店主の読書日記 MAY2004 タイトルリスト 作家別リスト

2004/5/26

 5/12の日記で書いた「あまおう苺」。
 名前の由来が間違っているのを猫宮さん(@苺博士)からご指摘いただいた。

 正しくは、

 かくて
 るくて
 おきくて
 まい

だそう。(そこだけ読む人がいるかもしれないので、↓の日記は直しておきました)
 既に友人、ご家族に知ったかぶってしまっていたらゴメンなさい。
 ウラを取らないで書いてしまいました。
 うちの近くのダイエーじゃ見たことがないしさー。庶民ぶりがバレてしまったわ。


2004/5/24

 元同期からメールが来た。8月に結婚するそうだ。
 this is the official invitationつーことは、これが結婚式のご招待メールなのね。他に手紙は送らない予定だそうで、時代はここまで来たかー、という感じ。


2004/5/23

 あのー、ただいまCMでばしばし流れている『世界の中心で、愛をさけぶ』。
 「世界の中心で、愛をさけ……」と読まれるたびに「……んだけもの」とつけたくなるのは私だけでしょーか?
 ……。
 ……ふふ。
 そうだよな、250万人も日本のSF者はいないもんな……(涙)。
 


2004/5/22

 オフィシャルな休日出勤でした。
 とにかく色んなところで就職関係をやっているので、わんさか就活中の人達に会いました。若いもんシャワー浴びて、少し元気になりたいもんです。


2004/5/21

 『ポケットの中の野生――ポケモンと子ども』(中沢新一/新潮文庫)読了。
 タイトルが秀逸で思わず手にとった1冊。
 内容は、インベーダーゲームからはじまるゲーム論で、途中からゲームとしてのポケモン論になっている。

 タイトルを論旨として進んでいくのかと思ったら、あの野生は人類学者レヴィ・ストロースの『野生の思考』の「野生」であって、一般に考える野生ではなかった。
 編成をちょっとご紹介すると、

第1章 インベーダーゲーム革命
第2章 モンスターの誕生
第3章 RPGのエロスとタナトス
第4章 『ポケモン』の手柄
第5章 今日のトーテミズム
第6章 ゲームの世界の贈与論

と、なっていた。
 第5章までは、ちょっと半端かな、という印象。(私が民族学と民俗学の論文として読んでしまったせいかも)
 でも、それを補ってあまりあるのが、第6章の「ゲームの世界の贈与論」で、非常に切な優しい論文になっていた。

 著者がこの本を書いたのは1997年。
 今回の文庫化では、文庫のあとがきが付き、ポケモンのゲームクリエーターの田尻氏の解説がついて、ほぼ完璧な形で補完されている。
 7年がたって、ポケモンの世界は多層化しているという。
 ゲームだけでなく、アニメになり、カードになり、そのどれに触れるかでその人のポケモンは違っていて、ゲームのポケモンについて書かれたこの論文が意味をなさない世界もあるのかもしれない。
 多層化するのは悪いことではない。
 それだけパワーのある作品ということだからだ。
 ポケモン論についても、また新しい力のある論文が書かれる頃なのかもしれない。

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2004/5/20

 お友達に勧められて、アニメ『鉄人28号』を見ました。

 おー、なるほどー、こういうわけか。
 主題歌は初アニメ化された時と同じ「ビルの町にガオー」を六本木男声合唱団が歌っている。作曲家・三枝成彰氏を団長とする六本木男声合唱団は、政財界他の著名人が団員なのでご存知の方も多いだろう。
 何かのインタビューで読んだが、みなさんマンガの鉄人世代だけあって録音もとても真剣だったそうだ。

 絵はマンガの鉄人に忠実で、舞台設定も昭和30年代になっている。
 もちろん今、制作しているのだからCGも使っているし、新しい技術も使っている。でも、それは技術を見せびらかすためでなく、あくまでもさらり。
 全体的にすごく丁寧に作っていて、深夜枠なのが勿体無いくらいだ。マンガの鉄人を少年少女のイマジネーションをすべて生かしてアニメ化したらこんな形になるのか、っていう感じ。
 原作の『鉄人28号』という作品を非常に大切にしていて、作者もこういう形でアニメになると嬉しいんじゃないだろうか。

 ところで、放映を見ていて私は思いました。

 倒れる正太郎くんが

 妙に色っぽくてドキドキ。

 さすが、ショタコンの語源だけあるわ。(←前半いいこと言っても台無し)
 鉄人の形は丸が基本で(この時代のマンガは大体丸い)、丸いフォルムというのは柔らかくてエロティックなんだなあ。触ったら「ぽよーん」という触感を感じさせるが原因かもしれない。

