店主の読書日記 MAR2004 タイトルリスト 作家別リスト

2004/3/31

 久しぶりに映画館に行く。
 どうしても見たかったのがスペイン映画の『女王ファナ』。
 スペインを統一したカトリック両王(レコンキスタ(国土再征服)の単語と一緒に教科書に載っているはず)の娘であり、ハプスブルク家神聖ローマ帝国皇帝カール5世の母。カール5世の他にも夫のブルゴーニュ大公フィリップとの間に2男4女をもうけている。(結婚生活が10年ほどだったことを考えると多産) 娘はヨーロッパの各王家に縁づき、その孫も王家に嫁いでいるので、ヨーロッパの王家にはかなりファナの血が入ってると思うのだが……しかーし、日本では本当に知られていない人物なのであった。

 私と彼女の出会いはかれこれ7年前。
 スペイン出張が決まり、せっかくだから、と図書館で借りた『プラド美術館』(中丸明/新潮選書)だった。
 プラド美術館はヨーロッパ3大美術館のひとつで、教科書でおなじみのベラスケスや、ゴヤの作品が綺羅星のように並んでいる。そのプラド美術館に国宝として収蔵されているのがスペイン歴史画の巨匠フランシスコ・プラディーリャ(1846-1921)が描いた2枚のファナの絵だ。
 『プラド美術館』は展示してある作品のモデルや描いた人の物語で構成された非常におもしろい本だった。私はその時はじめてファナの絵を知り、ファナの人生を知った。
 たぶん、この日本ではあまり知られていない女王の物語を、中丸明という人の筆で知ったのは幸せなことだったかもしれない。そこに描かれる物語は奇矯なものだったのにもかかわらず、ファナはしっかりと私の心をつかんでしまったから。

 ファナは17歳でフィリップの元に嫁ぐ。フィリップは「美男公」と呼ばれるくらいの色男で、はじめて対面で彼女はいっぺんで恋に落ちたのではないだろうか。
 フィリップは形ばかりの結婚式をその場で坊主にあげさせて、そのままファナを寝室につれこんだ。
 こんな殿様が女房一人で満足するわけがない。
 3ヶ月もすると新妻の体に飽きて、新たなるアバンチュールを求めて女の尻をおっかけまわすようになった。
 そんな浮気なフィリップにファナは狂乱する。

 ファナの狂気のエピソードでは、特にフィリップの死後がすさまじい。亡くなったフィリップの亡骸を800km離れたグラナダに葬るといい、遺骸を運ぶ長い旅をする。
 当時、未亡人は昼間外に出てもいけなかったので、夜に道を行った。
 真っ黒い服の何百人もの人間が棺桶を運ぶ夜の道中。
 図柄を想像するだけで不吉そうだ。
 これを描いた名作がプラド美術館にある「
狂女王ファナ」。前述のプラディーリャの絵で、彼は400年ほど下った時代の人だから、よほどファナのエピソードに創作意欲がわいたのだろう。
 伝えられる話によれば、ファナはしばしば夫の棺をあけさせ、次第に腐って崩れていくこともものともせず遺骸に口付けていたという。

 そしてその後、狂気のために幽閉されながらも決して譲位のサインをせず、半世紀近く幽閉の女王であり続けた……。

 と、まあ、こんなのが私の愛している狂女王ファナなのだ。
 長くなってきたので映画の感想はまた次回(笑)。


2004/3/30

 弊社は色々なことを社内イントラでやっているので、清算システムとか入館登録システム(来訪者はセキュリティのためあらかじめ登録しておく)とかの入り口を集めたポータルサイトがある。
 そこに、「今日は何の日」というのが毎日出る。だいたいが「今日はあんぱんの日です」とかかわいいものなのだが、本日出ていたのは「マフィアの日」。

 【マフィアの日】1282年(弘安5年)にマフィアの名前の由来となった「シチリアの晩鐘事件」があった日。フランスの支配下だったシチリア島で、フランス兵が土地の娘に手を出そうとしたことに反発したシチリア島民が、この日の晩の復活祭月曜日の晩鐘を合図に、フランスのアンジュー王家の兵隊を虐殺したが、その時の合言葉「フランス人に死を、これがイタリアの叫び」の各単語の頭文字を並べると「マフィア」となる。

 "Monte Alla French Itaria Anella"というのが、その合言葉らしいが、初めて聞いたよ。
 ついでに「マフィアの日」っていうのも初めてだよ!(笑)
 全国マフィア協会とかあったりして。


