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□ 「届けなかったラブレター」、「半端者」のふたつを一つにまとめました □
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◆◆「ゲストブック」サービスを試しに使ってみました。時間のある方は◆◆
問題は処理である |
処分でも処置でもかまわない。ようはなかったことにしなければならない |
生ゴミ?で出すのは少々気が引ける |
燃えないゴミで出すのは筋が違う |
落し物で届ける勇気はない |
誰かにプレゼントするか、それも夜こっそり郵便ボックスに入れる形で |
いやいや、それではたちの悪い悪戯だ |
やっぱりプレゼントするならちゃんと綺麗に包んで贈るべきだ |
見たくないこと、聞きたくないことがあると |
あらぬことを考えてしまう |
よくあることだ |
それを逃避と人は呼ぶ |
驚くには当たらない。小心者の既定行動、毎度のことだ |
ここはどこ?私は誰? |
そして目の前の白い物体はなに?一体なに? |
そりゃあーた、鳩の卵でしょ! |
そんなこたあ、言われんでも分かってる!! |
ああ、現実逃避は楽しいなあ |
もちろん問題は何も解決しない |
学校で教わった通りだ |
これが無駄な努力というものだ |
それでも教えて。目の前の白い物体はなに? |
ただじっと眺めるだけなら猿でも出来る |
人と猿の違いは一体なんだ? |
それは答えを探す飽くなき探究心だ |
問題は処理である |
初めに戻っただけと笑ってはいけない |
あらぬほうに行きかけていたのを押しとどめたと理解すべきだ |
好意的に判断すべきだ |
小心者に叱咤激励は逆効果である |
出来れば給料もたくさんあげるべきである |
そんなにあげれないというならせめて円ではなくて元とかリラとかで嵩だけでも増やしてみればいい |
なんか得した気になるかもしれない |
それが小心者だ |
いかん、また逃避が始まった |
我ながらちょっと情けない |
問題は処理である |
北側のベランダに産み落とされた |
楕円形の鳩の卵、二つである |
育てるわけにはいかない |
それははっきりしている |
子どもを育てる自信はまだない |
可能性から削除すべきだ |
ということは選択肢はさほど多くない |
捨てる、投げる、埋める、届ける、送る、奉る |
無視する、そして食べるだ |
うーん。ううーん |
味覚の誘惑か鳥インフルエンザの恐怖か |
うずらの卵で我慢できないのか |
鶏の卵で十分ではないのか |
答えはYESだ |
あえて危険を冒すだけの価値はない |
たかが卵だ |
たかだか鳩の卵だ |
鳩さんごめんなさい |
やっぱり私には無理です |
あなたの可愛い卵を食するなんて |
それほどお人よしでもなければ、律儀でもありません |
見なかったことにさせてください |
神様お許しください |
小心者とお笑いください |
捨てる勇気も食べる侠気も持ち合わせません |
そうです |
その程度の卑小な男です |
許可なく自分のテリトリーに卵を産み落とされる |
そういう男です |
いくら自己陶酔に浸っても |
どれほど現実逃避しても |
机の上の卵はなくならない |
減りもしなければ消えもしない |
ただ超然と私を見下ろし |
どうするんだよ? |
えっ、どうするんだよ?と問い続ける |
とにかく撤去だ |
そう思ったのが遠い日のことのようだ |
はてさて |
一体お前はどうして欲しいんだ |
問いかけてみてもつれない卵 |
どうやら日本語は理解できないようだ |
英語も通じない |
困った |
北京語も韓国語も出来ない |
ロシア語もポルトガル語も他のどんな言語もまだ習っていない |
ポーポーと鳩語で問いかける |
これも駄目だ |
クークーともう一つの鳩語を試す |
やはり駄目だ |
お願いだ |
現実逃避してる間に消えてなくなってくれ |
いくらなんでももう逃避するネタがない |