 横山光輝氏のご冥福をお祈りします。


2004/5/18

 たまたま某所でみかけた、VIRIDIAN ROOM
 flashを利用した、クリックするだけでクリアできるゲームなんだけど、これがなかなか難しい。
 しっかし、夜だと音が怖いよ〜。(音がヒントなんで消せないのが弱りもの)


2004/5/17

梟の城  朝の電車で隣の人が『壬生義士伝』を読んでいた。それで思い出したのが、『梟の城』。
 映画関係者側にしてみれば噴飯ものの1日20分鑑賞(またか)で見終わっていた。
 最近、本当にイッキに映画を見ていない。映画館に行って、2時間ナリを日常からきっぱり切り離されるのはとても贅沢なのかも。

 前半の引きには「おおっ」と思った。
 まず画面が美しい。
 色と線がとにかく美しい。
 我が子を亡くして悲しむ秀吉は髻を落とし、追従する大名もまた髻を落とし墓前に手向ける。まとめた髻に結んだ色とりどりの糸。
 伊賀ものが潜伏している店のたたずまい。直線と曲線の描く構成。
 書いているとキリがないほど視覚に快感だった。
 それだけに後半の失速が残念なのだけど、前半の好印象が強くて、私の中では結構いい映画だった。
 いえ、主演が中井貴一だからだけではなく(笑)。

 でも、私の心の中で「サラリーマン(スーツとステンカラーコート着用)をやらせたら日本一」の中井貴一は、案外濡れ場もイケることが判明。
 演出もあるのかもしれないが、艶っぽい、いい場面でした。この映画での濡れ場は、物語後半のストーリー展開に説得力を持たすために必要なのだ。よかった、よかった。

 この映画、総制作費は10億という話。
 CGがちゃちい分は衣装とかセットに回ったんだろうなあ。2時間の時代ものの映画を作るには、実は20億円くらい必要なのかもしれない。時代劇って本当にお金がかかるし、歴史ファンにはツッコまれるし、大変だ。
 これからも時代劇を見たいので、今回はちょっと点が甘めで。

『梟の城』(1999年、日本) 138分
監督:篠田正浩、原作:司馬遼太郎、撮影:鈴木達夫、音楽:湯浅譲二、衣装:朝倉摂
CAST:中井貴一(葛籠重蔵)、鶴田真由(小萩)、上川隆也(風間五平)、筧利夫(雲兵衛)、マコ・イワマツ(豊臣秀吉)、根津甚八(服部半蔵)、中尾彬(徳川家康)、永澤俊矢(摩利支天洞玄)、小沢昭一(今井宗久)、中村敦夫(葛篭太郎兵衛)、火野正平(黒阿弥)、葉月里緒菜(木さる)、岩下志麻(北政所)

STORY:天正9年(1581年)、伊賀の忍術を恐れた織田信長によって、里は焼き払われ伊賀者はほとんどが虐殺された。10年後、生き残った葛籠重蔵の元に時の権力者・豊臣秀吉暗殺の仕事の依頼が舞い込む。重蔵は、京の町へ向かうが…。


2004/5/16

ハーブ・リッツ展  ハーブ・リッツ展に行ってきました。

 日曜日の夜を狙ったのに、まあまあの混み具合。日曜夜の東京(特に食事時)なんて普通はガラガラなのに、かなり盛況なんだろう。
 今回は、2002年12月に亡くなったハーブ・リッツの没後初めての回顧展。

 昨年のマリ・クレール誌の特集で知ったのだが、この有名なフォトグラファーが世に出たのは、1978年、当時無名のリチャード・ギアの写真が注目されたことからだそうだ。
 会場にはもちろんその写真もあり、同じく有名になるきっかけとなった「タイヤを持つフレッド」も展示してあった。
 フレッドはまるでギリシャ彫刻のように美しい体を持ち(って、小説で読むと陳腐な表現だと思ってたけど、まさにそいう青年なんだものさ)、じっとこちら側を(実際はファインダーを)見つめるのでドキドキしてしまった。
 個人的な嗜好は知らないけど、リッツ……ゲイだね……。
 こんなに情念たっぷりの瞳で被写体を見るんだもんなあ。