2004/3/29

 『黒蜘蛛島――薬師寺涼子の怪奇事件簿』(田中芳樹/光文社カッパノベルス)読了。
 お涼さま海外出張バージョン第2回。今回はカナダのバンクーバーとバンクーバー島が舞台。と、いっても、実際はその2つの間にある架空の島・黒蜘蛛島(ブラックスパイダー・アイランド)がメインの舞台となる。
 バンクーバーは何回か行ったことがあって、バンクーバー島へもフェリーで行ったことがある。(ちなみにバンクーバーとバンクーバー島は別物) フェリーで行く間にはいくつもの小さな島が見えて、建物が見える島もあった。
 別の時にフェリーに乗ってた母は島にヘリコプターが降りるシーンを目撃したという。なんでも、個人所有の島で島のオーナーがケガをして動けない状態だったらしい。確かに、あの島のいくつかは、この物語のように個人所有の島なのだろう。
 バンクーバー島のビクトリアは花の街として知られ結構メジャーな観光地だが、日本人観光客だと移動に飛行機を使うことが多い。フェリーは生活路線みたいなもんだから、安い分(飛行機の1/5くらい)時間がかかる(10倍くらい)からだ。パック旅行の参加者なんて、フェリーの存在自体知らないのではないだろうか。
 だから、普通は国内作家の物語の舞台なんかにならないところだと思うが、田中芳樹はフェリーに乗ったのかもしれない。
 チラ見したファンブックでカナダに行ったみたいなことが載っていたから、詳しく知りたい方は『女王陛下のえんま帳』(田中芳樹/光文社)をどうぞ。(未読なので詳細は確認してません。ウソいってても許してください)

 しかし、ふと思ったが、お涼さまの活躍に快哉を叫ぶのは、真紀子の毒舌に拍手するオヤジと同じようなもんか?

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2004/3/28

 ケーブルで『刑事コロンボ』の「忘れられたスター」の回を見る。

 かつて映画スターだったグレース(ジャネット・リー)に、ブロードウェイ・ミュージカルの話が持ち込まれる。しかし、裕福な夫は資金の提供を承諾しない。なんとしても復帰したいグレースは夫を殺してしまうが……。

と、いうお話。
 コロンボはオリジナルシリーズの評判が一番高いらしくて、これもオリジナル・シリーズ。
 コロンボは結局真犯人にたどりつくのだが、ラストには他の回とはまた違った苦さがある。
 倒叙式というミステリの形を一般に広めたこのシリーズ。犯人はわかっているのに、
「やられた!」
と、思うくらいなのだから、いい脚本であることは間違いナシ。

 フィギュアスケート世界選手権、知ってはいたんだけど女子しか放映してくれないので、見ませんでした。なんだか、それだけでどういう構成かわかりそうな気がして。
 かわりに見ていたのがジュニアの選手権。(ながら見だけど) この中から将来メダルを取る選手も出てくるだろうし、ジュニアだけでしか成績を残せない選手もいるんだろうなあ。
 世界選手権はJSportで全部放映してくれるまで待つ予定。


2004/3/27

 『鋼の錬金術師』ファンには、今週のアニメは色々大変な週だったんだけど、まあ、いいや。(いいのか?)

 何話か抜けましたが、まだ、『新撰組!』、ついてってます。(れおんさんに「もう八嶋さんはどうでもいいの!?」と、言われたので、がんばってる(笑))
 土曜日の再放送という「これを逃したら後がない」ところを見るようにしてるけど……ああ、そろそろシンドイかも。芹沢鴨。
 あと3回くらい見たら、第1回以来出番のない八嶋さんも出てきてくれるのだろうか。

 ところで、近藤勇の奥さん、かわいいっすね。
 あんなにかわいいのに、京都に行ったら優香にうつつを抜かすとは。


2004/3/26

 TVでは金曜ロードショーで『ルパン3世・カリオストロの城』をやっているのに、私は先々週放映の『耳をすませば』をやっと見終る。
 毎日10分くらいずつ鑑賞という朝の連ドラ方式のような見方。でも、ジブリの特にこの作品は、そういう見方でもオッケーの静かでそれなりにドラマチックな作品だった。
 初めて見たのは試写会だった。
 と、いうことは公開年の話でずいぶん前なのだが、今回見ると、また前とは違うセリフが印象的に思える。
 雫が自分の小説に
「書いててわかったんです、書きたいだけじゃダメなんだって!」
という言葉は、胸にせまるよ。まったくもう(笑)。