深呼吸する |
落ち着け |
お前は一人前の男の大人だ |
この程度で動転してどうする |
食われるわけではない |
相手は手も足もない卵である |
むしろ食うかどうかはこっちが決めることだ |
主導権は私にある |
お前は俺のなすがままだ |
中指を立てて威嚇のポーズをしてみる |
びびった様子はない |
情けない。卵相手に指を立ててる己が悲しい、寂しい、むなしい |
本当に情けない |
あまりの情けなさに激しくうな垂れながら意を決したように立ち上がり |
そっと優しく |
包み込むように二つの卵を持ち上げて台所に向かう |
食べるため? |
いいえ、時間を稼ぐため |
冷蔵庫の卵パックの空いた箇所に一個ずつ |
卵の眠りを覚まさないように丁寧に置く |
取敢えずこれでしばらく時間は稼げる |
まるで日本の出来の悪い政治家のような先送りをしている私なのである |
問題は撤去である |
字面から判断すると徹底的に去らねばならないものと思われる |
どの辺をもって徹底的にと判断すればいいのかは意見が分かれるが |
今議論しても何も得られない |
とりあえずはベランダから卵を移動することにした |
しかしベランダとは名ばかり |
要はエアコンの室外機置き場である |
人の出入りなどは考えられていないのである |
つまり狭いのである |
しかも窓から出入りである |
書斎の机にあがる |
窓から身を乗り出す |
休日の朝に何をしてるんだって思われるに違いない |
知り合いには見せられない姿だ |
知り合いでなければ見せたい姿なのかと聞かれても困るが |
そっと静かに慎重にベランダに降りる |
こんなことで怪我するわけにはいかない |
少なくとも医者に説明できるような真っ当な怪我の理由ではない |
鳩の卵を撤去しようとして膝をすりむきましたなど |
ベランダは一度も掃除してないだけに埃だらけ、汚れだらけだ |
”鳩さんは埃も汚れも気にならないのだろうか?” |
どうも気が乗らない私 |
だからいらぬ事ばかり考える |
”鳩さんは自然児だから埃も汚れも気になんかしないさ、きっと。気にするな” |
まったくいらぬ心配だ |
”自然児より野生児の方がより適切か?” |
いらぬ考えはまだまだ続く |
”メスでも野生児でいいのか?文法的に問題はないか?” |
そんなことはどうでもいい。早く逃避行動をやめて卵を移動させなさいと誰かの声 |
その通りだ。現実から目をそらしてもいいことは一つもない |
観念しよう |
卵の移動だけでどうしてこんなに大げさなんだろう |
我ながらちょっと情けない |
意を決して卵を覗き込めばその小ささに少しばかりの胸騒ぎ |
室外機の向こうに産んでくれたので手が届かない |
手前側の一つはどうにかこうにか指先に引っかかったが奥のやつがどうにもいけない |
失礼だとは思ったが手が届かないなら足があると右足をそっと伸ばす |
足の指で卵を掴むためだ |
これでも子どものときは結構足の指で色々掴んだ |
寒い冬の朝などは布団から足先だけ出して |
シャツやズボンを布団に引っ張り込んで布団の中で服を着たりもした |
鳩の卵程度はなんてことはない |
ゆっくり・・・やさしく・・・足の指で挟んで、と |
「ペキッ」 |
あれ!? |
かすかに異音、なんか違和感 |
鳩の卵って小さいのよ |
小さいから弱いのよ |
嫌な予感はしたのよ |
抵抗するでもなく「ペキッ」なのよ |
鳩さんごめんなさい |
殻が割れたみたいです |
卵さん許してください |
ひび入ったみたいです |
神様許してください |
無精者とお叱りください |
管理人さん、撤去頑張ります |
だから誰にも言わないでください |
内緒にしておいてください |
伸ばした足をゆっくり手前に戻す |
恐る恐る卵を眺める |
凹んでいる |
目の錯覚ではない |
確かに凹んでる |
鶏の卵を凹ましても心はざわめかないが |
鳩さんの卵だと少しザワザワするのは何故だ |
しかし疑問に答えている時間はない |
