店主の読書日記 APR2004 タイトルリスト 作家別リスト

2004/4/18

 『女王と海賊――暁の天使たち5』(茅田砂胡/中公ノベルスC☆Novels Fantasia)読了。

 池田理代子の『エロイカ』を読んだ時、他の池田作品と比べて今ひとつ面白くなかった。
 エロイカを貸した友人にそのことを言ったら、
「この人、戦争書くの下手なんだよ」
と、言われた。
 なるほど。ナポレオンって戦争ばっかりやっていたから、戦争シーンが多かったもんね。
 今に残るエピソードの描き方はうまいのだけど、肝心の戦争シーンがショボいから、有名なセリフがあんまり胸に迫ってこないのだ。
 戦闘シーンは難しい。画力があるだけじゃうまく描けないのも事実だ。
 小説は映像がない分、さらに難しいのかもしれない。

 茅田砂胡という作家は、戦闘シーンと緊迫感のあるシーンをかかせたらピカイチだ。だから、この巻はさすがに面白い。
 ただ、その前にこのシリーズが3冊、前のシリーズが5冊、その前のが19冊あるので、人にすすめにくいんだけど(笑)。

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2004/4/17

 「月と蛙」というバンドのライブ要員(ただの客です)として前日に収集がかかったので、恵比寿へ。
 ギターと三線のユニットで、なかなかいいライブでした。

 それはともかく(ここからが本題)、先日お亡くなりになった横山光輝さんの話題になってはじめて知ったのだけど、『三国志』って完結してたんだって! しかもだいぶ前に!
 横山版三国志といえば、私が夢見る小学生のみぎり、サンタさんが1巻から5巻を枕もとに置いてってくれたという思い出の品。(名作だとは思うが、いたいけな少女に横山版三国志5冊はいかがなものでしょう、お父さん)
 だから、横山光輝に関する私のイメージはいつもホロ苦いクリスマスの朝の思い出と一緒だ。
 謹んでご冥福をお祈りします。


2004/4/15

 『二人の眠り姫――暁の天使たち4』(茅田砂胡/中公ノベルスC☆Novels Fantasia)読了。
 ふと思ったが、なんでもできるというのは物語も人生もつまらなくするんだなあ。このシリーズが始まった時に評判が悪かったのは「死んだ人も復活できちゃう。年齢も自由自在」という節操のなさが理由のひとつだったのだろう。
 とりあえず、この巻で「奇跡の復活」分はすべて復活した。
 いよいよ物語が動き出した。……ってことで、たぶん、ここからが著者の本領発揮。
 次巻には本当に期待(笑)。

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2004/4/14

 やっぱり春はHPを閉鎖したいキモチがむくむくと……じゃなくて、仕事してました。
 昼休みに日記を書く余裕さえなかったよ。


2004/4/6

 『海賊王の帰還――暁の天使たち3』読了。(茅田砂胡/中公ノベルスC☆Novels Fantasia)
 タイトルの海賊王、まさかあんなラストで帰ってくるとは。
 発刊当時に読んだ人の叫びが聞こえるようだ。
「こんなところで終わられても!」
って……。
 しかし、「(作者は)分量の調節ができません」と、あとがきに書くのはプロとしていかがなものか(笑)。

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2004/4/5

轟天2  そういえば、なんか疲れていると思ったら、先週末は新感線の『直撃!ドラゴンロック〜轟天2 九龍城のマムシ』のビデオを見たのだった。  借りてからそろそろ1年になってしまう。いつでもいいよ、とは言われたけど、さすがにマズいだろうと根性を決めて見た。(何しろ5本も借りてて、1本が3時間あるのだ)
 「ブルース・リー」他のパロディ満載アクション(で、間違ってないはずだ)。
 あらすじは……書こうかと思ったけど、書いてたらきっとアホらしくなりそうな気がするので省略。それくらいおバカ路線を突っ走った作品。
 こう、延々とお馬鹿な話をビデオで見てるっていうのは、かなり根性要る。やっぱり劇場には魔物がいて、お客をおバカ空間に引きずり込んでしまうんだわ。
 ビデオで見ても結構おもしろいので、(そしてその時の流行もののパロが多いので)劇場だったらどんなに面白かっただろうと思う。