2004/3/25

 先週のどこかで(多いな、こういうの)、『鬼神伝・鬼の巻』(高田崇史/講談社ミステリーランド)読了。

 胸に勾玉の形をしたあざを持つ中学生・天童純。ある日、いじめっ子達に追われるうちに東山の寺に迷い込み、源雲と名乗る僧に平安の都に飛ばされる。
 源雲は、純が封印された龍を解きはなち、鬼を退治するべく選ばれた者だというのだが……。

 突然の異世界で勇者様という、割とジュブナイル(ライトノベルというより、ジュブナイル)にありがちな設定。ミステリーランドという企画が、中学生くらい向けの体裁を意識しているので、こういう王道の伝奇小説もアリだろう。
 ただし、すごく「逆説の日本史」的だし、高田崇史的。個人的にはもう少し爽快感があってもいいんじゃないかと思う。
 70年代〜80年代テイストのジュブナイルならこうだが、時代が閉塞的になっちゃった今は、ヤングアダルト向けの世界くらいスカッとしたものが読みたいんだよねえ。

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2004/3/24

 打合わせで出たついでに、予約したハガレンDVDのVol.3を取りに行く。
 人間、何にでも慣れるものなのですね……。
 今じゃ、カウンターできっぱりはっきり
「『鋼の錬金術師』を予約したリオハ(仮名)です」
と、言えるようになりました。


2004/3/23

 部のレクで新宿2丁目のバラエティーパブへ。
 今年の予算今年のうちに、という理由で、レク山盛り。ちょっと、レク疲れかも。

 お店の人は別として、その場でその筋の業界用語に一番詳しかったことがわかり、ちょっとショック(笑)。


2004/3/22

 今日は『鋼の錬金術師』第7巻の発売日なのだが、ふと気がついたら予約した(したんだよ)書店の閉店時間に間に合わなかった。
 ちょっと考えて、一晩身もだえするくらいなら、と、駅の書店で7巻購入。もちろん、予約した店に迷惑をかけるのも何なので、予約分は予約分として買うつもり。(バカでしょう? まあ、ファンなんてそんなもんさ)
 1冊ダブるので、欲しい方はメールかBBSで。先着1名様にプレゼントします(笑)。

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2004/3/21

 『angels―天使たちの長い夜』(講談社ノベルス/篠田真由美)読了。
 建築探偵シリーズの番外編。
 蒼こと薬師寺香澄が登場。ただし、探偵役でもなければ、主人公でもない。夏休みの高校で起こった事件なので、何人もいる高校生の一人として登場するだけだ。ただし、物語は蒼の友人のカゲリで視点で語られるので、蒼は射程距離内に入っているし、蒼の言動に一喜一憂するカゲリの心理描写もとっくりと読める。えー、要は作品のやおいくささがちょっとつらい一冊でもある。
 ただ、やおいくささよりも気になるのが、この物語の導入の不自然さ。

 学校の敷地内で見つかった見知らぬ男の死体。電気錠で校門が閉ざされて、残された高校生達は自分たちだけで犯人を解明しようとする。
 しかし、この高校生達は学年も違うし、いくつかのグループだったりして、特に仲がよいわけでもない。タイマーで閉まってしまった校門だって、乗り越えられない高さではないわけだ。
 もちろん、お祭りワッショイで熱に浮かされて一致団結してしまうのならわかる。
 でも、どうなんだろう。最近の清潔志向の高校生さんが、夏場に死体のそば(と、いっても100mくらい離れているが)で一夜を過ごしたいものだろうか。

 蒼の高校時代の話という体裁なので、舞台は1997年。
 ついこの間のような気もするが、あれからずいぶん時間は過ぎてしまって、その頃の日常もずいぶん忘れている。ポケベルがこんなに早く消えてしまうメディアなんて、誰が想像しただろう。
 そういう意味ではもっともっと面白くなりそうな種は見えているのにちょいと残念。

