2003/5/7
日記に書くのを忘れてましたが、先週のどっかで『街の灯』(北村薫/文藝春秋)を読了してました。
物語の舞台は昭和7年。まだ華族やお公家の上流階級が華やかに存在した時代。主人公は家は氏族出身だが、軽井沢に別荘があって、学校への送り迎えがお車というお嬢さま。
引退する運転手のかわりに「別宮(べつく)」という女性が"わたし"の運転手になるが、……という、お話。
主人公"わたし"は、この女を『虚栄の市』の主人公にちなんで"ベッキーさん"と呼ぶ。この時代、女が運転するだけでも大騒ぎなのに、剣術の心得はあるわ、射撃の腕前はピカイチだわ、ベッキーさんには色々謎がありそうだ。新シリーズらしいので、この謎もおいおい明らかになっていくのだろう。
さて、読む前には私はベッキーさんがホームズとなるのだと思っていた。
円紫師匠と私のシリーズのように、"わたし"はワトソンであって読者とホームズを繋ぐのだろうと。ところが今回はホームズは主人公。何不自由ないお嬢さまが、ベッキーさんの何気なさそうな言葉で真実にたどりついていく。
昭和7年という時代の上流社会のお嬢さまの世界と私達(読者)を繋ぐのが、ベッキーさんという人らしい。
時代考証もしっかりしてあるので、今はもう失われた東京を物語の中で楽しむこともできる作品。
ところで、読んでいて「チャップリンが来日した翌日に首相が暗殺されるという出来事があった」というくだりがあった。
「夏目雅子だ!」
と、私は思った。
いや、そういうドラマがあったのよ。
今でも美人女優というと夏目雅子を思い浮かべるワタクシ。夏目雅子は当時の人気女優で、チャップリン暗殺計画を知ってしまった主人公(根津甚八)に巻き込まれながら計画を中止させるために奔走する役どころだった。気の強い美人女優役がハマっていてね〜。
ネットで検索したら(こういう時、便利だよな。ネットって)、『5.15.事件秘話 チャップリン暗殺計画――世界の喜劇王を救ったのは誰か!?』というタイトルだった。
今、考えても面白いと思うけど、TVの2時間ドラマだからビデオになってたりはしないだろう。
ああ、もう1回観たいなあ。