こんなお間抜けな姿をいつまでも世間様に晒していいわけがない |
とにかく撤去だ |
その前に移動だ |
凹ますことなく |
すばやく、秘密裏に行動だ |
追い詰められると人間は強い |
一度窓から部屋に戻る |
近年にない素早い身のこなしだ |
やれば出来ると自信が湧く |
部屋を見回す |
菓子袋を素早く手に取る |
手早く二つに折る |
少し振ってみて強度をチェック |
再び近年にない素早い身のこなしでベランダに降りる |
ほんとにやれば出来るものだ |
要はやる気だ |
仕事もこのくらいキビキビしてると褒めてもらえるのだろうが |
追い詰められないと実力が発揮できないタイプなのだ |
社長さんごめんなさい |
二つに折った菓子袋を室外機の向こうに差し出せば、簡単に奥の卵まで届いた |
軽く引っ掛けて手前に転がす |
コロコロ。。。コロコロ |
あっという間に目の前まで転がってきた |
なんだ、最初からこうすれば良かったんだ |
いらぬことばっかり考えてると碌なことにはならない |
お母さん、これからは真面目に生きていきます |
そんなこんなで今机の上には小枝で出来た巣 |
その上に少し黄みがかった白い鳩さんの卵が二つ |
あまり立派とは言えないが巣まで作っていたわけで |
私のベランダを気に入ってくれたのは確かなようだ |
嬉しいような悲しいような、複雑な心持 |
さてさて |
これから一体どうやって撤去までつなげようかと |
少し凹んだ卵を含む二つの鳩の卵を眺めながら |
思案にふける私なのである |
翌朝WEB新聞を読んでいるとインターフォンが鳴った |
出てみると管理人さんからの電話だった |
「あのうですねえ、、実はお宅の北側のベランダにですねえ、、、」 |
と遠慮がちに言葉が続く |
「ああ、鳩のことなら夕べチラシが入ってました」 |
ほっとした雰囲気がインターフォンを通して伝わってくる |
確かにいきなり切り出す話ではない。特に朝の出かけに |
鳩がタマゴを産んだんですが、なんてことは |
いつ話せばいいかと聞かれても困ってしまうが |
「はい、週末に片付けます。それでいいですか」 |
ええ、そりゃもう撤去してくださるならよろしゅうござんすって感じで |
「掃除のおばさんに渡してもらえれば処理しますんで、よろしくお願いします」 |
とインターフォンは切れた |
ちょっと長めのため息を一つ。。。はああああぁ |
多分同じような電話を何回もかけてるんだろうなあ |
可哀相だなあ |
仕事とはいえ |
「あのう言いにくいんですが、実は・・・お宅のベランダにですねえ。あの空を飛ぶ、、ポッポーて声でなく鳥」 |
「えええ、そうです、その鳩がタマゴを産みましてですねえ。。えっ?どこにって」 |
「いやだから、お宅のですねえ、北側のベランダにですねえ。。。えっ?いつって聞かれても」 |
「えええ、確かに管理人ですが・・・卵を産む日時までは管理してませんので・・・」 |
「大変申し訳ないんですが、私らはベランダには入れないことになってましてぇ。。はい? ええっ、規則なんですよ、それが。。。誰が決めたって言われましても」 |
「それでまことに言いにくんですがあ、ご主人様にですねえ。。その、、、まあベランダに出ていただいてですねえ。。撤去というか除去というか、、つまりですねえ・・・」 |
ああ、聞くほうも言うほうも「ワチャッ!」である |
出勤前、朝の忙しい時間にこんな電話がかかってくれば、まあ4人に1人は怒りますね、きっと |
こちとらはエッセイのネタが増えたなんて邪心もあるもんだから |
ちょっと美味しい?なんて思ってわりと丁寧な対応をしたつもりだったが |
あとで思い返してみるとやはり少しつっけんどんなところがあった |
やっぱ3人に1人は怒りますね、絶対 |
そんな朝の小さなお間抜け話もすっかり忘れて帰宅。郵便ボックスを開けると |
また一枚の紙があった |
昨日と同じ管理組合からのお願いだった |
正確にはちょっと違う |
一日分確実に進歩してる |
ちゃんと発見時の時間が記入されている |