 だからといって女性が下手なわけでもなく、シンディ・クロフォードを撮った写真なんて陶器の女神様のような静謐な美しさ。
 ハンディキャップの有名人、クリストファー・リーブ、ホーキンスも高い精神性を感じる絵になっていて、やっぱりそういうのが才能なのだろう。
 写真って不思議。
 カメラという機械の存在に縛られて同じような場所で同じような人を撮っても、ある人は煌く才能を見せ、ある人は凡庸なポートレートになるのはなぜだろう。

 場内では、本人出演のインタビュービデオが上映されていて、作品についてのコメントが聞ける。エレベーターの前のモニターでは、リッツが関わったTVCMを順番に流していた。これらを全部見るには3時間くらいは必要だったかもしれない。特にコマーシャルフィルムは全部見たかったなあ。
 機会を見つけてもう一度……行けるか?

『ハーブ・リッツ写真展』――究極の美を見たまなざし。没後世界初の回顧展
2004年5月13日(木)→25日(火)
大丸ミュージアム・東京
午前10時→午後7時30分(8時閉場)
※最終日は午後5時まで(5時30分閉場)


2004/5/15

 おすもうに行ってきました。

 父がチケットをもらったので、便乗。
 両国国技館に入るのは初めてで、行ってみて驚いたのは警備の多さと外国人(という言い方もよくないんですが)の多さ。しかも外国のお客様、すごく楽しそう。
 よかった! 満足していただけましたか。
 なんだか、相撲協会の人のような気持ちになりながら中に入った。私は途中からだけど、相撲は1時過ぎから延々とやっているのだ。

 私の席は2階。
「お母さん、お母さん!」
 廊下を歩いていると、小学校1、2年の女の子が、興奮した様子で廊下に走り出してきた。黒のフリルのブラウスとスカートでコーディネートした、とてもおしゃれなお嬢さんだ。

「琴ノ若、見えた!」

 し、しぶいなお嬢さん。きっと日頃からお相撲を見てて好きなんだろうね。
 中に入ると、席は2階の1番前で、正面ではなかったがとても見やすい。
 そして、やっぱりスポーツは生だなあ。
 TV画面だとスケール感がよくわからなくなってしまうが、実際は100kg以上の巨体が宙を舞ったりするだ。勝ち負けも、ほとんどの場合わかりやすいので、外国の方が観覧しても楽しめるのだろう。
 一瞬で決まるので、緊迫感もあるし。(早すぎで横を向いた隙に勝負が決まっているくらいだ)

 懸賞取り組みというのがあって、勝った力士に賞金が出るものもある。(当たり前の知識なのかもしれないけど、ホラ、私、お相撲シロウトだから)
 取り組みの前に幟(竹内哲さんから教えていただきました。正しくは「懸賞旗」)を持って回るのだが、永谷園がとってもがんばっていた。
「味一筋お茶漬けの永谷園、梅茶漬けの永谷園、鮭茶漬けの永谷園、わさび茶漬けの永谷園……から賞金がでます」
と、会場アナウンスが流れるんだけど、よく見ると旗の柄がひとつひとつ違う。ちゃんと鮭茶漬け、梅茶漬け、わさび茶漬けになっているッ!

 ……とまあ、なかなか面白い相撲観戦でした。


2004/5/14

 遅くなったが、GWの時に買ったマンガを2冊ほど。

 『金色のガッシュ!』(雷句誠/小学館サンデーコミックス)の15巻。
 実家に帰る移動中に読んで、電車の中でポロポロ泣いた。
 ガッシュは人間界に来た100人の魔物が、王座をかけて戦う物語。魔物が魔力(術)を使うには「魔本」を読める人間が必要で、魔物と人間がパートナーとなって戦闘する。負けて本が燃えると魔物は魔界に強制送還になってしまう。

 これが切ないんですよ。
 14巻では、ウォンレイとリィエンという人間の女の子と魔物の男の子の恋物語が語られ、どんなに思いあっても別れは来てしまう切なさに泣いたのだが、今回はナゾナゾ博士とキッドの祖父と孫のような心の触れ合いに泣く。(泣きっぱなしかよ、オレ)
 とはいっても、悲しいだけの作品でもなくて、非常にシュールなギャグを出すのがこの作者の面白いところ。
 戦闘に手に汗握って、ドラマに泣いて、ギャグに笑ってって、なんて贅沢なんだろう。
 実家までに3回くらい読み返して、3回泣いてたかも。