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2004/3/20

 と、いうわけで、学会も無事に終わったてんぽ。さんに半日遊んでもらう。
 最初は「こち亀セット」というタイトルで下町散策をもくろんでいたのだけれど、生憎の雨と冬に逆戻りしたかのような寒さに負けて、すらっと方向変更。
 しかも、どこに行くか、てんぽ。さんが昨日コンビニで買った本を見ながら決めるという低鱈苦。(←間違っているのは知ってるけど、好きなんだもん。この当て字)
 すっかり
「東京の人は東京のことを知らない」
と、思われたようだけど、その通りだ。ネイティブ東京の人間ほど活動範囲が狭くて、東京のことをよく知らないものなのさ。(私が出不精というツッコミはナシの方向で)

 初めてシオサイトにも行ったし、人が来ると日頃行かないところにいけるなあ。
 あと、こんなに東京ばなながどこでも売ってるなんて知りませんでしたよ、私。


2004/3/19

 てんぽ。(にしてつ)さんが学会で東京に来たので、久々にお目にかかる。
 まえっち兄さんとれおんさんもお呼びして、少人数でしめやかに楽しく飲み。東京にいると色々な人が来てくれて楽しい。割と近くに住んでるけどあまりお目にかからない人に、こういう機会に合えたりするのも、楽しい。


2004/3/17

 会社のレクで、最近オープンした自由劇場に劇団四季の「ハムレット」を見に行った。
 セリフは福田恒存先生の名訳。さすがにアルファ波が出ていたようで。(←居眠りしたならそう白状せんかい)
 でも、幕間にロビーでパンフをパラ見したら、意識が遠くなっていたのは10分くらいだった。
 学校の水泳の時間の後すごく眠くなって、授業中にすごく深く眠ったような気がしたけど実際は10分くらいしかたってなかった……なんてことを思い出す。


2004/3/16

 会社で一人一人にヘルメット(社名入り)が配られた。
 人間新しいものは嬉しいらしく、微調整もかねて、そここででヘルメットをかぶっている。ふと、ふりむいたらパッと見える範囲のほとんどの人(えーっと、100人くらい?)がヘルメットをかぶってデスクに座って仕事をしていた。(そういう私もかぶっていた)


2004/3/15

 電車の移動がちょっと好き。
 理由は2つあって、最近、駅の本屋が(割と)充実していること。そして、1時間以上電車に乗る時は本をまとめ買いしていいという自己ルールがあること(笑)。
 そんなわけで、移動用に何冊かマンガをまとめ買いした中で一番面白かったのがこれ。(あとは『低俗霊DAYDREAM』1巻とBL1冊を購入←節操ない)

 『蟲師』(漆原友紀/アフタヌーンKC)。
 植物でも動物でもなく、微生物よりもさらに原始に近いものたち。それが蟲。人と奇妙な形で共存する蟲を狩る蟲師(むしし)ギンコが主人公の、ちょっと懐かしいテイストを持つ1話完結の物語。

 このマンガの存在は割と前から知っていた。店員さんが手作りのPOPで営業しているような書店だと、かなり力を入れて売られているのだ。
 読んでみると、確かに本好きやマンガ好きのツボに入ってくる作品だ。
 物語の体裁は小泉八雲の『怪談』や『耳袋』的であるのに、非常にSF的な味も持っているのが面白い。右手で書いた文字が命を持ってしまう少年の話や、2巻の「生きた」文字を綴る少女の話は、活字中毒の心をぎゅーっと捉えてしまいそう。
 SFがジャンルとして活気がないということが言われるが、センス・オブ・ワンダーは色々なところで育っているものだ、と、少し感動。

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2004/3/14

 久しぶりに実家に帰って、朝、9時に起きたら母が驚いていた。
 ごめんなさい。いつも12時に寝ても12時まで寝ているようなヤツで。ごめんなさい。早起きしたのもTVアニメ見るためだったりして。

 と、いうわけで『金色のガッシュベル!!』。
 横に母がいたので、簡単に物語説明。
「1,000年に一度、魔界の王様を決めるために100人の魔物の子が魔界から来てね、魔物の子はそれぞれ本を持っているの。本を読める人間が(それぞれの本について)世界中に一人だけいて、魔物と人間がペアになって戦うんだよ。本が燃えれば負けで、魔界に帰らないといけない」
 ……おおっ。なんかコンパクトかつ簡潔に説明できたぞ!
 そういえば、前よりあらすじ説明なんかはうまくなった気がする。
 ここであらすじなんかをよくまとめているせいかと思ったが、実は母に解説しているせいか?(解説要員、リオハ)
 たまに最初から一緒に見てる映画でも解説させられるもんな。