「PM 7:00の巡回時に発見」 |
タマゴについても「1個有」と記載がある |
1個? |
また産んだのか? と少し不安になる |
夕べ2個だったはずだが |
それとも1個はすでにヒナになったjか |
そんなバカな! |
エレベータに向かう道すがらお願いの文章に目を通す |
経験は偉い、凄い |
確実に昨日より冷静な対処が出来てる |
でも手書きの文章を読む進めるうちに相当沈うつな気分になった |
「巣らしき小枝も有りますのでいっしょに撤去してください」 |
そうか、巣もあるのか |
まだ大丈夫。十分に冷静である |
「当分の間北側のベランダを見てください」 |
ええ、面倒くさいなあ。なんでそんなことしなきゃいけないんだ |
少し血が頭に上り始める |
「続くと思います」 |
気分はいきなりドヨヨーン、上った血が下がっていくのが分かる |
ちび丸子ちゃんなら、3本の縦筋がサーみたいなものだ |
続くのお、と心の中で呟く。しかも語尾をあげて |
エレベータの到着音で我に返った |
神の悪戯か? |
それとも試練か? |
とにかくまず現状把握である |
トラブルは大きくならないうちに対処が必要で |
それにはまずトラブルそのものを正しく認識するのが肝要である |
習い覚えたエンジニアの血がふつふつとたぎってくる |
部屋に入るなり叫ぶ「ワーーーーー」 |
「オーーーーー」 |
窓を開ける |
意味など無いが「ギャーーーー」 |
身を乗り出す |
幾つだー |
ほんとのところタマゴの数は幾つだー |
2個かー。。。3個かー |
タマゴ1個にヒナが1羽かー |
矢でも鉄砲でも持ってこーい |
逃げも隠れもしない |
俺はここにいるぞーーーーーーーー |
と、何故か全て語尾を延ばしながらの独り言である |
不気味なおっさんだな、これじゃ |
薄明かりにぽっかりと浮かぶ白い楕円 |
目を凝らして慎重に数える |
ヒナの色は分からないので慎重に慎重を期す |
そこには何事も無かったように白い二つの楕円だけが私の帰りを待っていた |
一気の脱力 |
北側のベランダをじっと覗き込みながら |
夕べと同じくハトが豆鉄砲を食らったように呆けている私 |
荒い息遣いだけが闇に静かに溶けていく |
ある夜仕事から帰って郵便ボックスを覗くと紙が一枚入っていた |
管理組合からのお願いだった |
日付と部屋番号。私の名前 |
何か悪いことをしでかしただろうかと、この一週間の行状に思いをめぐらせる |
心当たりは特にない |
しいて言えば・・・あれが不味かったか・・・と気になることが2,3あるにはあるが |
管理人さんにお願いされるようなことではない |
まして犯罪行為では絶対無い |
一体全体なんだっていうんだ |
エレベーターに向かう通路を歩きながらお願いの紙に印刷された文字を目で追う |
「ハトがタマゴを産みました」 |
紙には確かにそうあった |
正しくは「ハトが巣を作りました、」に続いてであるが |
その部分はボールペンの二重線が引かれている |
巣を作った? |
タマゴを産んだ? |
いや、巣は作ってない。二重線で訂正してあるんだから |
これは喜ぶべきや否や |
瞬時に答えは出ない |
何しろいきなりの「猫だまし」みたいなもんだ |
思考停止状態に近い |
エレベーターを待つ間も |
ハトがタマゴを産んだ、ハトがタマゴを産んだ、ハトがタマゴを産んだ |
と呪文を唱える |
悪夢から覚めることを祈りながら |
エレベータの到着音で我に返った |
エレベータに乗りこみ、お願いの続きを目で追う |
「北側ベランダ、エアコンの近くです、撤去お願いします」 |
最後に「管理組合」とあった |
撤去? |
ハトのタマゴは危険物か? |
いかん、冷静になれ |
エンジニアは理論だ、慌てるな |
エレベーターの到着音で再び我に返った |
玄関の鍵を開ける前に通路から北側のベランダを凝視する |
暗くエアコンの近くに不審なものは発見できない |
目を見開いても発見できない |
管理人の勘違いの可能性が脳裏に浮上する |