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 実家からの帰りに駅で買ったのが、『花よりも花の如く』(成田美名子/白泉社花とゆめコミックス)2巻。
 お能をやっている青年が主人公の能マンガ。
 実は私、お能を見に行ったことがありません。学生時代に誘われたこともあるけど(お嬢様が多かったので)、「能を見るには自分の教養が足りないな」と思って見に行かなかったのだ。
 今でも教養が足りてる気がしなくて、見に行っていない。
 もしかして、平家物語や有職故実のお勉強が仇になったか。学問としては非常に手ごわいもので、よくわからなかったくせに苦手意識だけはしっかり刷り込まれてしまった。
 高校生くらいでこのマンガを読んでいたら、もっと能に興味を持っただろうし、実際に能楽堂に足を運んだかもしれないのに。

 私は、こういう伝統芸能は下手に歴史ものを書くより、よっぽど難しいと思う。
 極端な話、平安時代のものなら実際に平安時代を見た人はいない。それに比べて、伝統芸能ものは約束がたくさんあって、しかも現在進行形で触れられるものだ。作者とアシの皆さんには本当に頭が下がる。

 『ガッシュ!』が同じ時間で3回以上読めたのに、『花よりも…』は1冊読み終わらなかった。だからどちらが優れているということはない。掲載誌も違えば、対象読者も違う。
 『ガッシュ!』が好きでカードの大会に出る小学生もいれば、『花よりも…』が好きで能を見に行く女子高生さんもいるだろう。 
 『ヒカルの碁』は、碁をやる小中学生を爆発的に増やした。
 それだけ作品に力があるということで、そういうマンガがいっぱい読めるのは幸せだと思う。
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2004/5/13

 どこの本屋に行ってもなかったガンガン5月号。
 GW前にダメもとで近所の本屋に頼んだら、本日入荷の電話があって、あっさり手に入った。あの本屋行脚はなんだったんだ。まあ、とりあえず、無事に手に入ってよかった。
 これで、やっと付録のCDの後編が聞けるよ。(4月号が前編、5月号が後編だった)

 行った時に本屋で見つけたのが、「誰も寝てはならぬ」(サラ・イネス/講談社アフタヌーンコミックス)。
 うちの近所の本屋はマンガは売れ筋のものの、しかも新刊しか置いていないようなところなのに、たまにこういうマイナーなマンガ好きのツボを突くようなものを置いているのがよくわからない。いや、嬉しいけど。
 とにかく、6年ぶりの新刊だ、やった!

 昔、同じ作者の『大阪豆ゴハン』が、ある日突然友達から宅急便で送られてきまして(こういう本の貸し借りをよくしていたのよ)、読み終わってから自分でそろえました(笑)。
 友達や会社の人との喋りをマンガにしたようなとこが素敵な作品で、新作もテイストは変わらない。
 主人公は離婚経験ありのイイトシ(30代後半くらい?)のおっさん2人。2人の日常が独特のセンスで語られる。
 もしかして人を選ぶ笑いかもしれない。でも、このマンガが好きな人なら、私は友達になれると思うんだよなあ(笑)。

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2004/5/12

 仕事メシで渋谷に行きました。

 渋谷にもめったに行かないのに、非常にオシャレなお店でちと緊張。
 スペースタワービル15FのLegatoというお店です。
 渋谷は高層ビルがほとんどないので、15Fでもものすごい開けたビューが楽しめます。個室も窓際にあり、私が座ったのは一番窓よりで、「パンツ見えるかも」というくらい窓が大きいのです。(下世話な表現でごめんよ……)
 このお店、個室に行く時にはオープンキッチンの前をずーっと通らなくてはなりません。その距離は15mほどもあるでしょうか。キッチンをオープンにするということは、常にお客様の目にさらされるので、「清潔」に気を使わなくてはいけません。オープンキッチンであるということは、そのお店の自信でもあります。
 ただ……ただね。キッチンの前を通る間中、スタッフすべてが「いらっしゃいませ!」と挨拶してくれるのは、ありがたいけどいかがなものか。
 ちょっと、視察に来た社長さんみたいな気分です。

 お料理は美味しく、デザートメニューも豊富でした。"あまおう苺のパフェ"が気にかかったので聞いてみたら、今ってそういう名前の苺があるんですね。(ビンボーなので知らなかった)
 「あ」かくて、「ま」るくて、「お」おきくて、「う」まいの頭文字だそうです。(私は「甘王」かと思いました)
 総勢6名で、中国駐在していた方のお話にがははと笑ったり、なごやかなものでした。