 『神々の憂鬱――暁の天使たち2』(茅田砂胡/中公ノベルスC☆Novels Fantasia)読了。
 つまらないか楽しいかといえば楽しいのだけど、なんでかものすごくよく出来た2次創作を読んでいる気がするのはなぜだろう……?(笑)
 ヒロイック・ファンタジーの主人公(のひとりの)18歳の王妃と、召使でもと殺し屋の女装が得意な19歳と、2人の不倶戴天の敵である男達。4人が仲良く中学生になって同じ学園に通う……なんて同人屋でもやりませんてば。
 あと、時間軸が1巻のラストからいっぺん遡って、そこを延々やるので、ちょっと混乱する。

 とか、色々文句をいいながら3巻も読むのだ。

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2004/4/4

 完結したらしいので読んでみた。『暁の天使たち』(茅田砂胡/中公ノベルスC☆Novels Fantasia)。
 まえがき(のようなカバー折り返しの著者のひとこと)で「どこかで見たような名前が並んでいても新シリーズ」といっていたが、無茶である。まったく初めての人がこの本から読み始めてもなんだかわかりませんてば。
 この物語は同じ著者の戦記もののシリーズ「デルフィニア物語」とSFの「スカーレット・ウィザード」の続きなんである。
 ちなみにデルフィニアは19冊、スカーレット・ウィザードは外伝含めて6冊ある。新シリーズったって無茶でっせ。
 だって、一応全部読んだ私も思ったもん。
「ヴァンツァーって誰?」
って……。
 ええ、記憶力がアヤしいことは承知のすけ。しかし、通読しても、細かいところを忘れてるからちんぷんかんぷんなのだ。これを新シリーズというのは無理がある。もし、新シリーズというなら、初めての人にもわかりやすい(コアなファンにはうっとおしい)説明がないといけないはず。
 ただ、やっぱり、この作者の「魅力的なキャラクターを書く力」というのはすごいなあ、と、思う。
 実は、「スカーレット…」の最後で、デルフィニアのキャラクターが登場した時はちょっとイヤだった。あれから日もたったし、「同じキャラクターが時と空間を越えて活躍する一大叙事詩なんだ」と腹もくくったので、読んでいて面白い。

 というわけで説明すると、「デルフィニア物語」は異世界から落ちてきた強力の戦女神リィに助けられて、国を追われた若き国王ウォルがデルフィニアという国の王に返り咲き立派に周辺諸国を押さえて行く話。ヒロイック・ファンタジーといって、まあ、間違いじゃない。移動は馬、戦いは剣の世界だ。
 対して、「スカーレット・ウィザード」は宇宙海賊でキングと呼ばれたケリーが、ある日・豪腕の赤毛の億万長者の女に見初められて豪快さんな夫婦になるスペース冒険ものがたり。(25冊を5行くらいで説明するのだから、乱暴なのはご容赦ください)  この2つのシリーズをくっつけるのが、デルフィニアの戦女神リィ。彼女は「スカーレット…」の世界から性別を女性に変えて落とされたという種明かしがされるのだ。
 今回のシリーズは元の世界に戻ったリィの学園もの……とスカウィの最後で説明があったが、たぶん、学園ものとはいえないような(笑)。
 以降次巻。

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2004/4/3

 母のおつきあいで三越のセールに。
 新高輪プリンスホテルが会場。おおーっ、ここが飛天の間か。芸能人の結婚式で有名な会場も今日はバッグやら洋服やらが並ぶ特設会場だ。
 あくまでも母のおつきあいなので、母が靴の試着をするときはお荷物をお持ちし、紐のある場合はしゃがんで結ぶ。喉がかわいたとおっしゃれば、走ってジュースを買いに行くのであった。今はまだ冬場なので車のドアやお店のドアも私が開ける。(ビリっとするのがイヤなんだそうだ) 
 大学時代、
「リオハ(仮名)ちゃんが男だったら騙されてた」
と、とってもよくいわれるくらいエスコートが完璧だったらしいが、この母のおつきあいをしていると、下っ端根性が身についてしまう。(当時、お嬢さん達のカレシ達が「気が利かない」と責められていたらしい。ごめんよ……)
 そんなこんなで、広い会場をまわって疲れたのだが、もうひとつ、余計なことをしたせいもあった。