2004/3/13

 出かけたついでに本屋に寄って、月刊少年ガンガンを買う。
 片手でつかむと握力が鍛えられそうな厚さ(小さいお友達は片手で持てないだろう)の本を見てため息が出た。厚さを半分、価格を半分にしろとはいわない。せめて、厚さも価格も2/3くらいにならないものか。
 床の上に置きっぱなしにしていて、足の指をぶつけたりすると、心底痛いしさ。

 ため息をついてからレジに持っていったのを見られたか、
「普通の3倍くらいある本だねえ」
と、書店のオヤジに同情される。
 ええ、私がここ1年に買った中で一番厚いのは、辞典じゃくってガンガンっすよ。


2004/3/12

 『イエスのビデオ』(アンドレアス・エシュバッハ、平井吉夫訳/ハヤカワ文庫)下巻読了。
 
前半にくらべて物語がキビキビと進むので、後半はちゃっちゃと読み終わった。前半部分がもう少し短ければなー。年間ベストに入れたかもしれないのに。
 とはいえ、2000年前に存在したビデオカメラという考えは惹かれるものがあるし、後半のアクションもののような展開は面白かった。

 ところで、この物語の焦点となっているのは、我らが日本のSONY製品。
 少し前に品川区の博物館で、品川区から生まれて広がったものの展覧会という企画があった。
 「鎌倉武士、西へ。SONY、世界へ」というポスターを見て、
「鎌倉武士以降、SONYまで、特に何も全国区の商品は生まれなかったのか〜」
と、ちょっと寂しい気持ちになったものだが、SONYは国境どころか時も越えていたのか。すごいや。

 物語の登場人物がやっきになって探すのはMR-01という架空のビデオカメラ。物語の始まりの時点では開発中の、記憶媒体がガラスのディスクという新製品だ。
 確かに、テープじゃ2000年もたないだろうし、DVDだって腐食に弱い。短時間でどんどんボロボロになっていく媒体に囲まれていると、2000年間もつ記憶媒体というのも一種のファンタジーだ。
 このMR−01の設定、2000年もつというためだけの設定かと思ったら、実はもうひとつ仕掛けが用意してあって最後の種明かしのヒントになっていたのだった。
 ラストは賛否あるだろうが、やっぱりキリスト教圏の人が書くとこうなるのだろうなあ。
 私としては、下巻に出てくる砂漠の中の修道院の修道士達が幸せに暮らせるように願ってやまない。

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2004/3/9

リトル・プリンセス〜小公女〜  2日にわけて『リトル・プリンセス〜小公女〜』を見た。
 最近、映画を小分けに見てしまって申し訳ない。こんなところを見てないと思うが、映画関係者には深く陳謝。

 さて、『小公女』といえば、もう説明することもないほど有名なバーネット原作作品だ。アニメの世界名作劇場でもやっていたことがあったからストーリー紹介は省略。
 えー、かなり期待していたミンチン先生とラヴィニアですが(笑)、キャラが薄い。と、いうより、セーラがたくましい。
 たとえば、小間使いになったセーラが暖炉の薪を用意しにくるシーン。学院一豪奢な部屋(元セーラの部屋)は今やラヴィニアのものとなって、期待を裏切らない彼女はセーラに軽く言葉のジャブをかます。それを聞いたセーラは涙をこらえてじっと耐え……るなんてことはせずに、わけのわからない踊りと呪文を唱え出す!
 どうしちまったセーラちん!?

「インドにいた頃、魔女に教わった呪いよ」

 ……ちょーっとキャラが変わってます(笑)。
 でも、セーラという女の子は父ひとり子一人でインド育ち。本当なら、都会育ちのお嬢様がかなうはずがないほどたくましいはずなんだよね。

「髪の毛に気をつけることね。フフフ」

と、セーラは捨てゼリフを残して去っていく。(フフフは私の幻聴) ブラッシングをしていてごっそりと抜けた毛に叫ぶラヴィニア。
 天使のような優しい女の子というキャラクターは、今の時代現実味がないし、お子様だって見ててつらいから、これはこれでアリだろう。
 たくましいセーラはミンチン先生にも口答えする。