 しかし、帰りも同じオープンキッチン前の儀式(?)をしないと帰れないのでした(笑)。


2004/5/11

 『イネス――シャネルが愛したスーパー・モデル』(イネス・ド・ラ・フレサンジュ、香川 由利子訳/ヴィレッジブックス)読了。

 イネスといえば、80年代から90年代にかけてシャネルのミューズだったモデル。その後、個人名を冠したブランドも展開していたから、お洋服好きなら一度は聞いたことのある名前だろう。
 この本は彼女自身が半生を語った本で、フランスではベストセラーになったとか。文庫の裏の内容紹介に書いてあったことだが、イネスはフランスを象徴する女性「マリアンヌ」にも選ばれたことがあるので、まんざら嘘でもないかもしれない。
 当時、シャネルと専属契約を結んでいたイネスは、結局これが元でシャネルとの蜜月を終わらせることになった。シャネルのデザイナーであるカール・ラガーフェルドが、「あまりにも俗物的」とマリアンヌ選出を嫌ったからだ。
 イネスは莫大なギャラその他を捨てたが、「国を代表する女性に選ばれるのは名誉なこと」と言う姿は国民から好感情を持って迎えられた……ということを、雑誌で読んだ記憶がある。

 これも一応、資料本。
 でも、あまり参考にはならなかった。
 別に内容が悪いわけでなく、辛かったり醜かったりするところをサラっと書いてあるから。
 これかフィクションなら、カール・ラガーフェルドとの確執は延々と書かれたに違いない。ジャンプなら最後の最後にイネスが奥義爆発なところだ。
 カールの繊細さや、いいところも存分に書かれる。対立については、わずかに語られるのみだ。
 とても大人。そして、上品。
 読んでいてストレスがない代わりに、女性セブン的とでもいおうか、私の下世話な興味はあまり満足されない(笑)。

 イネスはシャネルとの契約終了後、デザイナーとして仕事をはじめる。
 回りから押し出されたような格好で、資金も潤沢だし、マスコミもガンガン取材に来てくれる。お金もコネもない駆け出しデザイナーが読んだら、腹立たしくなるようなスタートだろう。
 でも、結局その会社ともトラブルとなり、会社を去ことになる。会社に商標登録をされていたので、イネス・ド・ラ・フレサンジェという名前も使えない。
 その辺の事情もサラリと書いてある。
 書き方によってはものすごくドラマチックになるのになあ、と思うが、イネスはそういう性格なんだろうか。(フランス人がそういうものなのか?)
 イネスのモデル時代は、リンダ・エバンジェリスタが代表するスーパーモデルブームより少し前なので、今や大御所になったデザイナーがヒヨッコとして登場するのがかわいい。
 今より少しのんびりした時代のパリ・ファッション界の様子を知りたい人にはおすすめ。

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2004/5/8

 ノンフィクション中心と書いた舌の根もかわかないうちにアレだが、4月に買ったマンガで、どうしても書いておきたいのを思い出したのでマンガ紹介を。
 『トニーたけざきのガンダム漫画』(トニーたけざき/角川コミックス・エース)。

 ぐはははは。
 あなたが、ファーストガンダムを知っていればオススメ。と、いうか、ファーストガンダムもかなりみっちり知らないと楽しめない。
 巻末には、あの安彦良和も特別寄稿、
「たまにどっちがオレの原稿かわからなくなる時があるもんな」
という、安彦激似ペンタッチで描かれるパロディが見ものです。(トーンの削りまでソックリなんだよ! これが)
 この人はとても画力がある人なのだが、そのずば抜けた画力をとことん安彦タッチにして脱力しそうな(←誉め言葉)パロディを描くことに投入するとは、見上げた男っぷりだ!
 ……ということで、ぜひとも紹介したかったので(笑)。
 しかし、『ガンダム・オリジン』より売れているのが、それはそれで気にかかる……。 

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2004/5/7

 これからしばらく資料本シリーズのメモになります。ノンフィクション中心。

 『分子レベルで見る老化』(石井直明/講談社ブルーバックス)。
 ブルーバックスなんて○年ぶりに読んだよ!(笑)
 遺伝子の分野というと日進月歩なので、もしかしたら内容の一部が既に古くなってたりするのかもしれないが、2001年10月に発行当時の最新の、遺伝子と老化の関係が読める本。
 もちろん、ブルーバックスだけあって、わかりやすいが、わかりやすすぎということでもないレベルだ。本文に元素記号がバリバリ出てくるので、私は読み進むのに結構根性がいった(笑)。