 それはNationalのJOBA。
 会場は無差別格闘技状態なので、無垢の木を使った家具のすぐ隣に家庭用マッサージャーが置いてある。母がチェストの寸法を聞いていてヒマだったので、マッサージャーの隣にあった変な機械を見ていた。
「どうぞどうぞ。よかったら試してみてください」
 さすが接客のプロ。お客様の視線の動きを見逃さない。どうみても部長クラスの三越社員の男性が勧めてくださるので、私はその機械に「乗ってみた」。
 たぶん、普通なら座ったという形容が正しいのだと思う。ただ座り方としてはまたがって座るのだ。三越の人がおもむろにスイッチをいれる。
「おおうっ」
 見た目からは想像が出来ないような、割と激しい上下左右運動だった。
 そう、このJOBAという機械は、乗馬の動きをシュミレートした画期的なフィットネスマシンだったのだ。
 10円を入れると動くデパートの屋上にありそうな遊具の座るところだけがあると思いねえ。それがすごく馬の動きに近い揺れを再現し、乗っている人はその揺れに対してバランスを保とうとして自動的に腹筋や太ももの内側の筋肉を使うのだ。
 三越の人の説明によると、自発的にはなかなか難しい運動が、乗っているだけで(しかもTVを見ながら)出来てしまうという優れもの。

 しかし、用事の終わった母に声をかけられ、機械を止めて降りた私は愕然とした。
 売り場は異種格闘技だからして、マッサージャーのすぐ脇にデジカメが置いてある。撮影見本も何枚かあり、その中はモンダイのJOBAに乗った中年男性の姿であった。
 バカっぽい。
 ものすごくバカっぽい。
 そりゃそうだ。だって、デパートの屋上の(中略)にいい大人がまたがっているような姿なのだもの。
 公衆の面前で変な機械に乗って、ものすごくバカっぽい姿をさらしてしまったぜ……。
 でも、フィットネスマシンとしては優れていらたしく、わずか10分程度の騎乗でその夜はとてもぐっすり眠ったのだった。


2004/4/2

スリーピー・ホロウ  『スリーピー・ホロウ』見終わる。
 何を隠そう、5日間に分けて見たという体たらく。『耳をすませて』はいいとして、これはなんともなさけない。そんなに時間がないわけじゃないんだけど、切れ切れなんだな。
 家事をしながら見るにはテレビ小っさいし。

 見る前はホラーだと思っていたのですが、アクション・サスペンスのようだった……。
 主人公のイカボッド、へなちょこ過ぎ。助手の子供の後ろに隠れるは、ラスト近くでは女(カトリーナ)の後ろに隠れるは(笑)。それに比べて首なし騎士の雄々しいこと。実は主役は首なし騎士なのかも。
 私はティム・バートンとそんなに相性が合わないらしく、これもそんなに面白いとは思わなかった。たぶん、すべてが中途半端な感じがするからかもしれない。
 ブラックさもコメディもシュールさもちょっと半端。こういう作品なら、興行成績なんて捨てちゃって、ゴリゴリに暗く病的に変にいこうよ。

 ただし、唯一ホラーの面目躍如なのが、床下に隠れた子供が見る床板の隙間から見える母親の目。あんな恐い母と子のにらみ合いはないだろう。

『スリーピー・ホロウ』Sleepy Hollow (1999年、アメリカ)98分
監督: ティム・バートン、製作: スコット・ルーディン、アダム・シュローダー、原作: ワシントン・アーヴィング 、脚本: アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー、撮影: エマニュエル・ルベッキ
CAST:ジョニー・デップ(イカボッド)、クリスティナ・リッチ(カトリーナ) ミランダ・リチャードソン(メアリー・ヴァン・タッセル夫人、西の森の魔女)、マイケル・ガンボン(バルタス・ヴァン・タッセル)、キャスパー・ヴァン・ディーン(ブロム)、イアン・マクディアミッド(ランカスター医師)、クリストファー・ウォーケン(首なし騎士)