「女の子はみんなプリンセスだわ! (あなたみたいに)かわいくなくても、野暮ったくっても!」

 涙ぐんでセーラの部屋を去るミンチン先生。セーラちん、そ、それはセクハラというやつでは!?(笑)。
 上のセリフの「女の子はみんなプリンセス」というのは、セーラの父が言っていた言葉で、2人の関係は、多くの父と幼い娘の関係がそうであるように非常に密着していて甘ったるい。時にはセクシャルなものを感じるほど。
 と、いうわけで、禁断の深読みをしたい人におすすめ。
 健全に少女時代を懐かしみたい人には、もちろんそれでオッケーです。

『リトル・プリンセス〜小公女〜』A Little Princess (1995年、アメリカ)98分
監督:アルフォンソ・クアロン、脚本:リチャード ラグラベニーズ 、エリザベス チャンドラー、撮影:エマニュエル・ルベズキー、音楽:パトリック・ドイル
CAST:リーセル・マシューズ(セーラ)、エレノア・ブロン(ミンチン)、リーアム・カニンガム(クルー)、ラスティー・シュウィマー(アメリア)、バネッサ・リー・チェスター(ベッキー)、エロル・シタハル(ラムダス)、タイラー・フライ(ラヴィニア)


2004/3/7

 友達んちに行って、おもしろいWeb漫画サイトを教えてもらったり、『Get Backers−奪還屋−』を一気に20話見たりと、とってもオタクな週末でした。


2004/3/5

 『イエスのビデオ』(アンドレアス・エシュバッハ、平井吉夫訳/ハヤカワ文庫)上巻読了。
(イエスのビデオっちゅーと擦り切れるほど見たハードロック少年もたくさん……とボケようと思ったら、もしかしてワカモノにはわからないかもしれないと思い当たりました)
 これがやたらと読むのに時間がかかっていた問題のSF。物語はというと、

 イスラエルの遺跡発掘現場で、2000年間手付かずの地層から人骨が発見された。不思議なことに現代の歯科治療を受けた痕があり、そばにあったのはプラスチック製品。
 そして、プラスチックケースの中に入っていたのは、開発中のSONYのビデオカメラの使用説明書だった!
 ありえるはずのない使用説明書の存在は、時間旅行者の存在の証明なのか。そして、もし2000年前のエルサレムにビデオカメラがあったら、何が写されているのか。ニュース王、若い発掘ボランディア、バチカンなどがそれぞれの思惑で「イエスのビデオ」をめぐって動きはじめる……。

 ……という内容で、タイトルずばり。
 でも、↑のあらすじ分で150Pくらいかかっているのだ。長いよ! もっとキビキビ進もうよ!(笑)
 ついでに登場人物が色々出てきて、それぞれがそれぞれの思惑で動いているので、人間関係の把握が難しい。

 クルト・ラスヴィッツ賞を受賞したとか。つっても、賞の名前を知らないので、どの程度すごいかわからないんですけど。(ドイツの星雲賞、って感じでしょうか)
 アメリカではビデオ化もされているので面白い作品なのではないかと思う。後半、物語がちゃっちゃと進むことを祈ろう。

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2004/3/3

 ご招待いただいたので、夜からワークショップ兼パーティにでかける。場所は銀座のエノテカ・ピンキオーリというところ。
 スケジュールが許せば夕飯代が浮くので勉強になるので、出席するようにしている。
 特に今回の会場は、フィレンツェに本店を持つ、イタリア料理の名店だ。(←やっぱ食い気か) プライベートで行くには雰囲気とお値段の敷居が高い。もちろんお店に行くのは今回が初めてだ。
 とりあえず、内容は置いておいて。

 トイレが豪華!
 生の花がどさっと生けてあるトイレなんて初めて見ました。ペーパータオルなんていうヤボなものはなく、籠の中にきちんと折りたたんだハンドタオルが置かれていて、綿棒、油取り紙も完備。

 しかも、しかもですね。





 個室に入ったら便器のフタが自動で開いた!

