6月19日(木)

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ウノが来た II)

 ウノは来たが、小さな問題があった。塗装がかなりくたびれている(といっても84年式の車としては平均的なくたびれかた、フィンランドの中古車のなかではかなりきれいな方だ)、少し錆びている(といっても気にしなければ気にならない)、リアワイパーが動かない(別に飾りだと思えば気にならない)、燃料計が半分までしか動かない(タンクが空になっても動かないのでは困るが、買ったときはほぼゼロを示していたが、満タンにしたら半分までメモリが来たから、たぶん使えるだろう、また、走行距離を細目に記録していれば、なんとか予想できるだろう)。
 運転席のドアを開けるとギイーと音がして外れそうな気がする(気がするだけだろう)、窓ガラスを占めるのに力がいる(筋力トレーニングには良いかもしれない)、力を入れるとレバーがはずれる(注意力養成には最適かもしれない)、燃料タンクの蓋は簡単に空く(これには少々驚いたが、鍵付きの蓋を別途購入すれば済む)、ブレーキを踏むと中古の自転車のような音がする(ブレーキが効かないなら問題だが、一応まともに止まれるし)、サイドミラーが片方にしかない(元々、助手席側のミラーはあまり見ないし)、ギアが簡単には入らない(かなりのコツがいるようだが、慣れればなんとかなるだろう)、などというのは、いずれも細かいことである。
 後ろのドア(ウノはハッチバック式の5ドア車である)に鍵がかからないには、少し困った。他の4枚の扉を閉めてもハッチバックにロックがかからないのであれば意味がない。今週末には、ファームステイのため片道100kmをこの車で走る予定にて、修理に出している余裕はない。しかたがないのでスーパーマーケットで自転車用のロックチェーンを購入、内側から扉を縛りつけた。まあ、これで一安心と思ったら、運転席側のサイドミラーが欠けている。購入したときには、異常がなかったように思うので、ひびでも入っていて走行時の振動で入ってしまったのだろうか。ネカラの自動車部品屋で、燃料タンクの蓋とともにサイドミラーも購入することにした。

(ネカラの自動車部品屋さん)

 ウノのサイドミラーは、ネカラの自動車部品屋さんで買った。以前、中古車を探して車屋さんを回っていたとき見つけておいた店だ。品物の大部分はカウンター奥の棚にしまってあるが、かなり豊富そうである。店長の太っちょおじさんは、英語を全く話さない。燃料タンクの蓋を買いに行ったときは、若い店員さんと片言の英語で用事をすませた(結局、この店には在庫がなく、フィアットの正規部品を割高な?値段で買った)が、サイドミラーの購入は、閉店間際で太っちょおじさんと一対一。言葉が駄目ならジェスチャーと笑顔しかない。おじさんを駐車場まで連れて行って、鏡のかけたサイドミラーの実物を見せた。
このミラーを交換したいんだ。身振りで説明すると、おじさんはにっこり笑って、交換キットを出してきてくれた。おまけに値札より2マルッカまけてくれた。フィンランドで値引きされたのは、今回が初めてにて、とまどったが、おじさんはニコニコ笑っているし、どうせ言葉は通じないので、にっこり笑って、「キートス、ナケミーン」である。

(ウノの良いところ)

 細かいことを言わなければ、ウノは決して悪い車ではない。第一にまだ走る。タンペレのダウンタウンには入っていないが、ヘルバンタから郊外スーパー、ネカラの町に加え、制限時速120kmのハイウエイ東西線も南北線も1ターミナル間以上走行したが、エンジンは止まらなかった(信号待ちでアクセルの加減を失敗したり、サードギアーで発進しようとして、エンストのは除く)。ヘッドライト(北欧ではヘッドライトは一日中つけっぱなしで走る)もストップランプも方向指示ランプも点灯する(右折時の方向指示ランプの点滅間隔が変動するのが少し気になるが)。ルームミラーもあるし、屋根もついている。タイヤは擦り減っていないし、足まわりも、それほどくたびれていないようだ。サイドミラーも交換したし完璧である。
 ネカラの自動車部品店の駐車場では、知らないおばさんがめずらしそうにウノを見ていた。「この車に興味がおありですか」と英語で聞くと、「私もウノに乗ってるの。私のは4年目だけど、この車はずいぶんと古そうね。何年乗ってらっしゃるの?」、「私が運転した時間は短いけれど、13年前の車です。」「まあ、そんなにたっても、まだ、まともに走るのね。素敵だわ。嬉しくなっちゃった。ありがとう。」と大変喜ばれた。人に喜ばれるのは嬉しいものである。

