6月24日(火)

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(夏は終わりか?)

 朝起きると暗い。いつもなら、どんなに早く起きてもお日様はすでに高く(日の出は午前4時前なので)、寝過ごした雰囲気が抜けないのだが。カーテンを開けると曇りである。気温は不明だが、30番のバスを待つ人々は皆、長袖である。真夏だというのに。朝食後、自転車で大学に向かうが、もちろん、ウインドブレーカーを着込んでいる。頬に当たる風は、ひんやりとしている。着てきて正解であった。
 4月28日に日本から送った荷物(船便)が届いた。今回も伝票のみである。変圧器のときと同様、ネカラの運送会社事務所まで取りに行く必要がある。500マルッカ(1万2500円)以上の金額を記入した荷物は、まだ、10個以上あるはず、これらは全てネカラまで取りに行かなければならない。車があってよかった。

(湖畔のサウナ)

 金曜日の夕食後と土曜日の午後の2回、湖畔のサウナを楽しんだ。イラ・トウーホネン家のサウナは、ナシ湖の東側、ミリ湾の南岸奥まったところにあり、ファームからは森の中を西北へ300歩いたところにある。サウナ小屋は50mほど離れて2つ建っており、いずれも湖の岸から10m以内。小屋の近くには、湖に突き出した小さな桟橋があり、そこから湖に飛び込むことができる。ただし、気温は25℃以下で、湖水は冷たい。
 初日は、東側のサウナ小屋を利用した。酒樽を横にしたような形の小屋は、湖から向かって右側がサウナ、左側が更衣室になっている。湖畔の桟橋は西の小屋より小さく、泳ぎ回るには少々不便か?サウナに入る前には湖で体を濡らすのが手順と聞き、まず、桟橋の先頭まで行って、梯子に足をかけ水の中に足を突っ込むが、冷たい。日本のプールでは、未だかつて経験したことのない低水温である。4月から泳いでいる水泳部員なら話しは別だが、我々一般人(日本人)が水浴することは、まずありえない冷たさである。
  
 しかし、湖水の冷たさを敬遠しては、湖畔のサウナは意味がない。なんとか我慢して湖に入る。湖底に足をつけると、大人の胸くらいの深さ、智でぎりぎり、素子では足がつかない。キャーキャー言いながらも嫌がっている様子のない素子を抱いて湖水につけるころには、自分が水の冷たさに我慢できなくなり、サウナに飛び込んだ。サウナは家族用で広くない。わが家の4人でちょうど良い広さ。サウナ自体は、スイミングプールサウナパーティで経験しているので、それ程とまどうことはない。熱くしたければ、加熱器の上に置いてある石に水をかけて蒸気を作ればよい。
 近くの林で摘んだ小枝で背中や腕をペタペタ叩くと、肌が刺激され血行がよくなるとのこと。サウナで十分体を暖めたら、桟橋まで走って行って湖に飛び込むのがフィンランド流(例の人間用冷熱耐久試験)である。一回目は心臓マヒを警戒して、足先からそっと水中に入ったが、さすがに先程ほどには冷たくなく、少々我慢すれば、泳ぎ回ることもできる。短時間なら、冷たい湖水も気持ち良い。

(マッカラ)

 午後9時過ぎ、我々がサウナを終わってから、湖畔のたき火を皆で囲んでマッカラを食べた。夏至祭の習慣と言われる夜のたき火は、丁度、日本の大晦日に神社の境内で起すたき火と同様、民族的な習慣らしい。フィンランド人にとって、昼間の最も長いこの日は、特別な意味があるのだろう。たぶん、我々もフィンランドの暗くて寒い冬を経験すれば、夏至に憧れる彼等の心情を、より深く理解できるようになるのであろう。マッカラは、ソーセージのことである。ファームのご主人ケスコさんが、近くの森から集めてきた小枝の先端を鋭く削っている。まだ青い小枝の先端に生のマッカラを突き刺し、たき火にかざして焼けるのをゆったりと待つ。青い小枝は水分を多く含み、たき火にさらしても容易には燃えない。(写真は、翌晩の食堂でのマッカラ)
 ミリイ湾を挟んで東と北の岸には、湖畔に民家(別荘かもしれない)があり、彼等のたき火を遠望できる。風がないせいか、1km以上離れた岸辺で歌うこれらグループの陽気な歌声さえ聞こえる。午後10時太陽は、まだ沈まないが、ようやく夕暮れの雰囲気が周りを包み始める。交される会話のほとんどはフィンランド語だが、ときどき、イルマさんが英語で話しを繋いでくれる。2005年の万国博覧会が瀬戸で開かれるという話しになると、ラハティの老夫婦は身を乗りだし、是非、その機会にお金を貯めて日本に行きたいという。日本で外食を安く済ます方法まで説明してしまった。今回の客は皆、かなり英語を話せるようだ(フィンランド人はシャイなのか、きっかけが無いと英語を話し始めないが)。
 智は、ソーセージが大好きである。また、たき火もこのうえなく愛する。この晩の智は、熱いソーセージをほおばり、薪をたき火に加えたりと、とても楽しそう。我々家族は、たき火の場所に最初に来たのだが、他の客より後まで居座り、智は、大人達よりも多く、3本もマッカラを食べた。

(燃料計復活)

 燃料計が(たぶん)直った。土曜日に牛乳やビール等をルオベシまで買い出しに行った際、燃料切れを心配する智は、しきりに給油を要求した。ガソリンスタンドが日曜日定休だと思っている智は(実際には、フィンランドのガソリンスタンドは、営業時間も長く日曜日も営業している数少ない店舗である。給油のみでなく、新聞、雑誌、スナック類からハンバーガー/ジュースまで売っており、日本でいうと比較的大きな駅の売店に匹敵する便利さである)、彼なりに、フィンランドの森林の中で一家が途方にくれるのを心配しているのであろう。
最近、言葉使いが生意気で気に障るが、彼の年齢からすれば順調な発育と言わなければならない。素直に助言を受け入れ、給油する。142km/9.8Lであるから平均燃費は14.5L/km、ほとんどが定速走行だが、小型車の威力、古くても燃費は良い。タンク容量は(たぶん)30Lだから航続距離400kmは堅い。タンペレまでに燃料切れになることは、まず無いと智を安心させた。
 ルオベシからファームへの帰路、何かの拍子に燃料計の針が大きく右側に振れた。この針が1/2以上の場所を指すのを見たことは無かったので驚いたが、故障ではない。なにしろ、今給油して燃料タンクは満タンなのだから、針が右に振れている方が正常なのだ。燃料計復活(たぶん)である。推測するに、長いこと満たされなかった燃料タンクがガソリンで満たされて数日経過し、走行時の揺れも手伝って、燃料計の錆び付いた可動部分がようやく動くようになったのではないか。復活が本当なら、走行距離から燃料の残量を推定する手間が減ったことになる。めでたしめでたし。


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