口の端が少しひくつく |
急いで玄関の鍵を開け |
書斎に向かう |
手にはお願いの紙 |
部屋の電気をつけカーテンを開ける |
窓を開け机越しに窓の外を覗き込むがエアコンの頭しか見えない |
背伸びしても見えない |
怖くて見る気にならないわけではないし |
見ようとしないわけではないし |
現実から目をそらしてるわけでは絶対ない! |
お願いの紙を見つめる |
誰かの悪戯か? |
その可能性は限りなくゼロに近いと理論が言い常識が駄目押しする |
仕方ない |
机の上にのり窓から大きく体を乗り出して見る |
エアコンの右。何もなし |
エアコンの左。なんかぼんやり光ってるような・・・ |
薄明かりの中に白い楕円が確かに二つあった |
ハトがタマゴを産みました |
ああ、そう。。そうなんだ |
ハト君二つも産んだのね |
断りもなくいきなり二つも産んだのね |
まあ一言断られても許可はしなかっただろうから |
実力行使に出る君の気持ちをわからんではないが |
それでもやはり身勝手な振る舞いだと指摘しておく |
そういえば最近北側の通路にハトがよく来てた |
しょっちゅう来てよく鳴いていた |
妙齢の女性には好かれないのに |
成熟したメスバトには好かれるのね |
人生の幸せをこんな風に浪費していくのね、私 |
白い二つの楕円が浮かび上がる |
北側のベランダを覗き込みながら |
ハトが豆鉄砲を食らったように呆けている私なのであった |
過去は昨日のこと |
終わってしまったこと |
未来は明日のこと |
創り出すもの |
誰もが疑いもなく道を急ぎ足だ |
はたしてそうなのだろうか? |
人生の折り返し点を過ぎた頃から |
そんなことをぼんやりと思うようになった |
意識するかしないかは別として |
誰の中にも似たような疑問が潜んでいると思うのは |
下手の深読みだろうか |
未来は私の手の中にあり |
自分の意思次第でどうにでも変えられるものだと思っていたのはいつまでだろう |
過去は思い出すもので |
それさえしなければ |
私にとって無いに等しい存在だと思っていたのはいつのことだろう |
変えようも無い過去は切り捨てることも放り出すことも出来ず |
ただ受け入れるしかない |
変えられると思っていた未来は一瞬の間に過ぎ去って |
変えようも無い過去になる |
振り向けば長い長い尻尾のように |
ただただ過去と言う名の影が伸びていた |
未来という輝く道が長く続いていると信じていたのに |
今は未来も過去も同じくらいの長さになった |
明日は捕らえようも無い不安定な光で |
過去は揺らぎようの無い静かな錘で |
私はその間を行き来する |
そしていつか私の存在自体が過去になる |
きっとなる |
誰かの思い出の中にだけに存在する |
思い出してもらえなければ存在することもできない |
まるでかつての名残りとしてしか意味を持たない盲腸のように |
そんな存在になっていく |
総理大臣だってノーベル賞をもらった偉い学者さんだって |
同じように過去になる |
だから悲観するな |
落ち込むな |
お前が死ぬ前に何人もの先輩が先に死ぬ |
そういう声が頭の上のほうから聞こえた |
何人が何百人でも |
私の支えにはならない |
過去は昨日のこと |
ただの尾てい骨 |
変えようも無いもの |
忘れてしまいたいのに |
いつまでもそこにじっと佇んでいる |
何食わぬ顔をして |
じっとこちらを眺めている |
ああ、そうか |
失敗に間違い |
捨て去りたい青春の過ち |
そんなものだけが過去だと思ってるから |
いけないんだ |
桜の季節はいつも少し情緒不安定になる |
興奮と落胆 |
覚悟と諦め |
振り向けば |
過去がぶら下がっていて一歩も前に進めない |
そんなちょっと笑ってしまう白昼夢 |
見させたのは妖艶な桜の花びらか |
花びらを散らす春の突風か |
空は透き通り |
東京にも本格的な春が来た |
未来が来るのをもう少し待ってみようか |
焦らなければきっとやってくると信じて |