 面白かったのが、個体寿命と種としての限界年齢の話。
 人間は今のところ120歳を越えて長生きをする人はいないらしく(戸籍があやふやとか、本人の記憶間違いの自称120歳オーバーはいる)、人間という装置としての耐用年数が120年というのが主な学説らしい。この耐用年数というのは、医療が発達してもしていなくてもあまり変わらないそうだ。
 ところで、沖縄県は48都道府県の中でもトップの長寿県というのはみなさんご存知だろう。
 長生きにはもちろん環境にも大きく左右される。だから沖縄の人は温暖な気候、おおらかな性質で長寿を……と言いたいところなのだが、よく考えてみよう。今の高齢者は戦争経験者だ。
 沖縄といえば、戦場となった都市であり、戦後は海外であり、いまだに基地問題ではもめている。
 のほほんと想像するほど、環境が素晴かったということはないのだ。ストレスが寿命を縮めるなら、ストレスの負荷は48都道府県中最高だった可能性さえある。
 著者が語るのは、沖縄の長寿の人達は「スーパーマン、スーパーウーマン」ではないか、ということだ。
 沖縄だから長生きするのではなく、もともと長生きをする因子を持っている人が沖縄に住んでいる、という考え方。

 これで思い出すのは、ハインラインの『メトセラの子ら』だ。
 ハインラインは長命の一族を何作かに登場させていて、たぶん、この作品だったと思うのだが(あやふやでゴメン。この本、実家にあるもんで)、長命族の存在が公表されたて、ものすごい騒動が起こるところを描写している。
 ハインラインは登場人物の一人に、
「(長生きする理由が)ただそういう種族でした、では、人は君たちを憎む」
と、言わせている。
 確かに、運良くそのように生まれついた人だけが長生きできるなら、人は手にはいらないものを持った人を憎むかもしれない。
 長寿の理由が同じく「そのように生まれついたから」と、本当にはっきり結果が出れば、やっぱり同じようになるのかもしれない。
 もちろん、研究のとしては、原因を定めてから「どうしたら老化を止められるか」を試行錯誤しているのだろう。
 著者は「不老不死が種にとっていいこととは限らない」とも、言っている。確かに、老化の問題をクリアしたら、すぐ新しい問題が上がってきそうだ。
 スーパーマン達の研究は、科学的にも難しいし、社会的にも難しいし、倫理的にも難しいもんなんだなあ。

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2004/5/6

 GW中の日記を読みかえしたら、映画とマンガの話題だけで、非常にインドアな感じ。一応、そうじゃないエピソードも書いておくと、昨日は亀戸天神の藤まつり(第一変換:不二祭り)に行ってみた。
 が、藤もすっかり終わって素敵な葉藤。(←そんな言葉はありません) 藤祭りなのに、藤がないにで、境内の絵馬ウォッチングに精を出してみた。

 天神さまだから、もちろん合格祈願が多い。学校だけでなく、資格試験もある。
 祈願だけでなく、お礼参りもある。

 ○○に合格しました。ありがとうございます。入学したら頑張って勉強しますので、学業がうまく行きますようによろしくお願いします。

 というのが一般的だが、

 公認会計士に合格した。

あとは左端に名前だけ、というものがあった。お礼なし。
 ……。
 ……何だ、自慢に来たのか?(笑)

 色々見ながら、「コミケに受かりますように」なんていうのがあったりしてー、と、オタクなことを考えていたら。

 ありました。

 でも、菅原のミッチーがいくら霊験あらたかでも、そんなオタクなお祭りの当選をお祈りされてミッチーもお困りだろう。だいたい、当落、実力じゃないし。

*コミケ……正式には「コミックマーケット」。おそらく、現在のところ最も長い歴史を持つ同人誌即売会。同人誌人口の拡大により年々その規模を拡大し、日程も当初の1日から3日になっているにもかかわらずキャパシティを上回る参加希望サークルが来るため、かなりな数のサークルが抽選モレで参加できない。


2004/5/5

赤ちゃんはトップレディがお好き  朝っぱらから(と、いっても10時)、食事をしつつ映画鑑賞、『赤ちゃんはトップレディがお好き』。
 たぶん、映画ファンにはあまりウケないと思うんだけど、私には面白かった。
 物語は、

 ハーバード大学出の有能なキャリア・ウーマン、J.C.ワイアットは人呼んでタイガー・レディ。エリートの恋人、目の前に迫った重役の椅子……と順調な生活を送っていた。そんなある日、遠い親戚が亡くなって遺産をもらいに行った彼女に託されたのは、13ヶ月になる赤ちゃん・エリザベス。エリザベスの世話をしながら働くJ.C.は、恋人に去られ、仕事もうまくいかない。とうとう降格されてしまったJ.C.はバーモントに一軒家を買い、会社をやめて田舎生活を始めるのだった。最初は快調に見えた田舎生活は不便ばかりで、貯金も底をつきはじめ……。

