 仁・義・礼・智
四端 他人の不幸を哀れむ心、不義を憎む心、譲り合う心、善悪を判断する心
八条目 格物・致知・誠意・正心・修身・斉家・治国平天下

これらの徳目の基礎は仁であり、仁の基礎になっているのが天である。儒教において天とは何かが明確に説明されていない。

共産主義者は儒教の教えは封建時代の支配階級が一般大衆を従順に従わしめる為に作り上げた支配合理化のための手段であり、今日の民主主義には合わないといって批判した。

○仏教

仏教の徳目の根本は慈悲であり、慈悲の基礎になっているのが宇宙の本体としての真如である。

仏教の教理の問題点

真如が具体的に如何なるものか不明
諸法(宇宙万象)が如何にして生成(縁起)したか不明
無明がどうして生じたかという根本的解明がなされていない
現実問題の根本的解決は修行だけでは不可能
修行生活が現実問題の解決につながっていない

「現実社会の搾取、抑圧、貧富の格差、社会悪の原因は無明にあるのではなく資本主義の体制的矛盾にある。仏教の修行は現実からの逃避、問題解決からの逃避である。現実問題を解決しないで修行するのは偽善でしかない」と共産主義者は仏教を攻撃する。 

四、新しい価値観の定立

(一)絶対的価値観の確立

絶対なる神が如何なる属性を持ち、また如何なる目的でもって、そして如何なる法則でもって人間と宇宙を創造されたのかを明らかにした基盤の上に立てられる価値観、神の愛を基盤とした真美善の価値観が必要である。従来の価値観を蘇生せしめて確固たるものにする必要がある。

(二)神学的根拠の提示

神は心情の神である。このことは神の創造の理由が合理的に説明し、神が存在することを支持する重要な根拠となる。神の創造目的は人間が三大祝福を完成することによって成就する。全ての宗教の徳目は三大祝福を完成し創造目的を実現することにおいて一致している。

(三)哲学的根拠の提示

過去の価値観を現代に適用する為には新たな合理的な説明を与えてそれらの価値観を現代化させていく必要がある。宇宙を貫いている法則、天道が人倫道徳の基準であることを明らかにする。これが哲学的根拠の提示である。

家庭は宇宙の縮小体である。家庭にも宇宙の秩序に対応する秩序があり、その秩序に対応して価値観が成立する。

宇宙の縦的秩序に対応する縦的価値観 慈愛、孝行、忠誠、尊敬、愛護
宇宙の横的秩序に対応する横的価値観 和愛、友愛、奉仕、同情、信義
宇宙の法則の個別性に対応する個人的価値観 正直、勇気、忍耐、自立

(四)歴史的根拠の提示

人類歴史の発展

天道に沿う目的を立てた側と沿わない目的を立てた側が争い、最終的には天道に沿った善の側が勝利を治めてきた。天に従う者は存し、天に逆らう者は滅びた。善悪の闘争は歴史をより善の方向に転換させるためのものであった。天道がそのまま歴史に作用してきた。歴史の法則は歴史の出発点に既に目標があった。歴史の目指している未来の世界は天道に沿った、価値観の確立した世界である。

新しい価値観の出現の必要性

歴史上多くの価値観が現れたが、それは絶対的な価値観を樹立しようとした試みであった。伝統的な価値観を蘇生させながら絶対的価値観を樹立しなければならない。新しい価値観は唯物論を克服し正しい価値観でもって科学を導くものでなければならない。

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