梅は咲いた |
次は桜だ |
少しワクワクする |
心が騒ぐ |
どんなに大変なことがあろうと |
どんなに嫌なことがあろうと |
どんなに辛いことがあろうと |
嬉しいことがあったときと同じように季節は変わる |
楽しいことが待っているときと同じように季節は移る |
若人にも中年にも少女にも |
もちろんあなたにも私にも |
今年も春がやってくる |
時は一定のリズムを刻み |
思い出は濃淡で色づけられる |
一年前あなたはどこにいましたか? |
去年の暮れ何をしてましたか? |
命はじっと地面の下で息を潜めている |
出ておいでと誰かが地面をノックするまで |
じっと声も出さずに |
悲しいことも悔しいことも |
ときめきもあこがれも |
何も聞かず、何も見ず |
何も知ろうともせず |
ただ春のその声だけに耳を傾けノックの音を待っている |
以前の私はいい人でしたか? |
昔に比べて何か違っていますか? |
命は今を待っている |
輝く時を待っている |
じっと寒さに耐えながら |
ずっと孤独に耐えながら |
ノックの音を待っている |
例えば氷が解ける |
例えば鳥がさえずる |
風が吹く |
犬が背伸びして |
猫が騒ぐ |
そのうち子どもも走り出す |
どんなに深く傷ついても |
どんなに酷く裏切られても |
知らん顔して季節は回る |
遠い異国の他人のように |
あなたの些細な人生なんて知ったこっちゃないとばかりに |
私の瑣末な苦労なんて興味がないさと言わんばかりに |
律儀を絵に描いたように |
季節は巡る |
毎年やってくる春はしかし |
去年の春とは違う |
今年の春は今年だけの |
二度と巡ってこないただ一度の |
たった一度きりの春 |
あなたの人生があなただけの、誰のものとも違う人生のように |
二度と同じ人生を歩むことができないのと同じように |
一年前あなたは何をしていましたか? |
さあ、ノックして |
あなたのノックを待っている |
新しい命に向かって |
季節はもうすぐ芽吹く頃だよ |
随分と長い期間更新をさぼった |
こんなに長くサボったのは初めてだ |
意欲がなんとなくわかなくなった?それもある |
忙しかった?それもある |
休みたかった?それもある |
面倒くさくなった?それもある |
様子を見てみたかった?それもある |
気力が萎えた?それもある |
体力落ちた?それもある |
精力減退?それもある |
性欲減少?それもある |
残尿感?それもある |
なんの話だっけ |
体調崩した?それもある |
金に困った?それもある |
友達なくした?それもある |
彼女に振られた?それもある |
・・・・なんの話だっけ |
どこか怪我した?それもある |
何かしでかした?それもある |
やっぱ間違った?それもある |
だから逃げた?それもある |
・・・・なんの?は・な・し |
悪いということは理解している |
いけないことをしでかしてしまったというのは |
分かってる |
なんとなくだが |
やっちまったという感覚はある |
電気代を溜めて電気を止められた時と同じ感覚だ |
あれっ、電気つかない!? |
周りの家には明かりが灯っているのに我が家には暗闇がのしかかっている |
あのときの理不尽さは忘れない |
恨むぞ東京電力 |
墓場まで持っていってやる |
・・・なんの話だっけ |
時々頭の中が白くなってしまうのは何故だ |
病気だろうか |
やっぱりどこか悪いのだろうか |
だからHP更新する気がでなかったんだろうか |
そうかもしれない |
きっと相当悪いんだ |
そうだ、そうに違いない |
自分が悪いってことは理解してる |
頭が?多分そうだ |
体が?多分そうだ |
心が?多分そうだ |
性格が?多分そうだ |
でも謝らない。好きでやってるHPだもの |
何をどうしようと |
いや、何もしなかろうと |
私のかってなのである |
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