(なぜかハードボイルドタッチ)
早朝、けたたましく鳴り響く、滅多にかからない冷たい電話のベルに俺は起こされた。
「ブラウン。敵は、福井だ。」
突然のリーダー・レッドの声。
なにかを押し殺したような声だが、おそらくは食欲に違いない。俺は昨夜の悪夢と今のこの現実がごちゃまぜになりながら、にがい顔で抑揚のない返事をした。
「あぁ、噂はきいてる...。例のヤツだな。」
今回の多田博士からの戦闘指令は、リーダー宛にメールが送られてきた。
博士の連絡はいつも突然に、そしていっこうに姿を見せず、俺たちは戦いの意味もろくにつかめずにいる。今回の福井に、いったい何があるというのか?
博士からのメールのヘッダーの時刻には「+0000」、彼は今ヨーロッパにいるのか?
それとも単に時間帯設定が狂っているのか、いったい彼はどこに...。
福井。
強敵「ソースカツ丼」を倒すべく、俺たちはそれぞれに福井へと足を向けた。
5月の北陸。そこには、俺の予想よりもっと大きな「見えざる強敵」が待っていた。
戦いの前にくつろぐブラウン。
気合いを入れるブラウン。
俺はいつものように一般人を装い、レッド、ピンクと合流し、ブルーを待つ。
JR発車時刻になってもヤツはいっこうに現れない。もしや...。
「ブラウン。ブルーは消されたようだ。先に発て。」
俺たちの頭に、いやむしろ脳に直接、グリーンからのメッセージが聞こえてきた。
消された...。どういうことかわからないまま、俺たちは次の列車に滑り込んだ。
ブルーは、この戦いの数日後には結婚式を控えた身だ。しかし結婚相手には自分がグルメトラベラーであることをいまだに言い出せずにいる。2人の間で何か問題が起こるとすればそこか。
まさか多田博士が戦士の結婚を許さないとすれば、戦闘プログラムを書き換える、つまり「消す」こともあり得る。
その処理が戦いの前に行われたというのか...?
俺たちはそれぞれにいろいろなことを考えながら、ひとり欠けたアンバランスさをことさらに感じながら目的地へと向かった。
そして乗換駅、米原に5人が集結する。乗り換えでなければ混雑はしないであろうと思われる古ぼけたプラットホームに、遠く見覚えのある姿があった。
「あいつは...ブルーだ!」
奴は生きていた。どう見てもただの遅刻の言い訳をするかのようなそぶりと、何げないがしかし焦りの見える複雑な表情で、笑った。奴は多田博士からの緊急連絡を伝えるため、彼の命令通りに連絡手段を絶って行動していたという。
「福井に、もう一人のグルメトラベラーがいる。その名も、グルメブラック。」
「なに! ブラック。そいつは...。」
突然に現れた、敵か味方かもわからない「グルメブラック」。
やはり結婚するブルーとの交換要員なのか?
闇に包まれたブラックの、そして多田博士の目的とは?
(後編につづく)
予告
味覚データファイル#7 ソースカツ丼「ヨーロッパ軒」
味覚データファイル#8 おろしそば 「つるき本店」
第1話/高松決戦 | 第3話/広島決戦 |
第2話/名古屋決戦 | 第4話/貴船決戦 |
第5話/福井決戦
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