(マラさんが来た、帰った)

 昨日風邪で休んだマラさんが午前10時過ぎ、遅めの出勤であった。顔に赤みがかかっており、まだ熱がありそう。「まだ、調子が良くないんだ。だけど、明日からの休暇の前に、最低限やっておかなくてはならないことを片付けに来た。」と言うなり、コンピュータに向かってC(コンピュータのプログラミング言語です)のコードを叩き込み始めた。彼のタイピングは、彼の話し方と同様、極めて速い。そのうちに受話器を取り上げ、そこら中に電話を書けながら打ち込み続ける。12時を回っても手を休めようとしないので、「今日は、昼食に行かないのか」と聞くと、「今日は余裕がないんだ。」と言っただけで休もうともしない。
 昼食には一人で行くことにした。午後2時ころ、突然彼が言った「さあ、終わりだ。帰って寝るぞ」と。その後ドアのところに7月7日出勤と書いたメモを張り付け、「今年は職場を変わったばかりなので2週間しかないが、夏休みにするよ。今年はスウエーデンでサンバの祭に参加したあと、その辺りで友達と過ごしてくるよ」と言う。私が会議等で大学を留守にする期間を重ねると、3週間会えないことになる。「それじゃあ、良い夏至祭の週末を!」と言って去って言った。廊下にでると秘書のリーッタさんの部屋の前にも貼紙がある。6月23日(と言うことは、実質明日から)〜8月2日は休暇みたいだ。タイトスさんの部屋の前にも何か貼ってあるが、見る勇気がなかった。

わが家の風呂

 アパートに無いので、バスタブを購入した。より正確には、バスタブを買ったつもりでビニールプールを購入、これにお湯を入れ、浅い湯船を作って使っている。現在のところ、子供たちは大満足である。プールプールと言っては喜んで入る。日本の風呂よりビニールプールの方が遊びやすいらしい。ただ、私は満足できない。ビニールプールで横になっても、背中はお湯の中/お腹は外である。足の付け根がスースーして具合が悪い。しかも、薄いビニールを通して、コンクリートの冷たさが伝わってくる。結局シャワーで済ますことになる。
 フィンランドでは、スイミングプールのサウナで我慢して、暖かいお風呂と湯上がりの一杯は帰国後の楽しみに取っておこう。

(たんぽぽ)

 フィンランド人は、たんぽぽが嫌いである。芝生を植えることを好む民族は、フィンランド人に限らず、米国人も同様、この忍耐力の塊のような雑草に手を焼いているのであろう。フィンランドのたんぽぽは圧倒的な咲き方をする。何週間か前、確か、私が自転車屋を訪ねた土曜日に見た、高校の土手のたんぽぽは、黄色い絨毯のようで、圧巻であった。
  

 花が終わると、たんぽぽは一斉に白い小さなパラシュートに乗せて種を風に飛ばす。一気に咲き、同時にわたげが風に舞うとすごいことになる。また、家内の言うところでは、たんぽぽだけでなく、近くの森林の木々からも、わたげが大量に舞い始めているとのこと。ヘルバンタに向かって歩道を自転車で駆け上っているときに経験したが、まるで、夏の夕に舞う小さな虫の大群のようである。当初、虫の大群だと思った私は、(実は蚊に弱い、家中で一番先に蚊に狙われるのは私、最後まで大丈夫なのが家内である)フィンランドでも蚊に悩まされるシーズンになったかと思ったのであるが、よくみるとわたげの大群であった。すごい。


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