2004/11/30
フランス人のセクシャリティって深っ!と、見ていて思った『仕立て屋の恋』。
「恋」が第一変換で「濃い」になったが、まんざら間違っていないのがまたすごい。
無口な中年男、仕立て屋・イール。
人付き合いをしない彼が情熱を傾けているのは、向かいに住む美しい女性を窓からじっと観察することだった。部屋の明かりを消して、ブラームスのレコードをかけながら。
やがて、彼女はイールに覗かれていることに気がつく。
見る男と見られる女。二人の関係はやがて……。
前半はフランス映画らしいテンポで、ちょっと眠たくなった。
はっきり言って、この主人公、ハゲの中年なだけでなく、変態である。色も白くてなんかキモチワルイ。
のに。のにのに、じーっと見ているうちに愛しくなってくるのが、ルコントマジック! この監督、フェチのおっちゃんを撮らせたら天下一品なんじゃないだろうか。
途中まで、イールはひたすらフェチの人である。窓から女を眺め、遠くから見つめることを愛している。実際にその女が部屋に訪ねて来た時は怒鳴って追い出すほどだ。
そして、彼は女が出て行った後、彼女が座っていたベッドの彼女のぬくもりに頬ずり、口付ける。
ああ、なんてフェチなんだ!(笑)
私が切なくて愛しいと思うのは、こんな変態な彼の愛が、あくまで純愛であること。
フェチは彼を幸福にするが、純愛は彼を傷つける。なんて皮肉な。
私は、ずーっとこれはすっかり恋愛ものだと思っていた。
確かに間違いではないが、後半の緊張感はサスペンスとして評価していいと思う。ただの恋愛ものと思って見始めたら、いい意味で裏切られた。
原作はジョルジュ・シムノン。
『仕立て屋の恋』MONSIEUR HIRE(1989年、フランス)78分
監督: パトリス・ルコント、製作: フィリップ・カルカソンヌ、ルネ・クライトマン、原作: ジョルジュ・シムノン、脚本: パトリス・ルコント、 パトリック・ドゥヴォルフ、撮影: ドニ・ルノワール、美術: イヴァン・モシオン、衣装: エリザベト・タヴェルニエ、編集: ジョエル・アッシュ、音楽: マイケル・ナイマン
CAST: ミシェル・ブラン(イール)、サンドリーヌ・ボネール(アリス)、アンドレ・ウィルム(刑事)、リュック・テュイリエ エミール、フィリップ・ドルモワ、マシュー・ゲイデュ、ミシェル・モラノ、マリエル・ベルトン、アンドレ・ボーダン