 まるで、
「ダンナ、お待ちしてましたぜ。さささ、どうぞ!」
てな歓待ぶり。

 なんだかこういうことに出くわした時こそテクノロジーの進歩を感じるなあ。
 ところで、お料理はおつまみっぽい感じで、しかもお上品だったので、後でおなかが空きました。帰り道にあれば、ラーメン食べて帰ったかも。


2004/3/2

 渡辺謙も「たそがれ清兵衛」もアカデミー賞はとれなかったが、日本の作品がノミネートされるだけでなんとなくわくわくするもんだ。

 個人的にアカデミー賞ノミネートよりスゴイと思ったのが、桐野夏生のMWA賞ノミネート。

 MWA賞はMWA(Mystery Writers of America)が選ぶミステリーに与えられる賞。日本では「アメリカ探偵作家クラブ賞」といったりもする。これはMWAの和訳が「アメリカ探偵作家クラブ」と習慣的に訳されているせい。(ミステリがまだ「探偵小説」だった時代の匂いがして微笑ましいと思うのだが、皆さんはいかがでしょうか)
 いくつかあるミステリの賞の中でもCWA賞(英国推理作家協会賞)と並んで権威がある……らしい。
 確かに、ほとんどお手盛りだといわれるアガサ賞に当たりハズレはあっても、MWA賞にはハズレはないというのが読み手としての感想。もちろん、自分の好みはあるから、MWA賞作品がどれもこれも面白いとはいわないけれど。

 過去受賞者は、ディック・フランシス、フレデリック・フォーサイス、ケン・フォレット、ローレンス・ブロック……と錚々たる顔ぶれ。この人達はアメリカでハードカバーの初版だけで300万部刷る(増刷を重ねて300万部じゃないっすよ。初版だけっすよ!)人達だといえば、どれくらいすごいかおわかりになるだろうか。


2004/3/1

 久しぶりにSFを読み始めたのだけど、なかなかSFの頭にならない。
 SF筋というのがあるとしたら、かなり衰えた感じだ。
 100P読むのに1週間くらいかかってるあたり、なんて低鱈苦(←当て字)。

アザーズ  読了記(第一変換「毒猟奇」。……うっうっ)が書けないので、苦し紛れで映画感想でも。
 『アザーズ』。
 (**今回は思いっきりネタバレするので、これから見る予定の方はスルーして下さい)

 第2次世界大戦中、英国ジャージー諸島の古い邸宅に子供と2人で住むグレース(ニコール・キッドマン)。そこに訪ねてきたのがミセス・ミルズ(フィオヌラ・フラナガン)と庭師のミスター・タトルとリディアという3人。リディアは口がきけないし、ミセス・ミルズはいわくがありそう。3人は使用人として屋敷に来たのだが、3人が来てからグレースに次々と不思議なことが起こり始める……。
 と、いった物語。
 まあ、今回はネタバレ感想なので、物語紹介は余計なことだったかも。
 後半、この3人の正体がわかるところの演出がうまい。こういうゴッシック・ホラーには品格が必要だが、そういう演出がよく出ていたのがこの部分。
 あと、光アレルギーの子供達という設定もうまい。
 だから、ドアは絶対閉めなければいけないし、カーテンも必ずきっちり引いておかなければならない。親子は暗い館に閉じこもらなくてはいけなくて、母親はそんな毎日に疲れてヒステリックになる……と、設定のキモですね、ここ。

 若い母親役のニコール・キッドマンも、昔風の髪型とファッションが文句なく美しい。
 そして、カーテンが引かれて光がさんさんと降ってくるシーンを恐ろしく見せるなんて、演出の妙だろう。
 ただ、こちらはネタがわかって見たし後に見たしで不公平なのだけど、私は『シックス・センス』の方が好きだなあ。
 たぶん、『シックス・センス』はミステリの手法で書いてあって、『アザーズ』はホラーの手法なんだろうと思う。『シックス・センス』のラストには探偵が最後に謎解きをするめくるめく快感があるのだ。
 『アザーズ』にはゴシック・ホラーの香気があるので、これは好き好きかもしれない。
 やっぱり、私はミステリ好きということで。

 蛇足だが、レビューサイトを見て笑ったのが、

 オスメント君が子供役をやったらもっと恐かったかも

と、いうもの。そうかもねえ(笑)。

『アザーズ』The Others(2001年、アメリカ)
監督・脚本・音楽:アレハンドロ・アメナーバル、エグゼクティブ・プロデューサー:トム・クルーズ、撮影:ハビエル・アギーレサロベ、美術:ベンジャミン・フェルナンデス、衣装:ソニア・グランデ
ニコール・キッドマン(グレース)、フィオヌラ・フラナガン(ミセス・ミルズ)、クリストファー・エクルストン(チャールズ)、アラキナ・マン(アン)、ジェームズ・ベントレー(ニコラス)、エリック・サイクス(ミスター・タトル)、エレーン・キャシディ(リディア)



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