2004/4/1

女王ファナ  と、いうわけで、今日こそ映画感想。『女王ファナ』。
 原題は"Jana la loca"で、"loca"は英語だとたぶん"lunatic"。直訳だと「きちがいファナ」。まあ「狂女王ファナ」の方がいいか、やっぱり。
 邦題はきれいになっちゃったので、某プラン○ンが「『女王ファナ』ウェディングキャンペーン」という不思議なものをやっていた。
 史実のファナは(映画もだけど)、政略結婚で結婚して夫の浮気に苦しんで嫉妬の鬼のような結婚生活を過ごした人でっせ。いいのか?(笑)
 "fanatic"(熱狂的、狂信的)の語源は、ファナという説もある。

 映画は17歳の初々しいファナが結婚のためにフランドルに行くシーンから始まる。宮廷で初めて出会う夫フィリップはラテン顔の野性的な男。
 神父に形ばかりの文言を唱えさせ、早速ファナをベッドに連れ込んでしまう。
 映画のファナは、野性的な男に初めて肉体の喜びを教えられて、それに執着してしまうという17歳の少女だ。こんなことは今でもよくあることだ。
 母、イザベルが死に、そのことを知らせに訪れた狩猟の館で夫フィリップの浮気の現場を見たファナ。雨の中に駆け出し叫ぶ。
「母が死んだわ! 夫は裏切りものよ! 母が死んだわ! 夫は裏切りものよ!」
 気の狂ったような姿だが、母が死んだ悲しみと、それによってもたらされるカスティーリヤの女王としての重責、そしてそんな時に知ってしまった夫の不実……というバッドタイミングを考えれば、そんなに変でもないような気がするのだ。
 逆に、日本人は「ラテンの人は激しい」という刷り込みがあるから、「そんなもんか」と思えるくらい。

 実は、ファナとフィリップの関係を見てて思い出したのが、北条政子と源頼朝。
 政子も頼朝の浮気相手の家を打ち壊したりして、回りの失笑と恐れを買った。
 堅実な武家の貞操感を持つ政子と、都の爛れた男女関係を知っている頼朝。当時の貴族としては頼朝の女関係は常識レベルだったのだろう。しかし、東国育ちの政子には許せない。
 頼朝が京の宮廷風なら、フィリップはブルゴーニュの宮廷。
 対してファナが育ったのはレコンキスタまっさかりのスペイン。母のイザベル女王はレコンキスタのために各地を転々とし、子供もひとりひとり生まれた土地が違うくらいだった。(ファナはトレドで生まれている)
 かくして貞操観念の違う2人が政略結婚で結婚し、片方が相手に執着したのが運のつき。
 
 嫉妬に狂うファナは、愛人を持って当たり前の当時の宮廷の常識ではとても奇異なふるまいだった。今だったら……たぶん、それほど変なことではない。
 過剰だし、暑苦しいけど、嫉妬深い奥さんなんてたくさんいる。
 ファナの不幸は、過剰なほどの愛情ではなくて、兄弟の死亡でカスティーリャの女王の座が転がり込んできたことだろう。君主であるには、女過ぎてはダメなのだ。

『女王ファナ』JUANA LA LOCA(2001年、スペイン)117分
監督・脚本:ビセンテ・アランダ、製作:エンリケ・セレッソ、撮影:パコ・フェメニア、美術:ホセップ・ロセル
CAST:ピラール・ロペス・デ・アジャラ(ファナ)、ダニエレ・リオッティ(フェリペ)、マニュエラ・アーキュリ(アイサ)、エロイ・アリソン(アルバロ)、ロサナ・バストール(エルビーラ)、ジュリアーノ・ジェンマ(ド・ヴェイル伯爵)



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