 と、いった感じ。
 要はキャリア・ウーマンと赤ちゃんのコメディで、ただ、この赤ちゃんが天使みたいにかわいい。ダイアン・キートン演じるタイガー・レディがキャリアを捨ててしまうのが納得のかわいさ。やっぱり、こういう作品は子供の愛らしさで価値が決まるよなあ。
 しかし、今ではその赤ちゃんも18歳くらいですか。
 物語の中でも、「キャリアと子育ての両方は無理だ」と言われている時代だったりする。今だったら、こういうメッセージは出さないだろう。ただ、後半、田舎生活に突入するあたりは、21世紀になって流行りの「スローライフ」そのもので、この時代は日本はトレンディ・ドラマ大流行だったことを考えると面白い。
 他の人がやったら嫌味が出るかもしれないキャリア・ウーマンも、ダイアン・キートンの下がり気味の目で喋られるといい感じ。  衝撃の涙の告白シーン(笑)も、この女優さんならではの味。

『赤ちゃんはトップレディがお好き』Baby Boom (1987年、アメリカ)111分
監督:チャールズ・シャイア、脚本:ナンシー・マイヤーズ/チャールズ・シャイア、撮影:ジェフリー・ハワード、音楽:ビル・コンティ、編集:リンジー・クリングマン
出演: ダイアン・キートン(J.C.ワイアット)、サム・シェパード(Dr.ジェフ・クーパー)、ハロルド・ライミス(スィーブン)、サム・ワナメーカ(フリッツ)、ジェームズ・スペイダー(ケン)、クリスティナ・ミシェル・ケネディ(エリザベス)


2004/5/4

 これも先月のどこかで買ったマンガ、『拝み屋横丁顛末記1』(宮本福助/一賽舎ZERO-SUM COMICS)。
 COMIC ZERO-SUMという、割とマイナーな雑誌(←うちの近所の本屋には売ってない)掲載なのだけど、コミックス2巻も出て、それはちゃんと近所の本屋に置いてあった。めでたい。
 物語は、神主やら坊主やらイタコやらが住まう横丁、人呼んで「拝み屋横丁」の物語。
 この横丁がきっちりと描き込まれていて、それがまたノスタルジックないわゆる「横丁」なのがイイ。そして、横丁といえば、ジジィ。ジジィといえば横丁でしてよ、奥様!(……奥様?) ステキなジジィも3人セットで出てきて、それが困ったちゃんなのがラブリィ♪ ここをご覧のオヤジスキーの皆さんは、買っても損をしない一冊かと思われます(笑)。
 ただ、好き嫌いは選ぶ本かもしれないなあ。

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2004/5/3

 先月のいつか、読み終わりました。『天使の舞闘会――暁の天使たち6』(茅田砂胡/中公ノベルスC☆Novels Fantasia)。
 暁の天使たちも今回で完結……って、終わってないよ(笑)。
 たぶん、次シリーズこそが作者の考えた「暁の天使たち」っぽい内容で、これは長ーいプロローグなんだろう。
 えーん、完結編ならとりあえず、きっちり終わってる感が欲しいよう。
 それだけなんだけど、グチグチ言ってると、コアなファンにとっては「細かいことウダウダ言いすぎ!」って感じなんだろうか。
 ちょっと、もやもや感があったので「桐原家の人々シリーズ」を読んだら、面白かった。
 1冊の読了のカタルシスなんかも、ちゃんとあった。
 ああいうのが、感じたいだけなんだけど。

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2004/5/2

ワイルドシングス  やっと、録画しておいた『ワイルドシングス』を見終わった。最初だけ毎日5分ずつ見ていたのだが、1ヶ月半も放置しちまったよ……。

 うっとりするようなハンサムで生徒達からも高感度抜群のハイスクールの教師・サム・ロンバルド。日頃から彼に熱を上げていたケリーは、彼をレイプ犯として告発する。同じ高校の生徒、スージーもサムにレイプされたと証言するが、それを怪しむ刑事・デュケは調査を始め、サムは弁護士のボウデンと公判にのぞむ……。

 二転三転するサスペンスという前評判を知っていただけあって、騙されることを覚悟して見ていたら……騙されなかった。
 ……あれ?
 『シックスセンス』もラストまでネタが割れずに楽しめた幸せな頭のはずなのに!
 どうも、前半1時間のサムが公判にかけられるまではよかったのだけど、その後には展開が観客を置いてきぼりにしはじめてしまったので、先読みに次ぐ先読みをしてしまった模様。
 やっぱり、観客の興味を散らしたらダメなんだろうなあ。
 でも、前半をぐぐーっと引っ張ったデニース・リチャーズのトロリとした色気を拝めただけでも満足でした。
 今まで注目してなかった女優さんだけど、エラの張った顔が独特のセクシーさをかもし出していてたまりません。
 レイプは狂言だろうと予測がつきながらも、
「……やったか、サム? 実はやっちまったのか!?」
と、一抹の疑心暗鬼から逃れられないのは、すべてデニースのウエット感たっぷりの色気のせいでしょう。
 いやあ、amazonで検索して、「ワイルドシングス・エロティックバージョン」というDVDを発見して、思わず買い物カゴにいれそうになりましたよ。(えっ!?)
 20代後半で、むちっり女子高生をやるデーニスはエライ。
 ケビン・ベーコンも予想を裏切ることなく(ストーリーとは別)脱いでいて、これもエライ(笑)。

『ワイルドシングス 』WILD THINGS (1998年、アメリカ )108分
監督: ジョン・マクノートン、脚本: スティーブン・ピーターズ、製作: ロドニー・リバー、製作: スティーブン・A・ジョーンズ、製作総指揮: ケビン・ベーコン、撮影: ジェフリー・L・キンボール,A.S.C.、音楽: ジョージ・S・クリントン
CAST:ケビン・べ一コン (レイ・デュケ)、マット・ディロン (サム・ロンバート)、ネーブ・キャンベル (スージー・トーラー)、テレサ・ラッセル (サンドラ・バン・ライアン)、デニース・リチャーズ ( ケリー・バン・ライアン)、ビル・マーレー(ケン・ボウデン)、ロバート・ワグナー (トム・バクスター)、ダフネ・ルービン=ベガ (グロリア・ペレーズ)


2004/5/1

CASSHERN  れおんさんが映画の日で映画を見るというので、憑いて……いえついて行きました。
 で、入れそうだったのと、興味の兼ね合いで見た『CASSHERN』。
 ……。
 …………。
 TVや街中で見るクリップに人を集中させる力がバシバシある監督も、141分もの長尺で観客と向き合うのは苦手なのかな。
 いえ、辛口なのは、何もブレンダーが1分くらいしか出なかったからじゃなくて(笑)。

 正直なところ、アクションシーンでもやもやした気持ちになっちゃったのがイカン。映像のこだわりはいいよ。全編あの映像はさすがに飽きたけど、許そう。(映画のテーマは「全てを許すこと」だし) でも、アクション・シーンは余計なフィルターをかけないで欲しかった……。
 やっぱりアクション映画って難しいんだなあ。ジョン・ウーって、スゴイよ……。

 そういえば、この物語の人ってものすごくよく喋るんだけど、解説役があんまりいないのね。  いっそのこと上月博士をヤムチャ要員として、

「完璧な肉体に新造細胞を導入した鉄也くんは、ブライと違って代謝が変則化してるのか!」

とか

「まさか、あの城は戦争初期に作られたという伝説の……!?」

とか

「第七管区といえば、まさか……あの伝説の!?」(わし、こればっかり)

とか、言わせるのはどうでしょう。

 ついでにパンフの写真集は別にして、設定他が乗ってる冊子だけ300円でバラ売りしたらどうだろう。観客には学生さんも多かったことだし。

『CASSHERN』(2004年、日本)141分
企画・監督・撮影監督・編集:紀里谷和明、脚本:紀里谷和明、管正太郎、佐藤 大、プロデューサー:宮島秀司、小澤俊靖、若林利明、原作:竜の子プロダクション「新造人間キャシャーン」、美術:林田裕互、撮影:森下彰三、アクション監督:諸鍛冶裕太
CAST:伊勢谷友介(東鉄也/キャシャーン)、唐沢寿明(ブライ)、麻生久美子(上月ルナ)、寺尾 聰(東光太郎博士)、樋口可南子(東ミドリ)、小日向文世(上月博士)、宮迫博之(アクボーン)、佐田真由美(サグレー)、要潤(バラシン)、西島秀俊(上条中佐) 及川光博(内藤薫)、大滝秀治(上条将軍)、三橋達也(老医師)



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